第3回



        *


「ボーッとしてないで、そろそろ始めない? あたし、さっさと終わらせたいんだけど」
 美咲がじれったそうに催促する。嫌なことは早いところ終わらせたい、と言わんばかりだ。
「じゃあ、始めようか」
 増田は落胆の気持ちを切り替えて、彼女にうなずいた。
 震える手つきで美咲の股を左右に広げる。
 ほっそりとした両脚のつけ根に、薄いヘアで覆われた秘所が見えた。その中心部には唇によく似た、濃赤色の器官がうごめいている。
 引き締った下腹部に指を這わせた。こわごわと女性器に触れる。肉付きのよい花弁が、しっかりとした弾力で指先を押し返した。
「うわぁ……すごい」
 初めて触れる女陰に、増田は純粋な感動を覚える。
 恥毛に指を絡ませ、ギュッと引っ張った。かすかに汗ばんだ肉裂を撫で、さすっていく。
「弄り回さないでくれる? 気味が悪いんだけど」
 美咲は不快感をあらわにつぶやいた。
「お、おかしいな、ビデオなんかだと、この辺を触れば気持ちよさそうに喘いでたのに……」
「ハァ? 何がビデオよ。AV女優なんかと一緒にしないでよ、このデブオタ!」
 美咲が眉間に皺を寄せて、容赦のない罵倒を放つ。
「またデブオタって……うう」
 気持ちが萎えそうになりながら、なおも指先を押し込んでいく。
 ふいに、
「んっ」
 美咲がかすかに喘ぎ声をこぼした。
 頬がかすかに赤らみ、鼻腔がぴくぴくと膨らむ。かすかに開いた唇の間から、甘ったるい吐息が漏れていた。
 先ほどと同じポイントをぐっと押し込みながら、増田は顔を輝かせた。
「もしかして……感じた?」
「そ、そんなわけないでしょ、バカっ」
 美咲が怒声を浴びせた。ほんの少しうろたえたように見えたのは、気のせいではなさそうだ。
 どこまでも高飛車な態度で鋭い眼光を叩きつける。
「あ、あの……」
 増田は遠慮がちに頼みこんだ。
「ふ、フェラチオしてもらいたんだけど……だめかな」
 強気な美咲の態度に気圧され、どうしても下手に出てしまう。
 案の定、美咲は柳眉を逆立てた。
「なんであたしが、あんたの汚らしいモノをくわえなきゃいけないのよ! 調子に乗るな、このデブオタ!」
 瞳を爛々と光らせ、真っ向からにらみつける。
 増田は内心でおびえながらも、怒っている顔も魅力的だ、と感嘆した。
 いやむしろ、怒りがより彼女の美貌を輝かせているかのようだ。
 もう一度、美咲の秘処に手を這わせる。
 そこはすでにテラテラと濡れ光っていた。
(やっぱり、さっきので感じてたんだ──)
 ごくり、と喉が鳴った。
 大慌てでズボンとパンツを脱ぎ、股間を露出する。
 半ば皮をかぶった中太りの肉茎がぴん、と跳ね出した。十分すぎるほど膨張した器官は充血し、猛々しく屹立していている。
 グロテスクなペニスを前に、美咲は顔をしかめた。
 一方の増田は興奮のあまり、一気に暴走状態へと突入する。雄たけびを上げ、すらりとした肢体に挑みかかった。
 肥満体でのしかかると、美咲は悲鳴混じりに倒れ伏す。両手両脚を押さえ、完全に組み伏せた。
 ぶよぶよとした腹部を、美咲の引き締った下半身に乗せる。すらりとした両脚の間に腰を割り込ませた。
 硬く張り詰めたものを膣の入り口にあてがう。ヒクヒクと震える花弁と、張り詰めた切っ先が接触し、くちゅり、と音を立てた。
 火照ったペニスの先端部にぬめった感触が伝わってくる。
(濡れてる……)
 興奮しているのか、それとも女性としてのただの生理的現象なのか、彼女のそこはかすかに湿っている。
 増田は緊張気味に腰を推し進めた。
「あ、あれ!?」
 亀頭が彼女の割れ目をなぞり、そのまま照準を外してしまう。
「おかしいな、入らない……」


 AVなんかでは簡単にインサートしているのに、どうして──


 増田は思わず焦ってしまう。
 額から汗が垂れ落ち、止まらなくなった。手の甲で汗をぬぐいながら、ふたたび挿入にチャレンジする。
 だが結果は同じだった。
 亀頭の先が割れ目をむなしく滑るばかりで、いっこうにインサートできない。
「もう、これだから童貞は」
 美咲の呆れたようなため息が、屈辱感を刺激した。
 見下したような顔で、美咲が腰の位置を動かす。割れ目の位置が肉棒の切っ先とぴったり重なり、増田が入れやすいように腰を微妙な角度でせり上げてくれる。
(これじゃどっちが犯してるのか分からないな……かっこ悪いや、僕)
 増田は心の中で嘆息した。
 よく照準を定めて、もう一度に腰を押し出す。


 ぬぷっ!


