第1回



        *


 初めてのキスを捧げてくれた恋人は、河島誠(かわしま・まこと)にとって宝物だった。
 刈谷朋美(かりや・ともみ)とは、高校二年の秋に付き合い始めてすでに一年以上が経っている。
 誠は、いまだに彼女の体を見たことがない。
 乳房を見せてもらおうとしたところ、恥ずかしがった朋美に思いっきり引っぱたかれたこともある。
 残念ではあったが、今の関係にもそれなりに満足していた。最後の一線までは越えないまでも、明るく可憐な恋人と過ごす穏やかな時間──
 他愛のない会話やデートの思い出ひとつひとつが、誠にとってかけがえのないものだった。
 だから二人の関係はいまだに、キスや軽いペッティングまでだ。最近の高校生にしては晩熟な二人だった。
 だが──
 心の片隅では変化を望む自分がいる。
 来年からは互いに大学生になるのだし、近いうちに彼女のバージンをもらえれば……と妄想することもあった。
 そんなときは決まって情欲が抑えきれず、激しい自慰にふける。まだ見ぬ彼女の裸身や、もっとも秘められた場所を想像し何度も射精する。
 そんな態度が顔に出ているのか、朋美も最近はうすうすと彼の思いに気づいているようだった。


「あれ、誠くん、エッチなこと考えてないー?」


 今もまた。
 朋美は悪戯っぽく笑い、誠を見つめていた。
 一見すると中学生と間違われそうなほどの、あどけない童顔。思い切りのいいショートヘアにした黒髪は、陽の光を浴びるたびに美しい光沢を放つ。
 けれど、幼い美貌とはアンバランスなほどに発達した肢体が、少女ではなく成熟しつつある女性なのだと強烈に主張する。
「い、いやいやいやいやっ、僕はナニもやましいことなど考えていませんっ」
 たちまち心拍数が上がってしまう。
 大慌てで両手を振り、疑惑を否定する。
「どうして、いきなり敬語になるのよ」
 朋美は童顔をしかめて軽くにらんだ。幼子のように唇をとがらせている。そんな仕草の一つ一つが本当に可愛らしかった。
 ドギマギしながら、朋美の美貌に見とれてしまう。
「いや、その」
「嘘だって丸分かりなんだけど」
「えっと、まあ……本当はエッチなこと考えてた……ごめん」
「誠くんって本当に嘘が下手だよね」
 朋美は小さくため息をついた。それから二人は顔を見合わせ、同時に吹き出す。
 他愛もなく、平凡で、穏やかで、暖かい──こんな時間がずっと続けばいいのに。
 誠は心からそう思う。
 だが、こんな時間がもうすぐ終わりだと分かっていた。
 この春、朋美は東京の私立大学に、誠は地元である福井県の国立大学にそれぞれ入学する。
 当然、離れ離れの生活だ。簡単には会えなくなる。


 ──東京の大学になんて行くなよ。


 思わず声に出しそうになって、慌てて言葉を飲み込んだ。
 東京と福井は決して近い距離ではないけれど。
 必ず彼女に会いに行く。
 何度でも会いに行く。
 心に堅く誓う。
「東京と福井なんてすぐだよ。電車ですぐ会えるもん」
 まるで誠の心を読み取ったかのように、朋美がにっこりと笑った。
 だが、その目尻にはうっすらと涙が浮かんでいる。今にも崩れてしまいそうな可憐な笑顔だった。
「朋美……ちゃん……」
 声が上ずり、それ以上の言葉が出てこなかった。油断するとこちらまで泣き出してしまいそうだった。
 胸の奥が刹那さと寂しさで強烈に締め付けられる。胸の芯を、まっすぐに突き通されるような痛み。
「僕、絶対会いに行くよ」
 誠は声を震わせて告げた。
「あたしも。また帰ってくるから」
 朋美は泣き声の混じった笑顔を見せる。
 円らな瞳が潤み、きらきらと輝いていた。
「浮気しちゃダメだからね、誠くん」
「朋美ちゃんこそ、東京はいろんな人がいるから……」
「やだ、外国に行くわけじゃないんだから」
 朋美は小さく微笑んだ。
 誠は、心配だった。
 開放的な大学生活の中で、朋美のような美少女は周囲の男から狙われることになるのではないか、と。
 ただでさえ遠距離恋愛は壊れやすいというし……
「じゃあね、誠くん。ちゃんとメールしてね」
「ああ」
「毎日、だからね」
「ああ! 約束するよ」
 特急がホームに入ってきた。
 東京に出るためには、特急で新潟まで行き、さらにそこから新幹線に乗らなければならない。
 片道だけで四時間以上もかかるのだ。
 朋美には『必ず会いに行く』と言ったが、気軽に行けるような時間と距離ではない。
 あらためて憂鬱な気持ちが込み上げた。
 朋美の姿が特急電車の中に消えた後──


