ここからは
18歳未満の方はお戻りください。
↓↓↓↓ 18歳以上の方はスクロールしてお読みください ↓↓↓↓
曇っているせいか星の見えない空を見上げると、晃は足早に帰路を急いだ。
携帯で確認した天気予報では降水確率30%で、時折雨が降るでしょうという予報だった。
もうすぐ梅雨のせいか、ここ最近の空模様は不安定だ。
そろそろ折りたたみ傘を持ち歩くべきかと思いながら、友人とシェアしているアパートに帰り着くと、廊下から見える窓に明かりが点いていないことに晃は首をかしげた。
(確か祐介が先帰ってるはずだけど)
部屋に入る前に腕時計で時間を確認する。
午後7時28分。
いつもだったら遅い夕飯を食べている頃だ。
(ま、部屋にこもってんのか、どっか行ってんのかもな)
そう軽く考えて玄関を開け、リビング兼ダイニング兼キッチンへ入ると、何気なく電気を付けた。
「おわっ!?」
点滅する明かりの中に人影が浮かび上がって、晃は思わず声を上げた。
大きな体を小さく丸め、ダイニングのテーブルに着いて俯いている同居人――祐介の姿だった。
誰も居ないものと思っていたので晃は驚き、思わず動悸の激しくなった胸を押さえる。
真っ暗な部屋の中で、祐介はずっとそうしていたらしい、明かりが点いたことで眩しそうに目を細めながら顔を上げた。
「おまっ……何やってんの?」
「ああ……お帰り」
いつもとは違う、弱々しい声に晃は何かがあったんだと察した。
テーブルのそばへ寄ると、再び俯く祐介の頭を見下ろしながら聞く。
「んで、何があったんだ?」
あまり感情を表に出さない男だが、いつも何事にもまっすぐで、悩みがあっても体ごとぶつかっていくような奴だった。そんな祐介がこれほど落ち込むのも珍しい。きっとよっぽどのことがあったんだろうと晃は真剣に耳を傾けた。
「実はおれ……好きな人ができたんだ」
再び、晃の動悸が激しくなった。
「――ふ、ふ〜ん……良かったじゃん、誰?」
今度は胸を押さえず動悸を落ち着かせ、晃は引きつった顔に笑みを作ると訊いた。
話の自然な流れで聞いたつもりの質問に、なぜか祐介は今にも泣きそうな顔をして、
「それが――男なんだ!」
というと頭を抱え込んだ。
祐介のとんでもない告白に、晃は血の気が引いた気がした。
だが、とりあえず詳細を聞かなければと、取り乱す祐介を宥めながら話を聞くと、昨日の夜、学友の歩(あゆむ)に連れて行かれた店で、その彼と知り合ったのだという。
そういえば昨日は帰りが遅くて、自分は先に寝たからその後の様子は知らなかったなと晃は思いながら、知らない間にそんなことになってたのかと軽く驚く。
歩とその彼は顔見知りだったようで、少ししか話すことはできなかったが、男なのにどこか魅惑的な雰囲気のあるところに祐介は参ってしまったようだった。
中学から今までずっと柔道一筋で、女っ気もまったくなく浮いた話もなかった祐介だったが、だからこそそんな奴にやられてしまったのかと、晃は内心で舌打ちした。
「それで、お前はなんでそんなに落ち込んでんだ?」
好きな人ができて、何にも手がつかなくなるほどぼんやりしてしまう、ということはよくある話だが。
「当たり前だろ。初めて好きになった人が男だったなんて……」
(あ、そうか)
内心で当たり前のことに納得して、晃は自分基準に考えていたことに気づいた。
(普通はそうだよな……)
世間的には異性を好きになるのが当たり前で、同性を好きになる者は少数派と言って差し障りはないだろう。
(今まで自分はノーマルだと思ってたのに、ある日突然ゲイだったって気付いてしまって、ショック受けてんだろうな)
晃は祐介の心情を察すると、向かいのイスに座って祐介を見つめた。
