実の我が子をこの手で快楽に導いた夜、床に入っても寝付けなかった。
膝の上から私を見つめる熱っぽい潤んだ瞳が、
眠りに就こうと閉じる私の瞼の裏にいつまでも焼き付いている。

息子の痴態を脳裏に浮かべながら熱の収まらない性器を自ら慰める日が来ようとは…
父として、一人の人間として、大きく間違ってしまったと
自責の念に駆られる一方、赤く染まる怜侍の白い肌を想った。


一睡もせず朝を迎え、気まずい思いで怜侍と顔を合わせた。
しかし、怜侍は晴れやかな、むしろいつもよりも明るい表情で私と接した。
久々に朝の食卓を共に囲むと、
怜侍は学校や友達の話などを普段よりも饒舌に語った。

小さな胸を痛めていた悩みが解消されたからか、もしくは
普段甘えることを許さなかった私との触れ合いの影響か…
そんな風に怜侍の笑顔を見ると、
私のしたこともあながち間違いではなかったのかと
そんな錯覚にさえ陥った。


仕事に出ても、気づくと上の空で業務が手に付かない。
やはり人の親としてあのような行為は許されるべきではない、
まして実の息子に性的に興奮するなどもってのほか…
そう思う一方で、昨夜の怜侍の息遣いや精一杯反応してくる小さな
性器が脳裏をちらつき、下半身が熱くなるのを必死で紛らわせた。

終日そういった調子で仕事が片付かず、ようやく切りをつけて
自宅に帰りついたのは深夜近かった。
もっとも普段から仕事で遅くなることが多い私のことだから、
一人で夕飯をとって翌日の支度を済ませ床に就く程度のことであれば、
怜侍にとってもごく日常的なことであった。


暗い廊下を足音を忍ばせて歩き、怜侍の部屋をそっと覗く。
どうやら自分のベッドで眠っているようだ。
安堵する思いで静かにドアを閉め、自分の書斎に入った。


仕事着から着替えていると、ノックが聞こえてハッとした。
「怜侍か?」
我ながら間の抜けた問いかけだと思った。家には私と怜侍しかいないのだから。
しかし扉の外からは生真面目に「はい」と答える息子の声が返ってきた。
「入りなさい」
私の返事を待って、パジャマ姿の怜侍が扉を開けて入って来た。

「お帰りなさい、お父さん」
「起こしてしまったようだな、すまなかった。
 明日も早いんだから早く寝なさい」
着替えを続けながら、いつも通りの厳格な父として言う。
しかし、怜侍は扉の前に立ったまま俯いたままでいる。そう、昨晩のように。


昨夜から何度も脳裏に浮かんでは打ち消してきた、
快楽に震える怜侍の肢体がフラッシュバックした。
抑えつけていた欲望が頭をもたげ始める。
そんな葛藤を知らないはずの怜侍は、やはり昨日のようにもじもじと
パジャマの裾を触りながら、遠慮がちに言い出した。

「お父さん、お願いが…あります」
「お願い?今夜は遅いから、明日聞いてあげよう」
「いまじゃなきゃ、だめなんです」
「……なぜだい」

ふと嫌な予感がかすめる。いや、むしろ微かな期待と言ったほうがいいか。
今の怜侍から醸し出される妙な雰囲気は、子供特有の無邪気なものではなかった。

「昨日の…。昨日のアレ、もう一度、…して」

そう言って私を見つめる熱っぽい目が潤む。

駄目だ、怜侍。
そんな目で私を見てはだめだ。


あえて目を合わせないようにして、なるべく突き放すような口調で言った。

「昨日、お父さんが教えてあげたから自分でできるだろう」
「でも…」

少し間をおいて、怜侍が言い放つ。

「お父さんに、もう一度して欲しいんです。
 もう一度だけだから…おねがい」

絞り出すような怜侍の声に、思わず顔を見やる。
懇願するような瞳。きゅっと噛み締めた唇。紅潮する頬。

ああ、怜侍、だめなんだ。
お父さんは…
お父さんは。


心臓を優しく締め付けられるような感覚に襲われ、気付いたら口走っていた。

「…終わったら、ちゃんと寝るんだぞ」

怜侍の表情がぱっと輝いた。

「うん!」

パタパタと駆け寄ってくる。
期待に満ちた目がきらきらと輝き私を見上げる。
怜侍の視線が痛くて目を伏せた。

私が昨日のように椅子に掛けると、
怜侍は自らズボンと下着を脱いで膝の上に乗って来た。
脱いだ服をきちんと畳む癖は私の教育の賜物だと、
こんな時なのに誇らしく思うのが我ながら可笑しかった。
しかし眩しいほど白くすべすべとした太腿を見ると、
息が詰まるほどの罪悪感に襲われた。

