冬。僕はきみの傍に、

28.ブラコン [2]

 少しの間リビングに立ち尽くしていた晃は、空転する頭で必死に今さっきあったことをまとめた。
 一也の弟2人がやってきて、一也のことをどう思ってるのか訊かれ、うやむやに返すと突然脱がされ全裸にされ、それを写真に撮られて「ネットに流されたくなかったら言うことを聞け」と言われた。
 その内容が――
「帰って来た一也に『お帰り。ご飯にする? お風呂にする? それとも、俺?』と言う」
「風呂で一也の背中を流す」
「一也にご飯を『あーん』と食べさせる」
「一也に抱きつく」
「一也に耳掻きしてあげる」
「一也に自分からキスをする」
「大人のおもちゃを使う」
だったはず。
 大人のおもちゃを使うということはセックスしろということだろうが、これは高次も無視していいと言っていたので聞かなかったことにして、残りの6つをどうするか――。
 そもそも、本当にそれらをやらなければいけないのだろうかと、晃はまずそこから考えてみる。
 これらを実行しなければ、高次に撮られた裸の写真をネットにばら撒かれてしまう。単なる脅しでそんなことしないだろうと高をくくることも出来るが、本当にそうだと確信できるほど晃は高次のことを知っているわけではない。
 むしろ、どちらかと言えば本気でネット流出をやりそうだと思える。「最悪、顔は隠してやる」という言葉が何だかリアルで恐ろしい。
 とすれば、完全に無視することは晃の精神衛生上ムリだ。
 では、どうするか――。
 晃は次に、高次も言っていた「一也に今あったことをバラして口裏合わせをしてもらう」という作戦を考えた。
 高次は「兄貴は嘘が下手だ」と言っていたが、晃にはあまりそういう風には見えなかった。8歳という年齢差があるせいか、一也の嘘を見破る自信は晃にはない。
 だが、高次と一也は兄弟だ。長年一緒にいたのだから、互いに互いの嘘が見破れると言われても不思議ではない。
 しかし、ここは一也に頼み込んで、嘘をつき通してもらうようにする、ということも出来ないことではないはずだ。
 高次に何を言われても、晃は6つのことを実行したと一也が強硬に言い通してくれれば、高次も納得せざるを得ないかも知れない。実行したことの証拠を出せとは言われなかったわけだし。
 ただ――
(そんな嘘、一也さんにとっては残酷……なことになる、のか?)
 先日、晃は一也から告白された。一也の性格から考えて、それが嘘だとは思えない。晃のことを好きなら、6つのことを晃にやってもらったと嘘をつくということは、一也にとっては虚しいことに感じるだろう。
 しかも、それを晃本人に頼まれるのだ。苦痛も伴うに違いない。
(そんなこと、やっぱ一也さんに言えない、よな……)
 晃は完全に退路を絶たれた。
 一瞬、高次からデジカメを奪うことも考えたが、ケンカの強い相手に無謀だと即行で却下し、晃はいよいよ頭を抱えてしまった。
 できれば裸の写真なんて晒されたくない。高次が言ったのだから流すことになっても顔は本当に隠してくれるんだろう。だが、何かの間違いで顔が隠されずに流されてしまったら? デジカメを誰かに盗られて、その中身を盗られた相手が見たら? そいつが興味本位でネットに流したら?
 やはり「できれば」ではない。確実にデジカメのデータを消去してもらわなければならない。
「やっぱり……やるしかないのか……」
 晃は呻くと、頭を切り替えて「やる」方向で考えを巡らせた。
 まず時間を確認する。高次との会話とその後、決心するまでの間、けっこう時間をロスしていることに気づく。
「晩飯を今から作るのは無理だな」
 晃は即座に夕飯は弁当で済ませようと決めた。仕事から帰ってきた一也には申し訳ないが、そこは高次のせいだとあとできちんと説明しよう。
 晃はそんなことを考えつつ外出の用意をしながら、弁当以外にも買うものはないか頭を働かせ、家を出ると自転車を走らせた。
 最初は弁当屋に、と思ったが一転、レンタルショップに向かった。「一也に抱きつく」を消化するために必要なDVDを借り、その後で弁当屋に向かう。
 弁当屋では一也に何の弁当を買えばいいのか晃は迷った。本当なら一也にメールででも聞きたいところだったが、弁当になってしまったことを報告するのも気が引けるし、一也のことだから「自分が買って来ようか?」とか「どっか外食しようか?」とか言い出さないとも限らない。
 そうなったら最初のやることが出来なくなってしまうので、弁当はとにかくこちらで用意したい。
 晃は焦りつつも5分ほど悩んで、結局一番高くて和風な弁当にした。ついでに晃自身の弁当も適当に買い、即行で家に戻る。
 時間を確認すると一也が帰ってくる時間が迫っていた。
 ポットのお湯の量を確認し、お風呂の準備、DVDを見る準備などをして、晃はドキドキしながら一也の帰りを待った。
 しばらくして、家の横の駐車場に車が入ってくる音が聴こえてきた。ついに一也が帰って来たようだ。
 玄関が開けばすぐに出迎えられるよう、リビングの戸の前で待機する晃。
 少しして玄関が開き、一也が「ただいまー」と言いながら入ってくる。晃はひとつ息を吐き廊下に出て玄関へ向かうと、靴を脱ぐ一也に――
「お、おかえりー、一也さん。ご、ご飯にする? お風呂? そ、それとも……お、俺?」
 途端、晃は顔がボッと熱くなるのを感じた。傍目から見てもすぐに分かるほど顔が赤い。
(言った! ついに言っちまった!)
