今回は直前まで『同じ空違う空』の新しい製本方法などをいろいろ思案していて、
製本に三日くらい取られてしまい、こっちのほうがいっぱいいっぱいでした。
校正に時間をもっとけけるべきだった…!とか、製本がやっぱり、曲がる…!とか、反省しきり。
しかし案外思ったとおりに出来ました。
内容で一番燃えたのが、本文ではなくて巻末の「なんちゃって予告」だったというのはお約束で…!
これを作っている間になんだかエロスイッチが入り、マジにこの中のどれかの話をやってみたくなりました(笑)。
ちなみに内容はこんなんです。アホです。
本文ためし読みが出来ます。最初の部分だけすが。ここからどうぞ。
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後ろ手に一つにして縛り上げたとき、はっきりと体が震えたのが判って、
王都楼はちょっとだけ意外な気がしたものだった。
その震えは、拘束されることが怖いからおこったものではない。
怯え、恐怖、そんなものとはあきらかに違う、かすかな、
しかし確実に何かを期待している慄きを、王都楼は眼下の男に感じ取った。
男が脱いだジャケットの赤が、視界の隅でちらりと揺れた。

「…もしかして、こういうこと、慣れてんの、検事さん」
「………御剣だ」

――――どうやら本物みたいだな。
王都楼はその端正な顔を、ほんの少し歪めた。
あきらかに欲情の兆しを見せている声音に、彼は確かに興奮を覚えているようだった。
後ろ手にネクタイで縛られ、ベッドの上に横にされている、という状況で、
漏らす声としてはあきらかにそぐわない。

「ん、じゃ、御剣サン、……いや、検事さん、の方がいいんじゃないの、本当は。ね?」

途中で声のトーンを少し下げる。もう舞台は始まっているということを、
眼下の男にもよく、教える必要がある―――と、王都楼は思ったからだ。
名前を呼ばす、わざと最後の「検事さん」とゆっくり、一音一音区切るように言う。
その声に、声を流し込んだ耳たぶがかすかに、
しかし確かに慄いたのを王都楼は見た。
選んだのは自分だが、選択したのはあんただよ。
そう、それを教える必要がある――――彼には。

上着だけ脱いだシャツの下の肉体は、案外と鍛えられているようだった。
脱いだらもっと貧相になるかも、と思っていたがそうでもない。
意外だった。

「なんか運動してたの、検事さん? 
運動不足で太ってるってのとは、違う体してんじゃない。
…ここ、とか」

そう言って、わき腹をするっと撫でる。
途端、ひくり、と筋肉が緊張した。
案外と感じる部分が多いみたいだな、と王都楼は感心する。
感度が高い、ということは楽しみ方を知っている、ということだ。
潔癖そうな顔してんのに、意外とお楽しみらしい。
だからなのかな、こんなことを頼むのは。
意外?
いや、…彼ならあるかもしれない、と思っていたのかもしれない。
そんな雰囲気が、彼にはある。

「ここ、…とか」

王都楼は、今度は腹の筋肉の筋に沿って、人差し指を撫で降ろした。
ベストのボタンに指先が引っかかる。
それがまた、たまらないらしいようで、御剣の体が逃げるようにもがいた。
その様がどこか、捕らえられた獣のように見える。
罠にかかったウサギのような。

「ここなんか、……どうなの?」

間違えたふりをして、前立ての部分にかすめるように触れると、
かすかな欲望の兆しがあった。
たったあれだけで、もう興奮しているらしい、この検事さんは。
とんだ淫乱ぶりだな、と王都楼は唇の端で笑う。

「…な、何がおかしい」

眼下の御剣の目があきらかに動揺して揺れている。
思ったよりもずっと、言葉の揺さぶりに弱いらしい。
仕事場ではこうはいかないだろうが、ここは彼の仕事場ではない。
どっちかといえば、ベッドの上は、王都楼の仕事場に近いといえた。

「震えているわりには、準備出来ているようじゃん、検事さん」

検事さん、とよく聞こえるようにもう一度言う。
それがこういう人種の興奮を高める方法の一つであることを、王都楼は知っている。
仕事が高度で厳密で、替えがきかない激務であると本人が思っていればいるほど、
その傾向は顕著になる確率は高い。

「ずいぶん熱いみたいじゃん。…ココとか?」

ぐっと力を入れて前を握ると、あきらかに狼狽した顔が羞恥に歪むのが見える。
あまり力を入れて握ってしまっては、この先の楽しみが半減してしまう。
萎えることのないように、もっと興奮するように、―――こするように、こねまわすように、
……育てるように。ゆっくりと、加減してこめる指先の作為。
あせる必要はない。
焦らす必要もないが。

「…んっ、……く、」
「お、雰囲気出てきたね? どうやら、検事サマはこういうのがお好きらしい」

衣服の上から、直接な刺激。
わざと、形を確かめるようにゆっくりとなぞって、
まだ少しやわらかい肉に芯棒を通す作業の、下準備をする。
てのひらで撫でて、指先で先をいじる。少し――少しだけ。
それでも、もう手の中でそれは硬度を増している。
…可愛いものだ。
わざと形をたどるように、指先で輪を作って撫で上げる。びくりと背中が揺れる。

「だ、黙、れ……っ」
「ん? 聞こえないなぁ」

ここで言われた通りに黙ってしまうのも、ある程度は効果はあるだろうが、
どうせなら、言葉で辱めてやった方が面白そうだ。
特にこんな、普段からそれで仕事をしているような人間には。
仕事道具で辱められるのって、興奮するだろ?

「それとも、体がもう熱くて熱くてたまんないから、早く、服脱ぎたいの?」
「ち、違……うっ」
「そう? そうじゃないのに、こんなにしてるんだ…?」

完全に嫌なら、それなりの態度でしめして欲しいもんだよ、検事さん。
違う、なんていいながら、目が泳いでいるじゃないか。
待っているんだろ、その先を。 
王都楼は御剣の声を聞いて、
まだとめたままだったベストのボタンをゆっくりとはずし始めた。

「じゃ、ゆっくり脱ぐほうがいいんだ。マニアだなぁ」
「…な、……」

御剣の喉が、ごくり、と鳴った。

「脱がしてほしいんだろ、―――検事さん」






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