雨が降る。長い長い雨が。
ぼんやりと窓の外を眺める男が一人。
瞳は陰り、時折、大きなため息が漏れる。
彼の瞳は遥か遠くを見つめる。同じ空の下で戦っている彼女を想って。

日が沈む。今日も一人だったなと、寂しげに微笑み。
――不意に聞こえたドアのノック音――
もうあまり期待しすぎない。どうせいつもの喧嘩への誘いだろうから。
けだるそうに立ち上がり、ドアをゆっくりと開け。

目の前にいたのは、美しい女性。
すこし癖のある金髪は砂埃にまみれ、華麗なドレスが良く似合っていたはずなのに。
今は軍服を身を纏う。
それでも前とかわらぬ美しい姿。
いや、しばらく会わなかった為、更に美しくなったかのようにも思えた。
言葉を失う彼の顔を真っ直ぐに見つめ、彼女はそっと口を開く。

「ただいま。久しぶりやな。親分」

懐かしい彼女の声。
だけれども、信じられそうに無い。
前に、寂しさのあまり、幻を見てしまったから。そのせいで一人の少女を傷つけて。
手を伸ばし、彼女の頬に触れようとする。だが、途中でその手は止まった。
けれど、触れてしまったら陽炎のように消えてしまうかもしれない。
それならば、幻でもいい。彼女の姿を見ていたい。
手を引っ込めかけ……

「触ってくれへん? 前のように頭撫でてな。『かわえぇな。ベルギー』ってかまって欲しいんよ」
少し上目遣いで見つめ、彼の腕を取る。
触れても消えない驚きに、彼は目を丸くする。

「ほんま……ほんま、ベルギーか?」
「ほんまよ。喧嘩終わって……真っ直ぐにきたんよ」
「ほんま? ベルギー?」
「ベルギー。私はベルギー。親分……スペインの子分のベルギー」
「……ほんまや。ベルギーや……」
震える手で彼女の頬に触れる。雨のせいだろうか、少しだけ冷たい。
「ベル……ベルベル……ベルギー!!」

懐かしさのあまり、彼の中で何かが切れてしまったのだろう。
荒々しく唇を重ね合わせ、彼女の身体を押し倒した。
まだ玄関口で。それもまだ雨の降りしきる中で。
ぐっしょりと濡れる背中の感触に、彼女は少しだけ眉をひそめた。
しかし、泣きそうな瞳をしている彼の姿にため息を一つ。
「しょーないな。逃げんからもーすこし落ち着いてなぁ」
とはいいつつも、この調子ではその無駄だと思い、彼の衝動に身体を任せる。

まるで飢えた獣のように彼女の服を脱がし、胸にしゃぶりつく。
少しだけ乱暴に胸を掴んでしまい、彼女の口からうめき声が漏れ、彼が不安気な瞳を向ける。
滅多に見ない彼の弱気な瞳。彼女は優しく頭を撫で、微笑み。
再び、男は彼女を強く求める。

細い腰を抱き寄せる。
豊かな胸に歯を立てる。
白いうなじにいくつも彼の証を記す。
溢れ出す蜜を指で拭い、更なる蜜を求め、中へと侵入させる。
指、唇、舌、何度も何度も。彼女の甘い声を聞きながら。
熱い身体に振り注ぐ雨。
彼女と再会するまでは、嫌な雨だったはずなのに。
火照った身体に気持ちよい。
もっともっと奥に入り込みたいから、腰を押し付ける。
中々侵入を許さない中。それは自分以外の男を知らない身体の証拠。
じわりじわりと広げ、奥深くまでたどり着いた。
でも、それだけでは足りない。
擦れる感触に身体を震わせる彼女の唇を奪い。
何度も何度も何度も身体を強く抱きしめ。
精を解き放つ。
けだるさが身体を支配する。
荒い息を整える事もせず、もう一度彼女の唇を食らい。
視界の片隅に映る空。

――厚い雨雲は消え、太陽の光がさす。だから彼は笑みを浮かべ――

 

 

「だからすまんっていってるやろ。なぁ、ベル、寂しかったからもう一度……なぁ」
「いやや! 何でリヒちゃんいじめん? そな親分嫌いや」
ベッドの上、男物のワイシャツを羽織ったベルギーは頬を膨らまし、そっぽを向いていた。
顔には少し疲労の色を浮かべて。

再会の熱い行為の後、汚れた身体を洗うため、シャワーにいったのは良かったのだが。
そこでスペインが乱入してきて、まず一戦。
洗い終わって、改めてベッドの上でもう一戦。
程よくおなかすいてきたから、おやつでも作ろうと彼女が台所に立ったのはいいが、
そこでも後ろから襲われ、一戦。
さすがに少し疲れたのか、眠りについた彼を傍らに抱き、少しうとうとし始めた頃に、
復活した彼に襲われ、再び一戦。
最後は中に入れたまま、今までの出来事をお互いに話し始め。
彼女には嘘をつけない、つきたくないから、あの雨の日の出来事をぽつりぽつりと話し始めた。
怒る事は予想していた。愛おしい彼女を他の女と間違えたのだから。
殴られる覚悟もしていた。しかし。


「ああ、もうリヒちゃん可愛そうに。きっと泣いてるやろな」
他の女を抱いたことでも、間違えた事でもなく、少女を泣かした事に彼女は怒っていた。
「ほんま、反省してるん?」
軽く振り返り、彼の様子を見る。そしてため息を一つ。
あれだけやったのに、まだ彼は彼女の魅惑的な身体に手をのばそうとしており。
目が合うと、気まずそうに笑みを浮かべ、一瞬だけ視線を逸らし。
すぐに彼の腕が彼女の腰へと向かう。