 誠は声を殺して、泣いた。


        *


 ぐちゅっ、ぐちゅっ……


 深夜の喫茶店に湿った水音が響き渡る。
 周囲に、つん、と漂う甘酸っぱい芳香が淫靡な雰囲気をかもしだす。窓から月光が差し込み、室内で蠢く男女の影を照らし出していた。


 スーツ姿の男と、白い裸身を惜しげもなくさらした娘──


 二人はカウンターの上で息を弾ませ、ダイナミックに交わっていた。対面座位の状態で烈しく腰を打ちつけあう。
「はあっ、いい……もっとぉ!」
 長い黒髪を振り乱し、娘……福本梨奈(ふくもと・りな)が嬌声をこぼした。
 猛々しいイチモツが梨奈の股間を深々と貫いていく。
 太幹が押し込まれ、入り口近くまで引き抜かれるたびに、膣の縁から赤い粘膜がまくれ、見え隠れする。
 結合部からはひっきりなしに愛液の泡が飛び散っていた。
「すっかり感度がよくなりましたね。初めてあなたと交わったときは、あれほど嫌がったというのに……」
「もう、意地悪しないでください、店長」
 梨奈が恥ずかしげにうつむく。
 頬に手をかけて、そっと顔を上げさせた。
「初めて店長としたときは……私、バージンだったんですから」
 梨奈が悦びとも悔恨ともつかない複雑な表情を浮かべる。
 笑顔が印象的な、美しい娘だった。明るい容貌にスタイリッシュな眼鏡がよく似合っている。
 ペニスを突き上げるたびに、白い頬が鮮やかな薔薇色に上気した。
(こういうのを眼鏡美人というのでしょうね)
 店長と呼ばれた男……北野哲夫(きたの・てつお)は思わず、梨奈の笑顔に見とれてしまう。
「私、店長に騙されて無理やり初体験させられたんですよ」
「無理やり? 今ではこんなに淫乱になったくせに」
 口の端を吊り上げ、意地悪く笑ってみせた。
 深く突き刺したまま、腰をゆっくりとローリングさせる。胎内に埋まった太幹が若々しい膣粘膜を圧迫し、女体に新たな刺激を与えていった。
「あんっ! 私、あのとき彼氏がいたのに……ううっ!」
 梨奈が首を左右に激しく振る。艶やかなロングヘアが舞い、汗の珠が飛び散った。当時のことを思い出したのか、美貌の女子大生は声をか細く震わせた。
「彼に、私のバージンを捧げるはずだったのに……うんっ……店長のせいで──」
 北野は満足げに微笑み、力強く腰を打ち上げた。
「大切な処女を失ったのは、私のせいだというんですか? ふふ、違いますね。あなたは自分の意志で私に股を開いたのですよ」
 北野はカウンターの上に座り、対面座位の状態で梨奈と交わり続ける。
 張り出した腰骨をつかみ、思い切り突き上げた。梨奈が体を左右にくねらせ、快感を訴える。
「先週から入った子、なかなか可愛いですよね」
 北野の口の端にかすかな笑みが浮かんだ。折り目正しそうな表情が影を潜め、本性が表に表れる。
 新たな獲物を見つけたときの、冷徹な狩人の顔だった。
 無造作に腰を突き上げ、怒張しきった器官を若い娘の胎内に繰り込む。梨奈がまた快楽の声をこぼした。
「刈谷さんのことですか……ああっ」
「彼氏はいるんでしょうか」
「い、いえ……いないって言ってました……はぁん!」
 見事な細さを誇る腰を両手でつかみ、女子大生の裸身を上下動させる。
 肉根を包み込む粘膜の蕩けるような感触に、北野は小さく喘いだ。
「ふふ、いいオマ×コだ。私のものを心地よく締め上げてきますよ」
「はあ、はあ……お願いです、店長。私、もう……」


 ずっ、ずぶぅっ……!


