三匹の上忍(適当)



「おたんじょうび!」
「おめでとうございます!」
「らーめんですか?それとも俺たち?」
三人だ。まちがいなく三人いる。
日々何くれとなく喧騒と疲労を運んでくる迷惑な生き物が。
「…寝るか…」
夢でも見てるんだと信じたかった。
誕生日の朝っぱらからまたこのちょっとアレな上忍が訳のわからないことを仕掛けに着てるんだって頭のどこかで理解していても、それを受け入れる事が出来なかったんだ。
「添い寝?」
「襲うのは夜だよね?前に押し倒したら真昼間からなにしやがるって言ってたし」
「あー!あの時!なに考えてるんだって顔真っ赤にしててかわいかったよねぇ!」
…うるさくて眠れない。それ以上にやっぱりこの男、ずれてやがる。アレだけ説教してやったのに、覚えてるポイントはそこなのか。
上忍は…まあ正直言って変人が多いが、この男は群を抜いている。朝っぱらから影分身までして他人の家に上がりこんでる時点でそれは明らかだ。
群がる俺だったら一回でいいからデートしてみたいと思うような女性を鈴なりに引連れているくせに、何をトチ狂ったか、普通のごくごく平凡でラーメン好きの中忍の男相手に…。
「あーしたい」
「したいねぇ?しちゃおうかなぁ」
「朝目覚めたら気持ちイイって最高かも!」
どうしてそこまで欲望に忠実なんだと叫びたいが、もう少し様子を見ることにした。
…折角の誕生日だってのに、どうして俺はこんな目に合ってるんだろうと落ち込みすぎたともいう。
「イルカせんせ…?」
「眉間のしわかわいい!」
「パンツなにはいてるかなー?この間の特売のストライプ?俺が贈ったビキニ嫌がってたけど、はかせちゃおうかなー?」
「むしろ風呂!お風呂とかどうよ!」
「温泉の素は勿論用意してあるしね」
「じゃ、脱がせるよー」
あ、マズイ。
肌が梅雨の気配を引きずって湿った空気に触れて粟立った。
それと同時にごくりと生唾を飲む音が三つ重なって、ああコイツらやっぱり同じイキモノなんだなぁと何故か妙に関心した。
「舐めたい」
「俺も」
「下も」
…見解の一致を見たらしい男が、右の乳首と左の乳首にむしゃぶりついてくるのと、パジャマのズボンをひんむかれるのとはほぼ同時だった。
「ぎゃー!?なにしやがる!」
「おいしいです!」
「かわいいし!」
「あ、ちょっと勃ってる!」
…もう本当に最低の目覚めだ。
「うるせぇ!パジャマ返せ!俺は寝る…のは無理そうだが風呂入る!そんで飯食ってゆっくり寝るんだ!邪魔すんな!」
折角の誕生日。多少自堕落に過ごして何が悪い。
アカデミーでいくつかお祝いの言葉も貰ったし、手作りのプレゼントなんかも貰った。
だから今日は一人でゆっくりしようと思っただけなのに。
…多少襲撃を警戒する意味で休みを取ったってのは否定しないけどな…。最近のこの男の出現頻度ときたらうなぎのぼりで、何が好きだと聞いてくるから、無難な所で温泉の素集めと答えておいて正解だった。温泉だって正直にいってたら、絶対コイツに拉致されてたと思う。へたすりゃそのまま…恐ろしい話だ。
「お風呂!」
「俺はご飯ね!」
「ゴムとローションはこっちにおいとくね!」
息の合ったコンビネーション。だがちょっとまて。最後のはおかしくないか。ゴムって…ゴムって何だ?ローション…それはあれだよな?くノ一の皆さんが肌荒れ防止とかいって使ってるアレだよな?真夏にべたべたしてるの塗ってるなぁって見てたら、俺まで塗られた事があった。そんでコイツが湧いて出て触るなとか騒いで、くノ一の先生方に遊ばれてたっけ。くノ一って最強だよな。その上教員だし弁も立つからそりゃもう…。
まあそれは置いといて、朝っぱらからたたき起こすに飽き足らず…この上俺に何をさせる気だ?
「おい。帰…うお!」
「おふろ!おふろ!お背中と、あと色々洗います!」
「ご飯もすぐ出来るから、イルカ先生に無茶させるんじゃゃないよ?」
「そうそう。おなか落ち着いたらいっぱいしちゃうし、どうせまた入るんだから」
担ぎ上げられて風呂場に運ばれているだけで屈辱的なのに、なんかもう恐ろしい事が進行しているのは明らかだ。
逃げようにも相手は三匹もいやがるし、これでも凄腕上忍だし、コイツがその気になった時のしつこさときたら恐ろしいってのは身を持って思い知らされている。
「うるせぇ!祝う気があるんだったら一人でゆっくり風呂入らせろ!お前は誕生日ケーキでも買って来い!後お前!俺は肌荒れとか気にしない主義だし、どうせなら古傷に効く傷薬とかのがよっぽど欲しいんだよ!」
「「「了解!!!」」」
うん。返事は元気でよろしい。
あっという間に消えた上忍たちにホッと一息つきながら、とりあえず俺は風呂に入ることにしたのだった。

…ちなみに、半刻もしないうちに手に手にプレゼントを持って戻ってきた三匹の上忍に、油断しきっていた俺はそれはもう酷い目に合わされたんだが…。
最終的にプレゼントは俺ですと涙目で一生懸命になって叫ぶ生き物を存外気に入ってしまったのが、一番の敗因だと思っている。
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適当。
祝いじゃ祝いじゃ(`ФωФ') カッ!
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