「あいつら……人の家で何やってんだ」
水晶球に映し出された光景を眺め、男は大きなため息をついていた。
次々と映像を変える水晶には、どれも共通の場面が映し出されていた。
それは……所謂濡れ場というものだ。
会場の片隅で。庭で。パーティの終わった会場で。
水晶から上がる甘い声に、男の肩から力が抜けた。
「……ちくしょう……寂しくなんてないぞ」
強がっては見せているが、瞳には涙が浮かんでいる。
拳で涙を拭いとると、もう一度水晶の映像を凝視し。
唾を飲み込む音が聞こえた。
段々と呼吸が荒くなっていき、金属音が響き渡る。
やや前かがみになると、股間の前で手が動き始め。「ね、イギリス君、お手伝いしよっか?」
「うおうぁゃぁぁっ」
いきなり背後で聞こえてきた声に、面白いほどに動揺した男……イギリスは慌てて股間を隠した。
だが、元気になったモノはすぐに隠せるはずも無く。
「あら、元気だね。これならすぐ楽しめそうだね」
楽しそうな声の持ち主は彼の前にしゃがみ込み、そそり立つモノの頭を指で突っつく。
柔らかな女の指の感触に、彼は体を硬直させた。
眉を潜め、一喝しようと彼女を見下ろし。
一番最初に目に入ってきたのは、白い肌と魅惑の谷間。
悪魔をイメージしているのだろう。黒いフリルのドレスからむっちりとした腿も覗いている。
一度意識してしまうと目が離せない。
更に硬くなるモノに、彼女は笑みを深くし、赤い舌をちらっと見せた。
「……ウクライナ。先に言っておく。俺は女には飢えていな……」
「いいじゃない。一緒に遊びましょ。……お礼にちょっと援助してくれればいいからさ」
彼の言葉をさえぎり、勃ち尽くすモノに舌を這わせた。
ぬめりとした舌の動きに、彼は眉を潜め。
「……こっちも節約中だから、出せるのは限りがあるぞ」
どうにか冷静を保とうとする彼の言葉に、彼女はにこやかに見上げ、ウインク一つ。
「そっか。イギリス君早漏なのか。だから出せるのに限りがあるって……」
「うるせぇ! 誰が早漏だぁぁっ!!」
押さえていた感情があふれ出し、声を荒げ、彼女の頭を掴む。
そそり立ったモノに押し付けるように。
うっすらと開いた口にモノが入れられ、奥深くまで押し込められる。
「ん……んぁっ」
苦しそうに呻く彼女の声に、隠していた加虐心が蘇ってくる。
「早漏かどうか試してみろ。お前が壊れるまでヤってやるよ」
金色の髪を握り締め、乱暴に上下に動かす。
生暖かい口の中。粘膜を擦り揚げる感触。鼻に抜ける甘い声。
瞳には恐怖の色が宿って……彼の腕の動きが止まる。
大きく息を吐き、彼女の頭から手を離す。
乱れた髪をかき上げ。
「止めた。馬鹿馬鹿しい」
罪悪感が現れた……わけでは無い。
彼女の瞳に宿る喜悦の光に気がついたからだ。
「あれ、もうやめちゃうの? ちょっと乱暴にヤられるのも燃えたのに」
頭を離されたのに、彼女の舌はまだ彼の先端を弄んでいた。
きちんと手で根元を押さえながら。
ため息を一つ。呆れた眼差しで彼女を見つめ。「遊びたいなら遊んでやるよ」
「遊びたいならば遊んであげる」
彼の言葉に、彼女は笑みを深くして返し。
「んっ……」
ソファーが軋む。男女の重みによって。
腕を伸ばし、彼の背中に抱きつく。
彼が背中に纏っているマントが若干邪魔だなと、彼女は小さく苦笑し。
「マントも結構使えるんだぞ。こうやって」
ブローチが外され、マントが取り除かれる。
黒いマントを簡単にまとめると、それで彼女の手首を掴み、軽く縛りあげた。
「さて、ハロウィンらしくヤるとするか」
頭の上で縛られた両手首を押さえ、白い首筋に舌で触れる。
「ふぁっ……」
甘い声が零れたのを確認すると、首筋に軽く歯を立て、強く吸い上げた。
しっかりと痕がつくように。
