賑やかな会議。
アメリカとイギリスと喧嘩を始め、フランスが煽り、ドイツが切れ、日本がため息をつく。
いつもの事。
その中で輪には加わらずに、冷めた視線で一同を観察している者がいた。
いや、一同と言うよりは女性陣というべきか。
暴れている男達を見て、ため息をつく女性と、楽しそうに微笑む少女に視線を向けた。
――あの女はどうせ貴族に調教済みだべし、少女は……あっさりと陥落しそうだはんで面白くね。
そすると――
兄に熱い視線を送り続ける少女と、やたら巨乳な女、魅惑の姉妹に視線を動かした。
――強気だ女ば堕とすのもえ。
だが、彼女らに手ば出すのは、彼女たちの兄ばどうにかしねと命に関わる。そすると――

最後の一人、カジキマグロを振り回し、イギリスとフランスを床に沈めている少女を見つめた。
微かな笑みを浮かべる。
そしてすぐにいつものぼんやりとした表情へと変化させた。
これならば警戒されることもない。
肩で息をしている少女、セーシェルへと歩み寄り、声をかけた。
「あ、ノルウェーさん、どうかしたんですか?」
無邪気な笑みを自分に向けてくる。
――これから何ばさいるか知ねつのは幸せな事だ――
あふれ出してくる邪気を押さえ込み、こちらも笑みを返した。


「おおおっ、コレがあの」
珍しいお菓子でほいほい釣れるだなんて彼も思っていなかった。
きらきらした瞳でお菓子を頬張る姿は幼くも見えて。
フランスとイギリスが贔屓にする理由がわかった気がした。
「慌てなくてもまだあるはんで、たくさんたべてけ」
「ふぁい、ノルウェーさんありがたいでふ」
リスのように頬を膨らませ、幸せそうな笑みを彼に向けた。
……その幸せな笑みを悲鳴に、そして快楽に鳴く姿に変えられる。
そんな感覚にぞくりとする。
――やはりあんこいじりより、めごい子の方がえな――
心の中でつぶやくと、饗宴の為の第一歩を踏み出した。

「紅茶のむか?」
「飲みます〜」
彼女に見えぬよう、紅茶の中に薬を入れる。
さりげなく彼女にそれを差し出し、
「あわっやっあ〜」
慌て過ぎたのか、彼女はスプーンを床に落としてしまった。
「そった慌てなくてもえのに」
スプーンを拾ってやると、無垢な笑みを向けてくる。
「ありがとうです」
彼女は中に何が入っているか知らず、疑いもせずに紅茶を飲み干した。
――さて、どやって堕としてやるべか――
ぼんやりと彼女の笑顔を見つめながら、様々な調教を思い描き……思い……思……

 

 

 

「おーい、そろそろ起きてくれないっすか?」
ぼんやりとした意識の中、聞こえたのはセーシェルの声だった。
体が重い。お茶している間に、いつの間にか寝てしまったのだろう。
重い瞼を開け、ふわふわとした意識の中で天井が目に入った。
いつもの天井とは違う。
そういや、セーシェルの家でお茶をして。

体を起こそうと、手を動かし……
「へ?何で動がね?」
途端に目が覚めた。改めて周りを見回し、異様な光景に気がついた。
……自らの異様な格好に。
いつもの服は身にまとっておらず、ほぼ全裸に近い状況。
いや、まだ全裸の方がマシだったかもしれない。
なぜか女ものの黒いビギニの水着を着ていた。

「え、あ、何?」
混乱しているノルウェーに彼女はにっこりと微笑んだ。
「おはようございます。良く似合ってるですよ」
その笑みは先ほどのように無垢な……とはいいがたい。
どちらかというと、妖艶な笑みといった方が正しいように思えた。
「ちょ、これ外してくれない?」
この状況では、彼女の返事も予想がつくが、一応問いてみた。
「嫌です。良くお似合いですよ」
くすくすと笑みをこぼし、彼の腹を指先でなでる。
程よく筋肉のついた腹筋をなぞり、首筋に唇を落とす。
指の動きはとても官能的で。感じる場所を的確になぞりあげる。
幼い外見とは相反し、妙に手慣れた手つきに、彼の快感は否応なしに高められていった。
薄い布だけがどうにか隠している股間が反応を示し、むくりと起き上がる。
それでも快楽から逃れようと、楽しそうに体をなで上げる彼女を睨みつけた。
「何でこんな事を」
「何でって……こんな事やろうとしていたのは誰でしょうね」
心の中を読まれたかと激しく動揺もしたが、そんな事などできやしないと自分に言い聞かせ、
できる限り冷静な声を出した。