「お前、本気でそいつを好きになったんだろ? たとえ相手が男でも、好きになったもんは仕方ないんだ。受け入れろよ、自分の気持ちを――」
祐介の目を見つめながら真剣に語る自分の言葉を、晃はかつて自分自身にも言い聞かせたことがあったなと思い出して少々気恥ずかしくなる。
(それに、なんで俺はこいつを励ましてんだよ)
“目から鱗が落ちた”という言葉そのもののような目をして見つめ返してくる祐介から視線を外し、晃は慌てて立ち上がった。
「ま、飯でも食おう。空腹じゃ頭もまわんねぇだろ」
そうして、後ろでぶつぶつ呟き始めた祐介を無視し、晃は遅い夕飯の準備に取り掛かった。
次の日、晃は大学へ行くと講義の合間を縫って歩を探した。
大学で親しくなった歩は、晃より背は少々低く可愛らしい顔だちをしているが、その印象とは食い違った性格を持っている。
決して可憐ではないし、大人しくもない。大胆であるし、性に対してオープンだ。
本人は決まった相手としか付き合わず、フリーセックスはしないというタイプの男だが、そういう相手を探すのが目的の男たちが、よく通うような店をいくつか知っていると聞いた。
午後を過ぎて食堂に流れる人の群れの中に、歩の姿を見つけて晃は声をかけた。
すぐに何か話があるんだろうと察したらしい歩は、連れの男に一言断ると晃のもとへ来て微笑んだ。
「その様子だと、何かあったみたいだねぇ」
口調からすべて察していると見て、晃は前置きはせずに核心部分に触れた。
「祐介が一昨日の夜に会った男に惚れたって言ってるんだが、そいつが誰かわかるか?」
すると歩は呆れたように息を吐いた。
「やっぱりね。途中からずっと変だったから、そうじゃないかと思った。っていうかさ、祐介って趣味悪いよね。あんな奴を好きになるなんて」
「あんな奴って?」
「売春だよ、売春。いろんな男に体売ってんの。なまじモテるもんだから思い上がっちゃってさ。金払わなきゃ抱かれてやらないとか、特定の相手は作らないとか、うぬぼれんなっつーの。ま、顔はいいんだけどさ」
可愛い顔して辛辣なことを言う歩に、自分だってキレイな顔してんだろとは言えず、晃は内心で呟くに留めた。
それにしても、祐介が好きになった相手が男娼だったとは。これには晃もショックを受けた。
「それ、祐介は知ってんの?」
「いや、知らないはずだよ」
「そうか……」
「祐介は何て言ってるの?」
「初めて好きになった相手が男だったのがショックだったみたいだ。落ち込んでた」
今朝は少し回復していたようだが、と朝の様子を思い出す。
「そう、初めてなんだ。じゃ、これが必要になるかもね」
そう言って歩が鞄の中から何かを取り出して晃に差し出した。
黒のビニール袋に包まれたそれに、晃は嫌な予感を覚える。
「これはもしや……」
「そう、そのもしやだよ」
話には聞いていた。歩はなぜか多様なアダルトDVDを持っていて、よくそれを周りに貸し与えていると。
「丁度さっき返してもらったところなんだ。貸してあげるよ」
なかなか受け取ろうとしない晃の胸に、歩はそれを押し付けると「それ見せて励ましてやりなよ」と笑顔で言って去って行った。
残された晃は人目を気にしつつ、黒のビニール袋をコソコソと鞄に入れて、これをどうやってあいつに見せればいいんだと悩んでしまうのだった。
1日の講義が終わって、昨日よりは早くアパートへ帰ると、ダイニングでは昨日と同じように祐介が背中を丸めて座っていた。
(またかよ……)
すぐには話しかけず、晃は鞄をイスに置くと夕飯の用意を始めた。
「それで、まだ悩んでんのか?」
冷蔵庫を覗きながら晃が訊ねると、祐介は真剣な様子で口を開いた。
「いや……男を好きになったことは受け入れたんだ。だが――」
「?」
(実は男娼だと知ってて、とかか?)
