いつもの事。
もう原因なんて覚えていません。
何かくだらない事で喧嘩して。言い合いして。それから怒ったまま別れて。
で、次に会った時は、またいつものように新しい喧嘩して。
だから、一種のコミュニケーションだし、いちいち仲直りなんてしません。

だけど。あの日は少し違いました。

「……あーと、あん時はすまなかった。
その侘びというか……お前に似合いそうなものを見つけたから持ってきた」
出逢った途端、眉毛が珍しく謝罪をしてきました。本当に珍しい事にです。
「えーと……明日は魚干すから、雨降らされると迷惑なんですが」
真っ青な空を見上げ、私の口から出たのはそんな言葉でした。
あ、明らかに眉毛の機嫌が悪くなってるのがわかりました。
ぴくぴくと頬を引きつらせ。それでも黙ったまま、手にしている包みを私に押し付けてきます。
「魚は屋根の下に避難させておけばいっか。
ま、くれるんだったら貰っておきます」
口ではそっけなくいいながらも、どうもにやにやが止まりません。
眉毛も機嫌を良くしたのか、笑みを深くし、私の頭の上に手を置きました。
「お前、真珠好きだろ。その肌に良く似合うしな。
折角だから、それ着替えた姿見せてくれないか?」
優しい手の動き。
あー、もう、やっぱこの眉毛好きなんだよなーと、ちょっと心の中で悔しく思いながら、私は小さく頷き。
「じゃ、私の家でまったりしてやがれです。椰子のジュースぐらいならば出しますから」
包みをぎゅっと握り締め、太陽よりも眩しい笑みを向けてあげました。

 


「――くたばれ。眉毛」
包みをあけた途端、私の唇から出た言葉はそれでした。
本当にくたばれ。いや、私が地獄に送ってあげます。
あの眉毛……こんなもの渡しやがって。
震える手をどうにか押さえ、それを呆然と眺め。
「おーい、まだか? もしかして着替えられないならば、俺が手伝ってや……」
「灼熱の砂に埋もれてしまえ!」
にやついた眉毛の声に、にこやかに言葉を返し、私は再び沈黙しました。
この調子だと、着替えが遅くなると、確実に眉毛は覗きにくるだろうから。
もちろん、着替えないという選択肢もあったけど、きっと着替えなかったら、これより酷い仕打ちがあるだろうし。
「……しょうがないか」
大きくため息をつき、私は着替え始めました。


「おおっ、似合うじゃねぇか」
満足げな眉毛とは相反し、かなり不機嫌に見えるでしょうね。
そりゃ当たり前です。
こんな服……というか下着……? 紐着せられちゃ。
赤いリボン上のブラ部分は、胸のどこも隠しておらず、かなり短めのスカート部分は危うく下半身を隠すのみ。
それどころか。
「できれば後ろからもみてぇな。よし、机の上に乗れ」
「カジキマグロに頭ぶつけてくたばれ」
暴言を吐いてみるけど……眉毛の言葉には逆らえそうにありません。
あの眉毛には魔術がかかってるに違いません。
そうです。きっとあの太眉毛が眉毛の本体なんです。
机の上によつんばで乗ると、後ろから覗き込むにやつく眉毛を睨みつけてやりました。
「いい眺めじゃねーか。なぁ?」

……あとで覚えてやがれ、眉毛……

恥ずかしさとか怒りで涙が浮かんでいるでしょうね。今。
だって、スカートにどうにか隠れている下着は、紐……いや、ほぼ真珠でできていて。
「濡れてるじゃねーか。折角の真珠がびしょびしょだ」
大事な所を締め付ける真珠を指でこすり上げると……
あ、あの……その……
「や…さわっちゃ……んぁ」
「ん? おや、真珠が一つ増えたみたいだな。こんなぷっくりと」
真珠と眉毛の刺激に大きくなってしまった真珠が……その、眉毛の指に挟まれて擦られて。
「あ、やだぁ……ダメ……そんなつまんじゃ……ふぁ」
「とんだエロ真珠だ。こんなおっきくしやがって」
眉毛の指の動きに、唇をかみ締め、どうにか耐えますけど。
……あの眉毛、さすが変態だけあって、指の動きは神業なんです。
目を閉じても、耳から入ってくる水音。絶え間なく動かされる指。
時折、濡れた洞窟に舌先が入り込んで、蜜を吸い上げられて。
「ダメ……やっ、そんな吸っちゃ……あぁ」
頭の芯がとかされるような感覚に、私は激しく声を上げ。

