「ん? お前、なんでここに......」

インターフォンが鳴って、『織女テマリ』が玄関口に出ると、『牽牛シカマル』がちょっぴり頬を染めて立っておりました。

インターフォンが鳴って、『織女テマリ』が玄関口に出ると、『牽牛シカマル』がちょっぴり頬を染めて立っておりました。「よぉ」
「よぉ、じゃ無いだろ! お前が浮かれて遊んでばっかりだから、年に一度しか会うなって火影様に言われたんだろ、忘れたのか?」
「忘れてねーよ」
「ならどうして此処に居る、先月会ったばかりだろ!? いや、それよりどうやって天の川を渡って来た!!?」
「それはこの......」

インターフォンが鳴って、『織女テマリ』が玄関口に出ると、『牽牛シカマル』がちょっぴり頬を染めて立っておりました。「よぉ」
「よぉ、じゃ無いだろ! お前が浮かれて遊んでばっかりだから、年に一度しか会うなって火影様に言われたんだろ、忘れたのか?」
「忘れてねーよ」
「ならどうして此処に居る、先月会ったばかりだろ!? いや、それよりどうやって天の川を渡って来た!!?」
「それはこの......」 シカマルの後ろから、「兄」と文字の刻まれた星型の飾りをパンツにつけた裸同然の男が、にゅっと顔を覗かせました。
その異様な姿にテマリは声を上げそうになりましたが、口を咄嗟に押さえてこらえました。

「やぁ」
「カササギのイタチが送ってくれた」

どう見ても変態にしか見えない『カササギのイタチ』という男が、握手を求めるように手を差し伸べて来ました。
 「年に一度と定めたデートの日に、もし天の川が増水していた場合はカササギに助けて貰え」と火影様がシカマルに言っていたのは知っておりましたが......。
まさかそのデートの日でも無いのにシカマルを渡すカササギが居るとは、真面目なテマリにはとても信じられません。
 しかし、夫であるシカマルを送って来てくれたというイタチを無視するわけにも行かず、テマリは顔を引きつらせながら、そろそろと右手を差し出しました。

「ひぃっ!!!」

何ということでしょう。
 イタチがベットリとした、いかにも粘着質な唇をその手に近づけようとしたのを見て、テマリは素早く手を引っ込めました。
 そして、何だコイツ、と青ざめながらイタチを見ると、彼は妙に整った笑顔をテマリに向けて来ます。
 奇妙な柄付きの赤色の瞳からキラリと妙な色気を出されて、不覚にも一瞬、テマリはクラリとしました。
シカマルはその様子を見て、ピクリと不満げに眉を動かしました。

「旦那を送ってやったのというのに、この仕打ち。まぁいい、オレにはコレがある」
イタチは嬉しそうに、懐から写真を一枚取り出しました。
 「愚かなる弟よ」と、悦に入ったように呟く声が聞こえました。

「それをやるっつったら、天の川を渡してくれたんだよ。そいつの好物だって言う、サスケの半裸写真」
 どこからシカマルが、そんな写真を入手したのか、テマリはとても疑問に思いました。
 よりによって、半裸の写真とは穏やかではありません。
 まぁ彼の事だから、口八丁でどこかのサスケファンから手に入れたのかも知れないと、テマリは呆れました。

「カササギのイタチとやら。お前は、『ソッチ側』を裏切って平気なのか? コイツを天の川の『コッチ側』に渡しても良いのは、年に一度、七夕の夜だけの約束だぞ」

テマリが呆れたような視線をやっても、イタチは全く動じる様子を見せません。
 何故かフッっと鼻を鳴らし、パンツ一丁のクセに妙に格好をつけたイタチは、サスケの写真にネットリとした口づけを落としました。

「オレには何よりも大切なものがある。それがサスケだ」

帰りも送ってくれたらコレやるぞ、と交渉を始めたシカマルにテマリは溜息をつきました。

「シカマル。お前はこのまま、その変態カササギに送って貰え」
「はぁ!? 何でだよ」
「何でって、同じ事を何度も言わせるな。そういう約束だろ?」
「めんどくせー事言うなよ。何だよ、オレが来て嬉しくねーのかよ......」

少し拗ねたようなシカマルの言い方に、テマリは少しだけ心を動かされましたが、天の川の『コッチ側』を治める我愛羅の姉として、規則は守らねばければという思いがあります。
 敢えて不機嫌な表情を作ると、シカマルを追い返そうとしました。

「我愛羅と『ソッチ側』の火影様の作った規則だろう、守らなくてどうする。我がままを言うな」
「ちょっとだけならいいだろ。やさしくすっからよ」
「......何の話をしている」

テマリが思わず小さな笑い声を漏らすと、シカマルが手を伸ばして来て、ギュっと抱きしめて来ました。
 ひと月ぶりのその温もりがやけに懐かしいような気がして、テマリは思わず目を閉じかけましたが、

「何をしている」

と後ろから低い声が聞こえて来たので、咄嗟にシカマルを思い切り蹴り飛ばしました。
 シカマルと、その後ろで抱擁シーンを激写しようとしていたイタチは、重なるようにして吹っ飛びました。

「我、我愛羅!」
「人の声がしたようだが」
「パンツ一枚の変態カササギが、変なオモチャを押し売りに来てただけだ。電池の持ちも悪そうだったしな。今、蹴り飛ばしてやった」

ハハハ、と笑いながら、テマリは玄関の扉を閉めました。
 玄関の外からは、何故かイタチの悲鳴が上がっていましたが、シカマルの声はしません。
 一体、何があったというのでしょう。
 強く蹴りすぎたのでは無いかと心配しながらも、『コッチ側』の主である我愛羅に彼を見つかってしまうと、ヤヤコシイ事になります。
 テマリはにこやかに弟の背中を押して、共にリビングへ戻るよう促しました。

 「さ、『星たべよ』あげるから、部屋に戻ろうな」
「うむ」

戻ったリビングには、誰もおりませんでした。

「あれ、カンクロウはどこに行った?」
「知らん。さっき、フラフラ出てった。自分の部屋じゃないか?」
「そうか。あ、ちょっとテレビ見て待ってな、我愛羅。お茶を煎れて来てやるから......」

屋根の上には、ションボリと沈んだ様子のシカマルを眺めているカンクロウがおりました。
バイトも無くて暇なので、屋根の上で星空からインスピレーションでも得ようと思ったのです。

「サスケの写真が!!」

転げた拍子にシワでも入ったのか、必死で写真を撫で付けている恥ずかしい格好の男が、シカマルの隣に見えました。
シカマルはどう見ても元気が無さそうですが、変態っぽい男をしきりになだめています。
何だあれは、とカンクロウは眉を寄せました。

年に一度、と『ソッチ側』の火影と『コッチ側』の我愛羅が取り決めたはずなのに、何故シカマルがココにいるのか、皆目見当がつきません。
 いずれにしても、今日は家に我愛羅が居るのですから、テマリがシカマルの相手を出来るはずも無いと、カンクロウは思いました。

「自分ばっか幸せになろうったって、そうは行かないじゃん」

いいかげん彼女ほしいじゃん!! と書いた短冊の事を思い出しながら、カンクロウは顔をしかめました。
年に一度会ったついでに3詭皆の願いごとを叶える、という約束はどうなったのかと思いながら。

そういえばあの日、笹からカンクロウの短冊がヒラリ落ちて、テマリに散々からかわれました。
 こんなところに書く暇があったら、合コンにでも行けと言うのです。
 テマリは現実的で、男のロマンが分かっていないのだとカンクロウは常日頃から思っていましたが、文句を言っても揉めるだけなので、黙って短冊を笹に結び直しました。

しかし、あぁ、もしかするとあの時短冊がヒラリと一度落ちたせいで、いまだに願いが叶わないのかもしれません。
 いや、願いを叶えるべきテマリが大笑いしていたわけですから、叶える気も無いという事でしょうか。

 ガチャ、と玄関の扉が開く音がして、カンクロウは下に視線を遣りました。
 着物の裾を適当にたくし上げて、駆けて行くテマリの姿が見えます。
 トボトボと帰る後姿を見せていたシカマルが振り返って、驚いたような顔をするのも、見えました。

シカマルの元へ辿り着いたテマリが、彼の襟首へ乱暴に掴みかかるのを見て、カンクロウはテマリが説教でもするつもりなのかと思いました。
 テマリはキツい女です。
 禁を破って此処へ訪れたシカマルを、叱りつける事くらいするでしょう。

けれど予想に反して、テマリはシカマルにキスをしました。
 長くは無いキスでしたが、カンクロウには何故かそれが、酷く長く思えました。

別れの仕草なのか、テマリはシカマルの頬をするりと撫で、そしてあっさりと彼に背を向けました。
 テマリが何か、言ったのでしょうか。
 シカマルの頬は、薄い桃色に染まっていました。

一目散に玄関へと戻って行くテマリの後姿を見送るシカマルの顔は、さっきまでとは打って変わって幸せそうでした。
 とても幸福そうなその表情を眺めていると、何故でしょう。
 無性に腹が立って来ます。

 「......やっぱいいかげん、彼女欲しいじゃん」

不貞腐れたカンクロウの溜息は、晴れ渡った星空へと吸い込まれて行きましたとさ。





おしまい





↑以前私が描いた七夕イラストを基に…
『classic』のゆき様がこ〜〜んな素敵な小説を書いてくださいました!!!!
兄さんの星形パンツやら我愛羅の『星たベよ』やらカンクロウの願いやら…
いやぁ〜〜〜〜ここまで細かく見てくださっていたとは!!!
本当に本当にありがとうございました!!!
宝もんです☆何度読み返しても面白くて
嬉しい気持ちになります!!
上記のイラストは、小説のお礼として捧げたものです。


とっても素敵な小説サイト様です♪さあ皆様レツゴーー!!↓





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