「さて、そろそろ戻りますか」
満身創痍状態で呟く。
手には大量の卑猥な写真を持って。

私の名はピカルディ。フランスさんに属する使いっぱしり……ではなく、奴隷……もとい、使い勝手のよい玩具。
自分で言って少し虚しい気がするのは気のせいです。
(一応)尊敬するフランスさんの命の下、各国の『剥いた』写真を撮ってこいと言うことで、
恥を忍び、プライドはオワーズ川に投げ捨て、どうにかここまでやってきました。
なぜか頭に猫耳をつけられて。似合わないと思うんですけど、これが正装らしいです。
傷だらけになりながらも、現像した写真を眺め……これでよかったのかと首を傾げました。
ほとんど……いや、すべてがが男の裸体なのです。
唯一、女性のターゲットであったハンガリーさんは、なぜか喜々としてオーストリアさんを剥いてくれました。
さすがに『あなたの裸体も』とは言えず、オーストリアさんの写真を焼き回しするとだけ約束するしかありません。
いいえ、主であるフランスさんは美しければ男女関係ないところはあります。
だけれども、この結果に主はどういうでしょうか。
一応は誉めてくださるでしょうけれど……なんとなく自分の身の危険を感じなくもないです。
まあ、とりあえず、重い体を引きずり、帰路へつきますか。
これ以上悩んでいてもしょうがないです。
写真を懐に仕舞い込み、街道をのんびりと歩き……

途中、何かの衝撃を受けました。
くらくらする頭、薄れゆく記憶。
霞む目に見えたのは、冷めた瞳をした少女の姿と、無機質な光を放つナイフでした。

――頭が痛い。
ぼんやりとした感覚の中、光を見つけ、私は手を伸ばしました。
ふんわりとした柔らかいものが手に触れ、
「変態……」
冷たい少女の声。そしてまた頭に衝撃。

ガンガン痛む頭を抑え、声の持ち主である少女の姿を探しました。
その少女はすぐ横で私の顔を覗きこんでいたんです。
透けるような白い肌、長いまつげ、澄んだ瞳。
青いアンティーク風のワンピースドレスが彼女の魅力を一層ひきたてます。
ドールにでもしたら、人気の出そうな顔立ち。
しかし、ドールにしたら、一番の魅力である強い意思の宿った瞳が表現できないでしょうね。
そんな彼女が眉をひそめ、私の顔を覗きこんでいました。
きっと私の身を案じてくれたのでしょう。
まだくらくらしていますが、どうにか起き上がれそうです。
よくよく見れば、どうやらどこか室内みたいです。彼女が意識を失った私を保護してくださったのでしょう。

「看護ありがとうございます。えっと確か……ベラルーシさんでしたよね」
フランスさんの秘書(という名の玩具)をしていた時に、遠目に見た記憶があります。
清楚で儚げな方とは思いましたが、更に人の心配をしてくださる優しい女性みたいです。
彼女は私の言葉に恥ずかしそうに視線を逸らし、
「あんたには用ない。あのまま捨てておいてもよかったけど」
感謝されるような事はしていないと言いたいのでしょう。なんて奥ゆかしい女性なんでしょうかね。
1歩、2歩と近寄ってきて、私の真正面に立ちました。
「私が用あるのは、その懐の中の」
私にのしかかってくる彼女。白銀に近い髪が私の顔の上でさらりと揺れます。
ワイシャツの中に柔らかな手が忍び込み……

あああ、そんなに私を求めていたのですか。もしかして一目ぼれされたというものでしょうかね。
最近、フランスさんがはまっている『MANGA』というものでは、
廊下の角でぶつかり合った男女が恋に落ちるという魔法が紹介されていましたが、
もしかしてその魔法にかかってしまったのでしょう。
真面目一直線とフランスさんに言われた事もあります。
もう少し色恋沙汰を楽しめとも言われた事もあります。
これでも一応はフランスさんに属する存在。愛の国と呼ばれても憚らないです。
だから、積極的な女性に対し、こちらも積極的に愛を返さないといけないでしょう。
女性に対し、受身ではフランス男として失格です。

