ぷれぜんと(適当)


「お誕生日おめでとうございます」
まじめ腐った顔の上忍に差し出された紙袋を受け取っていいものかどうか、俺は迷った。
一応、知り合いではある。
だがわざわざ誕生日を教えるほど親しくもない…というか、これだけ育ったら今更誕生日なんて言って回るもんじゃないしな。
アカデミー生の頃に知り合った奴らが時折思い出したように受付で祝いの言葉をくれることはあっても、この人に言われるなんてことは予想もしなかった。
そもそも知り合ったのはごく最近だ。俺の誕生日なんて何処で聞いたんだろう?
不思議に思いはしたが、真剣な上忍に聞きだすような勇気は持てなかった。
…というか、なんだって誕生日プレゼントごときにここまで真剣なんだろうか。それも俺のことなんかよく知らないはずなのに。
ナルトのせいでどうでもいい情報はいっているかもしれないにしろ、わざわざプレゼントまで用意してくれるなんて、かえって気まずく思うほどだ。
祝ってくれるってこと事態に関しては、断るなんて選択肢は最初から捨てていた。
この人が上忍だからってだけじゃなく、こんな風に真剣に一生懸命になっている人からの贈り物を、簡単に無碍にするなんてことが出来なかったんだ。
たとえ社交辞令みたいなものだったとしても。
こんなときはいつも、我ながら厄介ごとを背負い込みやすいと自覚せざるを得なかった。
「ありがとう、ございます」
祝ってもらえるのは嬉しい。
モノは…自分のためを思って選んでくれたんだと思うと嬉しいが、欲しいものは自分でなんとかする方だから、上忍があまり自分の感覚とかけ離れた高価なものでも送ってきたらどうしようと思ったりもした。
タカが紙袋のくせに、妙に綺麗でそれだけでもなんだか高級そうだ。
「それ、開けてみて?」
押し付けられた紙袋がなんだか恐ろしくさえ思える。
だっておかしいだろう?祝うにしては。それも俺もこの人も、お互いに通りいっぺんのことしか知らないはずだというのに。
だけど…その必死さが怖いんだといえたら、多分中忍やってない。
「…あの、お気持ちだけで結構ですから…!なんだかその、これ、高価なもののようですし!」
にこっと笑っていえたのは、そう短くもない受付の経験値のなせる業だ。
…行き成りへにょりと眉を下げられて、その笑顔さえあっというまに吹っ飛んでしまったけれど。
「駄目?」
「え!あの!ですから!…お気持ちはとっても嬉しいんですよ!?でもほら、俺たちは薄給なんで、あんまりすごいものもらっちゃうと…!」
「お祝いだから、お願い」
このままじゃこの人泣き出すんじゃないだろうか。
深夜とはいえここは受付だ。もしも誰かに見られていたら…俺の明日が危ない。この人のファンはやたらといて、もしもそいつらの逆鱗に触れたら何をされるか分かったもんじゃないらしいから。
「わ、わかりました!ありがとうございます!」
さっさと受け取ってお引取り願おう。
そう思って受け取ってはみたものの、今度は期待をこめたまなざしを向けられて、逃げ場を失ったことを知った。
開けろってことだよな。これ。
覚悟を決めて紙袋の中をのぞくと、さらになんだかかわいらしくラッピングされた箱がでてきた。
開けるのが怖すぎる。
「気に入ってもらえるといいんだけど…」
夢見心地。
そういったらよく分かるような表情で、うっとりと見つめられたら恐怖なんか当然最高潮になった。
逃げ場がないならさっさと見ちまったほうが楽になれる。
半ばやけになりながらびりびりと箱を開けてみると、そこには。
「へ?なんですかこれ?」
「約束のゆびわです」
「は?」
「大きくなったらおよめさんになってって。…でもいつになったら大きくなったっていうのかわからなかったので、三代目に相談したら、暗部抜けてからにしろっていわれたんですよね」
この間正式に抜けられたので、早速用意してみました。
そう誇らしげに告げられて、脳みそが真っ白になったが、あわてて己の記憶を探った。
…そういえば昔、えらくかわいい子が父ちゃんの友達だか上司だかって人と一緒に遊びに来たっけ…?
もうすぐ遠くへ行くから、二度と会えないなんていうから…だったらよめにこいとか、帰って来たらうちに来いとかだだこねたような気もする。
だが、ソレは子どものころの話で、もっというならこの人は多分そのとき多分上忍か、中忍くらいにはなっていたはずで。
子どもの約束がどれだけいいかげんなものかってことくらい、理解できていたはずだ。
「あのー…つかぬことをお伺いしますが、男…?」
「ですねぇ。こればっかりはかえられないんですが」
「よめ…?」
「ま、こういう形もありですよね?」
なにがだ。どうしてだ。
そう叫ぶ前に、俺の薬指には銀色のわっかがすっぽりとはめられていた。
「俺を貰ってください。とりあえず家事はそこそこで任務はかなりで、夜はすごいと思います」
宣伝文句の意味が分からない。
…わかるのが抱き寄せる腕から伝わってくるぬくもりが、恐ろしい程心地良いってことくらいだ。
こんなのだまし討ちだ。…そう喚くことすら出来ないほどに。
「…よめってのは分かりませんが、とりあえずお友達…」
「そうですねぇ?夜は逆っていうか…ま、とりあえず今晩は一緒に帰って、ゆっくり色々…ね?」
「ねっていわれても…!?」
あいまいな記憶のそこで、これと同じ笑顔をみたことを思い出した。
そうだ。ちょっと強引で、いなくなっちゃうって俺を脅して、それから…。
「一緒にいたかったら結婚が一番だしね?」
あの時と同じようなことを言っている。よめって言ったときはおどろいてたけど、きっと最初から。
「なんて誕生日プレゼントだ…」
割り切れない何かがたっぷりと溶け込んだ重苦しいため息に、男はしれっと笑ってこういった。
「お買い得でしょ?…プレゼントは幸せになるものなんだから」
ほだされてなんかやるものかと思うのに。
この嬉しそうな顔をみられるんなら、まあいいかなんて思ってしまったんだ。俺は。
誕生日プレゼントなんて久々だったし、この人の体温は気持ちイイし、きっとだからだ。
うっかりその手をとってしまったのは。
*****
…帰ってから全部綺麗に食べられてしまって、なにがよめだとか叫ぶこともできないほど蕩かされて、それから。
「好き。ずーっと好きだった。これでもう、ずっと一緒」
とびっきり甘い声でそう囁く自称プレゼントに、すっかり骨抜きにされてしまったことを知った。
とんでもない誕生日だ。でも。
「…もらったんだから俺の」
そこから先をちゃんと言葉に出来たかどうか。
沈み込む意識の欠片で覚えているのは、頬を桃色に染めて目を見開いている男だった気がする。


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適当。
おいわいー!おいわいー!
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