 内心で恥ずかしさにジタバタ暴れ出す晃だったが、靴を脱ぎかけていた一也は晃を見上げると首をかしげた。
「ん? 晃くん、今なんて言ったの?」
「……へ?」
「それに、顔が赤いけど大丈夫? また風邪かな?」
 そう言って玄関を上がり手を伸ばしてくる一也から逃れ、晃は慌てて取り繕った。
「だ、大丈夫です! 何でもないですから!」
 ダイニングの方へ向かいながら晃は、さっき言ったことが一也に聞こえていなかったことにホッとするも、
(聞こえなかったってことは、言わなかったことになってしまうのか? また、もう一回言わなきゃいけないのか?)
 そんな疑問がぐるぐる頭を回る。
 しかし今は、残りのやらなければいけないことの消化に集中しなければならない。
 晃は頭を切り替えると一緒にダイニングに入ってきた一也に申し訳なさそうに言った。
「すいません、一也さん。今日俺、バイトが長引いてしまって晩飯作れなくて――それで弁当買って来たんです」
 一也は脱いだコートを椅子の背凭れに掛けつつ、晃の言葉にニコリと微笑んで「いいよ」と言った。
「でも、それなら言ってくれればいいのに。外に食べに行こうって誘ったのにな」
 椅子に座ってそう言う一也に、晃は湯のみにお茶を淹れながらやっぱりなと心中で呟いた。
「けど、たまにはお弁当もいっか」
 晃が差し出す湯のみを「ありがとう」と受け取り、一也はお弁当を広げた。晃も一也の向かいに座り、同じようにお弁当を広げる。
 取り留めのない会話をしながら食事を進めつつ、晃は何となく一也に対し後ろめたい気持ちを感じ始めた。
 高次に脅されているとは言え、何だか一也を騙しているような心境を覚えたのだ。いくらやることがすべて一也を傷つけるものではないとはいえ、強制されてするというのもどうなんだろうか。それで一也は嬉しいんだろうか。
 そんな後ろめたい気持ちが晃を襲う。
「晃くん」
 ふと、晃が視線を落としかけたとき、一也が声をかけてきた。ハッとしたように晃が顔を上げると、
「それ、おいしそうだね」
と一也が晃の弁当を指差して言う。
「え?」
 思わず晃は自分の弁当に視線を落とし、もう一度一也を見た。
「それだよ、肉団子かな?」
「ああ、これ……食べますか?」
「いいの?」
「ええ、いいですよ」
 無意識に晃は弁当を一也の方へ寄せようとしたが、一也が箸を伸ばして来ないことに気づいた。
(あれ? これってチャンス?)
