阿呆(適当)



「いい子でいてね?」
人が動けないのをいいことにそんな最低の台詞をはいた男が、家の窓から出て行った。
ご丁寧に鍵もしめて、ついでに結界でも張ったのか、空間が閉ざされた気配がする。
暗部服なんて着てたってことは任務だろうか。
任務の直前まで淫行に耽るなんざ、仮にも上忍なのに何やってんだと思う。
思うんだが。
「あーんなもも色のほっぺたででかけてくなよな…」
実はそっちの方が気になった。
面つけてりゃ隠れるから大丈夫だろうが、幸せーって顔で出て行かれるとこっちもなんつーかだな。恥ずかしいというか!
普段から二人っきりになると何かと騒がしいが、やってる最中も煩い。
気持ちイイ?だの、ここいっぱいしてあげるだの…!
色だの形だの汁だの!一々言われなくても見えるし、見えなくてもそんなもんどうでもいいだろうが!
こっちがそれこそ身を切られるような思いで男相手に足開いてるっていうのに、そんなことなどおかまいなしだ。
気持ちよければ勃つし、突っ込まれて中から刺激されたらそりゃでるもんだって出る。
それをねちねち実況しながら延々と人を喘がせることに腐心する。しかも快感に蕩けきっただらしない顔でだ。
そんな状態でも元がいいから綺麗出むしろ凄まじいまでに色気があるし、囁く声も興奮に掠れて聞いているだけでぞくぞくする。
下半身だって…なんか情けなくなってきたな…。比べるもんじゃないし、お互い気持ちよければいいっちゃいいんだけど。
「それであれだもんな」
さんざっぱらやり倒して、こっちが腰が抜けて動けなくなってから、腹がくちくなったケダモノのように、人を枕にして幸せそうな顔で眠り込み、それから起きた俺が服を着る前に更にもう一戦挑まれた。
いくら鍛え上げられていた忍といえども、もうくたくたで一歩も動けそうにない。
たっぷり俺を蹂躙したあと、幸せ一杯の顔で出て行った男が、一応念のために犬たちを残していってくれなかったら、俺はそこらへんでぐったりしたまま延々と男の帰りを待ってしまうところだった。
…まあ変わりに閉じ込められちまったけどなぁ。一応心配の表れだ。仕事は実はこっそり休みを取ってあるから何とかなるだろう。言えば調子に乗るのが目に見えているから教えちゃいないが。
馬鹿みたいだと分かっているのに、俺が家で待っているだけで幸せそうな顔をするし、いつだって懐いて離れようとしないあの上忍に、多分とっくに惚れている。
実は最初もなし崩しだ。
ある日やってきていきなり人を襲いやがったアホが、嬉しそうにコレで俺のモノだと騒いだ結果がこれだ。
ふざけんなと怒鳴りつければ泣きながらでも俺のだもんとかいうんだぞ?いらっときて実力行使したらしがみついてきて、閉じ込めちゃいたいとか。
アホだ。ホンモノの、筋金入りのアホだ。見た目と腕前がなかったらその辺であっという間に朽ち果てそうなアホだ。
そんなアホに惚れられた俺も多分同類なのかもしれない。
…うるうると捨て犬みたいに瞳を潤ませて、もう離さないと主張されて、あまりの必死さに絆されちまったからな。
「あー…早く帰ってこいっつーの」
「おぬしも大変じゃのう…」
「カカシが帰ってきたら骨付き肉でもねだれよ!」
「あー…そうだな。ありがとな」
犬まみれになりながら、ため息をついた。
きっとまたあの上忍はほっぺを桃色に染めて、大急ぎで帰ってくるだろう。
それからまた一騒ぎするのもほぼ確定に違いない。
犬にまで心配されるってどうなんだと思いながら、とりあえず水を持ってきてくれた子を撫で回しておいた。

…夕方、大分腰だの足だのの調子が回復した俺が犬と戯れていると、俺以外を構うなんて酷いとのたまったアホ上忍に再び奇襲されたのだが、流石にぶん殴って…それからお帰りなさいのキスをしておいた。
鳩が豆鉄砲でも食らったような顔をしてたから、今回は俺の勝ちってことにしておく。


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適当。
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