第2回



        *


 朋美はみずからその肉茎に指を這わせた。
 どろり……と、梨奈と北野、そしてもちろん朋美自身の垂れ流した愛液がブレンドされた液体が、指先から根元にまでこびりつく。
「すごい……こんなになって……」
 朋美はもう、たまらなかった。
 理性などとっくに吹き飛び、消え去っている。
 愛しい恋人である誠の存在すらも、一時的ではあるが、忘れ去っていた。
 みずからM字開脚のポーズを取り、北野に挿入をねだる。
「挿れて……ください。あたしの奥まで、貫いて……ああ」
 ほんの少し前までは清らかなバージンだったとは思えない、卑猥なリクエストだった。
「ふふふ、じっくりと調教した甲斐がありましたね」
 北野は猛々しい器官を秘唇に押し当てると、一気に腰を突き出した。


 ずちゅっ!


 粘っこい感触とともに、たくましいペニスが清純な女子大生の膣を深々と刺し貫いた。
 奥まで、入っている。
 はちきれんばかりの充足感に、朋美は陶酔していた。
「ああ、来るぅ! 突いてっ、突いてくださいっ!」
 自分から腰をうねらせ、ピストン運動をせがむ。
 直後、期待通りの衝撃がやって来た。


 ずん、ずん、ずんっ!


 全体重をぶつけるかのような激しいストロークで、北野が打ち込んでくる。
 反り返った肉エラで媚粘膜を削られ、子宮口を打ち上げられた。
 張り出したカリの部分で入り口付近の浅瀬をこすられ、Gスポットを摩擦される。
 気持ち居場所を満遍なくこすられ、刺激される。
「あううっ、そ、そこっ! 気持ちいい……ですぅ」
 朋美は切ない悲鳴を上げた。
 愛しい恋人を抱きしめるように店長の背中に両腕を回す。そのまま思いっきり引き寄せた。
 絶対に離さない、とばかりに中年男の体躯を抱きしめる。
 堅く抱き合ったまま腰をうねらせ、男のモノを深々と呑み込んだ。
 北野の腰使いは、変幻自在だった。
 深く突きこみ、連続して膣奥を穿ったかと思えば、一転して挿入を浅くし、膣の入り口付近を擦り上げる。
「んっ! く、くるぅ! はぁんっ!」
 朋美は断続的な嬌声をこぼし、背中を弓なりにさせた。全身にピリピリとした愉悦の電流が走っている。
 激しい動きに比して、じわり、と汗ばんでいたが、まったく気にならなかった。
「ううっ、ますます締まりがキツくなってきましたよ。これはたまりませんね」
 北野は至悦の顔でうなった。腰を回しこむような動きで、瑞々しい秘孔を押し広げ、粘液で濡れた内部をかき混ぜる。


 ぐちゅっ! ぐちゅちゅっ!


 濡れた音がボリュームアップし、朋美の羞恥心を煽った。
(あたし、こんなに濡れてるんだ……!)
 自分の体の反応が信じられないほどだった。膣内が、ジン、と熱い。熱くてたまらない。
 おんなの内部からは後から後から愛蜜が沸いて出る。尽きることのない和泉のように垂れ流し、中年男の抽送をますます容易にする。
 さらに北野は互いの腰を密着させ、体重をかけて恥骨と恥骨をこすりつけるようにした。
 膣内のあらゆる場所を刺激されている。快楽を目覚めさせられている。
 朋美は自分の体が、完全に男の支配化に置かれていることを実感した。
「あたし──もうだめっ!」
 可愛らしい声で絶叫する。
 ずん、と堅い亀頭部で膣奥を打たれた瞬間、閉じたまぶたの奥で鮮烈なスパークがはじけた。
「あああっ、イクう! イクっ、イクうっ!」
 やるせない涕泣をまじえ、朋美は悦楽の極みへと達した。エクスタシーの愉悦が四肢に響き渡り、瑞々しい女体に甘い波をいきわたらせる。
「あああっ……イク、う……!」
 口の端によだれを貼り付けて、朋美は喘ぎ声をこぼした。
「これでもう、恋人がいても私のことを忘れられないでしょう」
 北野は完全に勝ち誇った様子で、朋美を見下ろした。
 恋人でもない男に征服され、隷属している。
 その事実が、彼女にかすかな悦びを感じさせた。
 被虐の、暗い悦びを──
「さあ、出しますよ。二人ともこっちを向きなさい」
 北野が雄たけびを上げて、ラストスパートに入る。
「あっ、だめ、またイク!」
 深々と突かれて、朋美はふたたびオルガスムスへと到達した。体中が甘痒い心地よさに包まれる。
 意識が高く高く飛翔していくような、独特の浮遊感。
「イク……うっ!」
 がくん、と白い裸身が脱力した。
 次の瞬間、北野が朋美の内部からペニスを引き抜いた。たくましく脈打つそれを、二人の女子大生へと向ける。
「出しますよ! しっかり受け取りなさい!」
 叫び声とともに、大量の精液が放出された。


 どくっ! どくっ、どくっ、どくっ!


 白濁のシャワーを朋美と梨奈は恍惚とした顔で受け止めた。
 店長のペニスからは、後から後からスペルマがほとばしる。熱い粘液の雨を、朋美は喜々として浴びていた。
 誠に捧げるはずだった身も、心も……恋人ではない男の隷属物となった気がして、背筋を熱い背徳感が貫いていった。


        *


 シャァァァァァーッ……


 喫茶店の奥のシャワールームから、小気味のよい水音が聞こえてくる。
 すべてが終わり、朋美は汚れた裸身を洗い流していた。
 すぐ傍には、彼女に勝るとも劣らぬ豊満な肉体がある。爆乳といってもいいサイズのバストが、上下に勢いよく揺れている。
 梨奈と一緒にシャワーを浴びているのだった。
 朋美以上にグラマラスな裸身を見つめ、思わずため息をこぼす。同性から見ても惚れ惚れするような、見事なヌードだった。
 いったい梨奈はどういう経緯で、店長に肌を許すようになったのだろうか。
 ふとそんな疑問が込み上げる。
 梨奈には社会人になる恋人がいて、いずれは結婚するつもりだ、と聞いたことがあった。
 将来を誓った相手がいるというのに、他の男に身を任せているのはなぜなのだろうか。
 そこまで考えて、自分もまた同じことをしているのだ、と今さらながらに気づいた。
 北野や梨奈と交わっていたときは、ただ鮮烈な快感に身を浸すばかりで、そんな理性は消え去っていた。
 いま、人心地ついたことで、誠に対する罪悪感がよみがえっていた。自分自身の罪深さにおののき、胸の中心部に痛みが走る。
「ふふ、なあに? 私のことジーッと見て」
 梨奈が微笑みながら振り返った。
 可愛い、とつぶやき、朋美の頬に軽くキスをする。
 初心な女子大生はそれだけで顔を上気させてしまう。
「どう、初めての3Pは? 気持ちよかったかしら?」
「は、はい。すごかったですぅ」
 朋美ははあ、と熱いため息をついた。
 いまだに腰の奥がジーンと痺れている。
 その痺れは四肢にまで伝播していて、こうして立っているとふらついてしまうほどだ。
 オルガスムスの余韻がここまで凄いとは、初心な女子大生には想像のはるか外のことだった。
「店長の言ったとおり、誠くんのことなんてもう忘れちゃうんじゃない」
「えっ……」
 最愛の恋人の名前を出され、朋美の表情が硬直した。


 ……誠が上京してくる夏休みまで、あと一ヶ月だった。





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