視界がピンクに染まってた。淡いピンク色の空がゆらゆらと揺れる。
ただぼんやりとそれに手を伸ばし……
「ん、起きたか。もうちょぺっと寝ててもい」
上から聞こえたのは、低音の声。
威圧感がたっぷりで、子供が聞いたら泣いてしまいそうな声。
でも、それの正体を知っているからウクライナは頬を緩めた。
「スーさん、おはよ〜」
「ん」
彼女を見下ろし、頬を撫でる大きな手。それに目を細め、感触に酔いしれる。
しばし、彼、スウェーデンの手のぬくもりを楽しんでから、もう一度空を眺めた。
まだ働かない頭で、そのピンク色の空の正体を首をかしげ、考える。
「んと……あ、そっか。日本ちゃんのおうちで桜の花見をして。
それでたくさんお酒飲んで」
「で、服脱ごうとして」
そこで彼が押し黙った。
いつもむすっとした顔をしていて、表情を読みにくいが、長年付き合っている彼女には良くわかる。
その顔は拗ねているのだと。
意外に独占欲が強い。ただ、表にださないだけで。
「もう……スーさんごめんなさい。だからそんなに拗ねないで。ね」
両手を広げ、彼の首に腕を回し、顔を引き寄せた。そして唇を軽く重ねる。
甘いキス。少しだけ彼の唇からも酒の味がした。この様子だと彼も結構呑んだのだろう。
だからこんな子供っぽく拗ねて。
「スーさんが助けてくれたのでしょ。ありがとうね。
そういえば、みんなは?」
彼の膝の上に乗っかり、背中を預ける。男独特の胸の筋肉が気持ちよい。
彼の腕を自らの腰にまわし、抱きしめられているような格好にする。
こうすると更に彼の体温が感じられて好きだから。
彼女の問いに彼はちらりと後ろの方に視線を向けた。
つられて彼女も後ろを振り返り。
「あー」
死屍累々という単語が良く合うだろう。
いたるところに酒と戦った者たちが倒れ、もの凄い状況になっていた。
この状況では、大きな木の陰にいる二人に気がつく者はいなそうだ。
「しょうがないなぁ……って、私もその一人だったね。へへっ」
照れ笑いを浮かべる彼女が愛おしかったのか、今度は彼から頬にキスを一つ落としてきた。
頬が熱い。もう酒も抜けたはずなのに。
「んー、折角だから、二人だけでお花見しよっか」
「ん」
彼もそのつもりだったのか、彼の腕にはいつの間にか酒瓶が握られており。
二人は向かい合い、カップに酒をついで行く。
透明な液体のそれは日本酒という米でできた酒らしい。
ほんのりと鼻をくすぐる独特の香り。
おそるおそるくそれに口をつける。
少し辛めの味。でも好きな辛さ。注がれた酒を半分程度飲み干し、一息つく。
慣れていない酒のせいか、少しだけアルコールが身体に回るのが早くなった気がする。
「美味しいわね。あれ、スーさんは飲まないの?」
彼は注がれたコップには手をつけず、おいしそうに飲む彼女の顔を凝視しており。
少しだけ首をかしげ、もう一口飲もうとした時だった。
コップが唇から離される。唇からこぼれそうになった酒を、すかさず彼の唇が塞いだ。
二人の口の中で酒が広がり、彼の喉が音を立て、酒を飲み下す。
口の中には酒はなくなった。それなのに、まだ口の中を蹂躙する彼の舌。
少しだけ強引に。歯茎を舐め、舌を追いかけ、吸い上げる。
乱暴だけど、優しい彼の行動。
「んっ……んんっ……ふぁっ」
唇が離れる。今度は彼が酒をあおり、もう一度唇が重なる。
先ほど飲んだ酒よりも、少しだけ甘く感じる酒の味。
全身に酒が回っていくのがわかる。熱く火照ってくるのがわかった。
その間にも彼の腕は乱暴に優しく彼女の服の中に侵入していき。
「あぁん、もう。ダメぇ。こんな所じゃ。みんな起きちゃうよぉ」
軽く抵抗はしてみる。でも、彼女もそれだけじゃ済まないのを感じていた。
ちらりと背後の酔いつぶれた者たちに視線を移す。
それから彼の瞳を見つめる。大の男が拗ねた表情を見せている事に、苦笑を浮かべた。
小さくため息をつき、大きく手を広げる。
「はいはい。わかった。おいで。子供のように可愛いスーさん」
その言葉が合図となり、彼は隠された熱い感情をさらけ出した。向かい合ったまま、しつこいぐらいに唇を求められる。
それなのに、手は器用に彼女の衣服をはいでいく。
サスペンダーは外さずに、ブラウスのボタンを外し、豊かな胸を露にする。
つんと空を向いた桜色の蕾を指で転がし、彼は唇を離すと大きく息を吐いた。
「んっ、やぁ、ダメ。そんなおっぱいばっか嫌っぁっ」
大きなブラから胸を解放してやると、ふくらみが大きく波を立てるように揺れた。
ズボンの中に手を入れ、下着の上から秘丘を指でなぞり揚げる。
酒のせいか、それとも外でやっているせいなのか、すでに下着はぐっしょくと濡れており、蜜が彼の指を湿らす。
「……ウク、めんげーぇな。こんなに」
耳元でささやくような低音の声。頭の芯にびりびりと響き渡る。
