▽レス始▼レス末
「新世界極楽大作戦!! 第二話(GS+エヴァ+α)」おびわん (2004.12.19 22:48)




「どうやら、我々は過去の世界に飛ばされたみたいですね。」

彼岸から帰還した小竜姫は、代わりに混乱している横島を神剣をもって落ち着かせた後、自身の見解を述べた。

「か、過去世界・・・! でも何で!?」

「それは・・・まだ。」

血溜りから顔を上げて問う横島。既に出血は止まっている。
小竜姫は原因のわからない突然の逆行に不安を感じるのか、表情は暗い。

会話の途絶えた室内に時計の音だけが流れる。

「そういえば小竜姫様。俺、変な事があったんですよ。」

「変な事ですか?」

「はい。」

東京タワーで己の身に起こった異変を思い出した横島は、逆行の原因はそれなのかもしれないと小竜姫に報告する事にした。

事の次第を横島から打ち明けられる小竜姫。そのうち何故か段々と驚きの表情になってきた。

ついには訝しげな顔で見つめる横島をよそに、うーんと考え込んでしまった。

腕を組み、顔を少し傾げながら唸る小竜姫。横島はそんな彼女を愛らしく思い、マイ脳内メモリーに永久保存した後、話を続けた。

「・・・たぶん原因はアレなんじゃないかと思うッス。
それにあの時、何かに引っ張られるような、そんな感じがしましたし。」

「私も・・・。」

「え?」

「私にも横島さんと似た事がありました。今思うと、アレがそうだったんだと思います。」

思いがけない、小竜姫の突然の告白。

「私は洗濯物を取り込んだ後、夕食の材料を買いに行ったんです。」




小竜姫の話はこうだった。

買い物について行きたいとダダをこねたパピリオを笑顔でなだめ、
なぜか顔面蒼白で震える彼女を後に妙神山を下山した。

麓の町のスーパーでネギや豆腐、それに一人でこっそり食べようとプリンを買っていた小竜姫の耳に、微かに聞こえた声。

「・・・横島さん!?」

声が聞こえたのはほんの一瞬だったが、小竜姫には確信出来た。
彼に対する秘めた想いの大きさゆえに。

横島が消えてしまう、と。

スーパーを文字通り飛び出た小竜姫は、微かに感じる横島の霊波を辿り空へと舞い上がった。

そのまま超加速を使い、東京を目指す。

(横島さん横島さん横島さん横島さんっ!!!!!)

速く。

ただ一刻も早く。

小竜姫はそれ以外考えなかった。

その想いが強まるにつれて、彼女の移動速度はどんどんと速まっていく。
今なら音さえ越えて光にも追いつけそうだ。

こんな事は初めてだった。まるで邪魔な肉体が溶け消えて、精神だけになったみたいだ。

買い物袋とその中身は既に大気の摩擦によって消し飛び、遥か後方の空にその屍を撒き散らしていた。

小竜姫は買い物袋の取っ手だけを握り締め、さらに速度を上げる。

(・・・見えたっ!!)

全速力で東京タワーに向かう小竜姫。
その目がタワー展望台の上の横島の姿を捉える。

だが横島はもう胸の上まで溶け消え、首だけが宙に浮かんでいる状態だった。

(消えないで消えないでっ! 私を置いて行かないでぇっ!!!)

横島に向けて必死に手を伸ばす小竜姫。その腕が消えていることにも気付かない。

「横島さぁぁぁんっ!!!!」

ついに横島にその身が届いた瞬間、視界を包んだ閃光に小竜姫の意識は絶えた。






「それで気が付いたらあの公園にいたんです。」

横島への想い云々のくだりは巧みにはぐらかし、小竜姫は話を終えた。
あの時の自分の気持ちをあらためて認識したのか、彼女は薄っすらと頬を桜に染める。

二千年以上を生きている小竜姫だが、精神の方はその年齢に相応せず、
特に恋愛感情は精々人間の小娘並にしか育ってはいないのだ。

「俺達が時間逆行してしまった原因。決まりっすかね?」

「・・・おそらく。」

再び途絶える会話。

横島は自分の脇で、座布団を枕にして眠る銀髪の少年を眺めた。

人目を引く紫銀の髪、恐ろしく白い肌に細く整った眉。この位の年齢にしてはひどく華奢な体が、彼に一見して少女と見間違えてしまいそうな雰囲気を纏わせていた。

しかし今も少年は眠り続け、目覚める気配は無かった。

「・・・ならこいつ、一体何者なんすかねぇ?」










             新世界極楽大作戦!!

