〜蒼〜

 ――深い。蒼い――
 この身になってから、感覚は失われてしまったけれど、きっと刺すように冷たいんだろう。
 だけど……僕を握ってくれている坊ちゃんの手はとても暖かいんだろう。
 冷たい海の中、僕たちは静かに漂う。音もない海の底を。

 スタン達ともう少し話ができてれば。
 ルーティともう少し一緒にいられたならば。
 ヒューゴの変化にもう少し早く気がついていれば……

 頭の中に浮かぶのはそのような後悔ばかり。
 ……だから、僕は卑屈だといわれるんだよな。
 でも、この道を選んだことは後悔していない。
 1000年というときを経て、坊ちゃんに会えた事。
 僕がずっと坊ちゃんと共にする事。
 ハロルド博士は鼻で笑うんだろうな。
 『せっかくの永遠の命を無駄にするなんて』とかって。
 でもね、僕は坊ちゃんと共にいたい。
 坊ちゃん以外の誰かを、マスターにするなんて考えられない。
 だから――僕はここで永遠の眠りにつく。

 青白い坊ちゃんの顔。
 ずっと苦しんできたんだよね。
 ヒューゴの事、ルーティの事、スタンの事、マリアンの事。
 最期は自分の意思で動いたんだ。
 ヒューゴの命令ではなく、自分の意思で。
 坊ちゃんは立派でしたよ。
 わがままで意地っ張りで、寂しがりやで甘える事に不器用で。
 僕も散々苦労しましたよ。でも、その分楽しかった。
 1000年前より、充実していたのかもしれない。
 ね、坊ちゃん。僕は坊ちゃんのお守に疲れましたよ。
 ソーディアンにあの世なんてないとは思いますけれど、もし会えたら……
 ――今度は友達として出会いましょうね。スタンに負けないぐらいに。

 微笑を浮かべているように安らかな坊ちゃんの寝顔。

 声をかければ『うるさいぞ。シャル』と返ってきそうで。

「ゆっくりと休んでくださいね」
 
 もう届かない声を最期にかけ、僕は………………


 ――おやすみなさい。坊ちゃん――






某所の再録
TODリメイク記念に書いたはず。
リオンは好きです。
スタンもルーティもマリーさんも
TODのキャラは全員好きだったりします。
 

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