「今日も仕事か?」
 小さな部屋の中、冷めた声が言葉を紡ぐ。
「いや、今日は休みだ。教授が何やら仕事でな」
 もう一つの冷めた声。こちらは女性のようだ。
「それなら――今日はゆっくりできるな」
 桜色の青年は整った冷たい表情を少しだけ緩めた。
 女性は小さく頷くと、青年の隣へと歩み寄る。
「今日はゆっくり――愛してくれ」
 静かに微笑むと、すっ……と目をつぶる。
 青年がやさしく微笑み、少しかがんで顔を重ね……

 ロボットとプログラム。同じ存在。
 ロボットとプログラム。近くても触れられないもの。
 
 触れられなくとも、柔らかい空気の中で二人は逢瀬を続ける。
 唯一、気がおけない相手。だからこそ、本当の自分を出せる。だからこそ、愛し合える。
 ――こんな時が永遠に続くものだと思っていた――
 しかし……

 


「教授、どこ〜」
 とてとてと走り回る足音。
毎度おなじみA-ナンバーズの最新作であり、誰にも頭が上がらない寂しき青年、シグナルはある部屋の前で立ち止まり、ドアノブに手をかける。
「っと、ダメだダメだ」
 慌ててドアノブから手を離し、赤面する。過去のある記憶を思いだしたからだ。
「前のようになっちゃ、またコードに殺されるからね」
 小声で呟くと、少しだけ、ドアの内側の気配を探る。誰かの話し声。
 乱れた呼吸を整えてから、軽くノック。
「教授、いらっしゃいますか? 入ります」
「ちょ……まて」
 耳にした事のないハスキーな女性の声が、彼を静止しようとするが、シグナルの行動の方が一足早かった。
 ドアは開かれ――シグナルの瞳に部屋の中の光景が広がる。
 中にいたのはにこやかな笑みを浮かべる正信と、苦笑しているカルマ。そして美しき桜色の女性。
 桜色の女性は突然の乱入者の姿に小さくため息をつき、気まずそうに顔を背ける。
 シグナルはそんな女性の行動に首を傾げつつ、とりあえず笑顔で会釈をした。
「で、何の用なんだい?」
「そうそう、あのですね、教授どこにいるか知りませんか?」
「父さんか……父さんは……」
 と、そこまで呟くと、意味ありげに桜色の女性を見つめ、
「――そうだね。僕も父さんたちに用事があるし、一緒に行くよ。
 父さんたちは確か、整備室の方にいると思うよ。今日は整備の日だからね――」
 ――正信は悪戯をする子供のような顔で微笑んだ――

 


「と、いうわけで、ちょっと外見的性別は変化しているが、これがコードだ」
 A-ナンバーズが集まっているのを確認するやいなや、前振りもなく言葉を発した。
「ちょ、ちょっと待ってください。何か『というわけ』で、どーしてコードが女性に?
 コードは男性のはずで、プログラムで、でもこっちでは鳥で……えーと」
 いきなりの爆弾発言に混乱し始める新参者シグナル。他の者は、正信の突拍子もない行動に耐性があるためか、軽いため息のみで終わっていた。
「あーえーうー……そっか。コードは鳥形だと女だったんだ」
「――それだけ悩んで、出た答えはそんなもんか。阿呆が」
 コードにきっぱりと言い捨てられ、声をつまらす。何か言い訳しようとするが、桜のように美しい女性(中身はコードだが)を目の当たりにしてしまうと、格好悪い台詞なんてはけそうにもない。
「ま、そーいうわけだから、後はこちらの世界では先輩の君たちに任せたよ」
 正信はけらけらと笑いながら、まだ混乱途中のシグナルの肩をぽんと叩くと、部屋を出ていった――

 

 そして――その場に残されたのは、人間の手によって作られた存在だけだった。
 ふぅっと大きくため息をつくと、コードは周りを見回す。
「えーと、えーと、女でコードは……コードが鳥で……」
 まだ混乱しきっている者が一人。
「うわ〜さすが正信。面白いことやるねぇ」
 興味津々なのが一人。
『……………………』
 興味なさそうなのが二人。
「見目麗しくなっちゃって……これでまた華が一つ増えたってわけか」
 コードの姿に見ほれているのが一人。
「ねね、姉様、兄様にはどんな服が似合うと思う?」
「やはり和服がいいのではないかしら?」
 何やらたくらんでいるのが二人。
「さて……次の仕事は……っと」
 すでに次の仕事に移ろうとしているのが一人。

 


 ……そして表情を読み取れないのが一人。
 愛し合っているはずなのに、まだ彼女の心を完全に読み取ることが出来ない。
 その悔しさに、その切なさに、彼女の横顔を見て、自嘲の笑みを浮かべる……

