『はぁ』
ため息がシンクロする。
いつものにぎやかな会議室。『会議は踊る』というか、すでに会議は本来の目的からそれ、
個々の好き勝手に騒ぐ場となってしまっている。交流する場と考えれば問題は無いだろうが。
その賑やかな会議室の一角。
場に合わぬ憂鬱そうなため息を漏らしたのは、フィンランドとウクライナだった。
同時にため息をついたことに気がつき、力の無い笑みを浮かべるフィンランド。
もう一度大きなため息をつき。
「フィンランドちゃん、ずいぶんと憂鬱そうね」
「ウクライナさんこそ」
フィンランドは騒ぎの中心でむっつり顔をしたまま、黙り込んでいる相方……
スウェーデンを複雑な眼差しで見つめ、またため息。
その行動に何かを察した彼女は苦笑を浮かべた。
「ああ、スウェーデン君の事ね。無口で怖い顔だけど、結構優しいじゃない」
「その優しさが問題なんです。優しいのはいいんですけれど」
無意識に彼女の瞳から視線をそらした。少しだけ声のトーンもダウンし、
「僕はああいう趣味はないんですが、怖くて逆らえないし。嫌いではないんです。
でも、もう少し開放感を味わいたいというか。ちょっと痛いし」
腰の辺りをさする彼に彼女は慈愛を抱き、頭を優しく撫でてあげた。
「じゃ、代わってあげようか? そういう事慣れてるし」
唐突な発言に彼は目をまん丸にした。相方と彼女を交互に見やり、頭を抱える。
悩むこと数分。もう一度スウェーデンの様子を見る。テーブルの上には空になった酒瓶が数本。
目つきの怖さは変わってはいないが、ほんのりと顔が赤いようにみえる。
その周りで股間に薔薇やら裸ウエイターになっている者が暴れまくり。
こういう日の相方は、帰った途端に……
ぶるりと身体を震わせ、彼女の手を力強く握った。真摯な眼差しで、しっかりと彼女の顔を見つめる。
「お願いします」
「じゃ、今度資金援助お願いね。ついでにロシアちゃんも任せた♪」
にこやかに肩を叩き、去っていくウクライナ。
しばし硬直し……
「……スーさんの相手の方が簡単だったかも」
絶望的な現実を前に、彼は膝をついて深い後悔に襲われたのだった。

 

「あ、花たまごちゃんだ。こんばんわ〜」
足元にじゃれ付いてきた白い犬を抱きかかえ、改めて部屋の中を見回した。
そこはスウェーデンとフィンランドの家。
男二人暮らしの割には、妙に小奇麗で。
「そーいや、意外に家庭的だったなぁ」
小さい頃の記憶を思い出し、幸せそうな笑みを浮かべた。
少しだけだったが、遠い昔彼に会った事があった。その時は幼かったから涙目になってしまい、
「でも、あの人のおかげで今の私が……」
胸に抱いた花ぎゅっと抱きしめる。
「怖い顔だけど、嫌いじゃないな。むしろ……」
顔を赤らめ、腕に力が自然とこもる。
ひんひんと鳴く声に慌てて花たまごを解放してやった。潤んだ瞳を手の甲で拭う。
「さ、スウェーデン君……ううん、スーさんの相手頑張ろうっと」
周りをきょろきょろと見回した。だが予想していたものはなく。
「んと、もしかして隠しているのかしら。『ああいう趣味』って、ゲルマン人特有のSMよね。
あのフィンランドちゃんを鞭で叩くとか信じられないけど」
完全なる勘違いなのだから、そういう道具は見つかるわけが無い。しかし、彼女は探し続ける。
「ん〜ないなぁ〜この中かなぁ」
クローゼットの中に上半身を突っ込み、ごそごそとあさり始めた。
だが、予想していたものは見当たらない。
更に奥の方を探そうと、身を乗り出し、

「ん、けぇったぞ」
音もなくスウェーデンの突然の帰宅。
慌ててクローゼットの中から脱出しようとしたが、胸に何かが引っかかり出れそうに無かった。
クローゼットから突き出されるようにそこにあるお尻。
酔っ払った彼にはそれは魅力的なものでしかなく。
「そか。んだ、女房の要望には答えんと」
彼女のズボンに手がかかる。その行動に一瞬、彼女の頭が真っ白になった。
「え、フィンランドちゃんと間違えて、何でズボンに手を?」
男同士にそういう楽しみ方がある事など知らない彼女は、
必死にクローゼットの中から脱出しようとする。
が、暴れれば暴れるほど身体にいろんなものが絡まっていく。
その間にも、サスペンダーが外され、ズボンのチャックが下ろされる。
「ん、めんげぇのはいてんな」
ズボンがあっさりと脱がされた。魅力的な白い布に包まれた臀部が露になった。
布の上から指でなぞられ、ぴくりと身体を震わせた。
口からこぼれる甘い声。だが、クローゼットの中だからその声が聞こえるはずもなく。
布の上で指が踊る。それはもう執拗に。昔の戦い方では考えようもないぐらい、しつこくねちっこく。
しっとりと濡れてきた布を下で拭う。うっすらと透けてくる尻の割れ目。
「もう我慢できんか?」
布をしっかりと下ろす。雪のように白い肌に彼の太い指が侵入してきた。
「や……ん、スーさぁん……」
ここまで来たら、もう諦めて彼との行為を楽しむしかない。

