「んッ……は、ぁ……はぁ……」
熱い。噎せ返る程の香水の香りが、私を包み込む。
「相変わらず、美しく乱れてくれるじゃないですか……御剣上級検事殿?」
私を見下ろす、青い瞳。氷の様な冷たさを湛える、暴君の眼。
眼鏡越しでない生の目線が、私を射抜いた。
「本当に、美しいですよ……貴方は。この銀の髪も、白い肌も、甘い身体も……」
そう言って牙流は、私の乳首をちゅっと音を立てて吸った。
ヒッ、と、自分の声とは思えないほど高い悲鳴が漏れてしまった。

とろとろと焦らすような愛撫と、一転して乱暴な突き上げ。
わたしのからだはとろとろととけて、牙流と交じり合う。
少しずつ、私という器の中に、牙流が入り込んでくる。
やめてくれ、という声も、出ない。
抱いて、抱かれて、堕ちていくしか、ない。


「――それで、話していないんですね? 成歩堂には」
行為の後、牙流は私にそう問いかける。私はいつも、曖昧に頷く事しか出来ない。
そう、と牙流は、眼鏡の奥で微笑む。
「それならいいんです。貴方が私に身体を売って、成歩堂を助けた、なんて……
上級検事たる貴方の身も、危ないですし。ね?」

そう、あの日。成歩堂がバッジを失った時。
私は、牙流に、身体を売った。
例え検事としてのキャリアがあったとしても、それと弁護士会とは何の関係もない。
私は検事であるが故に、成歩堂を助ける事が出来なかった。
そんな時に近づいてきたのが、牙流だった。
彼は、成歩堂に厳罰を与えないように口添えをすると言った。しかし、その代わり――

私に会う為に弁護士になった男は、私を助けた。
しかし私には、彼を助ける事は、出来なかった。
あるいは罪滅ぼしの為だったのかもしれない。強姦という罰を受けることを、私自身が望んだのかもしれない。
しかしその罰故に、更に罪を重ねてしまった。裏切りという、決して赦されない罪を。

「安心してください。成歩堂は私が守りますよ。例え貴方に、何があっても……ね」
そう言って牙流は、柔らかく、笑ってみせた。

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