台風の影響で、宿泊中のホテルが停電に見舞われた。
裁判の資料に目を通したいと思っていたのだが当然それもできず、
他にやる事もないのでせっかくだからとベッドで仮眠を取った。

1時間ほどして目を覚まし、ライトのスイッチを点けてみたが反応はない。
それどころか、窓の外を見下ろして呆然とした。
本来であれば夜中までこうこうと灯っているはずの街の灯りが、
どこを見回してもついていないのだ。
辺り一面広がる、闇。

どういうことだ。混乱と動揺が襲う。情報が欲しい。
―ニュースは…テレビなどつくはずがない。
―電話…これもダメだろうか。
―電話…?そうだ、携帯電話を持っているではないか。

暗闇の中、手探りで鞄を見つけだした。指先の感覚を頼りに中を探る。
冷たくて固いものに手が触れ、手の平全体で確かめる。これだ。
鞄から取り出し、電源を入れてみる。
液晶にともる明かりが、少し安心をもたらしてくれた。

リダイヤルボタンに続けて通話ボタンを押す。
電話機を耳にあてて呼び出し音を聞く。
5回…10回…なかなか応答がない。いらいらしつつ、一旦切ろうかとした瞬間だった。

「・・・・・・・・・もしもし」
「私だ、御剣だ。寝ていたのか?糸鋸刑事」
「ふぁ…み、みつるぎ検事ッスかぁ…オハヨ…お疲れ様ッス。寝てないッスよ」

明らかな嘘をつく刑事の言葉を無視し、続ける。

「今バンドーホテルに宿泊しているのだが」
「御苦労さまッス」
「長時間の停電に見舞われている」
「そうなんスよ。自分のアパートも停電ッス。やる事なくて寝てたッス。」
「被害は広域なのか」
「そうみたいッス。電車とかも止まってるらしいッスよ」
「こんな時に申し訳ないが、刑事に頼みがある」
「何ッスか!御剣検事の頼みならなんでも聞くッス!あ…カネ以外の件なら、って事ッスけど」
「誰も刑事に金を無心したりはしない。こちらまで来て欲しいのだ」
「ホテルまで…ッスか?」
「そうだ。311号室に宿泊している。部屋まで来て欲しい」

まさか、不安だから一緒にいて欲しいとは言えなかった。
あくまでも毅然とした上司として、検事・御剣怜侍として言ったつもりだった。

「御剣検事の頼みなら行きたいのは山々ッスけど……電車止まってるッス…」

私は急に恥ずかしくなった。
子供のように暗闇を怖がって、不安だからといって上司の権力を利用して
部下に頼ろうとしている自分の卑劣さと弱さが、恥ずかしかったのだ。

しかし、それを素直に態度に出せるような性格ではなかった。

「何だ、その煮え切らない態度は。できないならできないとハッキリ言いたまえ。
 もういい、刑事には頼まん」

そう言い放つと刑事の返事も待たずに通話を切った。
携帯の液晶にともる、通話終了の表示を見つめてしばらく自己嫌悪に陥った。

それから、携帯の電源を切ると私はカーテンを閉めベッドに腰掛けた。
どうせ、カーテンを開けていたところでちっとも明るくはないのだ。
台風の影響で外はひどい天気だ。強風で建物全体がガタガタと音を立てる。
雨が窓を打ち付けバタバタとうるさい。
復旧はいつになるのだろう。

気付けば膝を抱えていた。暗闇が不安を加速させる。
室内のこもった空気が、私に酸素の濃さを意識させる。
これは地震ではない。ここもエレベータではない。
そう自分に言い聞かせるが、理屈ではない不安感や恐怖感が徐々に私の精神を蝕んでゆく。