「反省してるん? 全く……んっ」
白いワイシャツから見える白い足が彼の指でなぞられ、たまらずに甘い声を漏らした。
「ああ、反省してるんよ。だから、ベルのエネルギーを充電させてな」
滑らかな太腿に指を滑らせ、細い腰へと向かう。
健康的な尻を手で覆い、もう片手でワイシャツの隙間から胸へと指を躍らせた。
何度も何度も高められた快楽。一度は冷めたとはいえ、再び熱が身体の奥底から蘇ってくる。
「もう、反省なんて全然……ふぁっ」
不機嫌ながらも、自然と唇から甘い声が漏れてくる彼女に、
彼は楽しそうに微笑んで胸の突起に唇を落とす。

「やっぱベルはかわええなぁ。こんな素直で。こんな可愛く反応してくれて」
「……くっ、私の身体、こんなんしたの誰? んぅん、最初だって無理やり……やぁっ」
身体を走る絶え間ない快楽に、彼女は腕を振り回す。
その些細な抵抗が可愛くて、手首を軽く押さえ、キスを一つ。
うつぶせにさせてから、近くにあったタオルで手首を縛り、ベッドの柵にくくりつけた。
そうすると、必然的にふわりとした尻が彼に突き出される状態になる。
涙目で彼を睨みつけ。

「やっぱ反省してないやん。またこんな……」
「愛してるからどんなやっても足りんだけや。会えなかった分、たっぷりと愛してやるからな」
裏の無い彼の言葉に、小さくため息を一つ。
呆れてはいたが……少しだけ強引な行為を期待していたのだろう。
溢れ出す蜜がシーツを汚していく。
腿を伝う蜜の感触に頬を赤らめ、ぷいっと顔を逸らす。

「……親分のばかぁ……やぁん……」

水音を立て、蜜を啜る彼の舌。
しつこいぐらいに奥へとねじりこみ、淫唇を唇ではさみ、豆を吸い上げる。
時折、肌を叩く音。白い尻に赤い跡が刻まれていく。
ワイシャツの隙間から見え隠れする豊かな胸。突起は痛々しく尖りきっており。
「んっ……なぁ、もっとその……んっ、あの他のとこも……」
蜜壷ばかり弄る彼に、耐えられなかったのか目を伏せ、それとなく催促をしてみる。
しかし、彼は意地悪い笑みを浮かべるだけ。
「他のとこってどこや? もしかしてここか?」
蜜壷の少し上、小さな穴に触れてみる。
ぴくりと大きく身体を震わせ、彼を睨みつける。

「違! そこはいやや……やっ、やっていったのにぃ」
まだ堅く閉ざしている穴に指をねじ込み、少しずつ広げていく。
前は何度かこの穴を使ったこともあったが。
しばらく使っていないと、かなりの違和感を感じ、悲鳴に近い声を上げた。
「やっ、親分嫌やっ」
「嫌やったら……俺の質問に答えや」
耳元で聞こえる冷たい声。時折見せるサドの部分が復活し始めたのだろう。
やっと元に戻ったという事に、気がつかれないように安堵のため息をつき……
すぐに尻に走る痛みに眉を潜めた。
ねっとりと耳たぶを舐められ、耳に息を吹きかけられる。

「俺と離れてて寂しかったんやろ。だから、喧嘩してる最中に一人で慰めてたんやろ」
「なっ……」
あまりに突拍子もない質問に、彼女は小さな声を上げた。
ここで抵抗してもいいのだが……抵抗した所で彼のサドの心に火を灯すだけだろう。
恥ずかしさに涙を浮かべ、小さな声でぽそぽそと話し出す。
「……んっ、そう、親分の事を思って……夜、一人で……くぅ」
「一人でって、やっぱやらしいなぁ。ベルは。こんな風にやって欲しかったんやろ」
突如襲う激しい快楽。
前ふりもなく、彼のモノが蜜壷へと侵入してきたから。
熱く滾る肉棒に、彼女の奥深くで何かがはじけた。
今まで保ってきた気丈さ。それが跡形もなく崩れ落ち。
「やっ、親分、もっと深くついてぇ! もっともっと……んぁっ、やぁっ」
「自分から腰振るんか。やっぱベルはえっちでかわええなぁ」
ここではじめて彼女はただの雌と化した。

彼を深い愛で包み込んであげていたはずなのに。
彼の深い愛欲の海に飲まれていたのは彼女の方で。

髪を振り乱し、身体を支配する快楽に素直になる。
震える体は貪欲に彼を求め続け……

 

「スイス君に頼んで、お茶会開かせてもらおうな。そこでリヒちゃんに」
「ん、もちろんや。チェロス作るって約束してるから。あ、そうや、ベルはワッフルを」
「わかってる。んっ」
ベッドの中でシーツに包まれ、まどろむ二人。
心地よいけだるさに彼女は瞳を閉じ……また唇が重なった。
瞳を開けると、そこには目を輝かしたスペインの姿があり。
「……親分はほんま、底なしやなぁ」
今日何度目のため息だろうか。身体はだるいがしょうがない。
窓の外を眺める。もう太陽は高い。
温かい太陽の光を浴びれるのはいつの日になるんだろうとぼんやりと思い。

でも、すぐ隣にまぶしい太陽がいてくれるんだと幸せをかみ締める。

「愛してる。親分。大好きや」
彼の頬に優しいキスを一つ落とし、彼女は満面の笑みを浮かべた。












拍手のリクにあったスペイン×ベルギー
……おかしいな。ただのラブラブにしようと思っていたのに、
何で親分がSになったんだろ……






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