「西条さん大変です!!現在GS試験会場で蜘蛛の姿をした怪物が暴走しているという情報が入りました!!」
「何っ!!・・・まさか!?」
駆けつけた警官の言葉を聞いた西条は、邪悪な種族が描かれた壁画を見つめる。その中に・・・蜘蛛の姿も・・・。
西条は解読者に一礼すると、遺跡の近くに止めていたパトカーに乗り込み、GS試験会場に向けて走り出した。
(何か嫌な予感がする・・・何かが!!)
西条はペダルを強く踏み更に速度を上げる。そして赤信号もぶっちぎりで無視し、現場へと突き進む。(ぶっちぎりはアカンだろ!!)
西条の予感は、的中していた・・・。
エピソード参 決意の炎
「グルル・・・ギャアアアアアーーーーーーーーーーーー!!」
重い霊圧が会場を包み込む中、咆哮を上げる蜘蛛。その姿には先ほどの魔装術のような面影は一切無く、醜悪な怪物でしかなかった。
「だ、誰でもいい!!取り押さえるんだーーー!!」
一人の審判員に続き駆け出していくGS。しかし・・・
「シャァァーーー!!」
奇怪な声と共に右の手のひらを向ける。するとそこから大量の糸が発せられ、瞬く間に縛り上げられていく。そしてその中の一人の男をを引き込むと
≪ザシュ≫
左手の爪で腹部を貫く。そしてそのまま突き刺した腕を振り回す。その反動で爪が抜けると、男は観客席の壁に叩きつけられた。
「救護班!!ヒーリングを!!」
「はい!!」
審判の指示を受けた救護班の一人が即座に二階に上がると、倒れている男に向けてヒーリングを放つ。傷からは大量の血が流れ出し、霊気までもが流出していた。
「こうなったらもう遠慮する必要は無いわね。このゴーストスイーパー美神令子が、極楽へ・・・逝かせてあげるわ!!」
姿を隠す必要が無くなった為着ていた衣装を脱ぎ去る美神。それに唖然とする審査員と厄珍。
「おたくにだけおいしいとこもってかせないわよ令子!!」
「ビカラちゃ〜ん。あいつを押さえつけて〜」
エミはブーメランを取り出し、冥子はビカラを発動させ戦闘体勢に入る。
「ワッシもやるときゃやるケンノー!!」
獣化したタイガーは幻影投射の準備に入る。
「じゃあ俺らは応援ということで・・・」
「は〜い」
横島とおキヌは応援の準備に入り、闘いは始まった。
「な!?これの貴方の仕業ですかメドーサ!!」
神剣を突きつけながら声を荒げる小竜姫。しかしそれに反しメドーサは驚きの表情を見せていた。
「ふふ、流石にこれは私も予想外の事よ。私は勘九郎に魔装術は与えたわ、でもあんな“神族でも魔族でも人間でもない”イレギュラーを作り出すことは不可能よ。それはあんたがよく知っているはずでしょ」
「くっ!!」
余裕の笑みを浮かべるメドーサに対し小竜姫は苦渋に満ちた表情をしていた。
「ちょ、ちょっとシャレになんないわよ!!」
肩で息をしながら対峙する美神。今の状況はかなりマズく、エミは接近戦で苦戦を強いられ、冥子は式神がダメージを受け気絶。タイガーの精神感応も効果が無く、実質上美神がメインで闘っていた。そんな中
(俺にも、俺にも何か出来るはずだ!!)
闘う手段を探す横島。すると彼の手から先ほど出した霊気の盾が出現した。横島はそれを見ながら蜘蛛の方を向くと、思いっきり投げた。
≪ドゴーン≫
身体に当たるも全く攻撃を受けた様子を見せない蜘蛛。そして投げつけられた方を見ると、蜘蛛は横島に向けて糸を放ち縛りあげた。捕まえたのを確認すると一気に引き込んだ。
「え?うわあーーーーー!!」
引っ張り込まれた横島の首を蜘蛛が締め上げる。
「・・・っ!!・・・・」
もがくがそのせいで更に締まっていく。
「横島(君)(さ〜ん)(さん)!!」
皆の悲痛な叫びが上がったその時!!