どれくらいそうしていただろうか。
何か気を紛らわせようと思っても、やることなどない。
他の事を考えようとすればするほど、思考は恐怖心をつのらせる。
脈が早まり呼吸が浅くなってくる。手足は冷たいのに全身が汗ばんでくる。
徐々に良くない方へ向かおうとする心と体を何とか引きとめようとするが、
どうすればいいのかも分からない。

まずい、このままではまずい。早く復旧してくれ。
乾いた唇の隙間からからひゅう、ひゅうと空気が漏れる。

その時だった。

ドンドン!という激しい音がして、不意の事に心臓が跳ねた。
入口の扉からだ。ベッドから立ち上がり、ドアの方へ向かった。
息がしづらい。足がもつれる。壁につかまりながらヨロヨロと扉へ近づき、
覗き穴から覗き見た。

「刑事…」

私は目を疑った。
覗き穴の向こう、魚眼レンズで歪められた空間に見慣れたヒゲ面。
震える指先で内鍵を外し、勢いよくドアを開けた。

「刑事!なぜ、ここに」
「なぜって、呼ばれたから来たッスよ!」
「でも…電車がどうとか、言っていただろう」
「電車が止まっていたから走って来たッスよ!」

誇らしげに笑う刑事の様子をよく見れば、一応ビニールの合羽を着てはいるが、
頭の上から靴の先までずぶ濡れで全身からぽたぽたと水が滴っていた。
また、はあはあと暑苦しく荒い息をしながら肩を上下させている。


「なぜ…こんなひどい天気の中…そこまでして…」

私のわがままを聞いてくれるのだ、と聞きたかったが言葉にならなかった。
刑事は眉を上げて一層誇らしげな表情になると、強い語調で言った。

「御剣検事に呼び出されたら例え火の中水の中ッス!どこへでも参上するッス!」
「刑事……」

気がつけば私は刑事の胸に飛び込んでいた。

「う、うわっ!!御剣検事、ちょっと、どうしたッスか!服が濡れちゃうッスよ!」

刑事の体から滴る雨水が私の顔や服をどうしようもなく濡らしたが、気にならなかった。
広い背中に腕を回す。雨は冷たいはずなのに、刑事の体は熱い。
本当に家から走ってきたのだろう。

「だ、だめッス検事、濡れちゃうッス、自分びしょびしょッスよ!?」
「いいのだ…」
「と、とりあえず中に…誰か通ったら見られちゃうッス」

ドアを開けたままの行為だった事に気づき、私はようやく刑事から離れた。
刑事の顔を見上げると、喜んでいるような困っているような複雑そうな表情だった。

部屋に刑事を招き入れ、ドアを閉めた。
廊下は非常灯がともっていたせいでやや明るかったが、室内は完全な暗闇だった。
刑事の気配だけが私の傍に感じられる。

「ホントに真っ暗ッスねー。検事こんな所に一人で寂しかったッスね?」
「そ、そんな事はない!」

慌てて否定する私。さすがに嘘っぽかっただろうか。

「こんな時まで仕事なんて、検事はさすがッスねー。」

まったく、どこまでお人よしなのだ。そんな事だからいつまで経っても成果が上がらないのだ。
そんないつもの小言が脳裏をよぎるが、今日ばかりは刑事のそんな人柄が温かかった。

「とりあえず…そんなズブ濡れでは風邪を引く。シャワー…を浴びるのは無理か。
 せめて体くらい拭かなければな。ちょっと待っていろ、タオルを用意する」
「平気ッス!おかまいなくッス!丈夫さだけが取り柄ッス!」
「いや、そんなズブ濡れのままで部屋をうろつかれてはこちらも困るのだ」
「そうッスよね…」

私は手探りでシャワールームへ向かった。



シャワールームの中で記憶を頼りにタオルを探す。
確かこの辺りに掛けてあったはず、と手を伸ばしたその時。
何かに足元を取られて、私は派手な音を立ててその場に倒れ込んだ。
音を聞きつけた刑事が慌てて声を張り上げる。

