=SIDE:N=
夏休みのある日、すっかり通いなれた御剣の家への道。
手さげかばんを振り回しながら歩いていたぼくが、それを見つけたのは偶然だった。

夏の日差しですっかり伸びきった雑草の合間にひっそりとあったそれは、露出した女の人が想像したこともない刺激的なポーズで表紙を飾っている本だった。俗にいう“エロ本”というやつだ。
カラフルな表紙に目を奪われて、ぼくは誘われるままその本を開いた。

ぼくは、一度こういう本を見たことがあった。
やっぱりその時もこうやって落ちていた本を偶然見つけた。
一緒に矢張と面白がって見て、初めての言いようのない興奮に、心臓がドキドキして、なんとなく下腹がキュっとなる感覚がして、おちんちんがムズムズした気がする。
本の中で気持ちよさそうにしている女の人や男の人が、少し羨ましくて、興味がわいた。
本当にこんなことで気持ちよくなるのだろうかと、好奇心はあったが、一緒に本を眺め、少しそわそわ落着きがない矢張と試しにやってみようかなんて気持ちにはなれなかったし、女の人がしているのと同じように、矢張のそれを口に含むなんてとんでもないし、考えられない。

そういったことで、見つけた本は矢張と二人の秘密にして近くの空き地の隅に隠しておいたのに、いつの間にか矢張がどこかへなくしてしまった。
ちょっとがっかりしたけれど、それっきり、そんな本があったということも忘れていたのに。

だけど、今回本を見つけたのはぼく一人。
矢張は宿題に嫌気がさして、当初は一緒に通っていた御剣の家にも行かなくなった。
おそらく小学校で開放されたプールに行っている。つまり、この本は完全にぼくだけの物なのだ。

腹の奥からじわじわと湧き上がってくるもやもやする気持ちに、居てもたってもおられず、ぼくはその本を隠すように手さげかばんに入れて全力疾走した。
悪いことをしているような気持ちもあったけど、今はそれより、この本を御剣に見せて、この間矢張と感じた興奮を一緒に味わいたかった。

落ちていた物を拾ってきて怒られるだろうか?
恥ずかしくて顔を赤くしたりするだろうか。
御剣の家へ向かうぼくの頭の中はいろんな妄想でいっぱいだった。

御剣は色が白くて、睫毛なんかも長くて、きれい。
おまけに正義感があって格好よくて頭もよくて、可愛くて、大人っぽくて…あげるときりがないくらい、とにかくすごい子で、ぼくは学級裁判で助けてもらって以来、夢中だった。
彼を楽しませてあげたいし、彼が好きなものは好きになりたい。
もちろん、ぼくが好きなものや楽しいことも彼に知ってもらいたい。
同じ気持ちを共有したいと心底思った。ただ、それだけだった。




=SIDE:M=
チャイムが鳴って、成歩堂が家に来たのだとすぐにわかった。
なにしろ、彼のチャイムの押し方には特徴がある。
ドアを開けると、案の定予想したとおりのギザギザ頭が息を切らせてぜぇぜぇと上下していた。
正直、最初に宿題を一緒にしようと持ちかけられた時は困ったが、ここ一週間一緒に勉強しているうちに、彼が家にくるのが楽しみになっていた。
もっとも、気紛れな矢張はまさしく三日坊主で、ここに立ち寄ることはなくなってしまったのだが。

この学校に転校してきたのは今年になってからで、前にいた学校の友達と家に行ったり来たりという交流はなかった。
正論ばかり言う自分がクラスから浮いていたのはなんとなく感じていたが、まさかこんな風に友達と夏休みの宿題をする日がくるなんて思ってもみなかった。
心なし、弾んでいる気持ちを落ち着けながら、つとめて冷静に成歩堂を家にあげた。

「走ってきたのか。そんなに急いでこなくてもよかったのに」
「はぁ、はぁ、うん、でも、御剣に、見せたいものが、あって」

余程急いで来たのだろう、なかなか整わない息の合間に切れるようにして言葉を紡ぐ成歩堂に、作り置きがしてあるカルピスを一杯差し出す。
受け取るなり、一気に呷った成歩堂が咳き込む。

「だ、大丈夫か君は。そんなに慌てて飲むから…」

背中をさすってやると、だんだんと落ち着いてきたのか、成歩堂がその真っ黒な瞳で見つめてきた。
きょんっとした丸い目に穴があくほど見つめられて、なんとなく居心地が悪い。
成歩堂の背中にいつまでも触れていることが急に気恥ずかしくなった。

「べ、勉強をはじめよう」

慌てたように背中から手を離すと、それを追うように成歩堂の手が僕の手を掴んだ。
暑い中走ってきたせいか、彼の手はじんわりと汗ばんでいて、とても熱かった。
その熱がうつったかのように、じわじわと触れた部分から体が熱くなるようで、なぜか漠然と怖いと感じた。