 柔らかな感触と抵抗感を押し込みながら、ペニスの先端が彼女の秘孔を左右にかきわけた。まだ亀頭の部分だけだが、女性器の入り口に埋まり込んでいるのが分かる。
(入っ……た!)
 増田の胸が感激と興奮で熱くなった。
 そのまま下腹部に力を込めて一気に押し入る。デブならではの体重を込めて、打ち込んでいく。


 ぬぷっ、ぬぷぷっ……


 心地よい感触とともに、増田のイチモツが彼女の内部を突き進んだ。女の体温を感じながら、膨張しきったイチモツが埋まりこんでいく。
 ずるり、と湿った音がして、最奥まで到達した。
「ふうっ、奥まで入れたぞ!」
 童貞を失った瞬間、増田は思わず快哉を叫んでいた。これで大人になったような、一人前の男になったような気分だった。
「こんな奴に、あたしが……!」
 体の下を見ると、気が強そうな美貌がわずかにしかめられている。意に沿わず、増田とセックスをしてしまったのが相当悔しいらしい。
 この美しい娘の膣に僕がペニスをねじこんでいるのだ、と思うと征服感が沸いてきた。
 彼女の胎内は驚くほど温かい。
 ペニス全体が火照るような感触に、増田はすっかり夢中になって下腹部を動かしはじめた。温かく、心地よい摩擦感がペニス全体を包みこむ。


 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ……!


 もちろん童貞だからテクニックもなにもない。力任せの単純なピストン運動だった。
「……下手ね。あたしが今までに寝た男の中でサイテーよ」
 美咲がポツリとつぶやいた。
「だ、だって初めてだし」
「童貞なのよね。まあ、下手でも仕方がないか」
 美咲は馬鹿にしたようにため息をつく。増田は悔しい思いをこらえて、ピストン運動をひたすらに続ける。
「どう、あたしの体は? 気持ちイイでしょ」
 よほど自分の体に自信があるのだろう、増田の突き上げに揺さぶられながら美咲は得意げな顔で言った。
 セックスで彼を屈服させることで、犯されている屈辱を晴らそうとしているらしい。
 もっとも増田は初体験の快感を貪ることに夢中で、屈辱を感じている暇もなかった。
「え? あ、ああ、うん」
 夢うつつで答えながら、顔を真っ赤にして腰を振りたくる。
 自慢するだけあって、彼女の粘膜は蕩けそうな感触で増田のモノを締め付けてくる。オナニーなどとは比較にならないほど気持ちが良い。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ!」
 渾身の力を込めて下半身を押し出し、若々しい膣孔に硬くなったものを打ち込んでいく。胎内深くまで突き上げると粘膜同士がこすれ合い、ぬちゅっ、ぬちゅっ、と湿った音が鳴った。
 腰を突き上げるたびに豊かな胸がたぷんと揺れる。紅潮する裸身と引き締った四肢を見下ろしていると、本当に美咲とセックスをしているんだという実感が沸いてくる。
(信じられない。夢みたいだ)
 増田は、三分ともたずに達してしまった。
(あ……イキそう……あぁぁっ、出るっ、出ちゃう!)
 下半身を中心にジーンとした痺れが沸き上がる。
「ううっ……!」
 増田は天を仰ぐと体を弓なりに反らし、限界まで膨張した肉棒を柄もとまで埋め込んだ。ぶるぶると小刻みに腰を揺すり、射精の態勢に入る。
「えっ、ちょっと!?」
 増田の射精衝動に気づいたのか、体の下で彼女が驚きの声を発した。体をよじって逃れようとするが、増田の太った体に組み敷かれているせいで、身動きが取れないようだ。
「中はダメよ! 外にして!」
 美咲が叫んだ。
「そ、と……?」
「妊娠しちゃうじゃない! 早く抜きなさい」
 美咲の平手が強烈な勢いで増田の頬を張った。
「痛っ」
 快楽で蕩けていた意識が覚醒し、現実に立ち戻る。
 すでに肉棒は暴発寸前だった。
「うわわわわっ」
 増田は大慌てで腰を引く。
 ほぼ同時だった。