≪ガキュゥゥン≫
一発の銃弾が蜘蛛のベルトに当たった。一瞬止まった蜘蛛は、銃弾の放たれた方を向いた。それに釣られて皆もその方角を見る。
そこには
片手に愛銃のM93Rを持ち
もう片方の手に霊剣ジャスティスを構えた
西条の姿があった。
「おに・・・西条さん!?」
美神は突然の登場に驚きを隠せなかった。他の皆は分からないようだが・・・。
「この・・・化け物が!!」
≪ガキューン・ガキューン≫
続けて発砲する西条。蜘蛛は気分を害したのか横島の首を絞めていた手を離す。
「ゲホゴホ!!」
(このままではマズい!!一旦距離を置くのだ!!)
咳をしながら呼吸を整える横島に心眼が声をかける。声を聞いた横島は後ずさりしながら後ろへ下がった。
「シュゥゥーーー!!」
奇怪な声を上げながら西条に向けて糸を放つ蜘蛛。西条もそれに対しジャスティスで応戦する。
≪ザシュ!!シュバ!!≫
放たれる糸を切り払いながら美神たちの前に立つ西条。
「西条さん、確かイギリスに行っていたんじゃ!?」
「その話は後だ令子ちゃん!今はアイツを何とかしないと!!」
西条の言葉を聞き共に前に出る美神。第二ラウンドのゴングが鳴った。
「このままでは・・・やはり私が!!」
神剣を持ち結界内に入ろうとする小竜姫をメドーサが止める。メドーサは二又の槍を出しながら小竜姫に言う。
「待ちなさい小竜姫。アンタがあいつ等を助けに行こうとすれば・・・分かってるね?」
メドーサの言葉に仕方なく剣を降ろす小竜姫。すると何かを思いついたのかメドーサが不敵な笑みを浮かべる。
「まぁこの状況を止めたいのなら・・・小竜姫、アンタの命を私によこしなさい。計画は失敗したけどアンタを殺せるのなら悪くないわ」
メドーサの卑劣な言葉に唇を噛み締める小竜姫。しかし彼女の心の中には一つの希望があった。
(おそらくこの状況を打破できる切り札は・・・横島さん、貴方だけです)
「はああ!!」
「喰らいなさい」
西条と美神は蜘蛛に対して連携攻撃を仕掛けていた。M93Rを発砲し止まった瞬間を美神が神通棍による攻撃を仕掛け、美神が破魔札をぶつけ爆発が発生した瞬間、一気に西条が斬りつける。
「フシューーー!!グワァァァーーーー!!」
しかし効いた様子も無く身体にめり込んだ弾丸を抜き取る蜘蛛。あまりの理不尽な強さに恐怖を感じている面々。
(横島!!こうなったらもう一度そなたの霊力を上げ、霊気の盾を複数発動させ、あやつにぶつけるのだ!!その盾は破壊力だけならかなりのものだ、流石に連続で受ければダメージになるだろう)
「分かった、やってみる」
皆の後方で煩悩を思い浮かべようとする横島。しかし・・・
「あ、あれ?」
(どうしたのだ?まだ煩悩が足らぬか?)
「煩悩が・・・まったく湧かない」
(な、何ーーーーーーー!?)
原因不明の煩悩停止状態に陥ってしまった横島。その時!!
「グギャ!?シャアア!!」
横島から何かを感じ取った蜘蛛が手を向け糸を放つ。
「ダメーーーーーー!!」
完全に油断していた横島は避ける事が出来なかった。
その瞬間
自身の危険もかえりみず
そんな彼を庇おうと
おキヌが前に立った。
「きゃああああ!!」
おキヌは糸に縛られ、そこから魂を僅かずつ吸われ始めた。おキヌは予想もできない苦痛に悲鳴を上げる。
「マズイわ!!このままじゃおキヌちゃんの魂がアイツに吸収されちゃう!!」
美神は急いで神通棍を振りかざす。しかし霊気を帯び、硬質化した糸には効果が無かった。皆は悲痛の表情でその様子を見ていたが、横島は固まってしまっていた。そして彼の身体から異常なまでの霊気が発せられていた。
≪ドクン、ドクン、ドクン≫
(この霊気の収束率は、先ほどと同じ・・・まさか!?)
