冥は目の前の男をできるだけ冷ややかに見下ろした。
手は頭上で縛り上げられ、シャツがはだけられた胸元だけでなく、
腹や頬までべっとりと体液に汚れている。
それは間違いない、陵辱の跡。
私が汚してやった。
そう思うだけで、冥の体はじわりと熱を蓄える。
散々罵り、なぶって、扱いてやった。
そのたびにこの7つ上の弟弟子は苦しげに呻いて、喘いだ。
声を上げまいと唇を噛み締め、体を強ばらせる様がどれだけ冥を煽ったことか。
快感を認めまいと耐える姿がどれほど冥を痺れさせたか。
あの狩魔のプライドに裏打ちされた綺麗な男。
いつだって冥の先を歩いていく、美しい男。
どれだけの憧憬を嫉妬を冥が感じていたかなどつゆも知らないのだろう。
「め、冥…もう止めてくれ…」
眉間に皺を寄せて弱々しく訴えられる。
「こちらを向きなさい、怜侍」
言われた通りに冥に向けられる顔。瞳には羞恥と苦痛、快楽が入り混じった艶がある。
「綺麗な顔ね、怜侍」
言うや否や、冥の手の甲が男の頬を打つ。
「ぐっ…!」
冥になぶられながらもその抵抗は口ばかりのものだ。
自由になる足で冥を蹴り飛ばすことも、冥が近づいた隙に噛みつくことだってできるだろう。
でも、そんなことはしない。この男は決して冥を傷つけはしない。
それが御剣怜侍の優しさであり、弱さだと理解すると冥の胸が高鳴った。
かつて愛用していた乗馬用の鞭で男の顎を持ち上げ、
右足の爪先で男の濡れた性器を軽く踏みつける。
すると男は冥を見て悲しげな、苦しそうな表情を浮かべた。
そう、まだ、そんな顔ができるのね。
左手にはグロテスクなディルド、冥は高らかに宣う。
「さぁ、犯してあげるわ」