「御剣検事!だ、大丈夫ッスか!今行くッスうわあああ!!」

部屋からどたばたとやかましい物音がする。
私はといえば冷たい床に激しく膝と手の平を打ち付けてしまい、その場に座り込んだ。
開けっぱなしのドアから刑事が入って来る気配と声がする。

「イテテテテ…、け、検事大丈夫ッスか!?」
「キサマこそどうしたのだ」
「いや、慌てて動いたら椅子か何かにぶつかって一緒にすっ転んだッス」
「慌て者め、落ちつけ」
「検事はどうしたッスか」
「何かに足を取られてバランスを崩しただけだ」
「大丈夫ッスか、手を貸すッス」

すぐそばに刑事の気配と匂いが近付いてくる。
私は素直に手を伸ばす。闇の中、手と手が触れ合う。刑事の大きな手が私の手を包み込む。

「うわ!!御剣検事の手すごく冷たいッス!氷のようッス!!」
「うるさい、声が大きいぞ」
「だってキンキンに冷えてるッスよ…寒かったんッスね、かわいそうッス…」

刑事の両手が私の手をすっぽりと包み込む。
暖かさに、私の心まで溶かされて行く。

「…刑事の手は、大きいな」

ぽつりとつぶやいた。
次の瞬間、私は体ごと刑事の腕の中に包まれていた。
一瞬何が起きたか分からなかったが、刑事の胸に押し付けられる顔、
抱きすくめられている事に気がついた。

「け、刑事」
「手だけじゃないッス!体も、腕も、御剣検事を守れるくらいには大きいッス!」


〜1時間前 メゾン・ド・あした〜

起きぬけの耳に響く、聞きなれた声。
寝ぼけた自分の頭でも、その声が頼りなく弱々しいものである事が分かった。
言葉づかいは普段通りだが、その口調から声の主の心細さが伝わってきた。

寝袋から飛び出して、脱ぎっぱなしで散らかしてある服を掴み取ると急いで身に付ける。
電車は止まっている。タクシー…はダメだ。ゆうべの時点で弁当を買う金すらなかったのだ。
糸鋸は部屋の中をひっかきまわしてようやくボロボロの雨合羽を見つけ出した。

アパートを飛び出すと、横殴りの雨が糸鋸の体を容赦なく打ち付ける。
糸鋸のような大柄な体躯でも歩くのがやっと、というほどの強い風。

「御剣検事…今行くッスよ!!」

刑事はホテルの方へ足を向けると、精一杯走り出した。

ほうほうのていでホテルへたどり着いた糸鋸を迎え入れた御剣の顔には、
驚きと安堵と喜びの表情が浮かんでいた。
糸鋸の来訪に緊張の糸が切れたのか、ズブ濡れの胸に飛び込んでくる。

う、嬉しいッスけど…ちょっと恥ずかしいッス!人の目も気になるッス!

御剣は糸鋸を部屋へ迎え入れた。
自分の手の平も見えないほどの、本当の闇が広がっている。
エレベータと地震恐怖症の御剣。
ホテルの部屋に閉じ込められて、長時間暗闇に包まれていたらいったいどうなるだろう。
この暗闇の中に一人、恐怖や不安と闘う御剣が思い浮かぶ。

これは御剣検事には、ちょっとしんどいかもしれないッスね。

あくまでも強がろうとする御剣のプライドを傷付けないよう、
またいたずらに不安感や恐怖心をあおらないよう、糸鋸は素知らぬ振りをした。

御剣がズブ濡れの糸鋸を気遣って、タオルを用意してくれるという。
暗闇の中手探りでシャワールームへ向かう御剣。
しばらくするとシャワールームの中から激しい物音が鳴り響いた。

「御剣検事!だ、大丈夫ッスか!」

慌ててシャワールームの方へ向かおうとするも、足元にあった椅子に思い切り
体当たりをしてしまい椅子もろとも倒れこんでしまう。
それでもなお椅子を脇にどかすとシャワールームへ急いだ。
手の感触を頼りに壁をつたってドアの位置を探り当て、中へ入る。