それだけで、下半身に熱を帯びていくのが良くわかった。
「い、意地悪ぅ。スーさん嫌ぃ……やぁっ」
下着の合間から指が侵入し、ぷっくりと主張する豆を刺激し始める。
最初は優しく。徐々に強く。
何度も身体をあわせたから、彼女の身体は良く知っている。
どこをどう触れば感じてくれるかを。
大きな瞳に涙を浮かべ、身をよじらせる彼女が愛おしくて、更に指を中に侵入させた。
じんわりと指に絡まる蜜。指ですらきつく、奥深くに侵入するのは容易くなかった。
「強固な砦は……燃える」
男の瞳に熱いモノが滾る。過去のバイキング魂に火がついたのだろうか。
指で執拗に砦を攻め立てる。溢れ出す蜜を掻きだすように、何度も何度も。
無骨な指が彼女の中を何度もかき乱し。
不意にぴたりと動きが止まった。彼女の腿を閉じさせると、横に転がっていた酒瓶を取り出す。
「蜜酒……」
ぽつりとそれだけ呟くと、足と下半身にできた三角地帯に透明な酒を注いでいく。
「やっ、もう、そんなとこにお酒いれちゃ嫌よぉ」
軽い拒否はしてみても、彼女も腿に力を入れ、酒を零さないようにする。
透明な液体の中で揺れる金色の草原。その上に桜の花びらが数枚浮かび、幻想的な光景を作り出した。
「最高の酒。ん…」
口をすぼめ、液体を啜り、それから舌先で奥に残った酒をも吸い尽くす。
念入りに。丁寧に。何度も何度もなぞり。
「くすぐったいよぉ。もう、やだってば」
くすくすと笑いながらも、彼の頭を優しく抱きしめ、快楽を享受する。
「んっ、も、もう、そんなじらさないで。ふぁっ…お願い、ここに頂戴ぃ」
熱くなった身体は更なる刺激を求め、彼を熱い視線で攻める。
彼女の可愛らしいお願いに、彼の頬が緩み。
「あ、スーさん笑った。やっぱスーさんの笑顔……可愛い」
彼の首に腕を回し、頬に口付けをする。姉のような柔らかい微笑みを浮かべ。
だけれども、彼はむっとした表情をし、視線を逸らす。
しかし、彼女はわかっている。それが怒っているのではないことを。
その表情は。
「照れなくてもいいのに。スーさんってば本当に可愛……やぁっ!」
慈愛に満ちた笑みかあっという間に淫らな声へと変化した。
むっとした表情のまま、彼女の中へと侵入したから。
荒々しく彼女の腰を掴み、深くに押し込める。軽く引き抜き、再び奥まで突き刺し。
何度も何度も。強く、まるで無理やり犯しているかのように。
とろりとした蜜があわ立つ。
彼の背中に爪を立て、快楽から逃れようとするが、襲い来る快楽には勝てそうに無い。
「ひゃっ、やぁっ! スーさぁん、そんな強くぅっ」
髪を振り乱し、快楽に耐えようとするが。
「ウク、めんげぇな」
男の無骨な手で大きな胸を覆い隠す。少しだけ爪を立て。
その瞬間に、彼自身を締め付ける感触が強まる。
限界まで高まった快楽は、彼女の中で暴発し。
「……んっ…スーさんのがぁ……ふぁぁ……」
身体の中に入り込む液体の感触に、彼女も少し遅れ、甘い声を出し、果てた。
どんな行為の後でも、彼は彼女が気がつくまで腕を枕にさせてくれている。
心地よいけだるさが身体を支配しているが、どうにか瞳をあけ、
横で目をつぶっている彼に軽く口付けをする。
それでもぴくりとも反応しない。
いや、少しだけ彼女を包み込む腕に力が篭った。
反応していないようで、彼女にしかわからないであろう反応を返してくれる。
そして。
「……どうせ、また後悔してるんでしょ。乱暴にしたと思って。
スーさんってば変に真面目なのよね」
耳元で呟く言葉に不機嫌そうな表情を向け。
「んなこと……」
すぐにそっぽを向く彼が可愛くて、もう一度頬にキスを一つ。
それから仰向けに横たわり、空を見つめる。
蒼と淡い朱色と、横を向けば不器用な男。
「……花見って本当に楽しいわね」
「ん」
短いけれど、それだけで全てが込められている返事に、彼女は満足し。
「さて、皆が起きる前にもう一回」
輝く彼女の笑顔。今度ははっきりと引きつる男の顔。
「もう少し……ぐっ」
まだ復活していないのに、唇を重ねられ、今度は彼女から乱暴に唇を奪ってきた。
周りに転がる酒瓶を横目で見て、働かない頭でぼんやりと彼女の酒量を思い出し。
「皆が起きるまでに何度できるかな? ん、でも皆が起きてからでもスリルがあっていいかも」
完全に酔っているであろう彼女に押し倒され、まだ元気の無いモノを指で擦られる。
直接的な刺激と、脳内の快楽と、身体の疲労と。
これから始まるであろう彼女の一人舞台に、彼は小さくため息をつき、覚悟を決めた。「……ウクにゃ、もう酒飲ませね」
ぽつりと呟いた言葉は、すでに彼の上で舞い踊る彼女の甘いあえぎ声にかき消され……
拍手コメ返しの書き下ろし
スーさんとウクは長男長女的存在で結構お似合いだよなぁ。