かけがえのない 2
出会い〜綺羅視点〜
俺、埜口綺羅が清水孝介の事を知ったのは、ある事件がきっかけだった。
その時の孝介は、名の知れた不良で、学校でも何度か問題を起こし、入学したばかりだというのに停学になったりもしていた。
と言っても、俺は名前さえ知らなかったけど。
金曜の昼。天気がよかったので、俺は午後の授業をサボり屋上で昼寝をする事にした。
2時間くらい授業をサボったところで、俺の成績が落ちる事はない。
これでも一応、学年10位内にはいつも入っているのだ。
「ん〜、気持ちいいぜ」
屋上に出た俺は、一度大きく伸びながらそう言った。
そして、そのまま寝転んだ。
ガチャ
「…チッ、先客かよ。邪魔くせー」
暫くするとドアが開き、誰かが入ってきた。
しかも俺の事、邪魔って言いやがったか、こいつ?!
「誰が邪魔だ、誰が!」
俺はあまりにもムカついたので、飛び起き、怒鳴った。
「…お前が」
そんでもって相手は即答。
流石の俺も凹んだぞ。
「……あ〜そうかい。でもここはお前だけの場所じゃないから、人がいたって何も可笑しくないだろ」
「邪魔なものは邪魔だ。出てけ」
「何だと?!いい加減にしろよ、お前!」
俺は、目の前にいる男の言い方にムカついた。
せっかく、気持ち良い気分になっていたのに、こいつのせいで気分は最悪だ!
「うるせーな。喚くな」
「あ〜、くそ!もういい!」
俺はこれ以上こいつと付き合う気になれず、教室に戻る事にした。
本当に、最悪だ!
それから数日後、何故か俺は不良に絡まれていた。
何故?!俺、何もしてねぇぞ!?
「へ〜、お前が清水孝介かよ。なんか、弱そうだな」
「ホントっすね。弱そうだ」
不良共は、俺を見て何やら言っているが、俺は清水孝介じゃねぇ!
てか誰だよ、清水孝介って!
それに弱そうって何だ!
って、そんな事言ってる場合じゃない!
何とか誤解を解かないと!
「あ、あの〜。俺、清水孝介って奴じゃないんですけど…」
「嘘ついても無駄だ。てめぇが、俺んとこの子分を可愛がってくれた事は分かってんだよ」
だ、だから何の話しだよ!
そんなの明らかに人違いだ!
俺は喧嘩なんて好きじゃねぇよ!誰が可愛がるか!
こ、こうなったら、逃げるが勝ちだ!
俺は猛ダッシュで逃げた。…が、
「待てや、ごらぁ〜〜!」
追い掛けてきやがった〜〜!
な、どうすればいいんだよ!
も、誰でもいいから助けてくれ!
今の俺は半泣き状態。
格好悪い事はわかっていても、怖いものは怖いんだ!
「…おい、こっちだ」
走っていると声が聞こえたので、そっちに向かう。
それから暫くそいつの後を追うと、人がいない場所へと着いた。
ま、まさかさっきの奴等の仲間か?!
俺は警戒したが、その顔には見覚えがあった。
「お前、屋上の時のムカつく奴!」
「あぁ?…誰だ、てめぇ」
「覚えてねぇのかよ?!」
俺を助けて(?)くれたのは、よりによって、屋上で俺を最悪な気分にしてくれた奴だった。
しかも相手は覚えて無いときた。
「見つけたぜ!」
「…へ?」
さ、最悪だ!不良共に見つかったぁ〜〜!
こんな人気のない所にいたら、助けてもらえないじゃないか!
どうすんだよ!
「だ、だから俺は清水孝介じゃなくて、埜口綺羅だって!」
「嘘ついてんじゃねぇ!」
何で信じてもらえないんだよ!
嘘つく理由がどこにあるんだよ!
「そいつが言ってる事は事実だぜ。北高の早瀬」
俺は、そう言ってくれた奴を見た。
それは、屋上男(面倒だからこう呼ぶ)だった。
「あ?誰だよ、てめぇ」
「お前達が捜してる清水孝介だよ」
って、お前が清水孝介かよ?!
俺が追われたのはお前のせいかよ!
つか全然似てねぇじゃん!