「あ、あの……」
「晃くん、食べさしてくれる?」
「は、はい……」
 晃は肉団子を箸で挟むと、それを一也の方へ。一也は僅かに晃の方へ上体を寄せ、「あーん」と口を開く。
 思わず緊張しながら晃は、自分が差し出す肉団子が一也の口の中に消えていくのを見つめていた。
「うん、美味しい。ありがとう、晃くん」
「いえ……」
 これでふたつ目のやることをクリアできたと晃がホッとしていると、肉団子を食べ終わった一也がニコニコと言った。
「晃くんも僕のお弁当いる?」
「えっ!? いえ……」
 それって自分も「あーん」しなければいけないということかと晃は思わず遠慮しようとしたが、一也はそんな遠慮など意に介さず「ほら、どれがいい?」と訊いて来た。
 晃は断りきれず、天ぷらのひとつを選び「じゃあ、それを……」と言うと、一也は嬉しそうにそれを箸で持って晃の口元へ。
 また顔を赤くしながら、晃は一也の箸から天ぷらを食べさしてもらう。
「美味しい?」
「はい……美味しいです」
 晃は恥ずかしくて顔を上げることが出来なかったが、テーブルの向こうで一也がニコニコ微笑んでるのは分かった。
(一也さんは恥ずかしくないのかな。俺は恥ずかしい……)
 だが、一也は先ほどと変わりなく会話を続け食事を進めた。
 一足先に一也が食べ終えて立ち上がる。弁当の残骸を片そうとするので晃は慌てて声をかけた。
「俺が一緒に片付けるから、置いておいて下さい」
「そう? ありがとう。じゃあ僕、先にお風呂入るね」
 コートを持って一也が2階に消え、晃はダイニングに1人になると思わず大きなため息をついた。
 苦痛というわけではないが、何だろうかこの緊張感は。せっかく居心地が良かったのに、どうしてこんなことになってしまったんだろうか。すべては兄想いにかこつけて、変なことを企む高次のせいだ。
 そんな恨み言をつぶやきながら晃は、残りの弁当を掻き込んだ。
 弁当の残骸を片付け、湯飲みを洗っていると一也が階段を下りてくる足音が聞こえた。風呂に入るのだろう。
 今度は「背中を流す」を消化しないと、と晃は洗物を終わらせてから、タイミングを見計らってバスルームへ向かった。
 脱衣所の戸を開けると、ちょうど一也はシャワーを浴びているところのようだった。  晃はシャツの袖やズボンの裾を捲くり上げてから、シャワーの音に掻き消されないよう、少し大きめの声で一也に声をかけた。
「あのっ、一也さん、ちょっといいですか?」
 すると、シャワーの音が止み一瞬の間を空けて一也の声が返ってくる。
「晃くん? どうしたの?」
「あの、良ければなんですが、お背中流したくて……」
「背中を? ちょっと待ってね」
 少しして「どうぞ」と声をかけられたので、晃は意を決してバスルームのドアを開けた。腰掛に座ってタオルで前を隠した一也が、晃を見上げて出迎える。
 以前、風邪を引いたときにチラッと見たことはあるが、思いのほか引き締まった一也の体に、晃は途端、緊張とは別に心臓をドキドキさせてしまう。
「本当にしてくれるの?」
「あ、はい。迷惑じゃなければ……」
「全然迷惑じゃないよ、ありがとう。じゃあ、これ」
「はい――」
 一也から体を洗う用のボディタオルを受け取り石けんを付けて泡立てると、「失礼します」と声をかけてから背中を洗い始める。
 一也の贅肉の見当たらない背中を洗いながら、黙っているのも心臓に悪いと思い口を開いた。
「あの、今日は本当にすみませんでした」
「ん? なにが?」
「晩飯、弁当で済ませてしまって……」
「ああ、そのこと。全然大丈夫だよ。晃くんが来る前だって、残業で遅くなったときは弁当だったんだし」
「でも、居候の身で弁当なんか――」
「関係ないよ。僕は気にしてないし、晃くんにだって事情があったんだろ? それに、居候は夕飯係りっていう決まりを作ったつもりはないし、僕は晃くんと一緒に過ごせるだけで嬉しいから」
 それを聞いて思わず手が止まる晃。
「晃くん?」
「あ、いや……その」
 慌てて手を動かしながら、晃は顔が熱くなる。赤面するのは今日何回目だろうか。
 しかし、誤魔化さなくてはならない。
「じ、じゃあこの後、付き合ってもらえますか? 映画のDVDを借りてきたんだけど、一緒に観てくれたら、その――嬉しいです」
「うん、いいけど……」
(『けど』!? 迷惑だった、とか?)
 一瞬、言いよどむ一也に不安になる晃だったが――
「そのDVDって高次から借りたものじゃないよね? 普通の映画だよね?」
「もっ、もちろんですよっ!」
 というわけで、風呂から上がったあとで一緒に映画鑑賞をする約束をして、晃はバスルームから引き上げた。
 リビングに戻りソファに腰かけて、晃はぐったりと倒れこんだ。一也が帰ってきてから――いや、高次が帰って行ってからずっと頭を働かせ続け、おまけに緊張の連続で晃はすっかり疲れ果てていた。
 だが、この後「耳掻き」「抱きつく」「キス」が残っている。これを全部こなさなければいけないと思うと気が重い。
(そもそも、キャラじゃないんだよな……)
 これが密や歩なら何の苦もなく出来るんだろう。見た目も華奢で可愛らしい2人なら、やれと言われた6つのこと全て普段やってても不思議じゃない。
 しかし、華奢で可愛らしくもない普通の男が、「ご飯にする? お風呂にする? それとも、俺?」とか似合うわけがない、とそこまで考えて晃はふとある疑問を覚えた。
(一也さんは俺のどこを好きになったんだろう)
 出会い自体それほど良い印象はなかったはずだ。一也の弟である高次に置いて行かれた風ではあったが、一也にしてみれば勝手に上がりこんだ年下の男が勝手にソファで寝ていたのだから、晃のことを図々しい子だなと思っても当然だろう。
 しかも、そのあと晃は風邪を引き、しっかりとそれを一也に移してしまうという二重の迷惑をかけているのだから、第三者から見ればよくもまぁ追い出さないでいられるなと感心するほどだと思う。
 加えて、親友と売春男とのトラブルでケンカになり、痣を作って帰って来ても心配こそすれ文句も言わず、自分はゲイで親友が好きで売春男に嫉妬してて――という話をしても嫌悪すらしない。
 普通ならそんなトラブルを持ち込まれると困るからと、追い出されても文句は言えないはずが、逆に慰められてしまったりする。
 いや、慰められるどころか告白までされる始末で――
(まだ会って1ヶ月も経ってないのに……)
 晃の初めて好きになった相手は幼なじみの祐介だった。ずっと一緒にいて気がついたら好きになっていた、という経験しか晃にはないので、1ヶ月足らずで告白するほど人を好きになれるものだろうかと思う。
 とはいえ晃自身も一也に対して、キスが許せるほどの好意は持っているのだが。
(キス、できるんなら、俺も同じか……?)