「おや〜なに浮かない顔してるんですか? 美女なんだからもっと笑顔みせてくださいよ。ししょー」
 オラトリオのおちゃらけた声にてコードが我に返る。
 いつの間にやら、オラトリオはコードの腰に手を回し、輝いた笑顔で彼(現在彼女)の隣に陣取っていた。
 オラトリオのナンパ癖はよく知っていたつもりだったが………
 コードは大きくため息をつくと、静かに腰に触れている手をつねりあげる。
「っててて、ししょ〜そりゃないっすよ〜」
「愚か者が。お前は女と見れば、誰にでもそうなのか」
「いえいえ、ししょ〜だからこそ……ですよ。ねぇ、レディ」
「……馬鹿が」
 今度は足を踏みつける。もちろん、かかとに全体重をかけることも忘れない。しかし、オラトリオも負けてはいない。
つねられた手を引っ込めると、今度は背後に回りこみ、両手でコードを包み込む。無論、さりげなく胸に腕が当たるようにするのは忘れていない。
「阿呆。いいから離せ」
 腕から逃れようと力を込めるが、いかんせん、男と女の力の差は明らかなものだった。それがたとえ、情報処理専門だとしても。
 腕から逃げることのできない事を悟ると、オラトリオはコードの手首を片手で押さえつけ、身動きを封じた。
「おっ、ししょ〜、意外に胸は小さめなんですね。でもこの細腰がなかなかいけるっすね」
 いつもは女性に対して紳士的な態度のはずだが、身内ということだからだろうか、かなり大胆な行動に出ていた。

 

「俺は小ぶりな胸も好きっすよ。よく言うじゃないっすか。小ぶりな胸は感度がいいって。
ししょうはどうなんですか」
 笑顔は紳士のまま、しかし行動は強引に。オラトリオの手がコードの着物の中に進入していく。
「ん、やっぱり着物の下は何も身に着けていないんですね。これはかなり高得点っすね」
 さすがは場数を踏んでいるだけあって、指の動きは速く遅く、やさしく強く、常に快感を生み続ける。
柔らかな果実をなで上げ、小さな突起を指ではじき、細くしなやかな腰を通り抜け、魅惑の場所へともぐりこむ。
「くっ……やめろ。細雪のさびになりたいのか……んぅ」
 素肌に触れる指先の感覚。少しでも気を抜くと、快感にも近い感触に飲まれそうになるのを、強い精神力でどうにか押さえ込み、
周りに助けを求めようとする。
 が、やる気のない二人はすでにどこかへ消えているわ、頼みの綱は次の仕事に駒を進めているわ、好奇心の妖精はただ楽しそうに眺めているだけだわ、
妹たちはコスチューム会議に華を咲かしているから気がつかないわ、期待はしていないが一応最後の砦になろうである若造はまだ混乱中だわ、
愛するものにまで助けを求めたくはないが、一応はそちらに目をやる。しかしなにやらまだ考えている様子でこちらの惨状には気がついていない……
 そう、この場に助けてくれそうなものは一人もいないのだ。
 ――絶体絶命――
 そんな言葉が頭に浮かぶ。だが、すぐにオラトリオの指の感触に心が乱れる。
「ししょ〜、ここはどんな機能になっているかご存知ですか?」
 耳元で囁く声にびくっと身を震わせる。度重なる魅惑の感覚に目は潤み、呼吸は乱れ、空気に触れている肌はじっとりと汗で濡れていた。
 下半身に手を伸ばしたオラトリオは、じつに楽しそうにコードの反応を一つ一つかみしめるように楽しんでいた。

 

「ここは男性のものを受け入れるため、びしょ濡れになるっすよ」
「んぁ……オ…ラトリオぉ……今やめれば……くふぅ、許しぃ……てやる……から」
 言葉は強気で。しかし、涙目で言う姿は許しを請う状況にしか見えない。
 いつも強気な者の、そんな姿を目の当たりにして、萌えない者はいない。
 現にオラトリオの股間は痛々しいほど晴れ上がっているのが、服の上からでもよくわかる。
「はぁ……ししょ〜、そろそろですかねぇ」
 コードの耳に、生唾を飲む音が届く。それがどういう意味を成すものかはなんとなく理解していた。
「オラトぉ……リオぅ……馬鹿な……真似……やめぇ……くっ」
 抵抗はしてみるが、すでに足はがくがくで力を出すことができない。
 ボタンをはずす音。なにやら布をずらす音。荒い息遣い。すべてが絶望へとまっしぐらである。
「いきますよ。ししょ〜、力を抜いて……ほい、ひっひっふーひっひっふー……と」
 ――それは違うだろうが――
 そんな突っ込みすら入れられぬほどの危機感。滑らかなヒップになにやら熱くぬるっとたモノがあたり、魅惑の場所へと滑り込み……

