冬。僕はきみの傍に、

02.人気者

 夜になると人の集まる場所の、そこは古い洋楽が流れるシックなBARだった。
 もう少し説明を付け加えれば、客の年齢層は幅広いが、よくよく見れば客も店員も男ばかりという限定的な店だった。
 些か古い言い方をすれば硬派な祐介は、あまりこういう場所が好きではない。
 では、なぜ来たかといえば、好きになった青年に会いたかったからだ。
 数日前、大学の友人に半ば強引にこのBARへ連れてこられ、付き合い程度ですぐに帰るつもりだったが、そこで出逢った青年に祐介は一目惚れをしてしまった。
 青年は歩と顔見知りだったようで、こちらに気付くと向こうから近づいてきて、祐介曰く「見惚れるほど極上の」笑みを見せた。
 身長は歩と同じくらい低めで、線が細く、店内の照明のためよくはわからなかったが、日の光の下で見れば色白な肌をしているんだろうと予想できた。そして大きな二重の目が、店内の明かりを反射してキラキラと輝き、影を落とすほどの長いまつげが震えるたび、祐介の中の何かをかきたてた。
「歩さん、久しぶりじゃないですか。最近来なくて、ヨシオさんが淋しがってましたよ」
「まあ、学年が上がったばっかでバタバタしててさ。それに、ヨシがどう思おうがオレには関係ないよ」
「あはは、相変わらずですね。あ、もしかしてこちらは恋人さん?」
 青年が言いながら祐介へ視線を向けるが、祐介はずっと青年に見惚れて呆けていたので、2人の会話がどういうものかも理解できてなかった。
 そんな祐介の異変に気付きながらも、歩が青年に祐介を紹介する。
「いや、大学の友人。いつも柔道のことしか頭になさそうなカタブツだからさ、たまには気晴らしにと思ってね」
「へぇ〜」
 歩の紹介を聞いて、青年は不躾にも上から下までジロジロと、祐介を品定めするかのように観察した。
 しかし、そんな視線にも気づかない様子で祐介は青年を見つめ続けるので、いい加減呆れた歩が祐介の脇を肘で突く。
 歩に突かれてハッと我に返った祐介は、慌てて自己紹介をした。
「あ……祐介、です。よろしく」
 ぎこちない祐介の紹介に、歩はため息をつき、青年は声を上げて笑った。
 笑われていると理解できても、このときの祐介には青年の笑い声が耳に心地良く、それだけで辺りが華やぐような気がした。
「歩さんと友だちってことは僕より年上でしょ。敬語は使わなくていいよ、祐介さん。僕は密(ひそか)、よろしくね」
 何気に青年――密も祐介に対して敬語を使っていないのだが、やはりそれにも気づかず祐介は頷いただけで、また見惚れるのだった。
 そんな初めての対面を終えてからというもの、祐介の頭の中は密のことばかりで、これはもう好きなんだと気づいたときには、初めての恋に気分は高揚したものの、すぐに相手が男だということに祐介は悩み始めた。
 だが次の日の夜、祐介はアパートで一緒に同居している友人、晃にすべてを告白すると、
「お前、本気でそいつを好きになったんだろ? たとえ相手が男でも、好きになったもんは仕方ないんだ。受け入れろよ、自分の気持ちを――」
と言われて目が覚め、今度は男同士はセックスするのかとか、成り立つのかということを悩み始めると、やはり晃がゲイのアダルトDVDを出してきて、さらに晃の体で実践させてくれるということまでさせてもらった。
 お陰で何の迷いもなくなった祐介は、密に想いを伝えようと今日1人で、初めて密と出逢った店に来たのだった。

 時間も気にせず待ち続け、時折何人かの男に声をかけられては断り、さすがに眠気が我慢できなくなったとき、仕方なく今日は諦めようと祐介は席を立った。
 店を出ると興味のない音楽と視界を惑わす照明から解放され、外の静けさにホッとしながら祐介は帰路につこうと歩きかけた、その時――
「?」
路地裏で人の言い争う声が聴こえて足を止めた。
 声のする方へ向かったのは単なる好奇心だけではなく、もし暴力沙汰になれば止めに入ろうと思ったからだ。
 店の看板の明かりや外灯が届かない路地裏は、初めこそ2人の人影を確認するだけしかできなかったが、暗闇に目が慣れると背の低い方の人影は密だということがわかった。
 わかった途端、罵りあう声も祐介の耳に届いてくる。
「お高くとまりやがって! 今日ぐらいいいだろっつってんだよ!」
「そっちこそ年中盛ってんじゃねぇよ! 金が払えねぇんだったら稼いでから来いよ!」
「んだと、この売女が! いつもチヤホヤされてると思ったら大間違いだぞ!」
「結構だね。金がない奴にチヤホヤされても嬉かねぇよ!」
「このっ――」
 男が密の胸倉を掴んで、もう一方の手を振り上げたが、それを振り下ろすより先に密の胸倉を掴んだ男の手を、駆け寄った祐介が捻り上げた。
 「いてぇ!」と呻きながら男が痛さにたまらず膝を付き、こちらを見上げてきた男を祐介は凄みをきかせて睨みつけた。
 こういう時、特に気の利いた言葉を持ち合わせていない祐介は、ただ黙って男を睨みつけただけだったが、ガタイのいい祐介に睨まれて怯まない奴はあまりいない。
 腕を捻り上げられた男も「くそっ!」と悪態はつくが、反撃しようという意志はすぐになくなったようだった。
 その間、密が祐介の後ろへ隠れたので、それで大丈夫だと思った祐介が手を離すと、男は解放された腕をさすりながら何も言わずに去って行った。
 男の影が消えるまで見送ると、祐介は密へと向き直り、何度か逡巡したあとでやっと口を開いた。
「怪我は……?」
 時間をかけて考えて言った言葉がそれで、密はきょとんとした表情をしていたが、次には祐介にとって「極上の」笑みを浮かべると言った。
「大丈夫だよ、ありがとう。お兄さん強いね」
 名前を呼んでくれなかったことに、自分のことは覚えていないのだろうかと、少し――いや大分落ち込む祐介だったが、必死にそんな気持ちを押し隠すと笑みを返した。
「柔道、やってるから」
「ああっ!」
 そこで思い出したのか声を上げる密。
「歩さんと一緒にいた――ヨウスケさんだったっけ?」
「……いや、祐介」
「あ、ごめんなさい。祐介さんだ」
 やっちゃった、と言うように首をすくめてみせる密に、抱きしめたいという欲求を、祐介はやっとで押し留めた。
「助けてくれてありがとう。あいつ最近ホントしつこくて困ってたんだ」
 祐介の衝動など知るよしもなく密が続け、その言葉に祐介はさっきの男との会話を思い出した。
「さっきのは、何だったんだ? お金がどうとか……」
 何気なく口にした祐介の質問に、密が隠そうともせず顔をムッとさせた。
 慌てたのは祐介の方で、密の機嫌を損ねてしまったことを察すると急いで謝罪する。
「あ、いや、すまない。変なことを訊いて」
 祐介の謝罪を受け入れたのかはわからないが、密はそれを無視する形で強引に話を変えた。
「それで今日も歩さんと一緒? それとも1人?」
「あ、ああ。1人で来た」
「へぇ〜」
 そこで会話が途切れたのは、お互い知り合ったばかりだったからだろうし、それゆえ共通の話題が見出せなかったからだろう。
 それでも祐介には密に告白するという用事がある。
 どう切り出そうか祐介が思い悩んでいると、密にとってはそれほど目の前の相手に興味が持てなかったようで、祐介の思いをよそに「じゃあ」と言って立ち去ろうとした。
 再び慌てて祐介が密を呼び止める。
「あのっ――」
「なに?」
 だが、いざ呼び止めてみても、告白などという初めてのことに祐介は、体中から熱を発して汗はかくわ、頭は真っ白になるわで緊張してしまう。
 そんな祐介を不思議そうに――というよりは不審そうに見上げる密だったが、口をぱくぱくさせて何も言おうとしない祐介に、次第に苛立ちを見せはじめた。
「何か用なの? 僕それほど暇じゃないんだけど」
「す、すまない……」
 密の機嫌を損ねてしまったらしいことに、祐介は一瞬告白をやめようとかとも思ったが、明日以降も会えるとは限らないと思いなおし、もともと実直で何事も一直線な男は、意を決すると密を見つめて言った。
「きみに、言いたいことがあるんだ」
「言いたいこと?」
「おれは――おれはきみが好きだ」
 突然の祐介の告白に、密は驚いたように目を見開いた。
 祐介は続ける。
「その、男同士で変だとは思うが、おれは本気できみが好きになったんだ。一目惚れだった。今まで自分がゲイだなんて思わなかったが、この気持ちに嘘偽りはない」
 まるで今までの逡巡を振り払うかのように話し続ける。
「きみは気持ち悪いと思うかも知れないが、この想いは伝えたかった――」
 そこまで言って祐介は言葉を途絶えさせた。目の前にいる密の表情が、驚きから何事か考えるものに変わったからだ。
 何か自分の告白に応えてくれるのか、そう期待して祐介は黙って待った。
 しばらく考える仕草を見せて、密は質問を口にした。
「ゲイと思わなかったって?」
「あ、ああ……ゲイという人たちが存在することも知らなかった」
「そうなんだ」
 少しだけ驚いたように、あるいは物珍しそうに祐介を見上げる密。
「じゃあ、男同士のやり方は?」
「それなら知ってる。DVDを見て勉強したから」
 それに、友人の体で実践させてもらった、とは言わないほうがいいだろうと、祐介の本能が言ったか知らないが押し留まった。
 「勉強した」という言い方が面白かったのか密が噴き出す。
 しかし、この様子なら密は自分よりもゲイの存在をよく知っていて、それほど気持ち悪いという感情も持っていないのかも知れない、と祐介は少しだけ希望を持った。
「あの」
「気持ちは嬉しいんだけど――」
 言いかけた祐介の言葉を、密は遮ってそう言った。そこまで聞いて祐介は、ああフラれるんだなと視線を落とした。
 だが、密は少しの間また考える仕草をし、
「それってさぁ、僕と寝たいってこと?」
と首をかしげた。
 「恋人がいるから」とか「好きになれない」とか、そういった言葉を予想していた祐介は、予想外な質問に「え?」と再び密に視線をやった。
 祐介の態度がまどろっこしいと思ったのか、密はまた少し苛ついたような顔をして繰り返した。
「だから、僕とセックスしたいってこと?」
 直接的な言葉に、咄嗟に祐介は言葉を詰まらせたが、密の質問を頭の中で繰り返すと「そうなんだろうか?」と自問した。
 自分は密が好きだ。男だけども好きだ。男だからこそ悩んだし、男同士のセックスなど成り立つのかということも悩んだ。ゲイのDVDを見て、入れられる側は痛くないのかと疑問に思ったりもした。それで友人の協力を得て、男同士のやり方はわかったし成り立つこともわかった。
 そして次に思ったことはやはり、好きな人とすること――それだった。
 だから、密の質問への答えは当然「YES」なのだ。
 祐介は心なしか頬を染めると「ああ」と頷いた。
「ふ〜ん」
 祐介の返答に、とくに目立った感情も示さず、密はしげしげと祐介を眺めた。
 次に密は何を言うのだろうと、祐介は逸る動悸を抑えながら待っていると、次に言った密の言葉に祐介は固まった。
「じゃあ、お金持ってる?」
 一瞬、頭が真っ白になった。
 「好きな人とセックス」と「お金」が祐介の頭の中では繋がらず、彼は一体何の話を始めたのだと意味がわからなかった。だから、
「……お金?」
と、長い沈黙後にそれだけを返すのがやっとだった。
 祐介のそんな反応に、密は肩を少しすくめてみせただけで、当たり前のように先を続けた。
「そうだよ。僕は誰とも付き合うつもりはないけど、僕とセックスしたいって言うんなら、お金を払ってくれればしてあげてもいいって言ってるの」
 今度こそ長い沈黙が続いた。
 長い時間をかけて祐介は頭の中を整理した。
 誰とも付き合うつもりはないと言った、それはいい。フラれたも同じようなものだが、もともと男を好きになった時点で覚悟をしていたことだった。
 だが、お金を払えばセックスしてもいいとはどういうことだ?
 祐介が疑問符を浮かべたとき、ついさっき祐介が撃退した男と密の会話を思いだした。
『お高くとまりやがって! 今日ぐらいいいだろっつってんだよ!』
『そっちこそ年中盛ってんじゃねぇよ! 金が払えねぇんだったら稼いでから来いよ!』
『んだと、この売女が! いつもチヤホヤされてると思ったら大間違いだぞ!』
『結構だね。金がない奴にチヤホヤされても嬉かねぇよ!』
 聞いたときにはわからなかった会話の意味が、この時やっと祐介にはわかった。
 あの男は何度か密の体を買ったことがあり、今回は金銭的なことで密ともめていたのだ。
 つまり――
「体を売ってるってことか!?」
 祐介は思わず両手で密の肩を掴むと詰め寄った。
 真っ正直で正義感の強い男には、密がやっていることを認めることができなかったのだ。
「ぃたっ!」
 突然肩を掴まれた密は、不快感を露にすると力強い祐介の腕を何とか振り払おうとした。
「離してよ! 痛いっ!」
 密の抗議に祐介は咄嗟に手を緩め、その隙に密は祐介の腕を振り払うと2、3歩下がって祐介から離れた。
 掴まれた肩に手をやって、こちらを睨みつけてくる密に祐介は素直に謝った。
「すまない……だが、体を売るなんて、そんなことはやめろ」
 今や険しくなった密の視線を、それでも真っ直ぐに受け止めて祐介は訴えた。
 しかし、密の表情が和らぐことはない。
「それって、僕に説教してるの?」
「説教などするつもりはない。だが、体を売るなんてことはやめろ」
「なぜ?」
「なぜって……」
 良くないことだからだ、などという言葉が祐介の頭に思い浮かぶも、そんな説明は今の子供にすら通用しないかも知れない。
「僕はもう18だし、法律に違反してるようなことはしてないよ」
 知って言っているのかわからないが、売春は法律で禁止されている。
 吐き捨てるように言う密に、だが倫理に悖る、という言葉は、この場合相応しくないかも知れない。
「誰にも迷惑はかけてないし」
 両親が悲しむだろう、と言いかけて、やはり祐介は押し黙る。
 もしかしたら、家庭に何か事情があってこんな事をしているのかも知れない。
「それに、あなたには関係ないよ」
「そうだとしても、きみは――」
 それでいいはずがない、という言葉は、新たな男の登場で続けられなかった。
 後ろからグイッと肩を掴まれ、思わず振り返ると祐介と同じくらいの長身の男が立っていた。一見簡素だが上等そうなジャケットとボトムスを着た、好青年な面立ちの男だった。
 ガタイは明らかに祐介の方がいいものの、それで相手が怯みを見せなかったのは、祐介を悪者と思い込んでいたからだろうし、それなりに親しいらしい密を守ろうとする正当な思いがあったからだろう。
「密に何してんだ」
「何って……」
 ただ話をしているだけだとは思ったが、密を困らせ、怒らせているのは事実で、正直な性格の祐介は何も言えなくなった。
「リオさん!」
 祐介の体が陰になって見えなかったのか、すぐにはその男が誰かわからなかったらしい密だが、声を聞き、体を傾けて男の姿を確認すると表情を明るくした。
 密は足早に祐介の横をすり抜けると、リオと呼んだ男の後ろへ隠れた。
 まるでさっき撃退した男と同じような立場になってしまった祐介は、自分の思いの善し悪しがどうであれ、2人にとって――いや密にとって悪者という立場になったことにショックを受けた。
