あれは僕たちが9歳だったころの夏休み。
御剣が、初めて僕のうちに泊まりに来た時の事。

僕たち子供にとって、友達の家にお泊まりというのは一大イベントだった。
一緒にご飯食べて、夜通し喋って親に怒られたりなんかして。
特に用事や目的もなく、そんな風にして泊まり合いっこする事が流行った時期があったんだ。

御剣と仲良くなってから初めての夏休み。
僕と御剣は初めてのお泊まり会をすることになった。
御剣はちょっとお坊っちゃんぽかったから、そんな事嫌がるかなって思ったけど。
どうしても御剣ともっと仲良くなりたかった僕は、思い切って誘ってみたんだ。
そうしたら御剣は意外にも喜んでくれた。
言葉では表さなかったけどちょっと赤い顔して、「そういうのも、たまにはいいな」
なんて言ってもじもじしてた。
今思えば、御剣にとっても友達の家に泊まるなんて初めての事だったんだろう。

御剣が泊まりに来ると決まってからは、そわそわして落ち着かなかった。
カレンダーを睨みながら、約束の日を指折り数えてた。
当日は約束の時間より1時間も前から家の前で御剣を待ってた。
親に「まだ来ないわよ」なんて言われて笑われたっけ。
御剣を乗せた車が家の前に着いた時、僕たちは笑ってお互いの顔を見合ったんだ。
御剣のお父さんが、僕の両親に挨拶して帰って行った。
休みの日なのにちゃんとワイシャツを着てて、ちゃんとしてるなあって思った。

それから僕らは夕方まで遊びまわった。
家の近所を得意げに案内して回った。あちこち連れ回す僕に、御剣も楽しそうについて来た。
“君はいつもこういったところで遊んでいるんだな”なんて言って嬉しそうだった。
御剣が笑ってて、僕も嬉しかった。

日が暮れる頃、家に帰って僕の家族と一緒に夕食をとった。
「うちはいつも2人だから、成歩堂のうちは賑やかで羨ましい」
御剣の言葉に、僕はちょっと切なくなった。
いつでも泊まりに来ていいから!毎日でもいいから!って言ったら、御剣が笑った。

夕飯のあとは僕の部屋でゲームをした。
御剣はゲーム機を持ってないって言ってた。
初めて遊ぶゲームに、御剣は大興奮だった。
あんまり夢中になってたから、すっかり夜更かししちゃってた。
いい加減にお風呂に入って寝なさいって、2人して怒られたんだ。

一日中遊びまわって、ゲームで興奮して、2人とも汗でベタベタだった。
僕のうちのお風呂はそんなに広くなかったけど、僕たちは一緒に入ることにした。
友達と一緒にお風呂に入るのも、僕らにとってはイベントだった。

裸になって、お風呂に入って、僕らはまた遊んだ。
水をかけっこしたり、もぐりっこ競争したり。
僕も御剣も、ずっと笑ってた。楽しくて仕方がなかった。

「あまり長風呂をするとのぼせてしまうな。そろそろ体を洗おう」

御剣が言ったから、僕らは洗い場で石鹸を泡立てた。
でも一日中一緒にいてずっと遊んで、僕はすっかり気分が高ぶっていた。
ちょっとしたことでもすぐにふざけて、遊びにしてしまいたかったんだ。
僕は石鹸をたっぷり泡立てて、自分の体にまんべんなく塗りたくった。


「見て!見て!御剣!」

全身泡だらけになった自分を御剣に見せると、御剣は爆笑した。
それから僕らは必死になって洗面器から溢れ出るほどいっぱい泡を作って、
お互いの体に塗りっこをした。首から下が真っ白になるほど全身泡まみれにした。
そんな事が楽しくて面白くてしかたなくて、僕らはずっと笑っていた。

「こうしてやる!」

僕は泡まみれになった御剣の、脇腹をくすぐった。
泡で全身ぬるぬるしてるから、きっといつもよりくすぐりが効くと思ったんだ。
思った通りに御剣は、すごくくすぐったがって笑い転げた。

「あはは、やめ、く、くすぐったい、あはは」

身をよじって逃げようとする御剣を僕は執拗に追いかけてくすぐった。
御剣の笑い声が、だんだん泣き声みたいになった。
あまりにもくすぐったがるものだから、御剣はとうとう仰向けになってしまった。
僕はここぞとばかりに御剣に跨った。