膝の上の怜侍の腕が私の服を掴む。
私の手が、小さな怜侍の性器に伸びる。
期待に満ちた怜侍の目が、その動きを追う。


この子は、どうしてこんなにも淫らで官能的なのだろう。
実の父親までをもこうして惑わせる、どうしようもないほど。
強い理性を以ってしても抗えない欲望を誘う。
将来この子は、どれほどの肉欲にまみれるのだろう。
そんなことをぼんやり思いながら、指で撫でさする。


やがて我が子の性器は私の刺激に応えるように起立するだろう。
小さな唇は薄く開き、熱い息を吐きながら私を呼ぶだろう。
淫らな喘ぎ声を洩らしながら細い体を痙攣させるだろう。
私の体にすがりつき、狂おしいほど悶えながら果てるだろう。
白い肌は紅潮し、色素の薄い瞳は熱っぽく潤んで私を見つめるだろう。


何かが私の中で弾けた気がした。


怜侍が悦んでいる。
それが全てではないか。
朝に見たあの明るい笑顔を怜侍にもたらすことができるなら、
人道的には忌むべきこの行為さえ私たち親子にはあるべき姿なのかもしれない。


それから、私たち親子の関係性は少し変わった。
今まで仕事ばかりであまり構ってやれなかった怜侍と共に過ごす時間が増えた。
もっとも、2人で入浴時に遊ぶのは水鉄砲でも潜りっこでもなかったが。

湯船に漬かれば怜侍の体を抱き寄せる。
小さな乳首をまさぐってやると、すぐにあどけない声で喘ぎだした。

「ん……ふ…っ…はぁ…」
「怜侍、だんだん敏感になってきたかな」
「そう…かな…、んぁっ…」

さらに手を下に伸ばすと、幼い性器が精いっぱい膨張している。
指で弄りながら、怜侍の首筋に舌を這わせた。
耳の後ろ、耳たぶ、耳の穴、順に舐めあげると細い体を震わせた。

「あっ…ふ」
「耳も気持ちいいか?」
「うん…きもちい…」

バスタブの淵をぎゅっと握る小さい手。
快感が高まるほどにその手に力が入っていく。

「おと、さ、あぁっ…だめぇ…!」

はぁはぁと息を乱しながら訴えてくる。

「ん?やめるか?」
「だめぇ…も、もっと……おとう、さん…」
「…。こっちも、良くしてあげよう」

足を怜侍の体の下に滑り込ませると、お湯の浮力でふわりと浮きあがった。
性器を扱く反対の手で、怜侍の小さいアナルを撫でた。
ゆっくりと何度も繰り返しほぐすうち、ほんの少しだが緩くなった。
指がぎりぎり1本入るようになったそこへ、ゆっくりと刺し入れる。


「んー!んんっ!」

怜侍が苦しそうに呻く。

「痛いか?」
「ちょっと…痛い…」
「そうか、まだ早かったかな」

抜こうとすると、怜侍が強く首を振った。

「抜いちゃいやだ」
「ん?」
「もっと…」

私を見上げる熱っぽい目。
また、この目だ。
この目が、この表情が、私を狂わせる。
誰に教わるでもなく、いつこんな淫らな表情を覚えた?
この先、誰にその顔を見せるんだ?
やるせない思いが指先に込められる。

「んあっ!」

私の首に腕をまわしてしがみついてくる怜侍。
小さな手が私の髪を掴む。

「あっ、ん、っ…あ」

時折ピク、ピクと痙攣する。
小さな穴はいつの間にか私の人指し指をすっぽり1本咥えこんでいた。
指先で肉壁を擦ると、それに合わせて怜侍が鳴いた。

「んあ、おと、さ、い、イくぅ…っ!あああ!」

声をあげた怜侍がのけ反って強く痙攣した。
咥えこんでいる私の指を強く締め付ける。
ビクビクとひとしきり痙攣した後、今度はだらりと脱力した。
はあはあと肩で息をする我が子の細い体を抱きとめる。

「おと…うさ…」
「気持ちよかったか?」
「うん、すっごく…」
「そうか、よかったな。」

甘えるように、腕をからませてくる怜侍。
私たちは、これでいいのだ。
自分に言い聞かせるように心で呟くと、濡れた怜侍の髪を撫でた。

「おとうさん、大好き」
「お父さんも怜侍が大好きだよ」

かつてない濃密な親子の時間。
正しい道ではないだろう。
ただ、我が子への想いがかつてないほど私の心を満たしていた。

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