「バレンタインや! チョコや!」
「一人楽しい身としては、バレンタイン商法に乗ってかないと寂しいですからだなんて事は置いときます。
兎に角、今年も売りまくりますよ!」
妙にハイテンションのベルギーと日本。
そう街中は甘い香りで包まれ、恋人達のイベントの日が近づいてきていた。
特に日本は『お菓子会社の陰謀の日』とも呼ばれるほど、チョコを贈る風習が根付いている。
だから毎年、新たなチョコ販売のネタを考えるのが仕事となっているのだ。
今年もチョコ大国のベルギーを呼び、新作チョコについて構想を重ねていた。

「やから、こっちのチョコは少し苦味があって」
「このチョコは……なるほど、ウイスキーボンボンなんですね」
机の上に並べられたチョコを試食しながら、様々な商品案について会議を続ける。
アルコール入りのチョコをかなりの量を食して、
そして会議の為、寝不足が続いていればどういう事が起こるか予想するのはたやすいだろう。
だが、当の本人達はすでに頭が回っておらず、更に試食を続けていた。

 

「せやから、おちんちんチョコなんてどうかな? 相手のを型とって」
「いやいや、男性に贈るのですから、おっぱいチョコはかかせません」
目の据わった状態のベルギーが、ウイスキーボンボンを手ににまりとした笑みを浮かべれば、
日本は澄ました顔で胸の丘の形を手で作り上げる。ただし、頬はかなり赤い。

そんな下ネタ満載の会話が繰り広げられて数時間、彼は不意にボンボンを唇に挟み、彼女の顔に近づけた。
彼女も意図を理解したのか、ぎりぎりまで近づき、唇でチョコを受け取る。
唇と唇が触れるか触れないか、紙一重の所で。
チョコが口内の温度でほろりと溶ける。濃厚なチョコの味と舌を熱くさせるアルコールの香り。

「何、考えてるん? 私を酔わせて」
「いえ、女性型のボンボンなんていかがかなと思いまして」
もう一度顔を近づける。
今度は唇をきちんと重ねて。
柔らかな唇を味わいながら、彼は手際よく彼女の服を脱がしていく。

「んっ、日本君、奥手のわりに上手やね」
「亀の甲より年の功と申しまして」
机の上に横たわった彼女の裸体を眺め、満足げに頷くと、試食用のチョコを取り出した。
それを彼女の身体の上に並べていく。
豊かな胸の谷間、滑らかな臍、そして。
「ここにチョコを濡れば、女体ボンボンの完成ですね」
魅惑の割れ目に半分蕩けたチョコを塗りつける。
念入りに指先で割りはいり、中の突起にまでしっかりとチョコを擦り付けた。
刺激で硬くなった豆を指の腹でつまみ、丁寧に皮を剥いていく。
溢れ出す蜜がチョコを溶かし、机の上に褐色の水溜りを作り上げていった。

「おや、この女体ボンボンは勝手に蜜があふれ出していきますね。
これではチョコで包み込む事なんて無理ですよ」
豆の先端についたチョコを舌で拭い、唇で軽くはさんでみる。
「ひゃっ、お豆さんはダメっ! ふぁっ」
身をよじり、快楽に身を委ねる。
身体の上に置いたチョコは、彼女の熱で溶け、白い肌に黒い線を残していた。
中々固まらぬチョコに、彼は大きくため息をついた。
「これでは女体ボンボンはできそうにありませんね。
それじゃあ……おっぱいチョコは」

「おっぱいチョコより、おちんちんチョコやろ。
日本君の頂戴」
蕩けきった微笑みで起き上がり、彼のズボンにそっと触れる。
ズボンの上から指で撫で、チャックを下ろす。
すでに大きくなった陰茎は、彼女に触れられ我慢できなくなったのだろう。
下着ごとズボンを下ろすと、天をむいた上体の陰茎が顔をだした。
彼女はソレを見てしばし、沈黙し。
「……すみません。ええ、わかってます。何も言わなくても言いたい事はわかります。本当にすみません」
無表情気味に呟く彼に、彼女はすまなそうな微笑を浮かべた。

「何でもないんよ。もう、日本君ってかわええなぁ」
先端に口付けをし、唇に挟む。
独特の男の香りを楽しみ、唇だけで上下にさする。
まずはそれだけ。それだけでも彼は気持ちよさそうな表情を見せる。
「まずはおっきくなったから、チョコを……」
胸についたチョコを擦り付けるよう、乳房で陰茎を包み込んだ。
飛び出した先端を唇でふれ、身体を前後に動かす。
溶けたチョコはねっとりと陰茎に絡みつき、粘着的な音を立て、潤滑をよくさせる。
擦れる感触で彼女も快楽を得たのだろう。
つんと立った突起が彼の身体に触れるたび、小さく悶え。

「ふぁ、んっ、すっごい硬い。んぁ……やぁ……気持ちいい」
巨大になった先端を口に含み、更に前後に擦るスピードを早め。
「くっ……いきますよ」
小さい彼のうめき声に、彼女は陰茎を口に含み、軽く吸い上げた。
途端にどろりと溢れ出す液体が彼女の口の中を穢し、飲みきれなかったものが口元から白い筋を作り上げる。

「んっ、日本君のはホワイトチョコやね。美味しい」
「はぁ……お粗末様でした」
しっかりと精液を飲み込むと、まだびくびくと動く陰茎を舌で舐め、丁寧に汚れを取り除く。
満足げな表情の彼とは違い、まだ足り無げな表情で彼を見つめ。
「もうちょい欲しいな。ねぇ……」
彼に枝垂れかかると、首筋に吸い付く。
頬を染め、ぴくりと反応する彼を楽しそうに見つめ、ゆっくりと押し倒し。


「ちょっ、待ってください! 一回抜いたらすぐには復活は……」
「ええやん。私は足りんよ。もっと日本君味わいたいの……んっ」
抵抗はしてみるが、女性に強くできない彼にとっては無駄な抵抗で。
腰の上で乱れ踊る彼女をぼんやりと見つめながら、段々と意識が遠くなっていき。

 

甘い香りが漂う室内に、雄と雌の香りが濃厚に混ざりこむ。
身体全体にまみれたチョコと愛液と精液。
重い頭を軽く振れば、隣で気持ちよさそうに眠るベルギーの姿。
足の合間から溢れ出す白濁液が、何があったのかをはっきりと示しだす。
「……ああっ、私は何て事を」
頭を抱え、彼は深い後悔に陥った。あまりに業の深い行動に気分が段々と落ち込む。
「アルコールのせいとはいえ、こんな事をしてしまって。ああ」
大きくため息をつき、絶望に満ちた瞳でぼんやりと天井を見上げ、ぽつりと呟く。

「……食べ物を粗末にするなんて……お百姓さんに怒られてしまいますよ」






初出 バレンタインぐらい
やっぱり日本ものの落ちは『食べ物』がしっくりくるような気がします。


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