「わかりました。貴女の愛を受け取りましょう」
のしかかっていた彼女を強く抱きしめ、そっと彼女を横たえます。
いきなり抱きしめられ、戸惑ったのでしょう。護身用のナイフを私の首筋に当ててきました。
しかし、そんなナイフぐらいで愛は切り裂けません。
手首を優しく押さえ、服が脱げ易いよう、頭の上へと移動させました。
からんと冷たい音を立て、床に転がるナイフ。

きゅっと奥歯を噛み、恥ずかしさに耐えようとしている唇を奪います。
柔らかな唇の表面を舌で拭い、刺激で微かに開いた唇から口内へと侵入。
その間にも、積極的な彼女の足が私の下半身に向かったので、
太腿に手を沿え、滑らかな肌を指でなぞりました。
ぴくっと反応し、足の動きが収まります。
結構、手馴れているんですね。
口付けをしている間にも、私の下半身を足で気持ちよくしてくれようとしているだなんて。
でも慌てすぎで、靴も履いたままですし、何よりこのスピードでは蹴り上げる状態になってますよ。
あわてんぼさんは好きですけれど。
荒い息。私を見つめるうっとりとした瞳。
「クソが。私はお前なんか興味ない。その懐の兄さんの写真が……んっ」

ああ、兄であるロシアさんの写真にでさえ、この愛の営みを見られたくないという事ですか。
そうでしたね。これは私の配慮が足りませんでした。懐の写真を机の上に置く。
すると、手を振りほどき、私に背を向けました。
「これさえ手に入れば用はな……っあふぅ」
柔らかそうなお尻が、触って欲しそうに揺れていたので、スカートの上から優しくなで上げました。
机に手を伸ばす……ということは、バックでやるのを望んでいるんですよね。
本来は向かい会ってやる方が、お互いの表情も見れてよいのですけれど。
女性のリクエストにはきちんと答えるのが男というものです。

細い腰を抱き、ファスナーをゆっくりと下げ……意外にセクシーな下着が目につきました。
もしかして今日の日の事を考え、用意してくださっていたのでしょうか。
下着を見られた恥ずかしさで、ふるふると震える肩に唇を落とします。
「離せ! 殺す! くっ」
女性というものは、こういう時素直になれないものなんですよね。
大体、こういう時に言う台詞は天邪鬼です。つまり、『離さないで。好き』と伝えたかったのでしょう。

「大丈夫です。怖くなんてありませんから」
「怖いのはお前の繋がってない脳回路だ! ……んっ」
下着の中に手を入れ、優しく胸をもみ、硬くなった突起を指の腹で転がす。
片手はスカートをめくり挙げ、うっすらと湿った下半身へと忍び込みます。
「そこには触れる……やぁっ」
濡れた音を立て、指を飲み込みます。中は温かくて、それでいて指をしっかりとくわえ込む感触が……
やはり、女性の身体は神秘的ですね。
膣が一つの生物のように収縮を繰り返し、私の指を飲み込んでいきます。
「殺す殺す殺すころ……あぁぅ……やめ……いゃ」
がくがくとしてきた膝。
私が指を動かすたびに、切なげな声を上げ、腰を動かす姿はとても可愛らしいですね。

そろそろよいでしょうか。彼女の準備もできたみたいですし。
ズボンを下ろし、男根を取り出して、彼女の割れ目に沿わせ、
「ひゃっ! まさかちょっとやめろ今ならば半殺しで済ませる」
「そんな緊張しなくてもいいです。いきますよ」
恐怖に腰を引く彼女の身体を強く抱きしめ、男根を中へと挿入させました。
指を入れた時とは比べようもできないぐらいの快楽。
彼女の身体は、私の男根をしっかりと包み込み、それでいて締め付けるように収縮し続けます。

きっと彼女も快楽を感じているのでしょう。
もっともっと感じてほしい。だから、静かに腰を動かし、
「離せ! はな……うぅん…はぁ…やだ…兄さん」
抱きしめる腕に何かが落ちてきました。どうやら彼女の涙のようです。
快楽と、尊敬する兄への罪悪感でしょう。兄よりも私を愛してしまったから。
挿入したまま、彼女を膝の上へと引き寄せます。自身の重さで、私の男根を奥深くまで飲み込み。
涙が流れる頬にキスを一つ。手を胸元へと移動させ、豊かな胸を指でなぞりあげる。

