昼食もそこそこに書類に目を通す午後 藤吉の専用電話が鳴った
 受話器を上げると彦佐から相手の名が告げられる
 少しの間の後 電話口に出た相手に藤吉は話しかけた
「レイくんの方から電話をくれるなんて珍しいでゲスね」
 軽快な口調で尋ねる
 三国コンチェルン総帥嫡子として養育され、幅広い分野で事業を手掛ける藤吉。
 電話の相手は許婚のレイである
「行ってもいいか」
 突然レイが訪問するのはいつもの事。
 しかし今回のように先に断ると言うのはとても珍しい事だった
 「構わないでゲスよ」と返事をしながらレイの言葉の裏側にある決意じみたものを
藤吉は感じ取っていた

 藤吉に魅かれる自分がいる
 信じられなかった
 レイはわざと三国邸へ停泊を繰り返した 
 こいつには魅かれていない そう自分に言い聞かせるように
 だが思惑とは裏腹に 一緒に過ごせば過ごす程胸の中の感情は
どうしようもなく膨らんでいくばかりだった
 幾度となく時を重ねる内、
屈託もなく気持ちを形にする藤吉に 自分を偽るのが馬鹿らしくなるのと同時に
レイは心底むかついた
 こいつにも俺と同じ気持ちを味合わせてやらないと気が済まない
 抑えがたい恋慕 止め処ない情感
「てっとり早いのは やっぱ性欲だろうな」
 含み笑いをしながら藤吉の来るのを待つ
 少しずつ脱いでいくのにエロスがある、と 何かの本で読んだ
 カンタンな手は野球拳だろう
 これなら無理なく話が持ち込める
 案の定 「豪くん達ともよくやるんでゲスよ」と藤吉は乗ってきた
「男が脱いでもつまんないから わてが負けたら着込むでゲス」
 最初の勝負はレイの負けだった 今回の敗北は都合がいい
 不敵に笑いながらレイは上着を脱ぐ
(なんで負けたのに笑ってるんでゲスかね?)
 ゆっくりと拳を固め 改めて構えるレイ
「さあ、ゲームを続けようか」
「レイくん キャラ変ってないでゲスか?」
 レイを取り巻くよくわからない雰囲気に藤吉は圧倒されてしまう

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