雪割草〜僕はここにいるよ〜
ぴっ♪
僕はスノーバニー。でも人間が言うようなモンスターじゃないよ。
僕はまだきらきらしたもの飲んでいないからちゃんと自分で考えられるし、動けるんだ。
だから僕は人間を襲わないよ。
僕はね、ジェノスの街で暮らしているの。たくさん人がいる。いろんな人がいるんだ。
そこで僕は守ってるの。大事な人の匂いがする小さな十字架を。
んと、あの子とあったのはお空が暗くなるずーーっと前。
まだみんながにこにこしていたころ。
僕が怪我したとき、助けてくれたんだ。
すっごい怪我だったんだけど、毎日毎日看病してくれたの。
そうしたら怪我もすっかり治ったの。
久しぶりに自分の足で踏んだ雪の感触は最高だったよ。
僕が元気になったら、あの子も元気になった。
だから、僕とよく一緒に遊んだんだよ。
でもね、人間のおっきいのが時々悲しそうな顔するの。
それでね、難しいこと良くいってたな。
『しんぞーがいつまでもってくれるか』って。
でも、僕はわからないから、もしいったことがわかっても僕は遊びたいから、
毎日あの子と遊んでいたの。
でもね……ある日からあの子の顔がみえなくなったの……
あの日は雪がたくさん降って真っ白だったの。
見渡す限り真っ白。すっごくきれいだったな。
でも、その真っ白な雪が大勢の怖い人間に踏み潰され、そして真っ赤に染められちゃったの……
街の人たちは皆逃げ回り、家の中に帰っちゃった。
僕は怖い人間がいなくなるまで、葉っぱの陰に隠れていてわからなかったんだけど……
その怖い人間は雪が止むまでいたよ。雪が止んだら街の外へいっちゃった。
――鉄のような匂いをたくさん残して……
怖い人がいなくなったから、僕はまたあの子と遊ぼうとしたんだけど……ずっとこなかった。
太陽沈んででお月様が昇って、また沈んで昇って……
でもいつまでもあの子はこなかったの……
でもずーっと待ったの。毎日毎日。
ある日ね、あの子のお母さんかな? 人間の女の人が街の隅っこに穴掘ってたの。
そして布のようなモノを埋めたの。埋める前に僕にその布をさわらしてくれた。
その布からはあの子の匂いがしたんだ。
前見たときはとっても優しい目していたのに、あの時はすっごく悲しそうにしていたのを覚えてるよ。
僕の白い毛皮を撫でながら、その女の人は目から水をこぼしてたよ。
『なんで……みしらぬにんげんのてによってあのこのいのちをおわらせられるなんて……
なんでもうすこし……しぜんにいのちがつきるまでまってくれなかったの……』
ってずっとつぶやいていたの。
意味はわからなかったけど、僕もすっごく悲しくなったの。
だから、僕は女の人が大切につくったものを守ろうと思ったんだ。あの子が帰ってくるまでは。
小さな土の山。
小さな十字架。
あの子の匂い。
僕の居場所。
静かに雪が積もっても
僕の居場所。
あの子が帰ってくるまでは、
僕はこの場所を離れないよ。
だから
僕はここにいる。
僕は
ここで待っているから、
帰ってきてよ……
また、
笑顔を見せてよ。
僕はずっと
……待ってるから
かなり昔に某所に投下したものの再録。
PS版TODのジェノスの町に小さなお墓と雪ウサギらしい生物が
いたのを覚えている方はいるでしょうか。
それが妙に気になり、書き上げたものだったりします。
ちなみに『君に降り注ぐ雪』とセットになってます。