「逃がさないぞ御剣!」

さらに御剣をくすぐろうとした、その時だった。
お互いに泡まみれなものだから、僕の体は御剣の上でつるんと滑ってしまった。

「うわあ!」
「あは、あはは……。どうした?」
「いや、すっごく滑るんだよ!これ、面白いよ御剣!」

僕はまた面白い遊びを発見してしまった。
御剣の上でつるつると滑る体。
僕は御剣に跨ったまま床に手をついて、御剣に腰を押しつけた。
僕が少し動くと、御剣の上をつるんつるんと滑る体。

「あはは!すっごいよ御剣!つるつるだ!」
「泡だらけだからだよ、成歩堂」

僕らはまた笑い合った。些細なことがおかしくて仕方なかった。

そんな時、御剣の顔からふっと笑顔が消えたんだ。

眉をきゅっとひそめて、僕が初めて見る顔をした御剣。
どうしたのかなって一瞬思った。
けど、次の瞬間そのわけが分かった。

きっと、僕も同じ顔をしていたから。
今思えばあれは、御剣が初めて僕に見せた“切ない顔”だったんだ。

御剣に腰を擦りつけているうち、いつの間にか僕たちはお互いのちんちんが擦れ合っていた。
始めのくすぐったい感じがいつの間にか、もっと違う感覚になっていた。
そわそわ、もぞもぞする変な感じ。初めて味わう感触。
御剣はあからさまに動揺していた。

「な、なるほど、やめようよ…」


でも、僕はやめなかった。
やめられなかった。
擦るたびに、じんじんとした感覚が下半身を痺れさせる。
僕にとっても御剣にとっても、よくない事をしてる気がしていた。なんとなく。

「ねえ、なるほど、やめろってば」

御剣の頬が少し赤くなっていた。きっと僕もそうなんだろうと思った。
僕は御剣の制止も聞かず、一心に腰を振り続けた。
泡で滑ってぬるぬると擦れ合う2人のちいさな性器。
御剣の顔を見れば、きっと僕と同じように初めての感覚に襲われている事が容易に想像できた。

「やだ、やめて…」

御剣の目が涙でにじんでくる。
でも、2人の息がだんだんと乱れ始めた。走った後みたいに、はぁはぁと。
おちんちんが、じんじんしている。おしっこをがまんしている時のような感覚に近い。

でもそれよりも、ずっと気持ちいい。

「ッ…ふ…な、なる…ほど…やだッ…てば…ッ!」

仰向けのまま、御剣の両手が僕の体を押し返した。
泡で滑るから、僕の体はいとも簡単に後ろ向けに倒れた。
尻もちをついた僕を見て、御剣が謝る。

「あ…ご、ごめん成歩堂」

でも僕は全然痛くなかった。

「…平気だよ…それより、御剣…」

僕は自分の股間を見下ろした。
泡だらけのちんちんをおそるおそる触ってみると、いつものちんちんとは違うみたいだった。
硬くなってて、指で触っただけでぞくっとする感覚が走った。

「これって…ぼっき?」

どこかで聞いた覚えのある言葉が思い浮かび、口にしてみた。
御剣も自分の股間をみつめて、真っ赤な顔をしていた。

「そう…なのだろうか…」

僕は、さっきの変な感覚をもう一度味わいたかった。
御剣と二人で。

「御剣、ぼくのちんちん触ってみて」
「ええっ」
「触ってよ、僕御剣のちんちん触るから」
「いやだっ」

恥ずかしがる御剣の脚を開かせて無理やりに触った。
御剣のちんちんも、僕のと同じように硬くなっていた。
僕が触ると「んんっ」という声を出した。


「ほら、僕のも」

御剣の手を引っ張って来て、自分の股間を触らせた。
御剣の指が僕の硬くなったちんちんに触れて、僕はビクンと体を震わせた。

「ねえ御剣…何か…きもちいいね」

僕の言葉に御剣は答えなかったけど、きっと同じだったと思う。

「ねえ御剣、もっとしようよ」
「や、やだ…」

赤くなった御剣はそう言ったけど、もう拒んでなかった。
具体的にどんな事をすればいいのかよく分からずに、僕たちは向かい合って座った。
腰を浮かせて、股間が密着するようにお互いの腰を抱き合った。
泡まみれのちんちんが密着して、僕はぞくぞくとした。

