「ウルリーケ様、何か御用ですか?」

 神殿に現れた君は、怪訝そうに質問する。

「待っていました、。貴方にお願いがあるのです」
「お願い…?」
「貴方はもう次代魔王がこの世界に来ることを知っていますか?」
「は、はい、噂くらいなら」
「あの方の御傍に居て欲しいのです」
「――――…は?」

 君は目をまん丸にして数秒間動きを止めた。それくらい、とても衝撃な「お願い」だった。

「な、何を言ってるんですか? なぜ私が!?」
「貴方が必要なのです。強くて優しい、あの『力』を持った貴方が」

『力』。その言葉を耳にした途端、表情を強張らせる君。

「……あれをお褒め頂いたのは嬉しいですけど、いくら相手が魔王陛下だったとしても、特定の方だけに捧げるわけにはいきません」

 きっぱりと言い切る。大巫女ウルリーケは苦笑してなだめた。

。私は何もそこまでは言っていません。……もちろん大丈夫なときは何処に居ても構いません。好きなだけ、誰にでも奉仕しても良いです。大体、血盟城でも『仕事』は出来るではありませんか」
「血盟城に来れない人はたくさんいます! それに、…行くって約束した子供たちが…」

 そこで君は気落ちしたように言葉を濁す。急に俯いて睫毛を伏せた。
 いいじゃないか。たとえ他の人には安っぽく思えても、君にとって大事なことなら。



 ウルリーケは申し訳なさそうに説得を続ける。

「貴方の気持ちを無視するようなことは、私も嫌です。しかし、悪い予感もするのです」
「悪い予感?」
「これから陛下は、様々な悩みに直面するでしょう。今まで異世界で御生活してらしたんですもの、当然です。慣れない事が多くて、さぞ困惑するでしょう」
「……」
「貴方を見込んで話しているのは、その問題もあるからです。――五年間、陛下と同じ世界で暮らしていたこと、忘れていませんね?」

 君は何も言わない。その様子を、巫女はにっこり微笑みながら見ている。
 妙に長い沈黙が過ぎる。
 そしてついに君は、白旗を振った。

「…あーもうっ! わかりました、承知しました!! 今から準備をするので、もう退出しますっ」
「まあ、ありがとう!」



 拗ねたように怒り、すぐに身を翻して行こうとしたのに、君はふと立ち止まった。
 巫女に背を向けている姿勢はそのままに、静かに口を開くんだ。

「……ウルリーケ様」

「なんですか?」

「そう言えば15年前のあの時、私と一緒に地球に行った方がいましたよね。
 茶色に銀の小さな星が散った瞳の。
 ――あの方は、お元気ですか?」





 ねえ、俺は待っているよ。

「…ふふ。それは自分で確かめるものですよ、










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  ★あとがき★

  記念すべきコンラッド夢第ゼロ話!
  どんどんぱふぱふ!
  これからヒロインは感動の再会です。…感動できるといいな。

  さてここで問題です。この話の語り(ナレーション)は誰でしょう?(^-^)
  ひょっとしてあの人? でも、この場に居ないはずなのに、どうして?
  ま、まさか、ストーカー!?(冗談です)
  ちょっと「運命の愛」っぽくしたかっただけです。ヒントはそれだけ。

  最後に。 さん、ここまで読んでくださってありがとうございます!
  ゆたか   2004/11/12

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