 どくっ、どくっ、どくっ……


 男茎全体が脈動し、電流のような快感が性器全体を貫いた。鈴口が開き、おびただしい量の白濁液が飛び出す。
 体液のシャワーが雨のように、美咲の裸体に降り注いだ。
 自分でも驚くほど大量の精液だった。
 引き締まった肢体が見る見るうちに白く濁ったスペルマで汚されていく。
「あーあ、すごい量だね」
 美咲が顔をしかめた。
「匂いも濃いし、いったい何日分溜め込んだのよ」
「いや、君とエッチできると思って、ずっとオナニーを我慢してたんだ」
 増田が照れくさくなって頭をかく。
 自慰とは比べ物にならない快楽と放出感だった。
 射精が終わった後も、ペニス全体がジーンと痺れている。太幹にまとわりついていたヒダ肉の感触が今も残っていた。
「最低ね。気持ち悪い」
 美咲は露骨にいやそうな顔をして、形のよい眉を寄せた。
 興奮の収まらない増田は、美咲の体に手を伸ばした。
 呼吸に合わせて両の乳房が上下に揺れている。指先を鍵爪のように曲げ、乳肉に食い込ませた。
「柔らかい……女の子の胸って、こんなに柔らかいんだ」
「ふん、いつもあたしのカラダを妄想してたんでしょ。気持ち悪い」
 美咲が辛らつに吐き捨てる。
 もっとも、実際に彼女のカラダを妄想し、自慰を重ねてきたのは事実だった。
 反論できず、いや反論する気もなく、劣情にまかせて乳房を揉みこんでいく。形のよい美乳を、ぐい、ぐい、と絞る。
 弾力に富んだ手ごたえが心地よかった。
 さらに頂上で揺れる桃色の尖りに指をかける。ぴん、と軽く弾き、指先で押し込んでみた。
「くっ」
 美咲がかすかに眉を寄せる。
 痛みとも快楽ともつかない表情が、増田の興奮をあおった。
「気持ちいいの?」
「だ、誰が……うぬぼれるのもたいがいにしてよ」
 どこまでも気の強い台詞をはいて、増田を真っ向からにらみ据えた。強い意志を宿した黒瞳が輝いている。
 気圧され、思わず顔を逸らしてしまう。
 それでも指先の動きは緩めなかった。綺麗なピンク色に彩られた乳首をつまみ、コリコリとしごく。指の腹で転がすようにして刺激を加えていく。
 アダルトビデオやエロ漫画から得た知識をもとにした、見様見真似のテクニックだった。
 童貞の指遣いは、おそらく美咲からすれば稚拙そのものだっただろう。
 だが敏感な乳頭は執拗な刺激を受けつづけるうちに、徐々に変化を見せ始める。堅くしこり、むくり、と勃ちあがる。
「すごい……」
 乳首が勃起してくるのを見て、増田の興奮はさらに高まった。
 先ほど射精したばかりだというのに、すでに肉幹は完全回復している。充血し、膨張し、高々と上を向いていた。
「い、一回くらいじゃ我慢できないよ」
 がばっと覆いかぶさり、美咲の両脚を割り開いた。驚いた顔の彼女を組み伏せ、腰を押し進める。
 勃起しきったペニスを膣孔にあてがった。精液にまみれた先端が花弁に触れ、ぬちゃり、と湿った音が鳴った。
「ちょっと待っ……」
「うおおおおっ!」
 相手の制止の言葉を聞き終える前に押し込んだ。
 蕩けるような肉ヒダをかきわけ、己れの太棒を差し入れていく。亀頭全体に柔らかな女肉がまとわりついた。
 手で扱くのとはまるで違う触感と刺激だ。
 奥まで押し込むと、天を仰いで息をついた。
 くびれた腰骨をつかみ、下腹をたたきつける。
 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ。脂肪がつまった腹部が引き締った下肢にぶつかり、派手な音をあげた。
 直線的なストロークで女子大生の膣をえぐっていく。
「気持ちいいっ! 気持ちいいっ!」
 無我夢中で叫び続ける。
 増田は、初めてのセックスの虜となっていた。
 たぷん、たぷん、と脂肪だらけの下腹を揺らし、引き締った女体にたたきつけていく。白い裸身が震え、痙攣する。
 体の下で、美咲が屈辱を噛み締めるように唇を真一文字に引き結んだ。
 燃える瞳が増田を凝視する。
 気の強い美女を組み伏せている征服感が、増田の肉茎にさらなる快楽を送り込んだ。
 たちまちのうちに二度目の射精感が込み上げた。
「うう、僕イキそう」
 頬を緩ませてうめく。
 ひと打ちするごとに、ペニスから腰骨にかけて蕩ける快美が這い上がった。
 ひと打ちするごとに、背筋が震えるような悦楽が加速し、増大した。
「中に出しちゃダメ!」
 美咲が悲鳴を上げた。
 じたばたと四肢を揺らし、増田の体を跳ね除けようとする。だが肥満そのものの体は、多少の抵抗にはビクともしなかった。
 思いっきり体重をかけ、増田はラストスパートに入る。
「ああ、我慢できない」
「早く抜いてッ!」
 美咲の必死の懇願ももはや耳に入らない。生まれて初めてのセックスに、完全に夢中だった。
 イキたい。
 イキたい。
 イキたい。
 原始的な欲望だけが、今の彼を支配していた。
 妊娠のリスクなど頭から吹き飛んでいた。
 意識が桃色の霞に覆われていくのを自覚しながら、増田は最後の一突きをたたきこんだ。




『脅迫ネタお届けします・1』の連載はここで終了です。
 続きをご希望の場合は、今月末〜来月にかけて発売予定の電子書籍にてお楽しみください。
 なお、電子書籍には、今回の連載に加え、「近藤美咲編」のラストと「篠原真由編」も収録しています。


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