雨降りの休日(適当)


大量の洗濯物が積み上がっている。
この所雨つづきだ。こうなることは分かっていたのに。
「このシーツ、どうすりゃいいんだ…」
そのまま使える訳がないのは明白だ。
心情的にってだけじゃなく、こんなに湿って汚れた…しかも人に言えないような何かでどろどろになったシーツなんて、コインランドリーに持ち込むのは憚られる。
忍服だってそうだ。
内勤の自分だけならいざしらず、任務帰りに好き勝手に人を貪った男のものなど、ナニが付着しているか分かったもんじゃない。
そんなものをおいそれと里の一般人の使う店に持ち込める訳がない。
…万が一毒でも残っていたりしたら、とんでもないコトになる。
「あー…!…ったく!」
こっちの苦労など知りもせずに、ベッドに長々と…羨ましくなるほど均整のとれた体を横たえて、ぐっすり眠り込んでいる男が憎い。
幸せそうに頬を弛ませ、ふにゃふにゃと寝言まで言いやがるのだ。
「…ん…イルカ…」
とろりと笑み崩れる顔を見て、もうちょっと寝かせておいてやりたいなんて思う自分が馬鹿過ぎて泣ける。
そもそもこの男とは何の約束も…まともな言葉すら交わしたことがないのだから。
ある日突然泣きながら俺の家の窓を蹴破ってきたこの男にしがみ付かれて、あからさまにどっからどうみても暗部の格好だったし、そもそも人んちの窓になんてことしてくれるんだと叫びたくもなったんだが…男があんまりにも悲しそうに泣くから放って置けなくて、なでて宥めてすかしても泣き止まないから、ついうっかり寝床に入れてしまったのが失敗だった。
寝かしつけようと布団に連れて行ったら、ぎゅーっとしがみ付いたままはがれないから、しょうがなくてではあったが、久々の他人のぬくもりに心のどこかがふわりと和らいだのは事実で。
…そこからどこをどうやってこんな関係になったのかは覚えていないが、甘え上手なこの男に上手く乗せられた結果なのは確かだ。
「なーんでだか、な」
どろどろになったシーツはまだ俺の方手に握られたままだっていうのに、銀色頭をくしゃくしゃとなでてやると、しょうがないと思えてしまうから。
とりあえず洗えるモノは洗濯機で洗って、持ち歩けそうな物だけ乾燥させにいって、残りは室内干しにするしかないだろう。
男の忍服だけは、どっちも不可だから、この際手で洗ってしまおう。
どっちにしろ、起きたらまたひとしきり甘えてくるだろう。
男が眠っている間に済ませておかないといけないし、善は急げだ。
男をなでていた手を止めて、とりあえずシーツから洗ってしまおうと思った。
…だが。
「なんで?どこいくの?」
さっきまで惰眠を貪っていたはずの男が、どこかギラついた目をして俺の手首を…シーツを握り締めたそれを掴んでいる。
ちりりと肌を焼くのは…押さえられてはいるが殺気じみたチャクラだ。
「どこって…洗濯するんです。あんたまだ眠いんでしょう?寝てなさ…んんっ!?」
全部言い切る前にしがみ付かれて、言葉を吐き出すはずだった口をふさがれた。
「ふぅ…。ねぇ。それ、俺が後でやるから」
ぐりっと押し付けられたものの大きさに戦いた。
なんでいつもこんななんだコイツは!
「アンタ洗濯なんてできるんですんか!?明日着てく服もないんだからそういうのは後でです!」
するなと言えない自分に一抹の空しさを感じたが、シーツを片付けるのが先決だ。
今男がのさばっているそれが最後の一枚なのだから。
「できるよ?…それ、片付けたら一緒にいてくれるの…?」
「うっ…!その…!」
この子犬みたいな目に弱いんだ。
つい何でも許してやりたくなる。
「いいの?じゃ、今洗ってくるねー!」
そう爽やかに微笑んだ男は、呆然とする俺を尻目にサクサクシーツを回収し…教えてもいないのに風呂場の横の洗濯機にそれを放り込んだ。
それから、心配で着いて回った俺を当然のように俺を担ぎ上げて、今度は俺をベッドに放り込んだのだ。
「やめ…っ!シーツ、乾かないのに…!」
「大丈夫、あとで乾かすから」
にこにこ笑って尻尾が生えてたらきっと千切れんばかりに振っていたことだろう。
こんな顔されてもなお抗えるなら、そもそもこんな関係になってない。
「…絶対ですよ!」
「ん。当然!…だから、ねぇ…?」
男の熱を帯びた視線と甘い声、それから…するりとまわされた腰に回された手に抗うことを諦めた。
どっちにしろ洗わなきゃいけなくて、それには時間が必要で…どうせならその時間を気持ちイイコトに使った方がいい。
どちらともなく口づけて、どうせ洗濯が終わっても離しては貰えないんだろうなと思った。
*****
痛い。ダルイ。…そりゃそうだ。あれだけ運動すればいくら鍛錬してたってこうなる。
元々1回始めるとしつこいが、今回はソレに輪をかけて酷かった。
「…洗濯―…」
今日の服すら怪しいほどだ。なんとかしなければならない。
目覚めたばかりでまで寝ぼけたような頭を振りながら、よろよろと洗濯機の元へ向かおうとした。
「あ!おはよ!ほらあとコレ一枚畳むだけだから!」
男が嬉々として洗濯物を畳んでいる。しかも大量にあったはずなのに、ほぼ全部。
「すごい…!」
「そ?…だって、大切な人が具合悪いんだし、これぐらいならやるよ?」
「へ?」
意味が分からない。とりあえず腰は痛いが、どうして俺をそんなにうっとりした目で見るんだろう?
その視線はいまだ疼く体には目の毒なほど甘く感じられた。
「今度はもっと色々言ってね!がんばるから!」
「はぁ…そうです、か…?」
大切な人…大切な人!?
何を言ってるんだろうか。この男は。
顔が勝手に赤くなるのを押さえられない。
そうか、大切なのか。俺が。
「いーっぱいしたいから、今度乾燥機つきの探してくるよー?待ってて」
にこにこわらいながら人の尻を撫で回すのにをいなしつつ、とりあえず…この関係も実はそう悪くないのかもしれないと思った。

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てきとー!ねむい…。
とりあえずふやしてみるのでした。
ではではー!なにかしらつっこみだのご感想だの御気軽にどうぞー!

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