夜には桃が 第0夜


「んぁああっ……んんっ……ひゃぁぅ……」

人里離れた峠道。国と国とを結ぶその道は、地元の人間からは「鬼が出る」という理由で忌避されている。特に夜間そこを行き来する者など存在しなかったし、極稀に居る"住民の意見を聞かない人種"は、例外なく峠を渡りきったことがないという。
鬼を祓おうと祈祷師や名の在る剣豪に依頼するも、その男達は決まって峠の麓に骨だけ転がっている始末だ。
そんなわけで夜のこの道、ちょうど峠に位置するボロ小屋の中なんて気にする者はいなかった。

「んふっ…ああぁ…ああぁっ…あ、あ、あっ…」

板の間が隙間だらけのその小屋の中では一組の男女が馬鍬っている最中であった。
既に何回も果てているのか、板の間はどちらのとも判らない液体で濡れ、灯台のゆらめく光を反射している。人が居れば、その濃い精臭に顔をしかめるかもしれない。もしかしたら既に何匹かの獣がその匂いを嗅ぎ取っているのかもしれない。
はだけられた女の着物も、既に元の色がわからなくなってしまっていた。

「くっ…はぁ…どれだけ具合良いんだよ……はぁっ」
「あら、んんっ……褒めてっ、ん…くれてるのかしら?…あぁん……」

男の方は快楽から来る苦しげな声で女に自分の一物を突き込んでいた。後ろで結んでいた紐が解け、痛んで茶けた髪が肩にかかっている。時折その髪が目にかかるが、目の前の美女に意識が行ってしまっているようで全く意に介した様子は無い。まるで獣のようだ。
対して女の長い黒髪は背中へと張り付き、薄い灯りの元でもその十分な艶が見て取れた。
肉棒をがむしゃらに突き上げ、上に乗った女の体を不規則に揺らす。そんな男を見ながら妖艶に微笑み自らも腰を横に揺らして快楽を貪る。二人の息は快楽を得ようとする一点で繋がっていて、結果時間を増すごとにその交わりは濃いものになっている。
ふにふにと柔らかい胸に手を伸ばした男は、下から舵を取るかのようにそれを掴んだ。
その腕に自身の腕を絡ませ、女は更に強く揉ませようと手を重ねて男の手を強く押しつけていく。

「んぅぅっ……ぁあ、いッ…はぁっ……はぁっ……んあぁうっ…」

ごりゅごりゅと下から突き上げられる感覚は、女に至上の快感を与えていた。
強く突かれる度に息が詰まり、それすらも爆発前の快楽を更に引き上げる材料にしかならない。男のモノは女のそこに"丁度収まりきらない"大きさで、今まで彼女が喰らって来た男達の中でも最も相性が良く感じられていた。それは一突きする度に彼女の奥を小突き、何刻も交わり続けて敏感になった膣壁を擦りあげてくれる。
男からすれば、これほど魅力的な女は今まで居なかった、といえる。体の相性は抜群で、体力も絶倫、そして肉感的な体の持ち主とくれば、殆どの男は引っかかるであろう。それに加え、彼女はオトコを惹きつけるような匂いを常に纏っていた。
光と匂いに吊られた蛾は、蜘蛛の糸に足を絡め取られていた。

「ぐっ…う、あああっ……くっ…」

男の苦しそうな声を聞くと女の頬に更に赤みが差し、口元がますます愉しげに歪んでいく。

「我慢、してるのぉ?…今更…んうぁあッ…中に出すの…んんっ…躊躇うかい……?」

ぐじゅぐぢゅぬちゃぬちゃ、と何とも下品な音が聞こえている。二人の混合液が、密着した結合部から毀れずに残っていて、激しい抽送により泡立つ程にかき混ぜられていた。

「しかし、なんつー量…っ……体がおかしくな……がっ…」

どんどん吸い付きを増して行く秘部は、咥え込んで離さない吸盤のように男の腰を引かせずにいた。足を絡ませて自身をより深くへと押し込むと、上で快楽を示す声が返ってくる。

「んぁあっ……あ、ァ、あぁ……んんぅぅっ…ああ…く…ん、んんんっ!…」

単純な抜き差しから回転を加えた動きへと変え、最奥を擦りあげながら中をかき回してやると、女はたまらず体を震わせた。
その震動が男には締め付けとして還元し、更に興奮させでしまう。
女の体に酔っていた彼には、それが引き金になった。