 今まで、祐介以外に好きになった人はいなかったし、気に入ったからといって誰彼にキスを許す自分ではないと晃は思っている。だから、キスができるのならそれは「好き」も同じことなのではないかと、晃は今やっとそのことに気づいた。
(俺、一也さんのこと、好き……なのか?)
 自問した途端、心臓が鳴った。それが答えのようなものだった。
(会って1ヶ月も経ってないのに……?)
 今しがた一也に対してした問いを、今度は自分に向ける晃。一也のどんなところを好きになったんだ、と自問してみても、だがすぐに答えが見つからない。
 「なんとなく」とか「雰囲気」とか、そんな漠然とした言葉しか思い浮かばない。
 一也が言う「一緒にいてとても楽しい」とか「話してるときが一番落ち着く」とか「一緒に過ごせるだけで嬉しい」とか――そんな言葉がしっくり来ると晃も思う。
 これが恋愛感情というものだろうか。
 そういえば、祐介に対しては空手に対するストイックな姿勢とか、正義感が強いところとか、何事にも真っ直ぐなところとか、そういうところに憧れ、好意を寄せていた気がする。
(一也さんには、社会人で大人な雰囲気に憧れるっていうのはあるけど、それとは違ってもっとこう――)
 さらに考え込みそうになったとき、ふいにリビングの戸が開いて寝間着姿の一也が現れた。慌てて晃は思考を中断すると、映画鑑賞と一緒に飲み物でもとキッチンへ行きかけたが、
「晃くんも先にお風呂入ってきなよ。その方がゆっくりできるだろ?」
と一也に言われて、その通りにすることにした。
 相変わらず、入った後だというのに髪の毛一本落ちてないキレイなバスルームでシャワーを浴び、頭と体を洗ったあとで晃もしっかりバスルームをキレイにしてから出た。
 やはり寝間着に着替えてからリビングに行くと、一也がソファに座ってテレビを見ながら耳掻きをしているのを見て、晃は少しの間、様々な思考が巡った。
「……」
 すると、晃に気づいた一也が振り返り、
「あ、上がったんだね。ね、借りてきたDVDってこれかな? 晃くんってこういうの好きなの?」
そう言ってテーブルに置いておいたDVDを手に取る。
「さっそく観てみようか」
 晃が何て言おうか迷っていると、一也は耳掻きを置いて終わらせようとしていたので、慌ててソファに寄って行き、
「あのっ、耳掻き、してもいいですか、一也さんの……」
 焦っていたせいか妙な言い方をしてしまったと気づくが、引っ込みがつかなくなった晃は言い切ったまま一也を見つめた。
 一瞬、きょとんとした一也だが、晃の言いたいことを理解してニコッと微笑んだ。
「耳掻きしてくれるの?」
「はい……良ければ」
「もちろん、嬉しいよ」
 一也はそう言って晃に耳掻きを渡してから腰をズラすと、晃の座る場所を空けた。そこに晃が腰掛けると、一也が「じゃ、失礼するね」と言って晃の膝に頭を預けてきた。
 晃も「失礼します」と言って受け取った耳掻きで、一也の耳掃除に専念した。
 しばらく、テレビの音だけが流れていたが、ふと何気ない口調で一也が話を始めた。
「僕さ、あんまり母に甘えさせてもらった記憶がないんだよね」
「えっ……」
「ほら、父が堅物で考えが古い人だったって言っただろう。おまけに頑固で厳しい人でもあったんだ。母はそんな父に傅くように仕えてるという感じで、父の意に沿うよう子供の頃から僕に厳しく接してたんだと思う」
 晃は話を聞きながら、以前一也に聞いた音楽教室へ通いたかった話を思い出した。本当は気になる男の子の通う音楽教室へ通いたかったのに、一也の父親は最初、「男がそんな軟弱なものするもんじゃない!」と言ったらしい。結局、知り合いがやってるピアノ教室ならいいと言って、目的ではなかったそのピアノ教室に通うことになったということだった。
 しかも中学の3年間という約束で、本当に中学卒業と同時にやめたという話だ。
 そんなエピソードや一也の口ぶりから、その父親が厳しかったんだろうことが伺える。
「父は酔っ払ったときに物を投げてくる程度の理不尽なことはあったけど、それ以外は僕ら子供が問題を起こしたときに拳骨が飛んでくるくらいで、それなりに普通の家庭だったとは思う。だけど、たまに手を繋いで歩く親子を見ると、羨ましいなとは思ってたんだ」
 つまり、物心つく頃にはすでに手を繋ぐこともしなくなったということだろうか。確かにそれは少し厳しすぎるなと晃は内心で呟く。