「…お前、何1人で百面相してるんだ?」
「うるせー!お前のせいで、俺は殴られるとこだったんだぞ!」
「だから、助けてやっただろうが。大体、悪いのは俺じゃなくて、人の顔も覚えられない、あいつ等出来損ないの脳みそだろ」
確かにそうだが、出来損ないって…。
そんな事言ったら、相手を怒らせるだけなんじゃないか?
「だ、誰が出来損ないだぁ?!」
ほら、やっぱりぃ〜〜!(泣)
どうすんだよ、これ!
「だから、子分含めお前等」
そして、煽ってどうする?!
馬鹿だろ、お前!
「てめぇ…!…殺す!」
ぎゃー!殴り掛かってきやがったー!(泣)
「そうこねぇとな。丁度暇してたんだ、相手になってやるよ。……おい、下がってろ」
「お、おう」
当たり前だ!巻き込まれてたまるか!
俺は言われた通り、邪魔にならない所まで下がった。
屋上男…じゃなくて、清水は次々と不良共を倒していきやがった。
しかも笑顔で。
「よぉ、平気か。百面相」
「誰が百面相だ!」
不良共を倒し終えた清水は、俺の所に来て、そう言った。
俺は、咄嗟に突っ込んでしまった。
「あ?喚くなよ。うるせーな」
「……俺は、埜口綺羅だ!名前くらい覚えろ!」
「は?覚える必要ねぇだろ。てめぇとは、もう会わねぇだろうし」
む、ムカつく!
こいつ、何様のつもりだよ!
せっかく俺が名乗ったって言うのに、覚える必要ないだぁ〜?!
「お前、ふざけんじゃ……って、怪我してんじゃん!」
清水の言い方にムカついた俺は、怒鳴ろうと思ったが、怪我に気付き心配になった。
「あ?……かすり傷だろ。ほっときゃ治る」
「馬鹿言うな。俺の家近いから来い。消毒してやる」
俺は清水の腕を掴み、家まで連れて行く。
「な、おい、離せ!余計な事すんじゃねぇ!」
清水の言葉を一切無視して、家の鍵を開け、中に入る。
親に救急箱をとってきてもらい、それを受け取り、自分の部屋に行く。
「適当に座ってくれ」
「……」
清水は諦めたのか、何も言わず素直に座ってくれた。
「うし。動くなよ」
俺はそれをいい事に、そのまま消毒する。
その間も、清水は何も言わず大人しくしていた。
「完了。いいぞー」
「…………ありがとよ」
「………………へ?」
こいつ、今お礼を言ったか?
聞き間違いじゃ、ないよな?
俺は自分の耳を疑ったが、顔を背け、少し耳を赤くしている清水に気付き、聞き間違いじゃない事がわかった。
なーんだ、可愛いとこあんじゃん。
「どう致しまして。…にしてもお前、可愛いとこあるんだなぁ」
「………はぁ?!な、何馬鹿な事言ってやがる!」
あ、また赤くなった。
こいつ、本当は素直なんじゃないか?
やっぱり、可愛いぜ。
少し口を滑らせて、思っていた事を言ってしまっただけだったが、清水の意外な一面を見れて俺は満足していた。
「うん、やっぱりお前可愛いわ」
「〜〜っ!帰る!」
清水は俺の言葉に照れたのか、怒ったのか(多分両方だろう)顔を真っ赤にしながら帰ってしまった。
「孝介〜〜!」
「何だ、綺羅」
俺はあの時から孝介に猛烈アタックを繰り返し、親友と呼ばれる立場にまで上りつめた。
まぁ、その立場になるまでは、かなり苦労したんだけど。
いまではこの通り、仲良しだ!
「俺、生徒会長になるつもりだからお前、副会長になれ!」
「却下」
「な、何でだよ〜〜!(泣)」
「冗談だ。…お前が会長になったら、仕事が溜まる一方なんだろうな」
孝介はクスクス笑いながら、「お前の尻拭いを出来るのは、俺だけだろ?なら、俺が副会長になるしかないじゃないか」と言って、俺の頭を撫でた。
そして、俺達は永富高等学校の会長・副会長になったのだ。
《後書と次回予告(?)》
大変長らくお待たせいたしました!
なんかやっぱり駄文ですが、こんなものでよければお持ち帰りください。
次は、孝介視点の出会いです。
それではまた次回の作品でお会いしましょう。
管理人 K