「ねえ、ぼく御剣に見せたい物があるんだ」





=SIDE:N=
ぼくが、御剣の色素の薄い瞳を覗き込むようにして見つめると、彼は戸惑ったように目を泳がせた。
きれいなきれいな御剣。
ずっと見ていたい気持ちもあるけど、それよりせっかく拾った例のものだ。
掴んだ手はそのままで、ぼくは足元に転がっている手さげから片手で器用に本を取り出した。

取り出されたそれを見るなり、御剣の白い顔が見る見る赤く染まった。
それは芸術的にまで美しい変化で、ぼくは思わず手首を掴んでいた手を離し、御剣の頬に触れた。
すると、ビクっと極端に彼の肩が跳ねて、緊張したようにブルブルと体を振るわせる。
それはまるで白いうさぎみたいだと思った。

「ねえ、御剣、これ今日河原で拾ってきたんだよ」
「な、な、な、そんな物は捨てて来い!」

ようやく言葉になったらしい、御剣の声はいつも冷静な彼らしくなく大きかった。

「怒鳴らないでよ、せっかくぼく、御剣のために持ってきたのに」
「そんな、じょ、じょせいの裸体の…!だめだ成歩堂っ、子どもは見てはいけないものだ!」

面白いくらいに動揺している。こんな慌てた様子の御剣は初めてみた。
戸惑う様子や恥ずかしがっている顔が、とても可愛い。
もっともっと、いろんな御剣がみたい。

「どうして子どもが見ちゃいけないの?前矢張とも一緒に見つけて、一緒に見たけど悪いことなんて起きなかったよ。とてもドキドキしてお腹がキュッてするんだ」
「どうして、なんて…そんなこと」

ぼくらはまだ子どもだったし、正しい詳細な知識はなかった。
だけど、それが一体どういう行為なのかということはなんとなく漠然と知っていた。

「本の中でね、とっても気持ちよさそうなんだよ。それで、ぼく、御剣にしてあげたいって思ったんだ」

最初は、一緒に本を見て、ドキドキするあの感じを共有できたらって、それだけだった。
でも、大げさに照れているのか、恥らっている御剣を見ていると、もっといろんな表情を見たくなった。
もっと可愛い御剣がみたい。本の中の人みたいに、気持ちよさそうなミツルギの顔は、間違いなく可愛いに違いない。

想像するだけでドキドキして、以前初めて本を見たときのような興奮とは比べ物にならない程の高揚を感じた。

戸惑っている御剣の腕をひき、フローリングの床に半ば強引に座らせる。
彼は相変わらず真っ赤な顔をしていたけど、本を開いて促せば、恐る恐る本の方へ視線をやった。

「ね、気持ちよさそうでしょ」
「こ、こんな…」
「せっくすっていうんだって」

初めて見たらしい、あまりにも刺激的な絵に、御剣はそのまま言葉を失ったように開いたままのページを凝視している。
顔は、真っ赤を通り越して、だんだん青ざめていった。

「僕、僕、どうしよう。お父さんに怒られてしまう」
「どうして?」
「だって、こんなの…こんな…」

生まれてはじめての衝撃だったらしく、わけもわからない罪悪感を感じているようだった。
確かに、ぼくも最初に本を見たときは、悪いことをしているようで、常になんとなく罪悪感があった。
でも、矢張も、矢張の友達も、みんな見たことあるって知って、なんとなく心が軽くなった。

「大丈夫だよ、矢張も、他の子も見たことあるって言ってたもん」
「でも…やっぱり、だめだ」
「どうしてだめなの?御剣はドキドキしないの?お腹の奥がうずうずしない?」
「…それは」

ぼくは無意識になのか御剣が内股をこすり合わせてもじもじとしていることに気がついていた。そわそわしている。あの時の矢張と一緒。
あの時は考えもしなかったけど、今ぼくは御剣にも楽しんで欲しい、気持ちよくなって欲しいと、そればかりだった。

「ね、じゃあ。ぼくが気持ちよくしてあげるね」
「え」

突然ぼくは御剣の両腕を掴んでひっぱった。御剣以外のものなんて死んでもごめんだけど、彼のものならなんでも可愛いし、彼のためならどんなことでもできる。
何をされるのかわからず、緊張に体を硬くしてフローリングにぺたりと座り込んでいる御剣の短パンのジッパーに手をかけた。

「やめて、何するんだ!成歩堂、待て!」
「大丈夫、たぶん。じっとしてて」

必死に抵抗する御剣の短パンを多少苦労しながらするりと脱がせると、流行の戦隊ヒーローの絵柄のパンツが現れた。

「っ、見るな」

普段大人っぽく振舞っているのにヒーロー物の絵柄をつけているのが恥ずかしいのか、パンツ姿自体が照れくさいのか、御剣は慌てて両手でパンツを隠した。

「御剣ってこういうの、好きなんだね」
「…っ、うるさい!好きでもいいだろう!それよりズボンを…」
「だめなんて言ってないよ。ぼくだって好きだよ」
「……本当か?」
「うん、ぼくもヒーローって大好きだよ」