口を離し、首の痕を目視した。
それはまるで吸血鬼に生き血を抜かれたような痕で。
「やぁ……んっ、そんな痕つけたら……皆にばれちゃうよぉ」
「いいだろ。ばれたらばれたで。
……どうせすけべな淫魔だ。お前がどこで男に股開いていても気にしないさ」
足を股の間に差し入れ、大きく股を開かせる。
短いスカートだったから、簡単に魅惑の布が露になってしまった。
黒いセクシーな下着。その中心はすでにしっとりと濡れていて。
脇から指を差し入れると、小さな水音を立て、泉に沈みこんだ。
準備はできていたのだろう。指をすんなりと受け入れ、更に刺激を求めるかのようにひくついていた。
布を指で持ち上げ、幅が狭くなった下着を軽く前後にゆすると、蜜は段々とあふれ出し。
「ふぁっ! やぁん…そんなじらさないで」
切なそうな瞳で顔を持ち上げ、唇を求める。それに応えるかのように、彼は唇を重ねた。
舌先がお互いの口内を荒し、鼻から抜ける甘い吐息が部屋に響き渡る。
「我慢できないのか。流石は淫魔だ」
嘲笑する彼の言葉に、彼女は高揚した様子で頬を赤らめる。
小さく唇を動かし、何かを呟くが、彼の耳には入らない。
「聞こえねぇよ。この変態が」
笑みを口の端に浮かべ、下着の隙間から指を動かす。
溢れる蜜を指に絡ませ、彼女の言葉を待つ。
震える肩、熱い息が零れ落ち。
「お願い……中に……入れて」
蚊の鳴くような声に、彼は笑みを深くした。
「そんなお願いされちゃ、しゃーねぇな。犯してやるよ。雌犬……いや」
荒く豊かな胸に指を突き立てる。
服の上からでも、はっきりとわかるぐらい柔らかな感触。
胸元から手を差し入れ、硬くなった突起を指で潰す。
「雌牛だな。こんなだらしないでかい乳しやがって」
こりっとした突起は、指で転がされるたび、硬さを増していく。
片手で胸を弄り、もう片方の腕で自分のポケットの中を漁り。
小さな金属の何かが現れた。
蝋燭の炎に照らされ、怪しい光に輝く。
それは装飾の施されたナイフ。
ナイフを目にし、彼女は一瞬身体を硬くした。
「心配すんな。これはお前を傷つけるんじゃなくて……」
濡れきった下着に刃を差し入れる。
ぷつりと小さな音を立て、黒い布が切られていく。
空気に晒される魅惑の双丘。彼の指が触れると、切なそうにひくりと動き。
「本気ですけべなやつだ。
いいだろ。望み通りいれてやるよ」
いきり立ったモノを彼女に沿え、何度か擦り付ける。
硬くなった豆に当たるように。
「ふぁ……ダメぇ、クリちゃんを……んんっ、ぐりぐりしちゃ……」
すでに勃起し、露になった為、軽い刺激でも彼女にとっては強い快楽へと変化させられ。「やっ! やぁぁぁっ!!」
大きく身体を震わせる。身体が硬直し、汗が一筋頬から首へと流れ落ち。
止まっていた呼吸が復活する。息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
肩で息をしながら、涙目で彼を見上げた。
「イったのか。気持ちよかったのか」
蔑んだ瞳に、小さく彼女の肩が震えた。
更なる快楽を求めている事は明らかだ。
彼は笑みを深くし、そそり立ったモノを穴にゆっくりと入れていく。すでに準備のできていた湖は、彼を飲み込んでいく。
先端は強く、中に入れば呼吸するかのように、全体をやんわりと包み込んで。
彼女が身体をよじれば。快楽に小さく震えれば。
反応するように湖は更に奥へと誘う。
まるで手でこするように的確に。
手で行うより温かく淫猥で。
体験したどの女よりも気持ちよくて。
「ぐっ、変態の癖になんでこんなに締め付けが……ぐぅっ」
彼のブレーキが壊れた。
どんな時も行為の時は冷静で。冷酷で。どこか冷めていたのに。
ただ腰を振り続ける。