「弟が出来たら尚厳しくなってね。長男だから、兄だからっていろいろ我慢させられてたと思う。今考えればね。当時はそれが普通だって受け入れてたけど。でも、弟は奔放な性格で両親にも我侭言って、結構やりたい放題だったと思うな。弟はほら、あんな奴だから」
 そう言われて晃は、今日つい数時間前に高次にされたことを思い出した。確かに、頑固親父にも楯突きそうな性格してると納得する。そんな晃の心境が伝わったのか、一也がクスリと笑った。
「子供の頃からガキ大将で、ヤンチャやってたな。父は『男なら男らしく』っていう考えの持ち主だから、軟弱な僕よりは可愛く思ってたと思うよ。まぁ、父に認められなかったことはそれほど苦じゃなかったけどね。ただ、父に倣えっていうような母だったから、母も弟のことは結構甘えさせてたんだよ」
 晃は幼い高次が母親に甘えているところを想像しようとして失敗した。誰にでも幼いときがあると頭ではわかるのだが。出来ることなら、その時の写真があれば入手したいくらいだ。それを友人知人にバラ撒くと言えば脅しになって、自分の裸写真なんてすぐに消去してくれるんじゃないかと思ったのだ。
 そんなことを妄想してる間も話は続く。
「中学に入る頃には僕も反抗心が芽生えて、兄だからと言って何で僕ばかりってやっと思うようになったんだ。でも本気で怒る父は怖いから言うことは聞いてたけど、両親のことはわりと冷めた目で見てたと思う。今思うと荒んでたなって。だから逃げるようにピアノに熱中してたっていうのもあると思うんだけど……」
 ふと晃は、その頃の一也にピアノがあって良かったなと思った。じゃなければ、一体どうなっていただろう、と。
「そんなだから、高校に入学してすぐに母が重い病気になって、わりとすぐに亡くなったときも、取り乱したりすることはなかったな。看取ったときも葬式のときも泣いたりはしなかった。周りは心配したけどね」
「あの――」
 話の腰を折るようで躊躇したが、どうしても気になってしまったので晃は質問を挟んだ。
「高次さんは、泣いてましたか?」
「ああ、高次は看取ったときも葬式のときも我慢してるなって感じで、あとでこっそり部屋で泣いてたな。大泣きってほどじゃないけど、やっぱりそれなりに悲しかったんだろうね。人前で泣かなかったのは、ガキ大将気取ってたからかな?」
「そうなんですか」
「あいつが泣くのなんて、想像できない?」
「できませんね。でも、高次さんも子供だったんですよね……」
「うん、高次はまだ中学1年だったしね。でも僕も、子供だったんだろうな」
「?」
「母が亡くなって1年と少し経った頃、父が再婚したんだ。相手は母の友人だった。僕は父も男なんだなって思うくらいで、再婚について最初は何も思わなかったんだ。でもある日、再婚相手の女性が連れ子の息子に――宗太のことだけどね、宗太に膝枕して耳掻きをしてあげてるところを見て思い出したんだ。僕も幼いころ、母に耳掻きしてもらったことがあるってこと」
「……」
 そこまで聞いて晃の手が止まるが、構わず一也は続けた。
「宗太がしてもらってるように、僕もしてもらったことがあったと思い出して、僕はやっとそこで泣いたんだよ。甘えさせてもらったことがあったなって思い出したのと、もしかしたら自分から甘えて行ったら、母は父の見ていないところでなら、甘えさせてくれたのかなって思ったのとで、悲しくて悔しくてたくさん泣いたんだ。もっと甘えれば良かった、もっと話すればよかった、もっと母の話を聞けば良かったって――あ、晃くん……」
 晃の変化に気づいた一也が、慌てて身を起こして晃に向き直った。
 話を聞いていた晃は、堪えきれなくなったように鼻を赤くし、目に涙まで浮かべていた。話を聞きながらその情景や当時の一也の心境を想像し、思う以上に感情移入してしまったらしい。
 鼻の下に手をやって鼻水をすすり上げる晃。そんな晃の様子を見て一也は優しく笑むと、晃の頭に手を置いてポンポンと弾ませた。
「ごめんね、こんな辛気臭い話をしてしまって」
「いえ、そんな……」
「つい思い出しちゃって。いつも耳掻きするときは母を思い出すってのもそうなんだけど、後悔っていう気持ちも同時に強く思い出すんだよね。だから、僕はできるだけ後悔しないようにしたいし、大事な人にもそうであって欲しいと思うんだ。もちろん、晃くんもね」
「はい……」