祐介の新たにできたらしい悩みを晃は予想してみたが、祐介の悩みはまだその段階には達していないらしい。
祐介の真剣な表情に思わず晃が見つめると――
「男同士ってセックスするのか?」
思わず脱力する晃だったが、歩の予測した通りの展開に言葉を失くす。
「男と女だったら、凸と凹でできるだろ? でも男と男だったらどうするんだ? 男女だったら好きになると普通にセックスしたくなるだろ? でも男同士だったらお互いのものを扱きあうくらいしかできないよな? それで満足できるのか?」
(マジか……)
「おれ、男を好きになったことは受け入れたが、そのあとずっと考えていたんだ。男同士という関係が本当に成り立つのかどうか――」
まだ延々と語り続ける様子の祐介に、晃は鞄から例の黒い袋を取り出しテーブルに叩きつけた。
「ここに、ゲイの――男同士のアダルトDVDがある。これでも見ろ。見て勉強しろ!」
やけっぱちに言って、再びキッチンへ行こうとする晃に祐介が慌てて声をかけた。
「晃は見ないのか?」
「俺は……別に」
知ってるし、とは内心で付け加えて料理に取り掛かった。
ところが、少しして室内にテレビの音声が響いてきたので、ギョッとして振り返ると例のDVDのパッケージを手に、祐介がテレビの前であぐらをかいていた。
「お、おまっ――どこで見てんだよ! 音気をつけろよ! ヘッドホンとか付けろよ!」
包丁片手に怒鳴ると、とりあえず音を小さくしながら祐介がごく真面目に返す。
「おれの部屋にテレビないし、ヘッドホンも持ってない。それ、危ないぞ?」
最後の言葉は包丁を指して言ったものだが、それは無視して。
「俺がいない時とかさ、寝てる時とかさ、そういう時にこそっと見るもんだぞ普通は」
「……気になったから、すぐ見たかったんだ。晃も見ろよ。本当は気になるだろ?」
自分基準で言うなよと思いながら、実のところ男同士のアダルトDVDに興味がないこともなく、晃は包丁をキッチンへ置くと、祐介の隣には座らずダイニングテーブルのイスを持って来て座った。
DVDはまだ序盤で、主人公らしき青年の日常を映しているが、すぐにそれは数人の男らの登場で歪んだ光景になる。
常識では考えられないような展開でことが進み、気がつくと男らの絡みが繰り広げられている。
主人公らしき青年は、よく見ると中性的な顔だちで、物語の中の役割も女役だった。
男らのものを咥え、後ろから貫かれながら悶える主人公を見ながら、晃は祐介が好きになった男のことを考えた。
(そういやタチかネコか聞かなかったけど、顔はいいとかモテるとか言ってたし――)
声には出さず呟きながら、テレビの前に座ってる祐介の広い背中に視線をやる。
(祐介が女役って考えられんし、たぶん向こうが女役なんだろうな)
相手の容姿もわからないまま、祐介がその男を押し倒す場面を妄想しかけていると、急に祐介が振り返って晃は慌てて視線をそらした。
だが、そんな晃の焦りには気づいた様子もなく祐介が訊ねたことは――
「なぁ、あれはもしかしてケツの穴に入れてるのか?」
身も蓋もない言い方に顔が引きつる晃。
「なぁ――」
「そうだよっ!」
「痛くないのか?」
「だから……だなぁ、その、徐々に……だなぁ」
説明しようとして晃は恥ずかしさに言葉が詰まる。
(俺だってやったことねぇよ!)
