「メリークリスマス♪ 幸せをお届けに来ましたよ」
いつもの挨拶とともに、僕はオーストリアさんの家の扉を開き。
……反射的に閉めてしまいましたよ。
だってしょうがないじゃないですか。
室内では何故か恍惚の表情をしたオーストリアさんが、
ボンテージ姿のハンガリーさんに鞭で打たれていたのですから。
一瞬ですが、やはり幸せそうな顔をした半裸のドイツさんやプロイセンさんも見えた気がしましたが。
うん、きっと気のせいですよね。
ですから、ここは素直に回れ右をして。
「ああ、フィンランドですか。丁度良かったです」
……遅かったようです。
息の荒い誰かに肩をがっしりとつかまれ……部屋の中へと引きずられてしまいました。
その部屋の中は悪夢……としか表現できませんでした。
壁に飾られた数々の鞭。床には色とりどりの大人の玩具。
紅いロウソクの炎が怪しげに部屋の中を照らし出し。
……ああ、本気で帰りたいです。
溢れ出す涙を拭う事もできず、僕はただ正座で彼らの話を聞くしかありませんでした。
「というわけで、今宵は女王様のハンガリーによる駄犬三匹の調教スペシャルクリスマスという事だったのですが」
真顔のオーストリアさんが半裸で……いえ、半裸の方が可愛らしいかもしれません。
荒縄にて綺麗に結ばれた裸体が非常に……非常にその……すっごく嫌です。
そんな感情がただ漏れだったのでしょうか。オーストリアさんは軽く咳払いをし、
「勘違いしないでくださいね。この行為は愛を確認するために必要な儀式の一つで」
「いえ、そんな事聞いていません。だから早く帰してください」
「そんな事よりも、体力に自信があるハンガリーといっても、
丸三日目ともなると三人相手するには辛いらしくてな」
「話を聞いてくださるだけで結構ですから。それでは僕はこれで」
「あともう少しで終わるというのに、ハンガリーはあの調子で。何とかならないだろうか?」
「だから、話を聞いてくださ……はぁ」
大きくため息をついてしまいました。
全く話を聞いてくれないゲルマン三人組。もう何を言っても無駄なんでしょうね。
胸元のファスナーを下ろし、一息ついているハンガリーさんの魅力的な裸体に
視線が釘付けになりかけましたが、
サンタクロースの袋に手を突っ込み。
きっと、プレゼントを渡せば僕はお役御免でしょうから、とっとと終わらせてしまいましょう。
この調子だと、怪しげな薬とかエッチな玩具とかが出てくるでしょうけれど、もう気にしてはいられません。
袋の中に手を突っ込み……柔らかな感触に眉を潜めました。
この感触はまさか……またあのパターンですかね。
もう一度ため息をつき……諦めてそれを取り出しました。
『おおおおっ』
ゲルマン3人の興奮した声がはもりました。
袋から出てきたのは二人の女性。
一人目はまだ幼い少女。きつめの瞳が印象的な活発そうな少女。
二人目は少女と女の中間ぐらいでしょうかね。
その二人の女性と、ハンガリーさんは良く似通っていて。
いえ、きっと同一人物でしょう。
あのゲルマン3人の考えることは良くわかります。
これはきっと……
最初に動いたのはプロイセンさんでした。
「ハンガリー! 俺のハンガリーだ!」
少し潤んだ瞳で少女に飛びつき。
「触るな! 馬鹿!」
見事、足の裏が彼の顔にヒットしました。
それでも幸せそうに崩れていくプロイセンさん。
……しっかりと白い液体を吐き出しながら。
その白い液体が靴にでもかかったのでしょう。
少女は露骨に嫌そうな顔をし、勢い良く彼の股間めがけて足を……
……こっちが何か痛くなってきましたよ。
赤くはれ上がったモノを更に足で踏みにじると、股間を押さえもじもじして見ていたドイツさんに
冷たい視線を向けました。
「てめぇも俺にやられたいんだろ。この変態が!」
「ああ……お願い……します」
少女の冷酷な声に軽く快感を覚えたのでしょうか。
手で隠していても、ドイツさんの大きなモノが天を仰ぎ。
「んじゃ、俺に奉仕しろ。許可してやるよ」
プロイセンさんに蹴りを入れると、すぐに彼は我に帰ったのか、周りを見回し。
「い、椅子か。わかった」
少女の鋭い瞳に射抜かれ、よつんばになって人間椅子へと自ら体勢を整えました。
息が荒いのはお約束です。
プロイセンさんの上に荒々しく乗ると、男らしく股を開き、ズボンをずらしました。
ズボンの下には何も身につけておらず、まだ生えてもいない可愛らしい割れ目が顔を覗かせます。
指で開いてみせると、くちゅりと音が響きました。
その音に、ドイツさんは喉を鳴らして……
誘われるかのように少女の前に跪いて、割れ目へと舌を伸ばし。
「んっ……」
可愛らしいあえぎ声に、僕は少しどきっとしてしまいました。
先ほどまでは生意気なまでに強気な少女の唇から漏れる甘い声。
きっとドイツさんも同じだったのでしょうね。更に元気になったモノからだらだらと我慢汁をこぼし始め。
「……誰が床を汚せって言ったんだ?」
冷たい声とともに、少女の足の指が憤ったモノを強く挟み。
「くっ……ゆ、許してくれ」
いつもの勇ましい姿はどこへ行ってしまったのでしようか。
ドイツさんは苦痛と快楽の混じった表情を浮かべ、割れ目に舌をはわし。
「は、ハンガリー、俺にももっと」
「黙れ。犬が」
少女の下で恍惚の声をあげるプロイセンさん。
少女の手が大きく振り下ろされ、プロイセンさんのお尻に紅い華を描いていきました。
それは何度も何度も。白い所がなくなるぐらいに。
その間、何度も何度も二人の白い液体が床を汚していき……
「あーっと、帰ってもいい頃ですよね」
思わず、ゲルマン兄弟の調教シーンにあっけに取られていましたが……逃げ出すならば今のうちですよね。
三人に気がつかれないよう、そっと玄関へと向かい……
……また足が止まってしまいました。
だって、あのオーストリアさんがもう一人のハンガリーさんを乱暴に犯していたから。
何が起こったのか理解できていない表情で、ただ後ろから強く貫かれ。
「ひゃっ……やっ、やだやめろ! 俺に触るな」
「『俺』じゃなくて……『私』でしょう」
首筋に軽く歯を立て、耳をしゃぶりあげる。
先ほどのМの瞳ではなく、少し狂気の混じった瞳。
……えっと何が起こったんでしょうか。
お二人の絡みをぼんやりと眺め。
「ああ、オーストリアさんってば、あの頃に戻ってしまったみたいですね」
穏やかな女性の声……あれ?