「何の事だ?」
「私、わかるんですよ。貴方が何を考えていたか。
あの変態達に構われ続けた私をなめちゃだめです」
顔を近づけてきた。彼の唇を舌で拭い、唇を重ねる。
「私の事、調教しようとしていたでしょう。
乱れる姿を想像していたでしょう。
だから、紅茶の中に薬いれて、私を眠らせて、えっちな事をしようと」
綺麗な鎖骨にキス。そのまま強く吸い付く。
白い肌に残る赤い印。
「だから紅茶をすり替えたです。それを気がつかずに飲んだから……」
あのスプーンを落とした時にすり替えられたのかと快楽に揺らぐ頭で考える。


途端に、重要な事に気がついた。
あの紅茶の中には、睡眠薬と共に、神経を高ぶらせる薬も入っていた。所謂、催淫剤だ。
それを飲んだと言うことは……
全身に鳥肌がたった。鋭角になる神経。呼吸する事さえも刺激になるほど。
「へぇ〜随分と楽しい薬を私に飲ませようとしていたみたいですね」
つんと立った乳首を指ではじく。
その瞬間に彼は身体をふるわせる。
声にすらならない喘ぎ声を漏らし、薄い布を押し上げるよう男根がそそり立つ。
じんわりと先が濡れてきた男根を軽くなでる。

「あ、ちなみにこの水着、水に濡れると溶けるから。
ドイツさんとこで作られた水着らしいんですけど」
そこで普段の朗らかな笑みを浮かべ、
「あの変態眉毛が無理やり着せようとするから、ぶん殴って回収しといたんですよ。
ここで役にたってよかったです」
天使の皮を被った小悪魔の笑みに身体に衝撃が走る。
つまり、感じてしまえば、この水着が溶け、淫靡な格好になってしまうというわけか。
「わんつか待て、こいうのは女が着でこそ価値がではるつもの……」
動かない頭で説得を試みようとしたが、突然の光によって遮断された。
彼女が手にしていたのはカメラ。すっと血の気が引いた。
「だいじょーぶ。こういうのを好む女性も多いですから。
たとえば、ハンガリーさんとかハンガリーさんとかハンガリーさんとか」
絶望へと叩き落される。この痴態を誰かに見られてしまう可能性があるとは。
……しかし、心の奥底に何か小さな感情が生まれつつあったのはまだ彼も気がついていなかった。


――何でこうなった。俺は誰かば攻め立てるために。
加虐心ば満たすためにこの少女ば。
俺は誰かの泣き顔ば見るのが好きだばしで。
だはんで……あもうわかね――


絶え間なく攻め立てられ、思考回路が麻痺してきた。
すでに刺激によって先走り液が溢れ、股間の布は薄くなってきている。
あと少しの刺激で、黒い布から男根は顔を出す結果となろう。
だが、最後の砦をどうにか保つ。
ここで屈してしまったら、自分を失ってしまう気がするから。

 

「ぶー、もう少しなのに。結構しぶといですね」
不満そうな瞳。その瞳だけ見れば、純朴な少女にしか見えないのだが。
「しゃーないです。確かノルウェーさんってSなんですよね。だったら……」
何を思ったのか、自らのスカートをたくし上げた。
戸惑い気味に、頬を赤く染め、瞳を潤ませる。
「……ふぁ……ん、もう我慢できません。身体が熱いんです
や、こんな姿見ないでぇ」
シンプルな下着を横にずらし、しっとりと濡れた蜜壷を見せ付けた。
演技だとはわかっている。わかってはいても。
幼さの残る少女が涙目で、恥辱に満ちた表情を浮かべ、蜜壷を見せる。
望んでいた展開。
本来ならば、催淫剤を与え、未知の刺激に戸惑う少女を視姦し、
「くぅん……や、止まらないよぉ、見られているのに止まらない……ん、ふぇ……」
見られているのに、自ら慰め始め、蔑んだ視線に身体を震わせ。
白い布の合間から見えるサーモンピンクをした蜜壷。
しなやかな指は花びらを掻き分け、中へともぐりこむ。
きゅっと目をつぶり、手の感覚に酔いしれる。
自然ともう片方の手は胸へと移動し、意外に豊かな胸の先端をつまみ、こりこりと指先で転がす。
快楽の波に飲まれてしまいそうになる瞬間、彼の視線に気がつき、顔を背ける。
「や…んっ、見ないで、こんな私を見ないで……ふぁ」
それでも指の動きは止まらずに、羞恥と快楽の狭間で悶える。

完璧なほどのМ。この少女を調教できたのならば、どれほど楽しいものだろう。
だが、今は彼女がSで。彼女が彼を調教する立場で。
この痴態も、彼に刺激を与える作戦なだけで。
わかってはいる。わかってはいるが。