「イったか。よし、準備もできたし、二回戦といくか」
眉毛は私の腰を掴み、硬くなったナマコを押し付けられ。
「おっ、真珠のごりごりが中々気持ちいいな」
「やっ! やだ! そんなひっぱっちゃ! 壊れちゃ……んぁっ」
下着の隙間から入れられ、何度もやられて。


……気がついたら朝になってました。
ここがベッドの上で、腕枕でもして、私の寝顔を見ていれば少しは許せるんですけど。
ヤりはじめた机の上で。
私の中にはナマコが入ったまま、いびきをかいている眉毛の姿。
「この眉毛が」
気持ちよさそうに寝ている眉毛のほっぺをつねってみる。
一瞬、眉を潜めていたけれど、すぐに私の手をとり、頬に摺り寄せてきました。
その顔はまるで子供のように。
「こんな顔見ちゃうと、何もいえないじゃないですか」
眉毛……イギリスをぎゅっと抱き寄せ、彼の胸に顔をしずめ。
鼻先をくすぐる彼の香りに、もう一度睡魔が押し寄せてきました。
小さく欠伸をすると、私も瞳を閉じ。

「……むにゃ……眉毛言うな。もう一度ひぃひぃ言わせてやろうか。エロ真珠が」

前言撤回です。
あーの変態眉毛が!!

怒りが波のように再び押し寄せてきました。
ここはきっちりおしおきしないとだめですね!
どんな夢見ているのかわかりませんが、おっきくなってきたナマコを引き抜きます。
「……んっ」
ずるりと抜ける感触に小さく声をあげてしまいましたが、どうやら眉毛は気がついて無いみたいです。
元気なナマコをおったてたまま、眠りこける眉毛を見下ろし。
「あ、そうだ。こないだ貰ったあの下着があったような……んーと」
たんすの中をあさり、私はある物を手にして、深い笑みを浮かべました。

そして――

 

「ばかぁぁぁっ! なんちゅーもん履かせるんだよ!!」
「自業自得です。ああ、その象さんパンツお似合いですよ」
「離せ! お前こんな事したら後で……」
「後の事より、今の事心配したらどうです? 変態眉毛」

ぎゃーぎゃーと喧嘩する二人の声を耳にしながら、一人の男と一匹の大きな亀はため息をついていた。
「明日会議があるのに……いい加減終わりませんかねぇ」
男は手帳を広げ、ペンを走らせていると、亀は器用にグラスに入ったジュースを男の前に差し出した。
まん丸な目で男をじーっと見つめ……男は何度も頷く。
「そうなんですよ。もう毎回毎回喧嘩しながらいちゃいちゃ……」
グラスの中身を一気飲みすると、小さく息をつき。
「……思わず、呪いたくなる時もありますよ。
気まぐれな祖国のせいで彼女とのデートは流れてしまうし。
かといって一人でこさせると一週間帰ってこないのはザラだし」
黒い笑みで笑うと、亀はなだめるよう、彼の膝をヒレで叩く。
すぐに男もいつもの笑みに戻り、もう一度時計を見つめた。
「あー……今回の会議は欠席ですね。仕方が無い」
携帯を取り出し、どこかに電話をかける。
熱い南国の日差しを浴びながら。

「あっ……ふぁ、ど、どうですか。いい加減謝ったら……んっ」
「ぐっ……お前、そんなにゆすったら……お前こそそろそろ我慢できなく……」

いつもの通り、喧嘩しながらいちゃいちゃし始めた二人のあえぎ声を耳にしながら、男は何度目かのため息をつき。
「リア充爆発しろ」
呪いの言葉を吐きながら、砂の上に無意識に魔法陣を書いていたりしていたのだった。

 




初出 2011/05/13
某所で書かれたイラストを元に書いたSSでした。
喧嘩→いちゃいちゃ→喧嘩というループが容易に思いつく二人ですね。




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