≪6≫ 翌朝。 「……アーニキー! 朝だよ。起きないと遅刻するって〜」 野々子は扉を開けて兄の部屋に飛び込むと、遠慮のない大声を響かせる。 朝から大忙しだった。彼女自身も朝食の用意を整えて、制服に着替えたばかりである。食事が終わればすぐ登校しないといけない。 のどかな朝のひととき、とのんびりもしていられない。 ところが将一は、ベッドの上でいまだに布団にくるまったままだ。 野々子はスタスタと足を進め、兄の寝床に近づいていった。 「アニキ。まだ寝てるの?」 「お……起きてるよ。ううっ……」 そう言いながら、兄は姿を見せない。 野々子の頬がプーと膨らむ。 「だったら朝ご飯食べてよね。アニキにご飯を食べさせないと、ボクが怒られちゃうんだから」 「うう……む、無理」 「何言ってんのさ。ほら、さっさと起きてよ」 グイグイと布団をひっぱる野々子。 「お、おい。やめろって」 「おーきーろー……あれ?」 布団の下から出てきたパジャマ姿の兄。 その腰のあたりに、不自然な盛り上がりがあった。 「アニキ……」 今にもズボンを突き破りそうな股間の隆起をまのあたりにして、野々子は目を点にする。 「これって……もしかして、また?」 「うん……また」 将一の声には、すすり泣くような調子がまざっていた。 「う、ううっ……昨日は元に戻ったから安心したのに……寝て起きたら、またこんなになってて……ううううぅぅぅ……俺もうおしまいだぁ……」 情けないことを言いながら、兄がポロポロと涙を流す。 野々子は肩を竦めた。 「別に泣かなくても。元気出そうよ。ね」 「もう死にたい。こんな体じゃ、恥ずかしくて生きてられない。ううう……」 「死ぬほどのことじゃないでしょ。どうせ出せば治るんだから」 「朝からオナニーしろってのかよ。ウウッ……俺は猿かよ」 泣きやまない兄を励ます野々子の顔が、ほんのりと赤く染まる。 「しょ、しょうがないなあ」 野々子の手が、制服のスカートにかかった。 裾から中に手を入れて、両手でショーツの左右の端に指をかけてすべり下ろしていく。兄の目の前だというのに、まるで躊躇する様子はなかった。 脱ぎかけの下着を左膝にひっかけた妹が、将一の腰に跨る。 ちらと顔に視線を向けると、美貌が紅潮していた。息をはずませてひどく忙しない様子である。発情を抑えきれない動物めいた仕草だ。 将一は口の中に湧いた唾をゴクリと飲んで、声を上ずらせた。 「何を……何してんだよ」 「ボクがなんとかしてあげるから、心配しないで」 兄の視線に気がついて、野々子がクスッと笑う。 愛らしく、それでいて男の劣情を煽る艶めいた笑み。昨日まであった、男の子っぽい雰囲気がまるで感じられない。 「し、仕方なく……なんだからね。アニキ、困ってるから」 年頃の少女にしては色気が濃く漂うわりに、口調だけはいつもと変わらない。見慣れた妹であるはずなのに、ギャップが加わることで魅力がグッと増している。 野々子の口ぶりに何かを期待して、将一は動揺してしまった。 「いや。あの、えっと……」 「遠慮なんてしなくていいんだってば。ボクはね、アニキの妹なんだよ。家族なんだから、困ってるときに助け合うのはあたりまえなんだから。それに朝だし、急がないと遅刻しちゃう。迷ってなんかいられないよ」 言い訳めいた口調であるが、手つきはためらいがない。 ボタンに手をかけて、将一の上半身からパジャマを脱がせていく。胸板をツツと指先でなぞって、焦らす仕草で牡欲に誘いをかける。 そこで野々子は舌をはみ出させて、ぺろりと唇を舐めた。 「だから、いっぱい出してね。ア、ニ、キ……うふふっ」 ボーイッシュな少女が軽やかに微笑んだ。 |