 一也の手の温もりを感じながら、晃は一也が言わんとしていることを考えた。
 一也への気持ちと、祐介への気持ちと。
 頷く晃に満足したように、一也はまたポンポンと晃の頭を撫でてから、勢いを付けて立ち上がった。
「歳をとると説教臭くなっていけないね。辛気臭い話はやめて映画見よう。飲み物持ってくるけど、晃くんはコーヒーでよかった? ビールもあるけど」
「いえ、コーヒーで――」
「わかった。ちょっと待っててね」
「ありがとうございます」
 キッチンに向かう一也を見送ったあとで、晃はまだ鼻をすすりつつ気持ちを落ち着けるため大きく深呼吸した。
 一也の話と言葉を思い出して、自分の両親に思い馳せるが、まだまだ健在な両親に対する思いは漠然とし過ぎてよく分からなかった。次に脳裏を過ぎったのは祐介と密のことで、今の晃にはこちらの方が身近な問題だった。
 祐介は初めて好きになった相手が男だったということに悩んでいて、しかも相手は売春をしていて問題を抱えていた。それでも、自分の気持ちに正直に相手にぶつかっていった。
 売春をしていた密はやばい男とトラブルを抱えていたが、祐介の想いに応えようとして一歩を踏み出す勇気を見せた。
 じゃあ自分は? と考えたとき、晃は自分が何一つ行動を起こせていないことに改めて気づいてしまう。祐介に告白もしなければ、密に嫉妬しつつ後押しするようなこともして、それが自分にとっていいことだったのかどうかも自信がない。後悔しないかと聞かれれば、はっきりと後悔しないとは言えない。いや、確実に後悔している。
 今日、高次が言った『お前に足りないのは自覚と行動力だ』という言葉は、まさに正鵠を射ていたのだと晃はやっと思い至った。
(俺は結局、祐介に告白もしていない。密くんにアドバイスしたり助けたりする資格もない。一也さんの気持ちにだってちゃんと応えてないし、したいって言われるままキスに応えてるだけ……俺から言ったりとか何かしたいとか、ほとんど無いよな……)
 改めて自分の言動を振り返って晃はいささか愕然とする。どれだけ自分は臆病で流されるまま、のらりくらりとやってきたのかと。
 一也の言うとおり後悔しないためにも、きちんと自分の感情にも相手の気持ちにも応えなければいけない。
「お待たせ」
 晃が自分の気持ちを整理していると、一也が両手にコーヒーを持って戻ってきた。それを礼を言いつつ受け取ると、隣に一也が座るのを待ってからコーヒーを一口すする。
「じゃ、さっそく観よう」
 一也はDVDをプレーヤーにセットして再生した。しばらくして、おどろおどろしい音楽と暗い背景とともにオープニングが始まる。
 そう、借りて来たのはホラーだった。深い理由もなく登場人物が次々と惨殺されるホラーで、ここぞと言うときに抱きつき「一也に抱きつく」を消化しようと考えたのだ。
 しかし、先ほどの一也の話を聞き気持ちを新たにしたあとだからか、「ホラーの惨殺シーンに怯え、怖さのあまり隣にいた一也に抱きつく」という演技がどうもやり難い。
 行動を起こしたいとは思ったが、こんな嘘っぽい方法は嫌だと思う。
 テレビの中で3人目の男性が殺された辺りで、晃は意を決すると手に持っていたカップをテーブルに置いた。さらに、一也の持っていたカップも無言で受け取りテーブルに置く。
「?」
 当然、不思議そうな顔をする一也だが、かまわず晃は一也に身を寄せて座りなおし、やはり無言で一也に抱きついた。
 今はこれが精一杯の晃の勇気だった。
 突然の晃の行動に驚いていた一也だが、
「どうしたんだい、晃くん。怖くなった?」
 すぐに何かを察したように微笑むと、抱きついてくる晃を抱きしめ返した。さらに、抱きしめ返しながら、よしよしと晃の頭も撫でる。
 子供に戻ったような気分で恥ずかしくなる晃だが、そんな自分の気持ちに負けないよう、包み込んでくる一也の胸の中に顔を埋める。
 また、一也が晃の頭をポンポンしながら続けて言った。
「それとも、もしかしてだけど、今日ここに高次が来なかった?」
「……」
 晃は一瞬沈黙したあとで、抱きついた格好のまま返事をした。
「やっぱり、気づいてたんですね」
「うん、気づいてた」
「どこで、気づいたんですか?」
「う〜ん、僕が帰って来たとき、晃くん玄関で僕に話しかけてきただろう? 最初は本当に何て言ったのか聞き取れなかったんだけど、その後の晃くんの様子がちょっと変だなって思いながら部屋に入ったら、高次と宗太の香水の匂いがしたから」
