「声が枯れるくらい名前呼んで?」 頭が煮えたようなことを言うのは、馬鹿みたいに暑いせいだろうか。 滲む汗でぺたりと張り付く忍服が鬱陶しくて、さっさと脱ぎ捨てて今すぐ風呂に入ろうと思ってたのにコレだ。 待ち構えていたのはまあいい。 合鍵を作ったのも渡したのも俺だ。使ったら減ると言い出して、未だに鍵を使わずにあけているにしろ、許可を出したのは自分だから。 だが唐突に汗まみれの体に抱きつかれるのは勘弁して欲しい。 客観的に言えば確実に単なる汗臭い男でしかない自分に、こうも激しく発情できるってのは素直に疑問だ。 泥で汚れていようが血にまみれていようが、任務中なら気にもならないが、こんな関係の相手には流石にそんな体を晒したくない。 女々しいと言われりゃそれまでだが、汚れた姿をわざわざ恋仲の相手にみせることはないはずだ。 少なくとも俺はイヤだ。それでなくても無駄に器量よしな恋人と違って、極々普通の顔と体しか持っていない。それを更にむさくるしくする必要もないだろうに。 「風呂入ってくるからちょっとまっててくださいよ」 止めろと拒んでも暴れても懇願しても、犬のように人に、それも言えないような所まで舐めるこの男に、せめて風呂ぐらい入れろというのはそんなに我侭なことだろうか。 憮然とした顔で拒絶の意思を示して俺の苛立ちを煽った男は、次の瞬間には強硬手段にでることにしたらしい。 「服着たままってのもいいかもね?」 そんな下らない台詞と一緒にポーチを放られ、下だけ半分脱がされた。 何度も言うが一日このくそ暑い時期に働いてたんだから、当然汗まみれだ。 …この状態で変な気起こせるのがわからん。綺麗な女性ならまだしも、汗臭いすね毛も生えてる股間にも同じものがぶら下がってるようなイキモノに、自分ならまず間違いなくその気にならない。 と、そこまで考えてそれがこの人だったらと想像してしまったのがマズかった。 汗まみれどころか血まみれだろうがなんだろうが、帰ってきてくれればそれで十分。 …もちろんそれも本音だ。 だがこの人が泥やなにかで汚れて、破れた服なんか着てたら…きっと恐ろしく扇情的に違いない。 「うそ、だろ」 「なに?どうして急に元気になってんの?」 さっきまでケダモノ染みた気配を隠そうともしなかったくせに、急に素に戻られてもこっちが困る。 汚れたアンタを想像したらエロすぎたからだなんて言えるものか。 「五月蝿い黙れ!風呂!アンタも来い!」 「ふぅん?ま、いいけど。…汚れてもすぐに洗えるし、ね?」 卑猥な笑みにわざわざ反応してやるのも癪で、引きずるようにして浴室に移動した。 顔が火照っているのはバレバレだろうが、絶対にうろたえてなんかやるもんか。 なんて考えていたのに…そこからまあ体を洗うのもそこそこに縺れ込んで、我ながら馬鹿かと思うほど夢中になってヤってしまった。 上だけ脱がせて脱がされて、そこでもうダメだった。 想像した以上に卑猥なイキモノがそこにいて、自分と違って汗の匂いこそしなかったが、薄く残った怪我の痕に半端に脱げた下衣から覗く腰のラインまで、視覚だけでイきそうになるほど興奮した。 「何でスイッチ入っちゃったのか知らないけどかわいい」 その台詞を丸ごと返してやりたいが、どうしてなのかをうっすらと理解できてしまったせいで言い返せず、悔しさついでに噛み付いてやって、そうすると自分の残した痕が赤く白い肌に浮かんで。 …後はもう沸騰したみたいになった欲望に逆らわなかった。 適当に投げ捨てた服がびしょ濡れになるのも構わずやり倒したから、後片付けのことなど考えたくもないが、身動きできない自分と違ってご機嫌な男が多分何とかするだろう。 「名前呼んでくんなかったからまた次ね」 緩みきった顔でそういう男がどこで何を吹き込まれてきたか知らないが、そういえばお互い言葉もなくケダモノのようにヤっただけってのは初めてかもしれない。 「…名前でもなんでも呼んで欲しけりゃ呼んでやりますよ。あんたが、もう少しいい子にしてるんならな」 …憎まれ口のつもりだったが、挑発されたと取った男にさらにむちゃくちゃにされる羽目になったのは自業自得なんだろうか。 「名前呼ばれながらするとイイってホントだけど、アンタなら何でもイイみたい」 満足げにそう報告してきた男には、いっそアンタが任務帰りの時に襲ってやろうかと言ってやりたいくらいだが、やぶへびになりそうだから止めておいた。 「ま、そーしそうあいってヤツですね?」 脂下がった顔で顔中を啄む男相手に、かわいいと感じる自分も十分にいかれてると思うから。 ********************************************************************************* 適当。 あぁあぁああつううぅぅうういいぃいいいい_Σ(:|3 」∠ )_ ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |