それは、ずるいよ


   手の平で踊る

 「…つまらない」
卜部は煌々と明かりがついたままの簡素な部屋の天井を睨みつけた。卜部は直属上司とも言える藤堂とともにこの黒の騎士団への所属を決めた。出所は詳しく知らないが黒の騎士団は赤貧というわけでもないらしく、それなりの設備を有している。資金の出所が不透明なら代表者も不透明だ。ゼロという目鼻立ちのない仮面はカリスマ性と秘密性で位置を保っている。作戦や戦術の組み立てもうまく目的達成の確率は高い。卜部は茶水晶を巡らせて自分の体に覆いかぶさるようにしているルルーシュを見た。ルルーシュとこういった肉体関係を持つにあたって一つの秘密が明かされた。それはこの黒の騎士団を率いるゼロという仮面の正体が彼であるということだ。ルルーシュは見目麗しく持って生まれた気品のように独特の雰囲気をまとっている。ルルーシュが明かした秘密に見合うように卜部はこれまでそれなりに譲歩してきたつもりだ。この秘密は吹聴しないでほしいというから藤堂にすら口外していないし、緊急出撃命令のように時と場所を選ばぬルルーシュの呼び出しにも出来る限りで応じた。その上、今現在のルルーシュは卜部を組み敷いて衣服を脱がせながら脚を開かせ、体をねじ込んだ体勢でいるのだ。そこで先の台詞である。よっぽど殴り倒して自分の寝台へ潜り込もうかと思った。卜部はその苛立ちを口元を震わせるだけで何とかこらえた。
 ルルーシュは愛くるしい大きな瞳を瞬かせて唸っていたが卜部の脚をおもむろにくつろげさせた。卜部も抵抗しない。抵抗するなら交渉自体を断っている。しばしの間をもってルルーシュは納得したかのように一人でうんうんと頷いた。満足げに卜部の縹の艶持つ短髪を梳くように引っ張ったり、目蓋を撫でたりする。手慰みのようなそれらに意味はない。卜部は乱暴にその指先を払った。
「なんだよ」
「お前が悪い。つまらんな」
「…なにが」
卜部の言葉が募る苛立ちに険を増す。卜部の奥底がちりちり灼けた。嫌な予感がする。卜部の心情など知らぬげにルルーシュは自信たっぷり、当然の権利だと言わんばかりのしたり顔でポンと手を打った。

「お前が嫌だと泣いてくれないとつまらない」

卜部の右手がルルーシュの頬を直撃した。たまりにたまった苛立ちの発露は平手に切り替えるとかそういった手加減を一切しなかった。思いっきりめり込んだ手応えに卜部は無表情の奥で若干後悔した。ルルーシュは標準的な頭脳派の特徴として肉弾戦には圧倒的に弱かった。受け身や流し方も知らず思い切り喰らったようで寝台から転げ落ちた。殴られた側の頬がみるみる腫れていく。あまりの衝撃が吸収しきれておらず茫然と腫れた頬に指先を這わせていく。卜部はしなやかに四肢を繰って寝台から降りると剥ぎとられた衣服を拾って身につけた。
 「う、らべ」
「謝らねぇからな。人を馬鹿にすんのもいい加減にしやがれ」
ルルーシュの紫苑が煌めいた。バネ仕掛けのように飛び起きると卜部の腰にすがりつく。
「なんだ行くのか? まだ泣くお前を見てないぞ。抱かせろよ」
「――…い、」
嫌だ、と言おうとしてわくわくと煌めく紫水晶と出くわす。卜部は言葉を切るとこれまでのやり取りを反芻した。反芻する時間と理解が深まるほどにルルーシュは満足げに笑み、卜部の口元が苦々しげに歪む。
「何だ、嫌だと泣いてくれるのか? それとも素直に抱かれてくれる?」
ルルーシュは意地悪く、ほらほらと答えを急かす。嫌だと反抗すればルルーシュの望んだ結果になるのだし、嫌じゃないと言えば言質にとられて抱かれるだけだ。どちらに転んでもルルーシュは痛くもかゆくもなく、むしろ望むところであり、割りを食うのは卜部だけだ。
 引き結んだ卜部の口元が不服さを示した。その間にもルルーシュは留め直された襟を緩めて白い手を滑り込ませる。ほんのり温んだ乳白色が胸を肌蹴させていく。
「ほら、嫌なのか嫌じゃないのか答えろったら。なにも言わないなんて気持ち悪いだろう」
ルルーシュは嫌味たっぷりに殴られて腫れた頬を押し付けてくる。
「こんなに腫れた。ちゃあんと礼はするからな。それこそお前が嫌だと言うほどしてやる」
うむうむなどと唸りながら血のにじんだ唾液を見ては口の中を舐めている。切れたらしく時折痛そうに眉を寄せる。奇妙な揺らめきで紫苑が卜部を惑わせる。
「こんな突貫工事にすら手詰まりか? ひっくり返す手立てはあるだろう、穴だらけだこんな策略。それとも素直に泣いてくれたりするのか?」
ホレホレ、とルルーシュの白くて細い指が卜部の頤を撫でる。その指先を払いのけながら卜部は立ち去れずにいた。もう一撃して黙らせることも可能だと思い至った刹那に言いとがめられた。
「まさか暴力で解決したりはしないだろうな? お前はそこまで浅慮ではないよな?」
ますます退路が絶たれていく。卜部は口数こそ少ないが特に思慮深いわけでもないと自認している。己が頭の出来など重々承知の上だ。ルルーシュの傾向を考え含めるに相手の手に効果を上乗せして嵩にかかる性質だろう。下手な手を打てば自滅するだけだ。ルルーシュにはそれだけの力があると卜部は見た。
「…ちくしょう」
結果として卜部が打つ手などない。後先考えずに腕力で解決できるのはその場だけである。
「冗談じゃねぇちくしょう」
「あたりまえだろう、もちろん本気だ!」
偉そうにふんぞり返るのがいっそ憎らしい。ルルーシュは改めて卜部を寝台の上に押し倒した。卜部もされるままになる。卜部の手詰まりを感じ取っているルルーシュが嬉しそうだ。満足げでもある。それはそうだろう。立てた作戦がうまくハマれば爽快であるに違いない。
 宝玉の煌めきを宿す瞳は爛々と輝き唇が紅く熟れた艶を帯びる。じらすように卜部の服の留め具を解いていく。
「最高だ。興奮するな」
「変態野郎」
卜部の暴言にルルーシュの目がきょろっと動いた。その桜色の爪先がぎゅうっとつねる。
「ひぃあッ」
固く尖った胸の突起を思い切りつねられて卜部が声をあげる。
「上等だ。お前が抱けるならいいさ」
ルルーシュが妖艶に笑う。その口の端が吊りあがる。
「さぁ、嫌だと泣いて、もらう」
もがく卜部の爪先が敷布の畝で波紋を描き、卜部のしなやかな背は何度もしなった。


《了》

無駄に頭使ったわりにモノになっていない(最悪だ)
まさにヤマなしオチなしイミなし。何も考えてない話だ。
ルルーシュがあほの子すぎる。ぎゃふん。もうどうしようもないこれ。
とりあえず誤字脱字がないのを…ね、がう、本気で悶絶するんだあれ。      09/09/2009UP

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