「ノルウェーさぁ……ん」
赤く染まった頬、涙が浮かぶ瞳、そして許しを請うように自分の名前を口にする。
それでついに感情が決壊した。
硬くたぎった男根が薄い布を突き破った。大きくしなり、天をむく。
先端から白い液体が吐き出された。その液体は彼の身体を濡らし。
「あはは、とうとう穴開いちゃいましたね。おちんちん立てて、せーえき自分でかぶって。
そんなに自分のせーえき好きなんですか?」
頭に響き渡る少女の笑い声。鼻をくすぐる自らの精液の香り。
黒い水着の股間部分はとけ、そそり立つ男根が顔をだしている。
身体についた精液も水着を溶かす要因となり、つんと硬くなった乳首が空気に晒されていた。
心を締め付ける嫌悪感。その嫌悪感は少女に対してか、
それとも少女の作戦に快楽を感じてしまった自分に対してか。
「んじゃ、変態さんなノルウェーさんをお仕置きしちゃいましょうか。
安心してください。お仕置き用のアイテムは、フランスさんと眉毛のおうちから強奪してきましたから」
ベッドの上に並べられた凶悪なアイテム。それらを楽しそうに選別する少女。
ぞくりと背筋を走る感触。その感触が何かを理解するまで、そう時間はかからないだろう。

 

椅子に腰掛けた少女。足を開き、跪く男の頭を撫で付ける。
男は溢れ出す泉に舌をはわし、快楽を与え続ける。
「ふぁ……ん、ヘタクソ。やっぱりノルウェーさんは……ふぁっ、そんな程度なんですね……くぅ」
与えられた罵声に、まだ微かな余裕が残っていたのか、不敵な笑みを浮かべてみせる。
まだ挽回する機会があると考えているのだろうか。
「その割にはしっかりと感じて……ぐっ」
彼女の足先が彼の股間を踏みつけた。
びくっと大きく身体を震わせるが、襲い来る射精感はせき止められているため、吐き出すことができない。
それどころか、快楽が拡大するたびに、締め付けられた根元に痛みを感じる。

「ダメですよ。抵抗しちゃ。
ノルウェーさんの亀さんは私のもの。亀さんの首元のリボンお似合いですよ」
無垢な笑みを浮かべる。黒く染まりきった混ざりけの無い純粋な笑みを。
蜜壷を舐め続ける彼の顎を足で上を向かせる。まっすぐに瞳を見つめ、
「全く、こんなマゾなのに、私を調教しようだなんて笑っちゃいますね」
もう片方の足で、股間をなで上げる。指に男根を挟み、わざとぎこちない動きで快楽を与えてやる。
「もしかして、デンマークさんをいびってるのって、逆にいじめて欲しいからですか。
それなのに全然気がついてくれなくて」
「違う!あんこはただ気にかねばし……」
「口答えするんですか?」
首につけられた鎖を引っ張る。途端に彼はバランスを崩し、床に転がった。

見下ろしてくる蔑んだ少女の瞳。
「こんな変態さんって知ったら、皆どう思いますかね。
ノルウェーさんは女物の水着を着て、おちんちん立てて自分のせーえきかけて喜んでいる変態さんだって」
罵倒されても、もうそれは刺激にしかならず、股間は更に元気を増していった。
再び股間を踏みつける。
「本当にノルウェーさんは変態さんです。最低。でも……」
笑みが深まる。股間から足を除け、ゆっくりとスカートをたくし上げた。
もう濡れきった下着はつけていない。
ぱくぱくと呼吸するように口を広げる蜜壷が目に入る。
彼はごくりと喉を鳴らす。高められた快楽。この魅惑の中入れれば、きっと更に快楽は高められるだろう。
手を伸ばせば届く距離にあるのに。いつもは有無言わさず頂いてしまうのに。

「これが欲しければ、あのカメラの前で『ノルウェーは変態マゾです。この変態にご慈悲を』と言ってみてください。
そうしたらリボンとって、中を楽しませてあげますよ」
いつの間にか設置されていたカメラ。顔が青ざめる。
もしこの映像を他の者に見られたら。デンマークやスウェーデンから蔑んだ瞳で見られるだろう。
フィンランドやアイスランドからも愛想をつかされて。
名誉と快楽の狭間に心が揺れ動く。


その間にも、彼女は見せ付けるよう自慰を始めた。
指を動かすたびに蜜が健康的な足を伝い、床へと垂れる。
濡れた音が部屋に響き渡る。小さく漏れる吐息。伏せた瞳。赤く染まる頬。
それはどれも彼のツボを突いており、欲望に襲われる。
だが、ここで指示通りに行ってしまえば、アイデンティティを失ってしまう。
きつくなる股間。荒くなる息。耳には吐息と水音しか入らなくなり。
起き上がり、膝をがくりとつく。唇をかみ締める。震える膝。