「匂いで?」
「うん、高次と宗太はそれぞれお気に入りの香水があるみたいなんだ。それで、匂いがしたから弟たちが来て、僕に会わずに帰ったってことは晃くんに用事があったのかなと思って、晃くんに用事って何だろう?って考えたら、この間高次に話した『好きな人にしてもらいたいこと』を思い出したんだ。そうしたら、玄関で晃くんが僕に何て話しかけたのかがわかって、高次が晃くんに『好きな人にしてもらいたいこと』をやれと言ってきたんだろうなと」
 わりと最初の方ですでに気づいていたのだと思うと、晃は別の意味で恥ずかしくなる。
「それに今日、僕の誕生日だったしね」
「えっ!?」
 思わぬ言葉に晃は驚き、思わず一也を見上げた。一也も笑みを浮かべたまま、晃を見つめ返す。
「うん、そうなんだ。今日は僕の誕生日だったから、だから高次は晃くんに僕のして欲しいことをしろって言ってきたんだと思う。ごめんね。たぶん高次のことだから強要してきたんじゃないか? 僕はそれじゃあ意味がないんじゃないかとは思うんだけど」
 意味がない、という言葉に晃は反応し、一也を騙したような後ろめたさについ俯いてしまう。
「そうですよね、意味ないですよね……」
「あ、別に晃くんを責めてるんじゃないよ。高次の強引なところが良くないって言ってるだけで。――晃くんはきっと、高次に言われてやってるんだろうなとは思ったんだけど、それでも僕はちょっと嬉しかったよ」
「……そうなんですか?」
 意外な言葉に思わず顔を上げる晃。一也はそんな晃をしっかり見つめ返して、些かはにかみながら頷いた。
「うん、晃くんが嫌そうにやってたら僕も傷ついただろうけど、僕から見てそうは思えなかったから」
 晃は今日、高次がやれと言った6つのことを一也にした際の気持ちを思い返し、恥ずかしいというのはあったが決して嫌悪などという気持ちはなかったことを再認識した。
「それともやっぱり、晃くんは嫌だった?」
 ふいに問われて晃は慌てて首を振った。それを見て、一也はホッとしたというように表情を緩めた。
「良かった」
「本当に、やらされてるって分かっても、一也さんは……」
「嬉しかったよ。思わぬ楽しい誕生日になったしね。して欲しいことはほとんど叶ったんだし」
「ほとんど?」
 すっかり終わった気でいた晃に、一也は少し困ったように微笑んで言った。
「晃くんからキスする、がまだかな」
 途端、晃は一段と頬が熱くなった。緊張で汗が滲んでくる。
 だが、一也が苦笑しながら、
「だけど晃くん、無理にしなくていいんだからね」
というので晃は思わず身を起こした。無理をしてるわけじゃないということを示したかったのもあるし、何より後悔したくなかった。
 晃は一也の目を見つめながら、一也の頬に手をやると自分から顔を寄せていった。
 ゆっくりと目を閉じ、一也の唇に晃は自分の唇を重ね、それだけでなく舌先で一也の唇をなぞり甘噛みする。
 今まで何度か一也とキスしたことはあったが、晃から積極的にするのは初めてで、それだけで晃は自分の中から熱い感情が湧いてくるのを感じた。今この時に一時的に湧き出したものじゃなく、ずっと抑えていた感情が溢れ出してきたものだと晃は感じていた。
 自分自身、唐突に溢れ出した感情を持て余しつつ、音を立てて一也の唇から唇を離すと、そっと目を開いて間近から一也を見つめた。
 すると、晃と同じように熱のこもった一也の視線とぶつかる。
「晃くん……」
「一也さん……」
 感情が高ぶったのは晃も一也も同じようだった。互いに体を寄せ合い互いの熱を求め、再び唇を重ねると先ほどよりも深く口付けた。
 一也も強く晃を引き寄せて、晃が伸ばしてきた舌に舌を絡ませ、唇に吸い付き音を立てて啄ばむ。
 晃も積極的に求めながら、一也に密着したくて体の向きを変えていくと、いつの間にか一也に向き合う形で一也の膝の上に跨って座る格好になっていた。
 いつになく熱烈な口付けを繰り返しつつ、一也も晃の温もりを求めるように晃を抱き寄せ、頬や背中や腰を撫でるようにまさぐる。その手が晃の腰の前に伸びてきて、晃は敏感に体を震わせた。
「っ!」
「晃くん――晃くんに触りたいんだけど……だめ?」
「……か、一也さん……ダメじゃ、ない、です」