 たくましい肉刀を柄元まで埋め込み、深々と貫いていく。
 初めて抱いたとき、梨奈は処女だった。
 未通の場所を貫かれる痛みに泣き叫んだものだ。
 だが少しずつ慣れさせ、体中の性感を開発していった。半年かけて、ここまで感度の高いカラダに育て上げた。
「彼とのセックスでも、こんなに淫らな顔を見せるのですか、ふふ」
 北野がほくそ笑んだ。
 梨奈は今も、当時と同じく社会人の恋人と付き合っている。彼女が自分以外の男と交際することに、北野は寛容だった。
 いや、むしろ積極的に薦めているといってもいい。
 梨奈によれば、恋人とは将来結婚するかもしれない仲だという。だが、週に一度は必ず、北野に抱かれている。みずから股を開き、犯してくれと懇願してくる。
 肉体に刻み込まれた快楽の記憶によって、もはや梨奈は北野から離れられない状態だった。
「気持ちいいのですか、ふふ」
 耳元に唇を寄せ、甘噛みする。
「は、はい……とっても」
 梨奈が眼鏡の奥の瞳をとろん、とさせて叫んだ。
 長い黒髪が汗に濡れ、瑞々しい女の匂いを発散させていた。
「キスしましょうか。たっぷりとつばを飲ませてあげますよ」
 にやりと笑い、梨奈と唇を重ねていく。
 柔らかな唇の感触に喜悦しながら、舌をねじこんだ。女子大生の口内を舐めまわし、唾液を注ぎ込む。
 梨奈は眉を寄せ、ごく、ごく、とのどを鳴らして、中年男の唾液を飲み下した。
「いやらしい娘だ。恋人とも今のようなキスをするのですか?」
「彼とはこんなことは……普通のキスしか、しません」
 梨奈は口ごもりながらも、そう答えた。
「彼氏は何も知らないのでしょうね、可愛そうに」
 梨奈の恋人は一流商社に勤務し、エリートコースを歩む出世頭だという。
 理想的な人生を歩んでいる男の、伴侶となるべき女性を寝取っている、という事実が、北野を暗い優越感に浸らせた。
「彼に、私とのことを教えたのですか」
「い、いえ、なにも──ああっ」
 胎内を突き上げると、梨奈の裸身が薔薇色に染まった。
 メロンを思わせる豊かな乳房を鷲づかみにする。ゆさゆさと揉みしだき、指先で乳首をグリグリと押しつぶした。
「はぁぁっ!」
 ピストンと同時に左右の乳首を弄られ、梨奈の嬌声が高まった。
 北野は腰の動きをスピードアップさせ、梨奈を一気に追い込んでいった。ひっきりなしに裸身がくねり、声を昂ぶらせる。
 どんっ、どんっ、と連続して突き上げた。腰をローリングさせ、一突きごとに角度を微妙に変えていく。
 変幻自在の突き上げが、女子大生の理性を蕩かせる。
 烈しいピストンに合わせて、張りのある双丘がはずみ、硬くしこった乳首が上下に揺れた。
「駄目! 私、もう駄目! イキますぅ!」
 梨奈が気持ちよさそうに喉をさらし、甘い叫び声を上げた。防音設備の整った店内でなければ、外にまで響き渡るような大声だった。


 ──梨奈の恋人は、彼女がこんなにも乱れる様子を見たことがあるのだろうか。


 考えただけで優越感と、炎のごとき愉悦が同時に湧き上がる。
「さあ、出してあげますよ。オマ×コでしっかりと受け止めなさい」
 ささやき声で命令する。
「は、はい、私の……梨奈のオマ×コにたっぷり出してください! 孕ませてくださぁい!」
 牝奴隷そのものの台詞を叫び、梨奈の裸身がのけぞった。
 北野は渾身の力を込めて、己の分身を打ち込んだ。ごん、と子宮の入り口に肉棒の先端が当たる感触があった。
「ああーっ!」
 梨奈が絶叫とともにエクスタシーを告げる。伸びやかな肢体がびくんびくんと震え、喉を引きつらせて喘ぐ。
 ほぼ同時に彼も達した。


 どくっ! どくっ! どぷぅっ!


 膣内いっぱいにあふれかえるほどの勢いで、大量の精液を梨奈の胎内に注ぎ込んだ。
 もちろんゴムなどつけていない。ナマの精液を思う存分、女子大生の若々しい膣へと放出していく。
 他に恋人がいる女に対し、遠慮なしにザーメンを注入する。
「ふふふ、濃厚なやつをたっぷりと注いであげましたよ。見なさい、オマ×コからあふれかえっている……これは妊娠するかもしれませんね」
「に、妊娠……ああ」
「もしも身籠ったときは、彼氏の子供として産むんですね。私は責任を取りませんから、ふふふ」
 北野は無責任に言い放った。
「わ、わかりました、店長……」
 梨奈が顔を覆い、熱い吐息をもらす。
 白い美貌はすっかり上気し、薄いピンク色に染まっていた。本気で嫌がりながらも、その嫌悪感すらも被虐的な快楽へと転化しているようだ。
 征服感に浸りながら、北野は大きく息をついた。




 第二回に続く〜

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