つまりは知識としてだけ知ってる耳年増で、そんな自分が恥ずかしくなったのだ。
赤くなりながらしどろもどろになる晃を、真剣な顔で見つめて答えを待つ祐介。
そんなまるで無垢な祐介を見て、晃は次第に腹立たしくなり、逆に祐介を戸惑わせてみたいと悪戯な思いが沸き起こった。
まだ赤い顔に引きつった笑みを見せると晃は、
「何なら試してみるか?」
と言った。
尻の穴に男のそれを入れて、痛くないのかと疑問に思うなら、自分が体験してみればいいと言うのだ。
晃の言葉に祐介は初め驚いた表情を見せたが、すぐに真剣な表情に戻ると「いいのか?」と逆に聞いてきて晃を驚かせた。
(こいつ、マジかよ)
戸惑うどころか前向きな返事に、逆に晃が戸惑ってしまうことになったが、自分から言い出したことを嫌だとも言えず、晃は後に引けなくなり頷いてしまったのだった。
数分後、テレビにゲイのアダルトDVDを流しながら、全裸になって床に座り互いのものを握りあう男たちの光景があった。
お互い全部さらけ出して、やるからには気持ちよくなろう、というのが祐介の提案だった。
される側としてはそう思うのも当然かと思い、晃は祐介の提案に乗るとひとまず恥を捨てた。
(痛いのは誰だって嫌だろうしな……)
それにしても、自分が祐介の相手になり、尚且つタチになるとは思わなかったと、意外な展開に晃は少々緊張していた。だが――
(それはそれで興奮するかもな)
自分よりも確実にデカい祐介のものを扱きながら、晃は先のことを考えるとつい、動かす手に熱がこもった。
「あ……晃、そろそろ、いいか?」
「あ、ああ……そうだな」
祐介に促され、握っていたそれから一旦手を離し、じゃあ疑問を実践してみますかと後ろに手をやろうとした晃だったが、ぐいと肩を押されて気がつくと自分が押し倒されていた。
「え?」
そして、後ろの入口に祐介の指が触れるのを感じて、晃は慌てて半身を起こす。
「ま、待て待て待て待て!」
「どうした?」
「え? なに? 俺がされる側?!」
驚いて声を上げると、祐介がぽかんとした顔で頷いた。
「ああ、そのつもりだったんだが」
「いやいやいや、普通逆だろ?」
「逆って?」
「お前が痛くないのかって疑問に思ってんだから、普通はお前が試してみるもんだろ?」
そのつもりで晃は「試してみるか?」と訊いたのだ。
晃の抗議に祐介はしばし考え込んでいたが、難しい顔をして晃を見つめると言った。
「おれは入れられる方より、入れる方をやってみたい」
祐介のまっすぐな言葉に、今度は晃はぽかんとなった。
そんな晃をよそに祐介は再び手を伸ばした。
「だから、痛かったら痛いって言ってくれな」
(マジでか……)
思ってもみなかった展開に、だが引っ込みがつかなくなった晃は、後ろの穴へ伸びていく祐介の手を諦めの境地で眺めた。
祐介の指が入口の周りを少しだけ撫でていくと、遠慮する様子もなく中へと侵入してきて、その刺激に晃は微かに震えた。
「痛いか?」
「いや……」
晃の入口を刺激していく指の動きとは対照に、気遣わしげに訊いてくる祐介。それに首を振って答えながら、晃は人にされるのがこんなに恥ずかしいものとは思わなかったと、自分の浅はかな言動を悔いた。
(は、恥ずかしい……死ぬっ)
今なら“恥ずかし死に”できるとまで思いながら、晃は必死に堪えた。
そんな晃を気遣いつつも、祐介は自らの問いに答えを見出そうと、容赦なく手を動かし続けた。
恥ずかしさに悶える晃だが、次第に指の挿入が滑らかになっていくと、その刺激に反応して晃のものがビクッと跳ねる。
それを見逃さなかった祐介は、空いてる左手で晃のものを握った。
「あっ――」
思わず声が出てしまったことに、また恥ずかしいと思いながら、晃は確実に快感を覚え始めていた。それがわかったのだろう、祐介は少しずつ慣らしながら指を増やし、ゆっくりと晃の入口を解していった。
結構な時間をかけて指で責められ、床に横たわり両脚を広げるという恥ずかしい格好で、先端からは先走りを溢れさせていたが、そんな恥ずかしささえもどうでもいいと思えるほど晃の限界は近かった。
だが、ここで自分がイッてしまっては意味がないと思う程度の理性は残っていて、晃は自分のものを扱く祐介の腕に手をやると、
「も、もぅ――」
と自分から先を促した。
「いいのか?」