「どけ」

 鋭い声とともに激しい衝撃がコードを襲う。いや、実際のところ、コードではなく、オラトリオが主として衝撃を受けたのだが。
 コードはオラトリオから解放された安堵からか、床に力なく座り込む。乱れた衣服を直す気力すらないようだ。
 しばし息を整え、現状を把握しようと、周りを見回す。

 

 後ろにいたオラトリオは、なぜか下半身をまるだしのまま遠くで気を失い、その代わりにラヴェンダーが背後にいる。
 このことから想像は容易い。ラヴェンダーのキックだかパンチだかがオラトリオに炸裂したのだろう。
「……はぁ……ラヴェンダー、礼を……言う」
「いや、礼はいらん。後でもらうからな」
 不意にコードの視界が変わる。座り込んでいたはずだったのだが、やけに視線が高い。目の前には愛する者の読み取りにくい表情。足と肩に柔らかな感触。
 すでに思考回路がショートしていたのか、何が起こったかを理解するのに時間がかかった。
「ではコードはもらっていくぞ。後始末は頼む」
 ラヴェンダーは思考回路の停止しているコードを軽々と持ち上げ――いわゆるお姫様抱っこである――、混乱前のその場から去って行った。
 
 後に残されたのは――
「きゃっ、オラトリオさん!!」
「……大きい……」
「アー、何やってんだ!!」
「……馬鹿だね。ははっ」
 悲鳴。混乱。動乱。失笑。そして

「姉さん、そりゃないっすよ〜」
 悲しき負け犬の遠吠えだった……

 ――合掌――

 

 

「っちょ、どこいくんだ」
 動乱の声が聞こえなくなったころ、やっとコードは自分の立場を理解することができた。
 カツンカツンとヒールの音を響かせ、廊下を足早に歩き――仕事柄、もともと足が速いだけかもしれないが――ある部屋の前でぴたりと足を止める。
 歩いた距離、スピード、そして周りの状況から判断して、その部屋は<アトランダム>のかなり外れの方にあるらしい。
「……うむ」
 ドアを前にうなり声をあげるラヴェンダー。部屋の前まで来たのはいいが、両手がふさがっていてドアを開けることができないらしい。
 短い沈黙の後、なめらかな足技でドアを蹴破る。
「……お前なぁ……」
 嘆息一つ。ラヴェンダーの暴挙は今に始まったことではない。そうは分かっていながらも、つかずにはいられなかったのだ。
「ん?」
 返事は短い言葉のみ。ラヴェンダーは部屋の中を見回した。
 質素で必要最低限の道具のみそろえてあり、急な客などを泊めるための部屋であろう事はすぐに推測できる。
「ま、ここでいいだろう」
 小さく呟くと、彼女は部屋の中へと入り込む。――壊れたドアを踏みながら――
 そしてシングルベッドに腕の中のコードを放り投げた。もれるうめき声。
「ぐっ……」
 柔らかいベットの上とはいえ、投げられるとそれなりの衝撃はくる。強い衝撃をうけた腰をさすり、コードは澄んだ瞳でラヴェンダーを見つめる。
「ん? 顔に何かついているか?」
 無言にて現状の説明を求めたつもりだったが、失敗したようだ。愛しあうもの同士とはいえ、ラヴェンダーはどこかずれているように感じていた。
 一般常識が欠如している――というほどでもないが、奇妙なところで欠如していた。それを理解したつもりだったが……

 

 大きなため息。
「……で、なぜ俺様をこんな場所につれてきた」
「なんとなくだ」
 求めていた答えとはかけ離れた簡潔すぎるほど簡潔な返事に、コードは再びため息をつく。
「それとも――あのままオラトリオの玩具になっていた方がよかったのか?」
 ベットに腰掛け、身を乗り出しコードの瞳をまっすぐに見つめてくるラヴェンダー。苦笑しながら首を静かに横に振る。
「まあ、それは礼を言わせてもらう。
 ――にしても、あいつは!! 後で細雪のさびにしてやる! そもそも正信があんな計画を立てなければこんなことに……」
 怒りに震えるコード。しかし少しだけ……オラトリオの指の感触を思い出し、頬を赤らめる。
「しかし――そのおかげでこうやって触れ合える……だろう」
 ラヴェンダーがいつものように目を閉じ、コードを待つ。自分だけに見せる少女の顔。頬を緩め、顔を重ねていく……
 柔らかな黒い髪が頬をくすぐる。初めて触れるリアルな髪の感触。
 最初はついばむようなやさしい口付け。段々と唇が離れる時間が少なくなり、強くやさしく口の中を侵略していく。
「……ん……」
 甘く漏れる自分の声にコードは頬を赤らめる。体は女性とはいえ、ラヴェンダーを愛する時は男性でいたい。
 その想いからか、彼女の口内を強く、もっと強く求める。だがラヴェンダーも負けてはいない。
 コードよりも荒く熱く彼を求めた。
「……ふぁ……」
 唇がはなれた途端、甘い吐息が漏れる。