 頬を染めつつ晃がそう言うと、一也は躊躇なく晃のものを布越しに撫でた。途端、晃はまた体を震わせ、キスだけで硬くなりかけたそれが、はっきりと質量を増していく。
「あっ、一也さっ……」
 晃は自分の中心から溢れる強い快感に意識を奪われ、一也の肩に頭を預けるとその快感に集中した。
 晃が感じていることを確認した一也は、下着の中から晃のものを出すと指を沿わせて上下に撫でていった。
 一也の指が何度も晃のものを愛撫し、一番感じる部分を探りつつ刺激していく。その度に晃のものは硬さを増して、先端から透明の先走りを溢れさせた。
「晃くん、気持ちいい?」
 晃の先走りを指に絡ませて、さらに濡れた音をさせながら一也は愛撫を続けていった。
「ん、一也さん……き、気持ち、いい――っ」
 一也に抱きつくような格好で身悶えていた晃だったが、ふと身を起こすと晃も一也の中心に手を伸ばした。布越しでもはっきり分かるほど、一也のものも熱く硬さを増していた。
 一也も興奮しているのだと知り、そのことに晃もまた興奮する。
「晃、くん――」
 晃が一也のそれに触れると、一也は一瞬体を強張らせて熱い吐息を吐いた。
「俺も、一也さんに触りたい……ダメ、ですか?」
 晃の問いに、すぐに答えは返ってこなかった。躊躇したのかも知れない。なぜ躊躇したのか晃には分からなかったが、強請るように見上げてくる晃を、見下ろす一也の目は晃と同じくらいのぼせて昂ぶっているのがわかった。
「……いいよ」
 許可を得て晃は一也のものを外に出した。硬く勃ち上がったそれをそっと握り締めると、一也の熱と昂ぶりが手のひらを通して伝わってきて、それが晃には嬉しかった。
 さらに、上下に扱いて愛撫するごとに、手の中の一也が反応を返してくれることが嬉しくて、晃は一也のものを愛撫するのに集中した。
「あ、晃くんっ――気持ち、いいよ、ん……」
 一也も上ずった声を漏らしたかと思うと、止まっていた手の動きを再開した。
 互いに互いのものを扱き合いながら、昂ぶった感情をぶつけ合うようにまた深く口付ける。キスの合間、声や吐息を漏らしつつ自然と相手のものを扱く手の動きが早くなる。
「か、ずやさっ――俺、もうっ」
「はぁ、晃くん、僕も――」
 一也の手の中で晃のものが脈打ち、限界が近いことを示していた。また、晃の手の中で一也のものも脈打ち、同じように限界が近いことを示している。
 晃は一也の肩に、一也は晃の肩に顔を埋め、互いの限界を探りつつ昂ぶる感情を手に込めた。
「あっ、一也さ、んっ――っ!」
「晃くんっ――っ!」
 限界に達したのはほぼ同時だった。互いに相手の手の中に向けて、脈打つ先端から白濁の液を吐き出した。
 自分の手に熱い精液を受けながら、晃も一也の手の中に精液を吐き出し、強い快感に晃はすっかり一也の上に倒れこんだ。
「晃くん」
 一也の肩に頭を預け快感の余韻に浸っていると、ふと名前を呼ばれる。顔を上げると一也の真っ直ぐな視線とぶつかった。
「好きだよ」
 不意の告白に晃は心を震わせた。もう気持ちを誤魔化すことは出来なくて、晃も一也を見つめ返すとはっきり言った。
「俺も、好きです」
 晃の告白に一也が息をのむ。
「ホントに?」
「ホントです。俺、一也さんが好きです」
「晃くん――嬉しいよ」
 再び一也のキスに応えながら、晃は自分の気持ちをきちんと自覚することと、それを一也に伝えること、そして一也と気持ちが通じ合うことの幸せを感じ胸が苦しくなった。
 もう後悔はしたくないし、自分の気持ちに気づいていないフリはしたくない。一也に対しては正直でいたいし、きちんと向き合いたい。
 最初は強引な高次の言動に腹を立てていたが、きっかけを作ってくれたことには感謝しないとな、と晃は思った。
 すると、同じことを考えていたらしい一也が、
「高次に感謝しないとな。あいつのお陰で晃くんと両想いになれたんだから」
と言うので、晃は内心で苦笑してしまう。
 もし、高次が自分の裸を写真に撮って、それをバラ撒くと脅されたのだと聞いたら、一也はどんな反応を見せるのかなと考えたのだ。
(今度、一也さんと高次さんが居るときにでもバラしてみようかな)
 そんなことを思いながら、晃はもうしばらく今この幸せを味わおうと、一也に自分からキスをした。

2014.01.24

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