「動くよ」
「う…うん」

僕は御剣のちんちんと僕のちんちんが擦れ合うようにして、腰を動かした。
そのとたん、下半身全体がむずむずとするような感覚に襲われた。
それはきっと、御剣も一緒だった。だって御剣が、今までに聞いたことのない声を出したんだ。

「あぁっ…ん」
「御剣…きもちいいね」
「ん…うん…」
「御剣も動いて」
「ん…」

御剣の顔は赤くなっていて、目が潤んでいた。
僕も御剣も、はあはあしていた。

「ん、あぅ、はん」

懸命に腰を振る御剣を見てあの時僕は初めて、御剣っていやらしいと思った。
いつものイメージとはかけ離れた御剣がいた。
口を半開きにしてなんだか甘い声を出す御剣を前に、僕はどきどきが止まらなかった。

僕は気付いたら御剣にキスをしていたんだ。

「な、なにを…ッ」
「はぁ、わ、わかんない」

僕は御剣に抱きついて夢中でキスをした。御剣も、僕のキスに応えてくれた。
夢中でキスを交わしながら僕は御剣のちんちんを握ってしごいていた。
御剣もまた、僕のちんちんをしごいていた。

「な、なるほど、やめて」
「ん、な…んで…」
「なんか、なんか、出…そ……っ、ぁん」
「いいよもう、出しちゃえ」
「やだ…や、やめ…てッ…ぁ」

御剣の体がびくんってした。


あの時の御剣の顔を、僕は今でも覚えている。
あの表情を思い出せば僕の股間はいつだって熱くなる。

「あっ…ふ……あっあぁ…あああん!」

ビクンビクンと痙攣しながらも、御剣は僕の体にぎゅっとしがみついた。
同時に、僕の手が急に熱くなった。
正確に言えば、熱いものが急にかかったんだ。

泡まみれの白い手に、明らかに違う質感の白いものが混じっていた。
何だか糸を引くくらいの、ねばねばした液体だった。

僕の体にしがみついた御剣が、まだはあはあ言っていた。
僕は心臓のどきどきが止まらなかった。
御剣と一緒に、とてもイケナイ事をしてしまったと思った。
同時に、御剣の肌と密着してる事にたまらなく興奮した。
いつもと違う御剣の表情が、目に焼き付いた。

御剣にしがみつかれながらも、僕は今度は自分の手でちんちんをしごいてみた。
すぐに体がビクンと痙攣して、僕もまた白いねばねばしたものが出た。

僕たちは放心して、泡を洗い流すとそそくさとお風呂から上がった。
2人があんまりにも長風呂だったから、両親はとっくに眠っていた。

パジャマを着て、僕の部屋で並んで布団に入った。
僕は風呂場での出来事が頭から離れなくてずっとドキドキして、電気を消してもずっと眠れなかった。
暗闇の中で、そっと御剣に声をかけてみたんだ。

「…御剣、もう寝た?」

御剣は答えなかったけど、起きてるのはすぐに分かった。

「ねえ御剣…さっきの、“しゃせい”っていうんだよね?」
「…しらない」

ちょっと怒ったように言うのは、御剣が恥ずかしがってる時のクセだって知ってた。

「ねえ、御剣。さっきの気持ちよかったよね?」
「よくない」
「うそばっかり。ねえ、もう一回…しない?」
「いやだ!」

僕は御剣の布団にもぐりこんでパジャマの上からちんちんを触った。
そうしたら…御剣のちんちんは、すでに硬くなってたんだ。

「御剣ってば“ぼっき”してるじゃないか」
「してないっ!」

それから僕たちは、夜通しお互いのちんちんを触り合った。
射精しなくても、ずっと触り合った。
御剣のエッチな声が、僕を興奮させてしょうがなかった。

あれからもう十数年経って僕らは大人になってしまったけど、
あの夜より興奮するセックスはもうできない気がする。
二度と戻らない、僕らの初めての夜。

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