中も当然暗闇で何も見えない。声をかけると、少し下の位置から御剣の声がした。
どうやら座り込んでいるようだ。足を取られてバランスを崩したという御剣に、
手を差し伸べる。お互い、勘を頼りに闇の中を探り合う。
ようやく御剣の手を探し当てその手に触れた時、糸鋸はその冷たさに驚かされた。

「うわ!!御剣検事の手すごく冷たいッス!氷のようッス!!」

御剣の手を両手ですっぽりと包みこんだ。
努めて冷静に振る舞おうとする御剣の声がかすかに震えている。
雨の中道端に捨てられた子犬のようだ、と糸鋸は思った。

「…刑事の手は、大きいな」

誰に言うでもなく独り言のようにぽつりと呟いた御剣の言葉。
気付いたら糸鋸は、御剣の体を力いっぱい抱きすくめていた。
本当は誰よりも繊細で弱くて、寂しくて、怯えている。
なのにそれを悟られまいと虚勢を張って強がって、冷静さと理論で武装して自分を守っている。
それが時に痛々しくて、か弱げで、切なくて、糸鋸の胸をぎゅっと締め付ける。

腕の中の御剣はなんだかいつもよりもずいぶん小さく感じられた。
力いっぱい抱きすくめると、御剣の手がおずおずと糸鋸の背中に回される。

「こうしてると、あったかくなるッスよ…
 御剣検事が寒くなくなるまで、自分こうしてるッス」
「バカ者…刑事も私も、びしょびしょではないか」
「あれっ」

ズブ濡れのまま御剣を抱きしめていたせいで、御剣のシャツもぐっしょりと濡れてしまった。

「これじゃ2人とも風邪引いちゃうッスね、アハハ。自分はホントいつもダメッスね」

頭をぽりぽり掻きながら御剣の体を手放した。
しかし御剣はいつもの小言やお説教ではなく、フッと穏やかな笑い声を洩らす。

「そのあたりにタオルがあるはずだから、体を拭きたまえ。
 それから…備え付けのルームウェアで良かったらそれを貸す。着替えたまえ」
「備え付けの…って、それは御剣検事が着る分じゃないッスか。
 自分が着ちゃったら検事の着替えがなくなっちゃうッス。」
「先ほども言ったようにその格好で室内をうろつかれては、
 部屋中びしょ濡れになってしまうのでな。私は替えのシャツがあるから、それでいい」

かくして糸鋸は、御剣が着る予定だったルームウェアを借りて着替えた。

「これちょっと小さいッスね。足がスースーするッス」

バスルームを出た糸鋸は暗闇に向かって呟いた。
大柄な糸鋸には用意されたルームウェアは小さく、手足がかなり余分にはみ出ていた。

「どうせ見えないのだから、我慢しろ」

闇の中から御剣の声がする。

「見えなくてよかったッス。ちょっと恥ずかしいッス。」



暗闇の中、お互いどこにいるのかも見えないまま2人はしばらく会話した。
しかし次第に会話も尽きてしまい、無言の時間が長くなる。
時計もろくに見えないため、どれくらい時間が経ったのか分からない。
充電切れを懸念してオフにしたままの携帯電話に電源を入れて、御剣は時間を確かめた。

「9時半か…。少し早いが、やる事もないし…休むとするか」
「あ、お休みになるッスか。それじゃあ自分は…」

糸鋸が立ち上がる気配がした。御剣は意外そうに声をあげる。

「どこへ行くのだ」
「え、おいとまするッスよ。さすがに、泊まるわけにいかないッスから」

糸鋸は冗談のように言って笑ったが、御剣の笑い声は聞こえなかった。

「電車もないのに、また走って帰るのか」
「さすがに今度は歩いて帰るッス」
「しかし、外はかなりの暴風雨だ。さすがの刑事でも危ないぞ。
 呼びつけたのは私だ、帰れとは言わん。泊まって行くといい」
「ええっ!で、でも…」
「遠慮するな。朝になれば暴風域からも抜けるだろう。」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えるッス…あ、でも自分は床で寝るッスからご安心を!」
「何を言っている、さすがの刑事でも風邪を引くぞ」