                第二話

                                             







「恐らく、今回の件と無関係ではないでしょう。もしや・・・。」

「・・・俺達と同じように時間逆行させられたのかも、ですか?」

小竜姫の言葉を継ぐ横島。

彼女は頷くと立ち上がり、少年の頭の近くに座りなおした。
そしてスッと手を少年の額にかざす。

「この子が今だ目覚めないのは、肉体では無くその内側に何か問題があるせいかもしれません。よって、昔ヒャクメに教えて貰った『さいこだいぶ』を行いたいと思います。」

「サイコダイブ? ああ、昔冥子ちゃんとやったアレか。」

「ご存知なのですか?」

尋ねる小竜姫に、美神に憑いたナイトメアの件を説明する横島。

「そうだったんですか。なら、横島さんにも少しお手伝いをして頂きます。」

「俺がっすか?」

「ええ。実を言うとヒャクメには術を教えて貰ったというだけで、私自身が誰かに『さいこだいぶ』を行ったことは無いんです。そこで経験者の横島さんに『だいぶ』の際に必要な、いめえじ構成を手伝って頂きたいのです・・・。」

すまなさそうに話す小竜姫。

その姿は、横島に(も、萌へっ!!)とヤる気を起こさせるのに十分に値する可憐さがあった。

横島、噴火。

「任せてください小竜姫様っ!! この俺がいる限り、貴方が失敗する事はナッシング!! だから安心してその体を俺に任せ、美しい夜を共にっ!!」

っぴょぉ〜ん!!

そこまで叫んだ横島は自分の言葉に興奮したのか、いきなり小竜姫に向けルパンダイブで飛び掛った。

彼の脳内シナリオでは、飛び掛る→もしかしたら触れるかも→しかし即殲滅→「堪忍やぁ〜!!」という風に進むはずだった。
・・・だが。

ドサッ!

「・・・あ、あら?」

「・・・・・。」

軽い衝撃の後、横島の顔と10cmも離れていない所に小竜姫の顔があった。

彼女も驚いたように目を見開く。しかしすぐにその顔は赤く染まるものの、
瞳は横島の目を捕らえたまま逸らさなかった。

ただそれだけ。斬撃も霊波砲もアリアリもボラボラも無い。
この小竜姫の予想外の反応。組み立てたシナリオに反する事態に、横島の思考は死んだ。

「あの・・・小竜姫様?」

「・・・・・。」

「・・・・・(真っ赤)。」

「・・・・・(真っ赤)。」

ゆっくり、静かに身を離す横島。小竜姫が少し残念そうな顔をした気もするが多分気のせいだろう。

・・・訪れる三度目の沈黙。
それを先に破ったのは小竜姫だった。

「・・・そ、それでは始めましょうか。」

「は、はい(汗)。」

ヴゥゥゥン・・・、と冷蔵庫のコンデンサのような音をたてて、少年の額にかざした小竜姫の手が光り始める。

「横島さんは手を私の肩に。大体で構いませんから、私の霊波動に波長を合わせて霊波を放出して下さい。」

「え・・・と、こうっすかね。」

小竜姫の肩の細さとその感触に感激しつつ、横島は彼女の指示通りに霊波を放出する。

「もう少し強く・・・、あ、行き過ぎですね。・・・ハイおっけぇです。」

「!?」

ヴァシュッ!!