横を向いてみると、胸をはだけたままのハンガリーさんが立っていて。
しっとりと汗をかいた肌。さくらんぼのようなおいしそうな胸の突起が非常に気になりましたが。
それよりももっと気になるのは、彼女の言葉です。
「あの頃とは?」
「えっと……昔ですね、私がオーストリアさんの家に来た時……私の男らし……じゃなくて、
少々自由奔放の言葉遣いが気に入らなかったのでしょうね。
だから、ああやって無理やり調教されて……ああいうオーストリアさんも好きですけれどね」
大きくため息をつくと、彼の行為を熱の篭った瞳で見つめるハンガリーさん。
もうすでに身体は現在のハンガリーさんに近い状況ですね。成熟が早かったのでしょうか。
貫かれた所から、精液に混じった紅い液体が白い腿に流れ落ちて。
彼が腰を動かすたび、水音と彼女の苦しそうなあえぎ声が部屋に響き。
「ああなっちゃうと中々帰ってこないでしょうし……あ、そうだ。フィンランド君、薬持ってない?
ボンテージで擦れて少し痛くて」
大事な所がぎりぎり見えるか見えないかぐらいまでファスナーを下ろし、軽く手で撫でました。
確かに白い肌に紅い痕が残ってしまっていますね。
こんな美しい肌なのに勿体ないことです。
こういう時こそ、この袋の出番ですね。
僕はもう一度袋に手を突っ込み……一つの瓶を取り出しました。
「これですね。はい」
なるべく彼女の肌を見ないように薬を渡そうと……しましたが、彼女の手によって押し返されてしまいました。
「ごめんなさい。背中とかぬれないからぬってくれるかしら?」
はらりとボンテージを脱ぎ捨てると、真っ白な背中を僕に向けてきました。
えっと……まあ、これは医療行為の一つですし、仕方がありませんよね。
心の中で言い聞かせ、白い薬を手にとりました。
そして柔らかな背中にクリームを塗りたくり。
「あ、つけすぎました。ごめんなさい」
白い液体が彼女の背中を汚し……
……妙にエロティックなのはなぜでしょうね。
少しぬるっとする薬が、肌を擦るたびにいやらしい音を立て。
「……んっ、もっとよく擦り付けて」
「あ、はい。失礼します」
少しだけ力を込め、背中に擦りつけ。
……手に当たった柔らかな感触。力を込めすぎたみたいで、胸元まで手がすべってしまい。
「ふぁっ」
甘い声をあげ、ぴくりと反応した彼女。彼女の身体に少し熱を帯びてきた気がします。
「意外にえっちなのね。フィンランド君ってば」
とろりとした瞳で僕を見上げてきました。軽く頬にキスをしてくる。
そして僕と向かい合わせになり……豊かな胸やら、とろりと蜜をこぼす割れ目が丸見えになってしまいました。
薬にぬめった僕の手をとり、下半身へと誘導して……
「あああっ、そ、そうだ! 僕まだ仕事が残っているので!!」
ダメです! ここでこの雰囲気に飲まれていてはダメなんです。
僕は一礼すると、今だ淫らな宴が繰り広げられているオーストリアさんの家を慌てて抜け出しました。
その途中、ハンガリーさんのつまらなそうな呟きが聞こえた気がしましたけれど、聞かなかった事にします。
だって僕は男である前に、今夜はサンタクロースなんです。
熱くなった股間を袋で隠し、ソリで綺麗な夜空へと飛び立ちました。
……その後、あの魔の館……いえ、オーストリアさんのおうちで何が起こったかは知りませんし、知りたくありません。
ただ、いつまでも鞭の音やら、甘い声が響いていて、お隣のスイスさんに怒られたという噂も耳にしましたが。
……今日の日の事は、綺麗さっぱりと忘れることにしました。
2009/12/26初出
クリスマスネタ第二段。
三人ともどМになってしまいましたが……きっと愛故です。
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