行為は今までの経験上、そんなに好きではないが、彼とならば心から楽しめそうな気がする。
だから肩の力を抜き、彼の手の動きに神経を集中し……

とぷぬるぅ

尻に何かとろりとした液体がかけられた。
そして誰にも進入されたことの無い菊穴が指でほぐされる。
「え? ちょっとそこはお尻の穴……ひゃっ」
慣れた様子で指を動かし、硬く閉じた穴を徐々に広げていった。
あまりの手際のよさに、彼女の呼吸が荒くなっていく。じんじんと胸の先が痛む。
行為する際、誰もが彼女の豊かすぎる胸を集中的にいじってきた。
だから胸の方が感じるようになってしまったのだ。

それなのに彼は尻しかいじってくれなくて。
どうにか動く手で自らの胸元を広げる。豊かな胸がぽろりと零れ落ちた。
熱を持った胸の先を指でつまむ。すでに硬くなった突起を指先で転がした。
本当ならば彼にいじってもらいたい。思いっきりこね回して、唇でしゃぶって欲しい。
指先を唇に含み、唾液をつける。そしてその唾液で胸の突起を濡らす。
濡れた胸に、彼女は更に興奮を増し、

「……いれっぞ」
彼の短い言葉。穴にぬるりとした熱いモノが押し付けられる。
「ひゃ……んぁっ!」
感じたことのない快楽。尻の穴でこんなにも敏感に反応するなんて彼女にも理解できなかった。
溢れ出す蜜が足を伝い垂れていく。
ゆっくりと尻の中へと侵入していく。脈打つ大きな男根が直腸を刺激する。
それは秘所に入れられた時よりも刺激的で。
「ん…ひゃ…あっあ…ふぁぁ」
打ち付ける腰の音が響き渡る。微かに聞こえる妙に色っぽい彼の吐息に、彼女は身体を震わせる。
行為の大抵は罵倒されたり、卑猥言葉を言わされることが多かった。
だから、このように無言で行為にふける男性は初めてで。

――まあ、フィンランドちゃんと間違えているのはアレだけど――

熱くなった頭の片隅でぼんやりとそう考え。
「ん、いぐ」
更に強く腰を押し付けてきた。押し寄せる快楽。そのせいで膝が立たなくなり、バランスを崩す。
後ろに重心が傾いたせいで、尻餅をつくように二人とも倒れこみ。
「はぅ……んっ」
彼の上で尻餅をついたことにより、男根は奥深くまで入ってしまうことになる。
「あ? ウクライナ……?」
今までやっていた相手の正体が女房ではなく、ウクライナだという事にやっと気がついたスウェーデン。
だが、射精感は止まりそうに無い。きゅっと締め付ける彼女の菊穴に、強い刺激をうけ。
あっけなく彼女の中へと射精してしまった。
自分の膝の上で、肩で息をする彼女。何故か胸がはだけていて。
全く理解できない状況に、彼の動きは止まった。

――別段、女はきしゃいだでねぇ。
女のずうたいは柔らけぇし、触っていると気持ちぜぇ。
ただ、フィンランドは好きだからやってるわけで。
女も抱こうと思えば抱けるっぺ。
この顔でもよってくる女はいるし、やんちゃしていた時代はいろいろやったし
んだが、今はフィンが女房であって――

「……ん、スーさん?」
向きを変え、胸板にしだれかかる彼女。大きな胸が気持ちよい。
潤んだ瞳を見た途端、彼の決意は固まった。
半開きだった彼女の唇を荒々しく奪う。少しだけ酒臭いキス。
手は大きな胸をもみしだき、彼女を床へと横たえた。
「……幸せにすっから」
先ほどとは違い、少しだけ稚拙な手の動き。
彼女の中から引き抜くと、すでに濡れきった秘所へと男根を導く。
「え? もう元気に? ちょっ、もう少し休ませ……んっ」
敏感になった秘所へと進入され、大きく身体をしならせる。
腕を振り回すと、彼は抱きしめやすいよう身体を寄せてくる。
押し寄せる快楽にぎゅっと彼の身体を抱きしめる。間に挟まれ、卑猥に形を変える胸。
「ひゃっ、ん、やっ! スーさん、スーさん! 私っ!」
「……ウク……愛してっぞ」
快楽によって涙の溢れる頬に唇を落とし、もう一度濃厚な口付けをかわす。
泣きそうなほどの快楽を与えられ、甘い声を出す女に、
たまに愛の言葉をささやくだけで、微かな吐息しか漏らさない男。
二人の饗宴は何度も続き……