小竜姫の声を合図に、横島の意識は何処かに落ちるような感覚と共にブラックアウトした。









「海・・・・・なのか? これ。」


気が付くと横島は浜辺らしき場所に一人で立っていた。
らしき、と付ける理由は彼の眼前に広がる海。その色にあった。

赤い、海。

その潮風は血の臭いがする。
そして恐ろしい程の静寂。

横島は思った。この世界は死んでいる、と。

ゾッとした。

「こんな・・・。」

内陸部に向けて歩き出す横島。これ以上あの赤い海を見ていたくはなかった。
歩き続ける横島の視界に見えてくる破壊された建物の数々。

こういう方面にはからっきしな横島にも、あの少年の心が正常な状態ではないとわかった。

「まさかアイツ、サイコさんなんじゃねぇだろうな。」

そう思いながら暫くすると、一際大きな建造物が見えてきた。
所々焼け落ちた、黒い建物。

「ピラミッド、か?」

と、何かに気付いたのか唐突に立ち止まり、その場にしゃがみ込む横島。

その手がつまみ取ったのは、主の居ない黒い戦闘服。
自動小銃や手榴弾まで落ちている。

「・・・・・?」

よく見ると、そこかしこに同じような物が落ちている。
これが少年流の冗談ならブラックすぎる。

再びピラミッドに向けて歩き出す。

漸くその入り口らしき場所を見つけた横島は、そこに小竜姫の姿を見た。
彼女はこちらに背を向け、横島が来たことにも気が付いてはいないようだった。

そんな、らしくない彼女をいぶかしみ、早足で近寄っていく。

「小竜姫様?」

反応はない。

「小竜姫様!」

「は、はい!? あ、横島さん!」

肩を叩かれて、やっと気が付いたようだ。

すみませんと頭を下げる小竜姫。聞けば、離れてしまった横島も気になったが、それよりもこの心の主、あの少年の事を優先してしまったそうだ。

小竜姫から見てもこの世界は尋常ではないらしい。

「横島さん、見て下さい。」

「どうしたんすか?」

言われるがまま、ピラミッドの中を覗き見る横島。

息を飲んだ。

薄暗い内部。そこに外とは比べ物にならない程の服、服、服。
あの黒い戦闘服もあれば、どこかの制服のような物もある。

その制服の方の大多数は、銃痕だろうか、無数の穴が穿たれていた。

ゴクリ、と横島は口の中の苦いものを飲み込む。

「行きましょう横島さん。ここに何か手掛かりが有るかもしれません。」

「・・・は、はい。」

小竜姫を先頭に、二人はゆっくりと進んでいく。

もしかすると、夢魔やそれに類する妖怪が現れるかもしれない。
自然と緊張も高まってくる。

ピラミッド内部は、まるでアニメやSF映画に出てくる秘密基地のようだった。

長い長いエレベーター。何かの実験室。大きなモニターが並ぶ発令所。

そのどこにでも主の居ない服が人型に散らばっていた。
まるで中身だけがいきなり消えてしまったかのように。

「・・・この服の持ち主、皆ハダカで何処に行っちまったんすかね。」

おどけた口調で話す横島。

怖いのだ。

この世界はあの少年が体験した現実、その記憶であったとしたら。
彼が自分達が居た時代よりも未来の世界から来たのだととしたら。

そう考えると、怖いのだ。

やがて二人はエレベーターを発見した。

床の上に特徴的なデザインの、赤いジャケットがあった。これも腹部に穴があいている。

横島に眼で合図し、スラリと神剣を構える小竜姫。

断るわけにもいかない横島が恐る恐る、『開』のボタンを押した。

音もなく開く扉。
しかし危惧していたような敵の襲撃はなく、その気配もなかった。

素直に乗り込む二人。
やはり音を立てずに扉は閉じた。

「さて、上と下。どっちにいきます、小竜姫様。」

「では・・・、上を。」

グンッ

横島の問いに小竜姫が答えようとした途端、エレベーターは恐ろしい速さで動き始めた。

下に向かって。

「なっ、なんだぁっ!?」

「もしや、罠!?」

コントロールパネルにある緊急停止ボタンを押すも止まらない。
二人を乗せたエレベーターはドンドンと下降していく。

どれほど経っただろうか。やがてエレベーターはその速度に反する静かさで止まり、扉を開いた。