糸鋸は躊躇した。
御剣が一人で宿泊するはずだった部屋は当然のようにシングルベッドだ。
それなりに広いとはいえシングルは所詮シングル。
大の男二人が寄り添って寝るのに十分な広さとは言えない。

自分、朝まで理性を保てるか不安ッス…。
………いや、男・糸鋸圭介!やるしかないッス!!

「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうッス!」
「うム。」

先ほどより強くなった風雨が窓の外で激しく音を立てている。

ベッドの中の糸鋸は体を硬直させ、ギンと見開いた目で暗闇をずっと見つめていた。
いや、むしろ睨んでいたと言ってもいいかもしれない。
睨みつけているのは自分自身の邪な欲望だ。

一つのフトンで御剣検事が寝てるッス…間違いを犯しちゃいけないッス…!!

しかし、そんな糸鋸の葛藤を知ってか知らずか、御剣がじわじわと糸鋸の方へ寄って来る。
糸鋸は指先一本動かせずにいる。少しでも身動きして御剣に触れてしまったら、
必死に踏みとどまっている自分の理性が決壊してしまう気がしたからだ。
一方の御剣はすうすうと規則的な呼吸を繰り返していた。

ん、と御剣が少し呻いて、もそもそと寝がえりをうった。
それが糸鋸の方へ寝がえりをうったものだから、ぴったりと寄り添うような形になる。

う、ウホォッッッス!!!

糸鋸の心臓が跳ねる。
御剣はと言えば糸鋸の傍が落ち着くのだろう、安心したように穏やかな寝息を立てている。

このままじゃ自分の理性もガマンの限界ッス…ちょっと失礼するッス…

御剣の体を自分から少し離そうと、寄り添って来る肩に手を掛けた。
そして糸鋸は思わず息を飲んだ。

み…御剣検事…こ、これは…は・はは、裸……ッスか?

手の平に触れた肩の感触は明らかに素肌のものだった。
心臓が暴走する。脳内に裸の御剣を思い描く。
今、同じベッドで眠っている御剣は、服を着ていない。
糸鋸の精一杯の理性が、ついに決壊した。

逞しい腕で御剣の体を引きよせ、胸に抱いた。
手の平で背中を撫でさする。確かに素肌の感覚だ。
どうして何も着ていないのだろう、などと頭の片隅で考える。
しかし胸の中の御剣の体温と感触が糸鋸の思考をストップさせる。

「…ん」

御剣が声を漏らした。
最初は何が起きているのか把握していなかったようだが徐々に覚醒したらしく、
驚いた様子で声を発した。

「け、刑事…な、何をしているッ」
「検事こそ、なんで何にも着てないんッスか!」

ハァハァと、興奮した犬のような息を吐く糸鋸。

「着るものがないからではないか!」
「さ、さっきシャツがあるって…」
「シャツなど着たまま眠ってしまったら、シワになるだろう!」
「ま、まさか…下も!?」

糸鋸は背中に回した手を下方に這わせた。

「こ、これは下着ッスか!今、パンツ一丁なんッスね!!」
「ズボンもシワになるだろう!というか触るなッ!離せッ」
「もうダメッス!自分止まらないッス!御剣検事が悪いんッスよ!」

自分は帰ると言ったのに、泊まるよう引きとめた御剣が。
床で寝ると言ったのに、一緒のベッドで寝るよう言った御剣が。
シャツを着ていると言ったのに、何も着ていない御剣が。
一度溢れだした欲望は関を切ったように溢れだし、もはや止める術もない。

