かけがえのない 04
自分が言った事には責任を…
カタカタ
カタカタカタ
キーボードを叩く音が生徒会室に響く。
勿論、仕事をしているのは会長ではなく、副会長である。
会長といえば…―
「孝介ぇ〜〜」
と、先程から書類処理もせずに、副会長の名を涙声で呼んでいるだけだったりする。
「………」
「孝介ぇ〜〜。無視するなよなぁ〜〜!」
「………」
そんな会長綺羅を無視して、副会長孝介は仕事に励んでいる。
「………孝介ぇ〜〜」
「………」
「孝介ぇ〜、孝ちゃ〜ん、孝〜〜」
「………」
「………ぐすっ……」
無視され続けている綺羅は、既に泣きが入っている。
だが、孝介はそれさえも無視して仕事を片付けている。
というか、既に綺羅の事は眼中にないようで、声さえも聞こえていないようだ。
「………」
こうなったら面白くないのは綺羅の方で、頬を膨らませて拗ねはじめた。
ただし、仕事の事で頭が一杯で、綺羅の事が眼中にない今の孝介には意味をなさない。
「………」
しまいには、綺羅はお菓子を食べはじめた。
仕事は完全に放棄している。
「……ふぅ。これで、今週末に提出しなければならない書類は片付いたな。…綺羅、お前も終わったか?」
数時間後、仕事が片付いた孝介が綺羅の方を見ると、仕事もせずにお菓子を食い散らかしている綺羅の姿があった。
「………綺羅?これはどういう事だ?」
「あ、はは…。……これは、そのだな………」
孝介のにっこり笑顔(だが、背後にはどす黒いオーラが見えていたり、声が低くなっていたりする)を直視してしまい、綺羅の身体には冷や汗がダラダラ流れている。
「俺は『今週末までに片付けなければならない書類が溜まっているから、頑張ってくれよ』と言ったら、お前は何て言ったっけ?」
「お、『おぅ!任せとけ♪』と言いました!」
「そうだよな?でも実際はどうだ?…ん?片付いているのは、三分の一にも満たないが?」
孝介は綺羅の机の上に置いてある書類を見て、にっこり笑顔のまま(ただし、声は先程よりも格段に低くなっている)そう言った。
「だ、だってよ。孝介が構ってくれなかったから……」
「言い訳は結構です、生徒会長殿」
「こ、孝介ぇ〜〜!(泣)」
何とか孝介の怒りを鎮めようとした綺羅だったが、孝介に敬語で一刀両断されてしまい、泣きが入りはじめた。
「さっさと仕事をしてください。仕事が終わるまで、今日は帰しませんから」
「そ、そんな〜〜(泣)」
「何か問題でも?」
孝介の笑顔に変わりはないが、無いからこそ怖かったりする。
それにくわえ、笑顔なのにもかかわらず、声は低く、生徒会室に置いてある温度計の数値が、−を指していたりする。
「うぅ…。あ、ほら、親が心配するし!」
「それならば問題はございません。許可はおりております」
必死に考えた言葉だったが、それすらも一刀両断され、携帯(メール)を見せられた。
そこには…―
『孝介君が一緒なら大丈夫ね。綺羅の事宜しくね^^ 12時までに返してくれたら良いわよ♪ by和子』
―の文字。
「……お、お袋ぉ〜〜!」
「っと、言う訳です。これで安心して仕事に励む事が出来ますね。ではどうぞ、仕事をしてください」
孝介は笑顔、敬語のままそう言うと、本を読みはじめた。
綺羅は「ちくしょ〜!」と叫びながらも、孝介が怖くて仕事をしないままでいる事が出来なかった。
仕方なく、だが真面目に仕事を片付けた綺羅が家に着いた時間は、11時58分だった。
→
後書きと次回予告(?)
大変長らくお待たせいたしました。
やっぱり、お盆までにアップできなかった…。
そして、題と内容があってるのかあってないのか微妙だし…。
次回は、文化祭の話です。
生徒会(綺羅のみ)が、文化祭でも暴れまくります。多分…。
それでは、次回の作品でまたお会いしましょう。
管理人 K