「んふ……んああぁあぁァァアあぁっ!!!」
「ぐえ…っ……う……つーか…何回目だよ…ハァ…ハァ……」

肉体に溶かされていた男の理性が少しだが元に戻った。しかし腰の動きはその程度で止められるようなものではなく、無意識の内に小刻みな抽送運動をしていた。
男の全身は脱力してしまったように重く、そして動く気力すら目の前の女に吐き出してしまった気分だった。
どろどろとした交わり、その濃密さからか、それとも単純に長く交わっていたせいか。
何にせよ一区切りしようと体を起そうとして―――男は下半身を女に押さえられていることに気が付いた。

「おい、ちょっと一休み……おい、聞いてるか?」
「……」

女は男にしなだれかかって体重を乗せてくる。が、柔らかな肌が触れ合ってぬらつく感触も、一度覚醒した後は単に気持ちが悪いものでしかなくなってしまっていた。
『絶頂後の脱力なのだろうか』と考えたのか、何とかずれようとした時点で男は違和感を抱いた。
自分と女はまだしっかりと繋がったままだ。しかし女の脱力具合とそのしっかり、という差異がどうもおかしい。
その感覚を頭の中で形にする前に、動いたのが女だった。
小刻みに体を震わせ

「フ……ククク…ク…」

女は笑い始めたのだ。
その異様さと相俟って、自分の力がさらに抜けていくのにも気が付いた。

「ぐ……何だ…これ…力が抜けて…」
「フ……フフフ……ようやく気付いたぁ?」

ざわざわと背筋に走る嫌な感覚は、気のせいではない。
女の唇が艶をもった紫に染まっていくのも、瞳も紫へと変わっていくのも気のせいではない。
表情はより淫蕩に変わり、顔に特有のラインが引かれていく。
男はその変化を見、そして目を話すことができなかった。あの顔はあまりにも魅力的で、厚めの唇なんて直球ど真ん中だったからだ。
惚けていた時間は本当に僅かだったが、男が気が付けばもうすでに女は完全に本性を表していた。

「………っ…まさかお前……妖鬼の類かっ!!」
「ご名答。さあ、まだまだ離さないわよ……」

見れば、女の体、背中の辺りから何本もの触手が飛び出している。
せっかくの美人が触手持ちの化けものに変わってしまった喪失感も相俟って、余計に体から力が抜ける。

「こんな夜中に峠を通る御馬鹿さんがいるなんて思いもしなかったし……フフ、久々に若い精を吸えて肌に瑞々しさが戻ったわ。ありがとうね、御馬鹿さん」
「う……力が……」

力が増していくたび、肩の周りの骨がみきみきと悲鳴を上げる。

「随分久方ぶりだったから…私も結構感じちゃったし……こんなにもってくれるなんて予想外だったわぁ……」
「がっ、離せ、離せッ……」
「離れないでしょお?私の膣内に一度入れたら、それこそ木乃伊になるまで吸い取ってあげるわぁ……んふふふ」
「くそっ……絡みついて…何だよこれっ!!」
「妖魔に搾り取られるなんて経験そうそうあるもんじゃないわよ?この際最期なんだし、しっかり味わったら?」
「う……くそっ…なんで…女…」

女は経験から、こういう場合の人間は絶望か、あるいは後悔で満たされているものだと知っていた。
そして今回もそのどちらか、おそらくは後悔の方だと。
その予想は間違いではない。
全く持って間違いではない。
後悔、という一点に限っては。

「…くそ…お、い………び……」

「美人が台無しだろうがあああああああああ!!!!」

「!?」

男は突然声を上げ、自分の上に乗っかって動いていた腰をがっしりと掴む。
腰から尻へ艶かしく、思わずしゃぶりつきたくなる様なラインが流れているが、構うことなく肉付きのいい尻たぶを握り締める。

「んぅっ!! な、何、何だってのよ」

声を上げながら、胸板に置いていた手に何か硬いものが当たる感触を感じ取った。正確に言えば自分の土台となっていた男の体がメキメキと隆起していく感触だ。
細身だった筈の男の体は元の姿からは信じられないほど筋骨隆々となり、それに比例するように掴まれた部分に篭められる力が増した。
見れば、目には先ほどまで失われつつあった光が戻り、野獣のように爛々と光っている。「うう」だとか「ああ」と呻く様に喘いでいただけの口は歯を剥き出しにし、荒々しく呼気を吐き出している。

