少し前の私だったら、



「そんな馬鹿な」







と言って鼻で笑ったかもしれない。










けど、今の私は毎日が暇すぎて








刺激を求めていた。

















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   4 -gioco-









「男として・・・・・?」



さすがの私も驚きを隠せなかった。

聞き間違いかと思った。






そうでなければ、このおっさんは私のせいでボケたのかと、一瞬申し訳ない気分になってしまった。









「私は真面目に言っている。」

私の心を読んだかのように彼は不機嫌そうにそう呟く。









「ボケてないんだったら、一体何をとぼけたこと言ってるの?そんなの無理に決まってるでしょ!?」


「無理では無い。もう理事長には話しを通してある。快く了解して下さった。」








こいつも、その理事長とやらも正気かと思った。


そんなの普通の神経してればありえない。















けど、今の私にはそれくらい狂ってる方がとても惹かれた。




「で、ゲームってことは何かルールがあるわけ?」


「単純なゲームだ。お前は男装して学校に通う。

私が認めた時にしか学校を休むことは許さない。そして、卒業式まで誰にもバレずに学校に通いきることが出来たらお前の勝ちだ。」











『勝ち』という言葉に私は目を光らせた。

勝ちがあるということは負けがあるということ、








つまり・・・・










「勝った時の報酬は?」


そう、ゲームということは勝った方に何らかの特典がつくはずだ。







彼の話し方はソレを匂わす。













彼は僅かに口元を緩ませると、私の方に近付いてきた。



そして、私の目の前に何かを置いた。
















「・・・・・通帳・・・・・?」


私は恐る恐るその通帳に手を伸ばす。








そして、中を見てみる。








!?


思わず私は口元を押さえる。







眼を疑った。















そこには見たこともないほどの大金が記載されていたのだ。


これだけあれば一生遊んで暮らせるだろう。







今までどんなに体を売って金を集めても手にすることの無かった大金を眼にして、通帳を持った手が震えるのを私は抑えることが出来なかった。






「こ・・・・これって・・・・・。」



「私の口座の一つだ。」







「もしかして、これが?」






私は通帳を握り締めたまま、視線だけ彼を見上げた。


きっと、私の目は柄にも無く潤んでいただろう。









「そうだ。お前がこのゲームに勝ったらそれは全てお前のものだ。




・・・・・そして、それだけじゃない。」










彼の『それだけじゃない』と言う言葉に私はいち早く反応し、ソファから勢い良く立ち上がって、傍に立つ太郎さんに駆け寄った。



「それだけじゃないって、まだ何かくれるの!?」










「あぁ。お前が一人で住める、お前のための家も用意してやる。お前が望むものは何でも与えてやろう。」




「私の・・・・・・望むもの全て・・・・・・・・・。」

















お金なんてたくさん集めても、一つバッグを買えばすぐに消えてなくなる。



私の一晩はたったバック一つ分しかないのだ。










それを、彼は私の欲しいもの全てを与えてくれると言う。












こんなチャンスこれから先絶対に巡ってこない。







可哀想な私に神様がくれたプレゼントだと思った。




















思わず口元が緩むのを私は抑えることが出来なかった。




こんなに胸が高鳴るのは久しぶりだ。









退屈だった日々を変えてくれるどころか、それにとんでもない特典まで付けてくれた。





これを断る理由が私にあるわけが無い。














「ただし、二つ条件がある。」




「条件・・・?」








「一つは先ほど言った通り、男装していることを決して誰にもばれないこと。



もう一つは・・・・・











私が監督をしている男子テニス部のマネージャーをすること。」





「男子テニス部のマネージャー・・・・・・。」




「そうだ。そして、部活もまた私が認めたときしか休むことは決して許さない。」















この時私は、マネージャー業なんて周りが分からない程度に適当に手を抜いてしていれば良いと鷹を括っていた。


そうでなければ、この時即答なんて出来なかっただろう。














私もまた、彼に負けないように不適に笑みを浮かべた。
























「そんなのお安い御用。そのゲーム、受けて立つわ・・・・・・。」












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