でもね、ぼくにとってのヒーローは御剣なんだけど。
ちょっとだけ力の緩んだ御剣の両手をすばやく払い、件のパンツを膝まで下ろす。

「いや…!やめ…っ」

御剣の傷ひとつない白く細い足にを縛るように膝の部分で絡みつく下着。ズグっと下半身に熱が溜まる気がした。
初めて本を見たときのように、行き場のない熱がぐるぐると下腹部を回っている。
彼のそれは、他の肌と同じように白くて、ツルツルしていた。まるで、美味しそうキャンディーかのように魅力的なそれをぼくは迷うことなく口に含んだ。

「…はぁっ」

瞬間、御剣の裏返ったような小さな悲鳴。ぼくの中で何かがはじけた気がした。





=SIDE:M=
下ろされた下着を慌てて引き上げようとしたが、座っているという体勢のせいでうまくいかなかった。
フローリングがひんやりとお尻の熱を冷ます。しかし、成歩堂が触れるすべてが熱い。

「…はぁっ」

突然、ぬるりとした熱いものに包まれて、ぞくぞくと、背筋を何かが駆け抜けていった。
戸惑っているうちに、成歩堂がよりによって、僕のそれを口に銜えたのだ。
思ってもみなかった甲高い声が上げてしまい、恥ずかしさに思わず口を両手で覆った。

「んっ…んぅ…」

噛まれてしまうのでは、と恐怖もあり、強く抵抗できずにされるがまま、僕は成歩堂にそれを舐められ続けた。
子猫がミルクを飲むように、舐めていた成歩堂が、だんだんと深く銜えしゃぶっていくうち、僕の体は今まで味わったことのないうずきを下半身に感じていた。

「やっ…はぅ…」

どうにかなってしまいそうな、激しい責苦にこの感覚がどういった名前のものなのかもう判断できなかった。
激しい排尿感に襲われつつ、もう両手で口を覆う力もなかった。

「あっ…あぁ…っる、ほどぉ…やめ…てぇ」
「ふぁ、ねぇ御剣、気持ちいい?」
「んっ、ん、わからな…い。お願…やめ」

いつの間にか、たくし上げられていたシャツの中に成歩堂の手が侵入してくる。
拒もうにも体のどこにも力は入らない。

「みふるひは、御剣はおっぱい小さいけど女の人みたいに気持ちいい?」

小さく、普段意識したこともない小さな乳首を成歩堂の指が無理に摘まんではこねる。
銜えたまま言葉を話されて、再び背筋にぞくぞくと何かが駆け抜ける気がした。
ぷちゅぷちゅという、聞きなれない濡れた音とともに、吸い上げられ、もはや体の制御はきかない。
快楽を与えられるまま、無意識に腰が揺れていた。

「んぁ、はなし…て、っも、出ちゃ…ぁ」

聞こえているのか、いないのか、成歩堂はいっこうに行為をやめる気配はない。
むしろ、震える僕の姿に喜んだように彼の行為は激しさを増した。
排泄感に耐え切れず、僕の体は限界を超え、ついに大きく跳ねると、成歩堂の口の中にすべてを吐き出してしまったのだ。




=SIDE:N=
「っあ、あああ!」
「ぐっ…」

一際高い声をあげて、御剣の体が一瞬痙攣したかのようにビクビクと数回と跳ねて、次の瞬間、ぼくの口の中に何か苦くて温かいものが広がった。
ぼくは、てっきり御剣のおしっこだと思ったけれど、口の端からこぼれてきたのは、とろりと粘質状の液体だった。

口を開けて手のひらにデロっと吐き出せば、それはなんとなく白く濁った色をしている液体だった。
ぼくはそれが“セーエキ”だってことは本を読んで知っていたけど、御剣のそれを見るのはもちろん初めてだったので、その液体ですら愛しく感じた。

「ねえ、御剣見て。君のセーエキだよ。ちょっと苦いね」
「ふぁ…ぁ…」

いつの間にか夢中になるうち御剣の足を抱え込むようにしていたらしく、ぼくが上体を起こすと、彼の白い足が支えを失って力なく投げ出される。
フローリングの床にサラサラの髪が広がり、力なく肢体を投げ出す姿は本当にきれいだった。
快楽に染まった顔も、整わない荒い息遣いも、すべてが可愛い。
可愛くてきれいなぼくの御剣。

でも、抑えようのない熱がぼくの中心に渦巻いている。
そしてぼくはそれをおさめるにはどうすればよいのか、本を読んで知っているのだ。

「ねえ、御剣。今度は二人で気持ちよくなろうよ」

ただ、
ぼくはただ、御剣と同じ興奮を共有したかった。
御剣に気持ちよくなってもらいたかった。
御剣の可愛い顔をいっぱい見たかっただけだった。
おびえたような御剣の顔が、最高に可愛いと知ってしまったぼくの夏休み。

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