※注意
この話はわたしのHP「鱧天油切りバット」でリクを頂いて書いたものですので、Legend of Devil とはまったく関係ありません。ご注意下さい。
Amusement park
「そろそろかな?」
部屋の窓から空に向かってそう呟いた横島の声は青空に吸収され誰の耳にも入ることはなかった。
横島は今ある女性2人をアパートの部屋で待っている。彼女らに会うのも久しぶりである。考えてみればアシュタロス戦以来だろう。流石に昨日の夜電話がかかってきたときは驚いた。
Tululululululu・・・・・・・・・
ガチャ
「ハイ横島です」
『お久しぶりです。 小竜姫です』
電話の相手は小竜姫だった。横島は驚きの表情を隠せない、と言っても電話では相手の表情を伺えないのだから隠しても意味がない。
横島の驚きは小竜姫から電話がかかってきたこともそうだが、それ以上に妙神山に電話が繋がっているとは知らなかったのだ。意の一番にそのことを聞いてみたが答えは単純なモノだった。
『一回ごとに下界に下りるのも面倒なので電話を引いたんですよ』
これが答えだ。神様が面倒だからと言う理由で電話を引くとは・・・・・・・・・横島もつい声を上げて笑ってしまった。
『おかしいですか?』
「いやぁ〜すいません。 ただ、この世の神様は親近感があるな〜と思いまして」
『ふふ、そうですね。 しかし世の中も便利になったモノですね、離れた地でもこうして会話が出来るんですから。 しかし相手の表情が分からないのは少々緊張してしまいますね』
その言葉に横島はまた声を上げて笑った。おそらく電話で話すことが初めてであろう電話の主に言葉だけでもこちらの感情が伝わるようにという横島の優しさから来た笑い声だった。
「それで今日はどうしたんですか?」
『あっ、そうでした。 横島さん明日お暇ですか?』
「え? えぇまぁ、取り敢えず美神さん所も休みなんで、しかしなんで急に・・・・・・・・・まさか!? これはでぇぃとのお誘い!? 小竜姫様もとうとう俺の魅力に!!」
『え? ちょっ、ち、違います!』
自分の言葉で盛り上がっており、あんな事やこんな事の妄想までして煩悩全開の横島だったが、それだけに小竜姫の言葉で思いっきり沈み込み大きな溜め息を漏らした。
『実はパピリオのことでして、そろそろ人間社会の社会勉強もさせようと思っているのですが・・・・・・・・・なにぶん私が俗世に疎いモノですから、それならパピリオとも関係の深い横島さんにお願いしようかと思いまして』
「ああ、そう言うことッスか。 良いッスよ」
『ほ、本当ですか!? そ、それじゃぁ明日の10時にお部屋に伺いますね!』
ガチャン
小竜姫はそれだけ言うと強引に電話を切ってしまった。少々面食らった横島だったが「まぁいいか」とだけ言い、布団の上に横たわった。しかし、ハッとしたように起きあがり部屋を見渡した。
そこには見られて恥ずかしいモノと軽蔑の眼差しを向けられるであろうモノが部屋中に散乱していた。取り敢えず押し入れに押し込みなんとか“普通の”部屋になった。
「ふっ、これぞ正に“押し入れ”」
などと自分でも寒くなるような親父ギャグをかましたが誰にも聞かれていなかった事に案著し、布団にくるまり寝息を立て始めた。
「それにしても遅いなぁ」
時刻は既に10時半を回っていた。
「まさか小竜姫様達の身に何か!?」
横島がそう言って立ち上がった瞬間部屋のドアを叩く音が響いた。
ドンドン
ガチャ
「ヨコチマ〜逢いたかったでちゅよ〜!!」
ドゴス
「ぐふ!!」
扉を開け真っ先に入ってきたのはパピリオであり、彼女のボディタックル(抱きつこうとしただけでちゅ!(本人談))が横島の鳩尾にクリーンヒットした。
「・・・・・・・・・な、ナイスタックル・・・・・・・・・」
こんな時でもギャグは忘れない、大阪人の根性だろうか?