悲しみの涙なんて快楽の海に捨ててあげます。
私の前で流しても良いのは、喜悦の涙だけです。

耳元に息を吹きかける。びくりと身体を震わせ、強い意思が残る目で私を見つめ、
「ん……後で100回殺す」
「ええ、望む所です。100回、死ぬぐらいの快楽でイかせてあげますよ」
腰をつかみ、上下に揺さぶるとぎゅっと目をつぶり、快楽に耐えようと唇をかみ締めてしまいました。
自分の声で周りに迷惑をかけたくないという彼女なりの配慮なんでしょう。可愛らしい声なのにとても残念。
でも、美しい唇に傷はつけたくないので、指を口の中に進入させます。
きっと声を抑える為に噛まれてしまうでしょうが、
指の一本や二本、彼女の唇を守るためならば、食いちぎられても安いものですよ。
「……くっ」
指に走る痛みに耐えながら、腰を揺らし……彼女の顔も恍惚の表情に変化してきて。

「…ふぁ…あぁっ!!」

一段と高い声。きゅっと強く締め付ける膣。その刺激に私の男根も限界を迎えました。
中にたっぷりと精液を吐き出します。全部出し切ってから、ぐったりとした彼女を膝の上から下ろします。
汗だくで荒い呼吸をする少女。股の間から白い液体を流す姿はどこか芸術的で。

そういえば……フランスさんから託されたカメラのメモリがまだ残っていましたね。
少々重いですが、どうにか身体を起こし、頭の上の……あったあった。
猫耳に収納されたカメラを取り出し、彼女をフレームにおさめ、
「何やってる! やめなさ!」
照れて止めようとする彼女の手よりも早く、映像媒体に麗しい少女の裸体を残しました。
うん。やはり写真よりも本物の方が何倍も可愛らしいですが、これは良い思い出という事にしましょう。
「……殺す」
ふらつく身体を起こし、カメラを持っている腕を抱き寄せる彼女。
ああ、もう一度やりたいという事ですよね。
壊れぬよう、カメラを机の上に置き、もう一度彼女の身体を強く抱きしめます。
「この写真は焼きまわしして、貴女の家にも送りますから安心してください。
あ、そうです。こんな美しい姿はロシアさんにも見ていただきたいですね。きっと喜びますよ」
私の言葉に感動したのか、再び瞳に涙が浮かび。

――その後、少し自分の心に正直になった彼女と、いろんな遊びをしたのですが……
長くなりそうなので割愛させていただきますね。



「割愛するなよ。それ大事な所じゃねーか。
ってか、それ脅迫だろ。
いや、それよりもリトアニアも真っ青な凶悪なポジティブ精神……
ああ、突っ込むとこ多すぎて、お兄さん疲れたよ」

私の戦果報告に、妙に疲れた顔を見せるフランスさん。
……脅迫とかポジティブ精神とかどういうことでしょうか。
私とベラルーシさんは純愛の末、結ばれただけなのに。
そりゃ、最後は泣きながら『お願いもうやめて』とお願いされたので、この愛に終止符は打たれましたけれど。
来るものは拒まず、去るものは追わず。それが私の基本ですから。

「お前は真面目だと思ってたから、こういう任務につかせたのに。
傷だらけになりながら、微妙な写真ばかりとってくる姿を期待していたのに。
それを理由にお前をひん剥いて遊ぼうと思ったのに。お兄さん寂しいよ」
「はぁ、でもそれならば何でそんな顔で、ベラルーシさんの写真を見ているのですか?」
「いや、それはそれ。これはこれ。
あの可愛いけど怖いベラルーシちゃんのこーんな写真とってくるだなんてハァハァハァGJ!!」
親指を立て、にこやかに笑うフランスさんの白い歯がきらりんと擬音を立て、光った気がしました。
フランスさんがよろこんでくれたならば、私は大いに満足です。
「それでは、これでこの仕事は終わりでよろしいですよね。では、自分の仕事に戻りま……」
がしっと腕を捕まれました。
にこやかなフランスさんの笑顔。
「よーし、次はリヒテンシュタインちゃんの所にでもいってもらおうか。コレこそお前の天職だ!」
テンションの上がったフランスさんは誰も止められるはずもなく。

私は大きなため息をつきました。












2009/07/22初出
今は伝説となった2009年のエイプリルフールのゲームに出てくるピカルディ君主役の話でした。
半オリキャラとなりましたが、かなり癖のある性格にしたので、書くのに一苦労でした。




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