「……くっ、俺……ノルウェーは変態マゾだ。この変態にご慈悲ば」

消え去りそうな小さな声。
その言葉に彼女はにっこりと微笑む。
「でも、断ります。私、気まぐれですから」
きっぱりと言い放つ彼女に、彼は床に手をついた。
もう言い返す気力すらの凝っていない。崩壊しそうな感情。

心から楽しそうな彼女は、ゆっくりと彼に近づき、頭に生えているくるりんを強く握り締めた。
「くっ、や、やめ」
びくりと反応を見せる彼の頬に軽く口付けをした。
「やっぱりイタリアさんたちと一緒で、これも性的な何かだったりするんですか?」
舌先でくるりんを舐めてみる。びくびくと身体を震わせるのを確認すると、そのくるりんを胸に挟む。
胸でくるりんを擦り上げ、先から出た部分は舌で優しく舐めてやる。
時折、軽く唇で噛んだりもしながら。
「これどういう仕組みなんですか? 宙に浮いてるように見えて、それでも感じるだなんて」
次第に高まる射精感。刺激を与えられるたびに男根は切なげにびくりと震える。

「んー、もう限界ですかねぇ。じゃ、中に貰おうかな」
くるりんから手を離し、濡れそぼった蜜壷へと男根を導く。
横たわった彼はもう身体すら動かせないらしく、どこか虚ろな瞳で天井を見上げていた。
ぐちゅと音を立て、中へと収まる。全体をぎゅっと締め付ける感触。
「よし、頑張ったからご褒美です。たっぷり精液くださいね」
腰の上にのったまま、根元のリボンを解く。
「くっ……はっ」
解放された瞬間、せき止められていた精液が彼女の中へと注ぎ込まれた。
勢い良く吐き出される精液の感触と、膣内を跳ねるように暴れる感触に、彼女も身体を震わせた。
「ひゃっ、せーえきたくさん……ふぁ……やっぱ気持ちいい……」
腰を動かせば、結合部から白い液体が溢れてくる。精液は彼の腰を伝い、床を汚していく。
だが、もう言葉はでない。大きく呼吸し、腰の上で淫らに踊る少女を見つめるだけ。
反応の薄くなった男に、少しつまらなそうな表情を浮かべたが、
男根はまだ素直に反応してくれるのを確認すると、もう一度身体を動かす。


――そして、部屋の中に純朴な少女のあえぎ声だけが響き渡り。

 

 

賑やかな会議。
アメリカとイギリスと喧嘩を始め、フランスが煽り、ドイツが切れ、日本がため息をつく。
いつもの事。
いつもの事だが。
ちらりとある少女を見る。
あの日、散々調教され、もう一滴も出なくなった頃、やっと解放された。
それから彼女に会う機会はなかったのだが。
いつものようにフランスとイギリスにちょっかいをかけられ、カジキマグロを振り回す。
あまりに前と代わらぬ態度。
もしかしたらあの日の出来事は夢だったのかと思い始める。
だから、彼女は自分に無関心で。

「あーもう、誰か助けてくださぁい」
二人から逃れてきたセーシェルが、ノルウェーと目が合った。
腕にきゅっと抱きついてくる。そして二人に舌を出し、
「ノルウェーさん、妖精さんでも召喚してあの二人倒してください〜」
冗談めいた言葉。いつものおふざけ。
過剰に反応した自分が馬鹿だった。きっとアレは夢だったのだから。
「ノルウェー、セーシェルから離れろ!」
「セーシェル、そんな変な奴にくっつくぐらいならば、おにーさんの胸の中においで」
「イヤです。黙れ! 消えてしまえ。この変態!」
『変態』という言葉に微かに肩を震わせた。身体の奥が熱い。
そんな心のうちなど気がつかないようスで、ノルウェーの腕を武器代わりにして、二人を追い払おうとする。
のんびりとした雰囲気に、やっとノルウェーの口元に笑みが浮かび。

ちらりとセーシェルが彼の瞳を見つめた。
彼にしか聞こえない小さな声で。
「変態マゾさん。また遊びましょうね」

そして、セーシェルは二人から逃れるために会議室を駆け回り。


――どうやら悪夢はまだ覚めないようだ――

 


2009.09.03初出
どSセーシェルは書いてて楽しかった。
愛の国フランスと変態紳士なイギリスにかまわれ続けた少女だ。
まともなはずはない(断言)
ちなみに、水にとける水着は実在します。



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