二人はそれぞれ霊波刀と神剣を構えたまま、そっと扉をくぐった。

降りた先は上の階に増して薄暗い廊下。
左右に延びている道の先は闇に包まれよく見えない。

「・・・どっちに行くっすか?」

「え!? ええっと・・・。」

相談する横島と小竜姫。
だが突如、その場に三人目の気配が現れた。

「!?」

「何者!!」

瞬時に武器を構えた二人はその気配、中空を見やった。

「・・・・・待っていたわ。」

「「女の子!?」」

そこに浮いていたのは、どこかあの少年に似た雰囲気の少女。
美しい青い髪と赤い瞳。アルビノだろうか?

「貴方が彼を捕らえているのですか!?」

詰問する小竜姫。
しかし少女はその問を、フルフルと顔を振って否定した。

彼女はスッと地上に降りてくると、横島に近づいた。
澄んだ赤い瞳に見つめられ、柄にもなくうろたえてしまう横島。

少女は細い眉を哀しそうに歪め、彼に話し掛けた。




「・・・お願い、碇君を助けて。」





あとがき

はじめまして皆様、おびわんと申します。

この作品は元々「夜華」の方に載せて頂くつもりだったのですが、
更新前に閉鎖されてしまい、新ためてこちらのサイト様に投稿させて貰おうと
書き直した物です。

拙い文章、及び遅筆が目に余るかもしれませんが、どうかこれからも宜しくお願いします。

前話にレスを頂いた方々へ。


>極楽鳥様

とりあえず時代は横島が美神と出会う前です。

原作では時間軸がどうなっているのか解かり辛いので、
勝手に解釈しました。

で、シンジ君はまだ何も出来ません。貧弱なボーヤのままです。

αは主にネタ方向です。

>善様

す、すいません・・・。
どうしよう。

>田○正和様

αはDBネタではないです。
あの作品を弄る勇気は私にはありません。

他に良い名前が思い浮かばなかったので拝借しました。
DBネタを楽しみにしていらっしゃったなら申し訳ありませんです。

>九尾様

逆行ネタは私も大好きです。
このジャンルならではの面白さを出せればと思ってます。

シンジ君が活躍するまでもう暫くあります。
それまでは横島君の助手です。

>無貌の仮面様

ヒャクメはそういうポジションだと思ってます。

>わーゆ様

期待して下さって有難う御座います。
今後とも宜しくお願いしますね。

>nacky様

兄弟子は小竜姫様です。

斉天大聖は小竜姫が認めた者が居れば修行をつける。なので妙神山に
常駐しているわけでなない。と都合よく解釈しました。

いや、原作に其処らの記述が無かったので・・・。


レスして下さった皆様、有難う御座いました。




△記事頭
  1. いきなり精神内に入りましたねぇ…紅い海の世界はある意味ハルマゲドンが起こった世界なわけですけども、ちょっと反応が薄かったかもしれません。LCLは血の臭いなんですし。

    美神さんとは知り合っていないのですか…この場合、妙神山が拠点になるのでしょうか?そうだとしたら、おキヌちゃんを始めとする出逢い等に対するフォローが欲しいですけど…。

    シンジ君は貧弱なまま、ですか。
    この先シンジ君は役に立つのでしょうか…横島君達が綾波レイ(=リリス?)の話を聞いた場合、かなりのことを二人は知ることになるでしょうし、元々逆行で、しかも強い状態ですからね。

    『+α』はネタですか。どのようなネタが入るのか楽しみにしています。

    それにしても、シンジ君は紅い海の世界ではかなり高位な存在なのでは…綾波レイも、リリスだとしたら魔族側の最高指導者の妻と同じ『名』を持っていますから。
    極楽鳥(2004.12.19 23:36)】
  2. 説明は全部聞けそうですね。次回で何が起きたか明かされそうで待ち遠しいです。
    小竜姫さまが一緒に来たのはイレギュラーみたいですけど、来てなかったら大変でしたよね。シンジは目を覚まさないでしょうし、横島がこの時代で迷子状態になっちゃいますよ。
    九尾(2004.12.20 00:56)】

▲記事頭


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