「こいつ何なの?」
 ショックで固まってしまった祐介から目を離さず、リオと呼ばれた男が後ろの密に尋ねると、密は男の陰から顔だけを出して冷たく言い放った。
「知らない。僕とセックスしたいらしいけど、お金は払いたくないんだってさ」
 そういう意味で言ったのではないと、祐介は胸の内で反論するが声に出せない。
 密の言葉に男が鼻で笑った。
「金がねぇ貧乏人はとっとと帰んな」
 暗に自分の立場を鼻にかけたようなセリフを吐くと、男はあてつけのように密の肩を抱いて去って行った。
 後に残された祐介は、ただ呆然とそのうしろ姿を見送ることしかできなかった。
 長い時間、そうやって立ち尽くしていた祐介だったが、頬にポツンと冷たい何かが落ちてきたのを感じて我に返った。
 無意識に見上げると建物の隙間から狭い夜空が見え、暗闇から細く白い線を描いてパラパラと雨粒が落ちてくるところだった。
 そういえば「もうすぐ梅雨入りだなぁ」と、同居人の晃が夕食時に言っていたことを思い出す。
 帰ろう、そう思って祐介はとぼとぼと重い足取りで路地裏から出た。すると――
「災難だったね、祐介」
聞き覚えのある声が祐介を呼び止めた。
 ぼんやりと鈍い動作で振り返ると、建物の壁にもたれかかってこちらを窺う歩の姿があった。
 いつから居たのだろうか、祐介の身に降りかかった出来事をすべて見ていたような口ぶりだった。だが、
「……災難?」
聞きとがめた言葉の意味が祐介にはわからなかった。
 歩は壁から背を離すと祐介のそばまで来て、少々気遣うように祐介の顔を覗きこんだ。
「災難だろ。あんな奴を好きになっちゃって。密があーいう奴だって、祐介は知らなかったろ?」
 密を非難するような口調に、祐介は違和感を覚えた。
「歩は……彼とは友人じゃないのか?」
 初めて店に行って、初めて密と会ったとき、歩と密は親しげとまでは行かないにしても、談笑する程度には仲が良さそうに祐介には見えた。
 だが、祐介の問いに歩は眉間にシワを寄せて吐き捨てる。
「友人なんかじゃないよ」
 しかし、それ以上密に対する自分の思いは言わず歩は先を続けた。
「でも、これでわかったろ? 祐介はあいつを好きみたいだけど、あいつは体を売ってる最低な奴だって」
「……」
 その言葉に、祐介は歩から顔を背けた。
「それに結構、評判が良くてさ、常連も多いって聞くよ。ここらの男娼の中じゃ、人気ナンバーワンかもね」
「歩――」
「噂じゃ高校の頃からやってるって話だし――」
「やめろっ!」
 話し続ける歩を、祐介は遮った。堅く握られた両手の拳が震えるのは、友人を殴りそうになる衝動に堪えているからか。
 歩はその拳を一瞥すると、真剣な表情で祐介を見上げた。
「きみのために言ってるんだ。あいつは、諦めな」
 歩の言葉に無言で背を向けると、小雨の降るなか祐介はアパートへの帰途についた。
 聞きたくなかったと思いながらも、脳裏には歩の言葉が何度も過ぎる。
 それでも――
(好きだ。おれは密が――好きだ)
実直で真っ直ぐな祐介の想いは、自分自身でさえとめられないようだった。

2010.04.30

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