心眼が横島に様子を聞こうとしたその時、横島という人間の根源である“煩悩”が砕け散り、“新たなる”根源が誕生した。
そして
「おキヌちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」
会場が震えるほどの声音を上げながら爆発的なスピードで前に出た。瞬時におキヌを縛っていた糸を切り裂き、更に前に進む。すると踏み込む度に彼の身体を白い鎧が覆い始めた。そして
「オォウゥリャーーーーー!!」
≪ベキ!!≫
顔面に拳を叩き込んだ瞬間、白き戦士に変わった。
「これで形勢逆転ねメドーサ!!観念なさい!!」
小竜姫は勝利の笑みをメドーサに向ける。するとメドーサは急に笑い出した。
「はっはっは!!それで勝ったつもりかい小竜姫。確かにあのガキは今かなりの霊気を放っている・・・だが感情がコントロールできてない。更に勘九郎ほどの霊力を持っていない。それでどうやって勝つんだい?」
「・・・」
メドーサの言葉に黙り込む小竜姫。
(頑張ってください横島さん、貴方が頼りです)
小竜姫は願うしかなかった。
「ウワアアア!!」
霊力を収束させ拳を放つ戦士。
≪ベキ、バキ、ボキャ≫
多少は効いているが、蜘蛛はそれを無視して爪を放った。
≪ザシュ≫
戦士の肩を蜘蛛の爪が貫いた。そこからは多量の血が出血しており、僅かだが霊気も漏れていた。しかし戦士はそれを感じていないのかもう片方の拳を打ち込んだ。
≪グシュリ≫
鈍い音が鳴った。その原因は
戦士が放った拳を
蜘蛛の爪が貫いたからだった。
≪ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ≫
そこから大量の血が飛び散り、戦士の白い身体を汚した。戦士はなおも立ち上がろうとするも、出血が酷いため肩膝を突いてしまった。
(しっかりしろ横島!!このままでは死ぬぞ!!)
心眼の声が響くも彼には届かない。まさに絶望的な状況だった。その時!!
「コォラ横島!!しっかりしなさい!!」
戦士に向けて怒声を放つ美神。さすがの西条もタジタジだ。
「いい!!アンタはアタシの丁稚なの!!分かる!?アンタが死んだらアタシが悲しいの!!アンタの生命はアタシが預かってるんだからアタシに許可無く死ぬんじゃないの!!」
「そうですケン!!ワッシの数少ない友人である横島さんが死ぬはずないんジャケンノー!!」
「おたくが死んだらあたし等皆終わりなワケ!!だから頑張るワケ!!」
皆の声援が戦士に向けられる。二階にいる小竜姫も同様だった。
(頑張ってください横島さん!!力に負けないで!!)
そして
「横島さーーーーーーーーん!!頑張ってーーーーーーーーー!!」
≪ゴオオオオオオオオ≫
おキヌの声援を聞いた瞬間、戦士の身体が火に包まれた。それと同時に額の二又の黄金の角が伸び始めた。炎は全身に纏わりつき、戦士の鎧に宿る。
≪シュウウウウウ≫
炎が消えるとそこには
額に二本の長く伸びた二又の黄金の角を持ち
金色のリストの中心には赤い宝玉を宿し、
全身を赤い炎で染めた戦士が立っていた。
「凄い霊力・・・これが本当の・・・力・・なの?」
二人を除いて驚く美神たち。その一人は
「まさか・・・彼が遺跡に書かれていた戦士の・・後継者・・・・」
別の事で驚いている西条。もう一人は
「横島さんが負けるわけありませんから♥」
頬を赤く染め微笑むおキヌ。それに対し蜘蛛は戦士を見た瞬間から動揺を隠せずにいた。そして、ある言葉を戦士に放った。
「・・・・クウ・・・ガ・・」
戦士の名前とも取れるその言葉を聞き、赤い戦士と化した横島は・・・。
「クウガ?・・・・そうか!!『空牙』か!!」
微妙な勘違いをしながらその名を発した。そしてここに今、戦士クウガ改め、戦士『空牙』が誕生した。
あとがき
が〜〜〜やっと出来ました。
作成中にハプニングが起きすぎてなんども原稿が消滅しました(泣)
それと申し訳ないのですが、前回のエピソード弐からの続編投稿で作成しようとしたのですが、何故かパスワードエラーが起きてしまい(レスなどでは通じています)新規からの投稿にすることにしました。本当に申し訳ないです。
またこのような事が起きてしまうかもしれませんが頑張っていきますのでよろしくお願いします。