 

 

一方その頃。
「へぇ〜お姉ちゃんがねぇ〜」
黒い笑みを浮かべたロシアが何かを見下ろしていた。
男女が裸で絡み合う……いや、一方的に絡む姿だ。
手足を縛られた少しふくよかな青年。そして青年に乗っているのは気の強そうな少女。
「あああ、ゴメンナサイゴメンナサイ。でも、あの人は僕にその……
まあ、僕を女房というほどだから、きっとウクライナさんには手をださな……
あう、ベラルーシさん、動かないで」
「動いていいよ。思いっきり」
愛する兄の命令に、一つだけ頷くと、勢い良く腰を上下にふり始めた。
形の良い胸が腰の動きとともにぷるんと揺れる。
白い肌を紅潮させ、美しい髪が乱れる姿は実に色っぽい。
健全な男ならば、下半身に血が集まる行為だろう。しかし。
「ホモのくせに、また出すの? 変態」
「ホモじゃないですよぉ。僕は女の子の方が好きですけれど、スーさんがその……くっ」
上から蔑んだ瞳で見られ、何度も何度も精を搾り取られる。
こんな事をされたら、女性恐怖症になり、本当に茨の道に進みたくなるかもしれない。
「君が悪いんだよ。お姉ちゃんを僕から奪おうとするから。ね、ベラルーシ」
「……ん、兄さんの言うとおり」
違う男にのしかかっていても、彼女の熱い視線は愛おしい兄に向けられており。
どんな事を命令されても、兄の言う通りに動くというのは、一種の愛なのだろう。
一方的な同性愛に、執着した姉弟愛。そして歪みきった兄妹愛。
「ああ、何で僕の回りはこんな……ぐぅっ、またか!」
一塩強い締め付けに、高まった射精感。
それは止められるわけもなく、何度目かの精を中へと放つことになってしまう。

どれくらいたっただろうか。
そろそろ意識が混濁し始めた時に、ドアの外から何かが差し入れられた。
一枚の封筒。ロシアは訝しげに封筒を破り、中身を取り出す。
「…………ベラルーシ、搾り取っていいよ」
長い沈黙の後、ロシアがぽつりと呟いた。笑顔のまま。
凍りつくフィンランド。こくりと頷くベラルーシは再び腰を動かし。
「君が……というか、スウェーデンが悪いんだよ。僕のお姉ちゃんを奪うから。
うらむんだったらスウェーデンを恨んでね」
にっこりと笑うロシアの手から、封筒の中身がひらひらと落ちてきた。
一瞬見えた内容に、ロシアの激怒の理由が理解でき。
「スーさぁ〜ん、恨みますよぉ」
泣きながら、終わる事なき饗宴――いや、性的虐待というべきか――は続いたのだった。


『結婚しました。スウェーデン・ウクライナ』


印字されたはがきを眺めながらため息を一つ。
「どうしてこうなったんだろ」
スウェーデンの腕の中、ウクライナは小さく呟いた。
あの行為の後、彼は何かを思い立ったか、てきぱきとそれの準備をし始め、
各所にそのはがきを送りつけたのだ。
さすがに止めはした。同性とはいえ、一応、『嫁』扱いのフィンランドがいるのだから。
だが、彼は真顔で『責任はとらんと』だけ。それ以上は聞き入れてくれることもなく、唇をふさがれ。
確かに優しい行為をしてくれる彼は好きだ。
今まで、誰かのために身体を交渉道具として使ってきた。今回もそのつもりだったのだが。
こんなに優しく穏やかに愛してくれる人は初めてで。
「そーいえば、スーさんってば予期しない方向で願いをかなえてくれるって言ってたっけな」
気持ちよさそうに眠る彼。それでも眉間に皺がよっていて。
「……ま、いっか」
怖いように見えて、実は優しい彼の腕に抱かれ、彼女も気持ちよい微睡みの中に身をおき……


数日後、やっと帰ってきたフィンランドを二人で共謀して即効で襲い、
本気で泣かしてしまったのは些細な話だ。





初出 
2009/08/18
スーさんガチ設定を使ってみた話。
拍手メッセージくださったスーウクに惹かれて来訪してくださった方に捧げましょう。
相変わらず、フィンが草食となってますが……





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