痛みが無くなり、復活した横島は部屋に入ってきた3人の少女達に目を向けた。
「なんでヒャクメまで居るんだ?」
「それは勿論パピリオをダシにデートしに来た小竜姫の観察なのね〜」
小竜姫に付いてきた目的をあっさり答えるヒャクメ。何か楽しそうである。
「ちょっ、ちょっとヒャクメ何を言い出すんですか!!?」
一方首筋から頭のてっぺんまで真っ赤に染めた小竜姫はヒャクメに講義しようとする。
「なんなのね〜?」
「くっ!!」
ニヤニヤしながら言うヒャクメに小竜姫は一言も返せなかった。
(ふふん! こんな面白そうなことを見逃す訳にはいかないのね〜、上層部への報告をちらつかせれば小竜姫は言いなりなのね〜)
(まさか昨日の電話の時鉢合わせするなんてなんたる不覚! このことを報告されては・・・・・・・・・なんとか追い返さなくては)
2人の考えていることなど分かるはずもない横島とパピリオ、横島に至っては小竜姫とヒャクメの険悪なムードにただ“?”が頭の上を飛び交うばかりである。その為、ヒャクメが先ほど言った“デート”の言葉すら頭から離れているのだった。
そんな中、ハッとしたように横島の腕を掴んで立ち上がるとパピリオが口を開いた。
「そうでちゅ! 早く行くでちゅよヨコチマ!」
「え? 行くって場所決まってんのか?」
「何言ってるんでちゅか!? 今日はデジャブーランドに連れてってくれる約束でちゅ!」
身に覚えがない約束に頭がこんがらがる横島、頭を抱えながら悩み続けている。
「俺本当にそんなこと言ったか?」
「小竜姫がそう言ってまちた!」
「・・・・・・・・・」
沈黙。その視線の先には未だ睨め合ってる(?)小竜姫が写る。
(一体何考えてんだろ? まぁ小竜姫様がそう言ったんなら金銭的には問題ないな)と呆れた顔で考える横島。
「んじゃ行くか!」
と睨め合う(?)2人を余所にパピリオの手を取り部屋を出ていく横島。それに気付き慌てて部屋を飛び出す小竜姫とヒャクメ。
「「まっ、待ってください(なのね〜)」」
デジャブーランドに辿り着いた一行、横島に嫉妬や羞念の眼差しが降り注ぐ。美女美少女に囲まれているのだ注目されない訳がなかった。
「はぁ〜、ここがデジャブーランドでちゅか!? あっ! ヨコチマあれに乗るでちゅよ!」
呆けながら辺りを見渡していたパピリオだがあるモノを見つけて横島の手を取り走り出した。そのモノとは世界で1・2を争うジェットコースターでこのデジャブーランドの目玉の1つであった。しかし、自分で空を飛んだりする連中であるそれほど対したことでは無いだろう。
「きゃ〜〜〜!!」
「いや〜〜〜!!」
「止めて〜〜〜!!」
「ヨコチマ〜〜〜!!」
終点に付いたときパピリオは青を通り越して白い顔をしていた。ちなみに先ほどの叫び声は全てパピリオのものである。
「パピリオ大丈夫か?」
ベンチに座り俯いているパピリオに水を渡しながら横島は聞いた。しかし、パピリオは首を横に振るだけである。
「まさか自分で飛べるヤツがジェットコースターが苦手とわな〜」
横島は苦笑混じりに言った。
「ううっ、自分で飛ぶのとは感覚が違うんでちゅ・・・・・・・・・人間は恐ろしいものを造ったんでちゅね」
涙を浮かべながら答えるパピリオ。そこに小竜姫とヒャクメが戻ってきた。2人はお昼の時間と言うことで昼食を買いに売店を回っていた。その手にはホットドックとジュース、蜂蜜、それに大きな縫いぐるみ数個を抱えてきた。パピリオの状態を気にせずかなりエンジョイしているようだ、2人ともに満面の笑みを浮かべている。
「パピリオの様子はどうですか?」
「はぁ、もう少し様子見た方が良いですね」
パピリオの様子を気にする小竜姫だが、その笑顔は崩れていない。
「パピリオがこれじゃぁ次にいけないのね〜」
「はぁ〜、・・・・・・・・・しっかし、ヒャクメはどうやって今日のこと知ったんだ?」
溜め息を漏らしつつ、今日3人が部屋に訪れたときからの疑問を口に出した横島。それに大きく胸を張ってヒャクメは答えた。バックに“えっへん”と言う文字が浮かぶ感じがする。
「神界から妙神山を覗いてたら面白そうだったのね〜。 だから小竜姫が電話しているところに鉢合わせしたように仕組んだのね〜」
「ヒャ、ヒャクメ」