「せっかく好みの女を抱けると思ったらこれかよ!!ああ、こんな偶然もあるもんだと思い込みたかったのにさぁ!夜中かかってドロドロになるまで犯しつくして何回も何回も中に出して手練手管発揮する前に一服しようとしたら不意打ちだよ!空気読んで別れ際にバラすとかさぁ!始めから妖鬼ですっつって襲ってくるとかさぁ!女の姿で出てくんじゃねーよ!騙された俺が凄い悲しい気分になるだろうが!もうこうなったら俺は妖鬼専門に堕ちる!綺麗な妖鬼相手に非通常な責めばっかやって極めてやるからな!まずはその触手しごいてついでに自分のをお前の口にくわえさせて自慰させてその上で全部犯してやるぜ!」
「……」

長口上にもまったく息切れを見せず、男は勝手に、ただ一方的に高ぶっていく。
興奮具合で肉体の形状が変わるのかは女にはわからなかったが、態度と、ある一部が急激に膨れ上がっていく。その成長によって大きく変貌を遂げた部分が、一箇所。

「え、ぁあっ、え…んううぅうぅぅうっ!!」

しっかりと咥え込んでいた男の陰茎が、中で倍にも膨れ上がった。その凶悪な変化は形状にも及び、根元からごつごつとした形に作り変えられて凹凸が大幅に増した。
軽く突き上げられた女の意識を簡単に削ぎ落とし、視界を白で染める。

「ああ、キツくなった。やっぱ入れてるって実感があるのはいいもんだ、よなぁっ!!」
「っ…んぁああぁあああああぁあぁあああっ!!!」

腰をがっしりと掴まれた状態でミチミチと音が鳴るほど埋め尽くされた膣内から、強烈な感覚が広がった。
脊髄をなぞるように背中に強烈な電流が駆け上り、脳に直接叩きつけられる。
その圧倒的な快感は、女の理性を簡単に吹き飛ばした。
体ががくがくと震動し、その後起き上がった男の体に力なくもたれかかった。

「…はぁ……はぁ…んぁ…へぁ……ぁ…ぁう…」

口からはまともな言葉が発せられず、背中の触手は力なく垂れ下がった。

「ほら、何呆けてるんだ?まだ一突きしただけだぞ?」
「……う…こ、殺す……ぜった、い…」
「へえ?殺す、ねえ……」

口元に怪しい笑みを浮かべて、男は剛直を軽く抜き出す。男は濡れたままのそれである一点を擦った。

「お前今まで…いや、最初は感じるフリ、してただろ?」
「え……あ…な、なんで……え?」
「してたよなぁ?体の痙攣、声、瞳、いかにもって感じが。何年も男喰ってなくて飢えてた割りに……満足できなかった、とかか?」
「……っ………ぁあ、あ、あぅん…んあっ」

ざわざわと動きざわめく触手の一本を捕まえ、片手で弄びながらしごいていると、妖女はたまらないような声を立てる。

「何刻も…あんな時間掛けて…元々男欲しがってた女に、ぐずぐずだったのにねちねち責める必要……あると思うか?」
「んぅううぅっ!…へあ、ぁあぁああん…うぁ、んんっ、うくぅっ」

そこは何刻も何刻も、どろどろになる程交わりあう中で判った、"唯一感じていた場所"。

「浅めのここだよなぁ?こんなずくずくになるまでした上でここを思いっきり」
「んくっ、あ……ああ、あああああああぁっ! やめ、やぁああっ! あぁああ! ひぃぃぃぃいっ!」
「ゆっくりやるとキくんだよな? ほら、触手がぶるぶる震えてるぜ」
「…ぁ……ぅあ…ひっ…あああぁ…ぁん……あ……」

ブルっと全身を震わせると、女妖の力が一気に抜けてしまう。
そのまま、先ほどまで殺すと言っていた男に撓垂れ掛るように身を任せてしまった。
緊張が解けた体は触っていると今にも溶けてしまいそうなほど柔らかく、牝の匂いを全身に纏っている。

「……気絶……失神?」

向かい合っていたのを抱き止める形になったために、男の目の前には女の頭がある。
本来の意味で抱いてみると、それだけでも余程魅力的な女だとわかった。
……もっとも、それを維持するのに使われた旅人達の命を考えると、何とも言えない気持ちになったが。

「あーあ、そういや明日は呼ばれてたな、殿様に」

一人ぼそっと呟きながら、女の尻たぶをがっしり掴んで感触を楽しむ。
女は時折僅かに眉をしかめ、縋るように顔を男の胸に寄せてくる。
窓の外を見る。
外は墨で塗ったように真っ暗だ。
まだ夜が明けそうもないことを確認すると、男は女を寝かせ、その上に勢いよく覆い被さった。


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