御剣の体をベッドの上に押し倒すと、その上に覆いかぶさった。
やめろ、とかどけ、とか言いながら御剣が押し返そうとしてくるが
その力は到底糸鋸の大柄な体躯に敵うものではない。

糸鋸は御剣の両手を抑え付け、肉厚な舌で御剣を舐め回した。
首筋、鎖骨、脇の下、乳首。時々軽く歯を立てる。
呻きながら時々苦しげな息を吐く御剣だったが、
糸鋸の舌が乳首を執拗に攻める頃には甘い吐息に変わっていた。
それに呼応して、抵抗する体の力が徐々に弱まって行く。

御剣から微かに甘い声が漏れ始めたころ、糸鋸は自分の腿で御剣の股間を押し上げてみる。
股間のものは下着を持ち上げて硬く上向いていた。
そのまま膝を使って股間を擦りあげる。
先走り液が零れているのだろう、下着の濡れた感覚が糸鋸の皮膚に伝わる。
御剣の体がいやらしい反応を示している事で、いやがおうにも興奮が高まる。

「け、検事のココ…勃っちゃってるッスよ…気持ちいいッスか…」
「そ、そんなわけ…ない…だろう…ッん」
「パンツ濡らして何言ってるッスか…コッチの方は正直ッスよ…」

脚で勃起を擦りあげられ、御剣は嬌声を上げた。
糸鋸の無骨な手が下着の中に潜り込んでゆく。
御剣の性器は既にはち切れそうなほど勃起していたが、それは糸鋸も同じだった。
糸鋸は御剣の下着を手でずり下ろすと、膝から下は足の指を器用に使って引き抜いた。
生まれたままの姿になった御剣を前に、自身もルームウェアと下着を一気に脱ぎ去る。

「検事、一緒に気持ち良くなるッス…!」

糸鋸は勃起した自らのペニスを反り返る御剣のペニスと重ね合わせて、
密着するように握り締めた。零れ出たお互いの体液でぬるぬると動く。
手で支えたまま糸鋸が激しく腰を揺すり始めた。ペニス同士が擦れ合い、
激しい快感が同時に襲う。

「んあ、やめっ、あぁっ」

御剣が首を振って悶える。糸鋸は荒く呼吸しながら激しく腰を振り続ける。

「検事の、ハァ、おちんぽ、ハッ、き、気持ちいいッス!」
「あっ、ぁん、ん、はぁん、やぁ」

立ちのぼる汗の匂い、ぬちょぬちょと粘液が絡み合う音、交わる二つの熱い息。
御剣が握り締めたシーツをさらに強く引き寄せる。

「はあっ、だめ、い、イく、で、出るッ…!」
「いいッスよ検事…イッてくださいッス…!」

ぶるぶると御剣が震えた。

「はっ…ん…あぁっ…はぁぁぁん!!」

糸鋸の手の中に、熱いものが溢れだした。

御剣の精液によって滑りがより良くなる。
糸鋸もまた絶頂を間近に迎えて、さらに揺さぶりを強くする。

「ハッ、自分も、イきそうッス…い、イくッス…ッ…検事…!!」

欲望は御剣の性器と腹にぶちまけられる。

糸鋸は落ち着かぬ呼吸を整えながら、脱力する体を御剣の上に伏せた。
胸の下ではやはり同じように荒い息をしている御剣がいる。
射精による快感、御剣に対する罪悪感、乱れる御剣の痴態を知る事が出来た満足感、
複雑な感情が胸を去来して御剣を抱く腕に力を込める。

「検事…自分…その…すんませんッス…」

急に理性が戻って来て、御剣を抱いたままつい謝ってしまう。
御剣が弱々しくだが、糸鋸の背中にそっと腕を回した。

「謝るな…バカ者」

風雨は、いくらか弱まって来ていた。

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