 

 リアルで感じる底なしの快感。それにおびえるかのようにコードの瞳は潤んでいた。しかし伝えなければいけないことはただ一つ。
「ラヴェンダー……愛している……」
「私もだ」
 ラヴェンダーの腕がやさしくコードを包み込み……
「さて、やるか」
 コードの体はベッドに押し倒された。無論、押し倒したのは少しだけ意地悪そうな笑みを浮かべたラヴェンダーだ。
「ち、ちょっとまて。こういう時は男がリードするものでは……」
「ん? 今はお前が女だ。だから問題はない」
 熱い唇がコードの首筋へと落とされる。そのたびに吐息がコードの口からこぼれる。
「あぁ……ん。ら、ラヴェンダ〜」
「で……首筋への愛撫の後は……ふむふむ」
 甘い声のコードとは対照的に、やたらと冷静な声のラヴェンダー。どこから持ってきたのか、手にはなにやら本を持ち、ソレを参照しているらしい。
「ここで耳元で……『イヤラシイ子猫ちゃんだ。僕のためにもっと甘い声で泣いておくれ』か」
「……ぁ……何を見ている……ん」
 コードのつっこみに、無言で手にしている本の背表紙を見せる。そのタイトルとは『にゃんにゃん天国。甘い寝床に迫る罠! 今宵、月夜にメイドと踊る』
 ――内容が想像できないタイトルだが、一つわかることはある。出版社から推測するに、その本は官能小説であるということ。それもかなりハードとうわさの……
 今日何度目かのため息がコードの唇からこぼれる。
「……そんな本、どうしたのだ?」
「正信からもらった。『資料になるだろう』などいっていたな」
「………………後でしばいちゃる」
 ぼそっと呟きをもらすコード。だがその呟きも、ラヴェンダーの絶え間ない愛撫によってすぐに甘い吐息へと変化した。


 短く整えられた桜色の髪を指で梳き、唇は首元から胸元へと移動していく。身じろぐたびにあらわになる白い肌を指でやさしくなで上げ、
着物の隙間から見える、柔らかい胸の果実に唇を落とす。
 ――だがしかし――
「ここをこうやって……『こんなに硬くして……まだこの秘密の木の実は熟していないのかい?ふふっ』……と」
 謎な官能小説を片手に行為に及ぶ姿はどこか珍妙である。コードは愛するものが奏でる快楽を貪欲に求める自分と、一歩はなれて奇妙な現在を見つめている自分を感じていた。
 息を荒くし、腕を伸ばす。手に触れるは青紫の女性。指先は滑らかに旋律をかなで、歌声は愛するものへと許しを請う。
「あ……いゃ……ラヴェ……ンダー……愛して……るぅ……」
「もちろん……私も愛しているぞ」
 耳元で囁く言葉に身を悶え、耳たぶに触れる唇の感触に頬を赤くさせる。
 甘い感触に身を任せ――ついでにラヴェンダーが持っている本の事は気にすることを放棄することにした――
 濡れた音が部屋に響き渡る。しなやかな指がコードの体すべてを舐め尽くす。桜色の柔らかい髪、白く滑らかな胸、快楽に染まる頬、
愛の言葉を囁けば、甘い蜜を際限なく流しだす。濡れた場所をゆっくりとなでつくし、小さな突起を摘み上げる。
「んぁ……あっ……やぁ……ん」
「『ここがえーのんか。淫乱やなぁ』……か」
 大きく反応する場所を探り当て、そこを激しく攻め立てた。時には強く、時にはやさしく、転がすようにつまむように……
 ――永遠と続くような甘いとき――

 

 