そう訊ねる祐介のものもしっかり反応していて、その大きなものが自分の中に入るんだという怖さはあったが、ここまで来てやめる理由はないと思い、晃は意を決して頷いた。
少しして晃の中から指が引き抜かれると、入口に明らかに大きな祐介の先端が触れた。
「入れるぞ」という祐介に、もう一度頷いて晃は無意識に身を堅くした。
ゆっくりと入口を押し開きながら、祐介の先端が挿入されると、痛みはないがその圧迫感に晃は声もでない。体に力が入っているせいか、侵入してくる祐介のものを強く締め付けてしまう。
「くっ――晃、力を抜け」
あまりの締め付けに祐介が声を漏らすが、晃には聞く余裕もない。
自分から入れてくれと促したが、これほどキツいとは思わなかったと、晃は半ば後悔しはじめていた。だが、祐介の手が晃のものを扱きはじめると、晃の体は入口を刺激される快感を思い出したように震えた。
祐介は晃のものを扱きながら、晃の反応を見つつ腰をゆっくりと動かし始めた。
「あっ――あ、あ……」
晃の口から漏れる声は控え目だったが、晃の先から再び先走りが溢れはじめ、祐介の動きに感じているのは確実だった。
しかし、感じているのは当然ながら晃だけではなかった。
初めは晃のことを気にかけつつ、ゆっくりと抜き差しを繰り返していた祐介だったが、その表情が切羽詰ったものになると――
「晃……すまん」
そう言って我慢しきれなくなったのか動きを速めた。
「あっ!」
晃は思わず声を上げると、無情な責めに視線で祐介をなじるが、相手にその気持ちは伝わらなかったのか、それとも余裕がなかったのか、祐介は快感を求めるようにひたすら抽挿を繰り返した。
「あっ……ああ――」
「くっ――はぁ」
初めての強い刺激に、祐介の限界は早かった。
「はあ、っ!」
晃のものを激しく扱きながら、祐介は一瞬体を堅くすると晃の中で射精し
「ああっ……あっ!」
それを感じながら晃も祐介の手の動きにたまらず射精した。
晃が吐き出す白濁の液が、祐介の手と自身の下腹部を汚す。
射精を終え、互いに荒い息をつきながら、未だ繋がったまま少しのあいだ2人は、快感の余韻を味わった。
「晃、すまん……」
射精後の倦怠感を覚えつつ、晃が自分と祐介の精液を片付けていると、それを眺めていた祐介が唐突に謝ってきた。
しかし、咄嗟に晃には祐介が何を謝っているのかわからない。
「……何が?」
考えても分からなかったので問うと、まだ全裸のままの祐介が神妙な顔で言った。
「途中で気持ち良すぎて、晃が気持ちいいかとか考える余裕がなかった」
「ああ……うん」
「しかも中で出してしまったし」
「――うん」
「痛いかどうか確認するのも忘れていた」
「……」
肩を落とす祐介に、晃は何から言うべきか迷った。
(デカい図体のくせに、肝っ玉は小さいのか?)
そんな奴だったっけと思いながら、晃も全裸のまま祐介と向かい合った。すでにここまで来て恥ずかしいも何もない。
「痛いかどうかなんて確認しなくてもわかんだろ」
「?」
「気持ち良かったよ! 気持ちよくなかったら勃ってねぇし、痛かったら泣いてるよ!」
本当に痛かったとき、泣いてたかどうかの真偽はともかく、痛かったら気持ちいいどころの話じゃないのは確かだろう。
晃の言葉に、祐介の表情が明るくなった。
「そうか。良かった。おれだけ気持ち良くなってたら悪いなと思ってたんだが……そうか、晃も感じていたんだな」
祐介の口からはっきりと言われ、忘れていた羞恥がよみがえる。
何か言い返してやりたいと口を開きかけた晃だが、言葉が見当たらず断念した。
「ありがとう、晃。晃のおかげで男同士のやり方がわかったし、徐々に慣らしていけば痛くないというのもわかった。これで何の不安もない。おれ、もう一度会いに行って告白する」
いつもは真顔で滅多に笑わない祐介が、嬉しそうに微笑んでそう話すのを、晃は直視することができず、顔を背けると「あ、そ」とわざと素っ気なく返した。
そして、立ち上がってイスに引っ掛けておいた服を着ながら、晃は思うのだ。
(祐介は、そいつがどーいう奴か知らないんだろうな。好きな奴が売春してるって知ったら、やっぱショック受けるだろ? そしたら――祐介はそいつが嫌いになるかな?)
だが、そんなさもしい自分の考えに晃は動揺した。
(俺は嫌な奴だ……)
晃の、初めてのセックスは、自分の考えのせいで苦い記憶となって残った。