ヒャクメの名前を呼んだ横島はかなりおどおどしていた。と言うよりたじろいでいる。
「どうしたのね〜?」
そう言って横島を見るヒャクメ。しかし横島の指先はヒャクメの後方を指していた。
ヒャクメが振り向くとそこには菩薩のような笑顔(しかし目が笑っていない)の小竜姫がヒャクメを見据えていた。
「し、しまったのね〜」
「ヒャクメ、ちょっとお話しがあります」
小竜姫はそう言うとその笑顔のままヒャクメの奥襟を掴み木陰へと引きずっていった。
「ヒャクメ、貴方確か前回の覗き見の刑罰がまだで執行猶予期間でしたね。 今回のことも報告しても良いのですが・・・・・・・・・」
「そ、それだけは勘弁して欲しいのね〜! ・・・・・・・・・わかったのね〜、今日は大人しく帰るのね〜」
「はい、そうして下さい」
ニッコリと微笑みヒャクメを送り出す小竜姫、ヒャクメは涙を流しつつ
「なんで私はこんなに口が軽いのね〜」
と呟きながら神界に帰っていった。
「あれ? ヒャクメはどうしたんですか?」
戻ってきた小竜姫を見て横島が問いた。
「えぇ、なんでも仕事があるようで帰りました」
それにニッコリと笑顔で答える小竜姫。
「うぅ〜! ヨコチマ!」
「うお!? なんだ復活したのか?」
突然立ち上がり声を上げたパピリオに少々驚いた横島。パピリオはそのまま横島の手を引き立ち上がらせる。
「こうなったらもっと安全な乗り物で遊ぶでちゅよ!」
パピリオの言い分はこうだ。ジェットコースターは怖いが、折角来たのだから遊ばなければ損! ごもっともな意見である。
それから横島と小竜姫はパピリオに引っ張り回された。観覧車、メリーゴーランド、海賊船(逆天号のようでこれは面白かったらしい)、それとマジカル・ミステリー・ツアーなど、結局デジャブーランドのアトラクションを2週させられた(ジェットコースターは除く)横島と小竜姫だった。
デジャブーランドを後にした時は既に太陽は沈み、満月が光孝と帰路を照らしていた。
「恐るべし幼子のパワー・・・・・・・・・」
「しかし流石に遊び疲れたようですね」
小竜姫の言葉にフッと笑みを浮かべ背中に視線を移した横島。その背中ではスヤスヤと寝息を立てているパピリオの姿があった。
「今日は本当にすいませんでした」
「いやぁ〜まさかデジャブーランドに行くことになるとは思いませんでしたよ」
ハハと笑いながら答える横島。
「あの、社会見学なんて嘘吐いたこと怒ってませんか?」
「まさか! 俺もかなり楽しませてもらいましたから、感謝したいくらいですよ」
すまなそうな顔で俯きながら言う小竜姫に笑顔で答える横島。
「ありがとうございます・・・・・・・・・それでは私たちはこの辺で」
「そですか? それじゃパピリオよろしくお願いします」
横島は背中に背負ったままのパピリオを小竜姫に預けた。
「はい。・・・・・・・・・横島さん今日は本当にありがとうございました。 また一緒に行きましょうね。 その時は・・・・・・・・・2人きりで」
小竜姫はその言葉と一緒に横島の頬に軽い口づけをし、赤面した状態でそのまま逃げるように空を飛んで妙神山へ帰っていった。
普段煩悩魔神の横島ではあるが、このような女性の行動には免疫がなかった。頬に手を当て呆然と立ち尽くす横島の姿だけが残った。ちなみに横島が再起したのは10分後のことだった。
その日の深夜、狼のような雄叫びを上げながらのた打ち回る少年の人影がいたるところで目撃された。
終わり
あとがき
どうも鱧天です。初めにも書きましたがこの作品は私のHP「鱧天油切りバット」のリクを元に書いたものです、Legend of Devilとは何も関係ありません。
今回のリクは横島×小竜姫×パピリオのほのぼのものと言うことでしたので一日の内容を書いてみました。最初は横島、小竜姫夫婦のパピリオ同居ものにしようかと考えたのですが何か思いとどまるものがあってこういう形になりました。
しかし、ただ日常を書いてもどうだろう? と思い、遊園地デートを書いてみました。途中ヒャクメのおかげで忙しなくなってしまいましたが、ご勘弁を。
・・・・・・・・・題名は悩みました。と言っても大したことではないのですが、Amusement Park と Theme Park どちらがよいものかと。
読んで頂いて感想など頂けたら嬉しいです。