奥へ、奥へともぐりこむように。
蜜があわ立ち、尻を伝いソファーを汚していく。
「ふぁ、すごっ、イ、イギリス君すごぃ……んんっ」
彼女も気持ちよさそうに甘い声を上げる。
犯しているはずなのに、逆に犯されているような感覚に陥り、彼の心に微かに焦りがうまれた。
それを追い払うかのように、彼は荒く腰を打ちつけ。
高まる激しい射精感。
熱くなる身体に、彼は小さくうめき声をあげ。
「ぐぅっ」
熱いモノが吐き出される感覚。
身体に押しよせる快楽と、一瞬遅れてきた脱力感。
大きく息を吐き、繋がっている部分に目を向ける。
ゆっくりと引き抜くと、まだ吐き出している最中のモノが小さく震えていて。
「ちっ、ガキみてぇ。女より先にイくだなんて」
ため息を共に、ソレを完全に引き抜く。
先端から残りがどろりと溢れ、少し遅れてから、湖からも白濁液が零れてきた。何度目かのため息をつくと、横にある一人がけのソファーに座り込んだ。
「……悪かったな。つき合わせて。
もう帰ってもいい……」
と、そこまで行っておきながら、彼女を束縛していた事を思い出し、苦笑を浮かべた。
「すまねぇ。コレじゃ行くにもいけねぇ……」
「そうだね。まだ私は中じゃイってないし、もっと付き合ってもらおうかな」
彼の腕に何かが巻きつく。
それを確認する前に、腕を背後に回され、しっかりと束縛されてしまう。
混乱する彼の前には、にこやかな彼女の姿と。
「ね、ルーマニア君、しっかり撮れてる?」
いないはずの男の名前を呼ぶ彼女。
慌てて周りを確認すると、机の上に置かれた水晶の前に、見知った男の姿。
その男は、同じオカルト仲間であるルーマニアだ。
男は水晶に手をかざし、なにやら確認すると、彼女に向かって大きく頷く。
「よーし♪ それじゃ、編集よろしくね。
私はもう少し遊ぶから、その映像使ってもいいよ」
楽しそうに言う彼女と、淡々と水晶の映像を確認する男。――そして――
「ちょっ、待て! 俺が悪かった! だから」
「ふぁっ、すごっ…イギリス君気持ちいいよぉっ……」
涙目で悲鳴を上げる彼の上で、腰を動かす満面の彼女。
なにやら視線をおくってきたルーマニアに気がつき、彼女は小さく息を吐き。
「やだよぉ……んっ、自分から腰を振れだなんて……んっ、できる訳な……ひゃっ
やだ……やめて、もう汚さないでぇ」
涙を零しながらも、必死に身体を動かす『演技』をしてみせる彼女に、ルーマニアは満足気に頷き。
「欲しい映像があったら言ってね。お姉ちゃん頑張っちゃうから」
活き活きと女優宣言する彼女といつの間にか遠い目になっている彼。彼の体力と精力が無くなるまで、その饗宴は続き。
『やだ……イギリス君……何を』
『うるせぇ! お前が壊れるまでヤってやるよ!』
まるで暴力のように繰り広げられる性行為。
そんな映像を前に、彼は頭を抱えていた。「イかれてる……」
「当たり前だよ。だって今年はいかれた帽子屋だもの。
あ、もちろんまた一緒にイくけどさ」
にこやかにしなだれてくるウクライナに、彼は体を硬くし。
「……すまん。ほんとうにすまない。だからそろそろ……」
「とりっく あんど とりーと♪ あまーい金色のお菓子くれても悪戯しちゃうぞ」
甘い口調の脅迫に、彼の瞳には涙が浮かび。
「さてっ、上と下と横と……どれからはじめる?
また無理やりでも燃えるし、皆に見えそうなところでヤるものいいよね」
イかれた彼女の言葉に、彼は怒涛の涙を流し始めたのだった。
初出 書き下ろし
ハロウィンネタ第四弾なまとめでした。
去年のコスでしたが、今年も色々やってくれそうで楽しみです。
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