「さ、そろそろフィニッシュいくぞ」
 その時は唐突に訪れた。何度も何度も攻められ、感覚回路が麻痺しかけたコードが不思議そうにラヴェンダーを眺める。
 ラヴェンダーはコードの上から退けると、自らの服を脱ぎ捨て、魅力的な裸体をさらした。
 思わずコードの目が釘付けになる。しなやかな手足、無駄な肉のない均衡のとれたボディ。大きすぎず小さすぎず、適度な大きさをした張りのある胸。
 ――そして――
 股間に……あるはずのない大きな存在が一つ。
「あ、ら……ら、ら、ヴェ……んだ?そ……」
 衝撃のあまりに言葉が出ず、ソレをただ指差すだけ。
「ん? これか? コレは男根だが。お前にも装備されていただろう。何か疑問でもあるのか?」
 さらりといいのけるラヴェンダーにただただ言葉を失う。
 同様しまくるコードを置いたままで、ラヴェンダーは再びコードの体の上にのしかかった。
「さあ、力抜け……」
 やさしく耳元で呟く……が、その言葉は無駄に近い。こんな状況で力を抜けというのが間違いなのだ。
 急に女性のボディに入れられ、弟子という立場にいじられ、愛する者に触られ、ついには男女の立場が完全に逆の状態でヤられようとしているのだ。
「ら、ラヴェンダー、ま、まて…………あっ」
 静止の言葉を完全無視し、ソレは穴の中へと飲み込まれていった。散々いじられているせいか、初めてのはずなのにすんなりと進入をゆるしてしまう。
 途中、コードの表情を確認しつつ、ゆっくりとゆっくりと腰を沈ませていく。
「くぅ……いゃぁ」
「嫌なのか?」
「――いやじゃない」
 抵抗を試みるが、ラヴェンダーの首をかしげる動作が妙にかわいらしくて、つい自分の言葉を否定してしまう。


 そのようなやり取りの間にも、ラヴェンダーはコードの中へと進入し続けている。途中、なにやら引っかかる感触もあったが、特に気にすることなく腰を押し付ける。
 大きく息を吐き出すと、満足げに二人の継ぎ目を眺めてからコードと唇を重ねる。
「やっと繋がれたな」
「そんなはっきり言うな。……ばかものが……」
 愛するものと繋がった喜びが、はたまた立場が逆の悔しさのせいなのか、ラヴェンダーの言葉に頬を赤らめ、目を伏せた。
「では動くぞ」
「ちょ、まっ……あぁ」
 止める間もなく、腰を激しく打ち付けはじめるラヴェンダー。
 せまりくる快楽の波に、シーツを握り締める。手のひらの汗がシーツに染みを作る。濡れた音とコードの声、ラヴェンダーの息遣いが辺りに響き渡る。
 時折、コードの耳たぶをしゃぶり、胸をやさしくもみしだく。そのたびに甘い声で答えてくれる。
「くっ……そろそろいくぞ」
「あっ、はぁ……ぅ…ん」
 ラヴェンダーは腰の動きを止め、発射の準備をする……が、一足速くコードは身体を振るわせる。どうやら先にいってしまったようだ。
 一瞬遅れて、ラヴェンダーが中へと吐き出す。――少々不満げな顔で――
 肩で大きく息をするコード。瞳に浮かんだ流れ落ちそうな涙を指でぬぐい、頬に唇を落とす。
 優しい笑みを浮かべ、コードを゜まっすぐに見つめた。
「さ、もう一度いくぞ。今度は一緒にいかなければいかん」
「え?」
 コードが問い返す暇もなく、もう一ラウンド始まった。


 ――その後、16ラウンド目でようやくコードは解放されたのだった――

 

 

「で、結局は全部正信の陰謀だった……というわけだな?」
「うむ。陰謀かどうかはわからんが、『女型の身体に男型のプログラムを入れる実験』とかは若先生の提案だ。
 この身体にしてくれたのも若先生だ。若先生はオラトリオよりも大きいのを薦めてくれたが、初めてでそれはきつい。
末弟より小さいのをリクエストしてみたが……やはりきつかったか?」
「入れるときは優しかったから大丈夫だ……って、お前、弟たちの大きさを知っているのか?」
「当たり前だ。弟どもをよく知ることが姉の役目だからな」
「……はぁ。お前は……」
「何か問題でもあるか?」
「……なんでない。もうお前に言うのはやめた……ん?……んん、ふぅん……」
「……ふぅ……ふふっ、入れるときのコードは可愛かったぞ」
「……馬鹿……」
「……馬鹿でもいい。
 ――さ、もう一回やるか」
「……ま、まて。俺様、アレだけやればもう……あ、あ、あんっ」
「今夜は寝かせないぞ。コード」







ツインシグナルより。コード×ラヴェンダーという最凶兄姉カプもの。
強いおねーさんやおにーさんは好きです。
この前に書いたコーラヴェもあったんだが……どこしまったかなぁ。




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