ねえ、ボクの声が聞こえる?
         ねえ、ボクの思い伝わる?
         ねえ、ボクのお願いだよ
 
         君に降り積もる雪が優しいように


         ボクは空の上。厚い厚い雪雲の上。
         ここに来た理由は覚えていない。
         ただ、赤く、紅く空が染まったのを覚えている。
         そして全ての感覚が無くなった。
            そしてボクは殺された
         そして君に会えなくなった。
         ――ボクのちいさなお友達に――

         雲の上からはたくさん見える。
         みんなの笑顔も涙も怒った顔も寂しそうな顔も。
            ボクを殺した兵士の顔も……

         空から見ているから
         みんなを見ているから
         ボクはとても寂しくなる。

         誰かを傷つけて
         誰かに傷つけられて
         自分を傷つけて

         何でみんな悲しそうな顔をするの?
            ボクを傷つけた兵士も悲しそうな顔……

         誰かが傷つけて
         誰かは傷つけられ
         自分で傷つけて

         また傷つけようとするの?
            生きるために誰かを傷つけるの?

         ボクらは弱いからなにもできない
         何もできないから傷つけられる
            だから殺された
         強い大人は誰かの上に立ちたがる
         強い大人は誰かを傷つけて一番になりたがる
            ボクは大人の争いで殺された
         何で手をつなげないんだろ。

         大人も子どもも王様もモンスターもボクを殺した兵士も
         手をつなげば、誰かを傷つける手は使えない。
         手をつなげば、誰かの心が暖かくなる。


         そうだ。ボクはそのために雪になろう。
         冷たい雪がお互いの手をつなぐキッカケとなるように
         手をつないで手を温められるように

         だからボクは雪になる。
         ジェノスのみんなの心に
         雪の降る全ての世界に
         ボクは暖かい雪になるよ。

         いつかこの世界が笑顔に包まれる日まで
 
         ボクは舞い散る雪になるよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「うわぁ〜白い白い白い!! そして寒い〜」

「はしゃぐな。田舎者」

「そうよ。寒いっていったら余計寒くなるじゃない」

「まあまあ、お寒いのならば早く宿屋に行きましょう」

「私はもう少しこの雪をみていたいぞ」

「寒いけど俺も見てたいな

あ、うさぎ発見♪おいで〜ちっちっちっ」

「あら、おいしそうな兎。今日は鍋にしよっか」

「うさぎさんがかわいそうですよ!!」

「かわいそうだけじゃ生きていけないのよ。さー、今日の晩御飯ちゃんまっていなさ……

…………やーめたっと。こんなやせっこけた兎より、リオンのおごりのほうがおいしいもの」

「なんで僕がおごらなくてはいけな……

 ……あ……そうか……わかった。今日は僕のおごりだ。感謝しろ」

「やっりぃ♪今日はたくさん食べるわよ♪

ほら、田舎者、とっとと宿行くわよ」

「……………………………………」

「田舎者! なーにいつも以上にぼーっとしてんのよ」

「何か心配事か?」

「ん、いや、雪って冷たいなぁって思ってさ」

「馬鹿じゃない? 雪は冷たいもんってきまってるでしょ」

「そうだけどさぁ……

 …………えいっ」

「うわっ、抱きつくなっ!!僕にはそういう趣味はない!」

「俺だってそんな趣味はないけどさ。抱きついているとあったかいんだよなぁ」

「だったら女どもに抱きつけ。とっとと離せ」

「女の子にやったらただのヘンタイになっちゃうじゃないか。

 ほ〜ら、おにーさんのぬくもりを味わうがいい♪」

「…………お前、ヒス女が感染うつったんじゃないか?」

「ヒス女って誰のことかしらぁ? かわいいリオン君〜」

「首にうでまわすな!! ヒス女!」

「……皆さん、仲がよろしいのですね。少しうらやましいです」

「ん? フィリア、お前も寒いのか? 寒いなら手を貸せ」

「はい…………

 …………きゃっ」

「ふふっ、手をつなぐと暖かいだろう。で、もう片方の手はそっちだ」

「あー、フィリアずるい〜、じゃ俺もリオンと手つなぐ〜」

「手つなぐ気はない! フィリアも手離せ!」

「雪が降っている日ぐらいはいいんじゃない? あー、しかしこーしているとあったかいわね」

「そうですね。体もそうですけど……心もなんとなく温かくなってきた気がしますね」

「そうだろう。雪の日はこうしているのが一番だ。リオンもそう思うだろ」

「僕はそうは! そうは……思…………暖かいな」

「ん〜ほんと暖かい〜

 あ、そうだ。街のみんなと手つないだらもっともっと暖かくなるかも」

「ほーーんとあんた馬鹿ね。ま、今が暖かいからつっこみなしでさらりと水に流してあげるけど」

「本当……暖かいな」

「……また皆さんとこんな風に手をつなげるといいですね……」

「……そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「また…………いつか

 

 

 

 

 

 

 

 

ううん、またいつか絶対につなごうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            君が
            ボクの小さな友達が
            世界を救う英雄たちが
            ボクを知っている人達が
            ボクを知らない人達が
            争いばかりしいてる人達が
            綺麗な大人と汚い大人も全部ひっくるめて  
            笑顔になれるまで

            ボクは

            舞い散る雪になるよ


 

            




             『雪割草〜僕はここにいるよ〜』の対となるもの。
              小さなお墓の主である少年視点の話です



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