ピート×雪之丞戦の後,
今にしてみれば美神令子のこの一言が、
「横島クンは棄権しなさい。・・・やっぱり男の子なんだなって正直、見直したわよ。」
横島忠夫という存在を変化させるきっかけだったのかもしれない。
(さて、おぬしはどう動くのだ。)
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「たしかに・・・ここまでマグレでよくやったよな・・・。
ま、資格が取れなくなるってのはもったいねーけど、
命あってのモノダネやからなー。」
しかし横島の顔には安堵という物が浮かんでおらず、迷いが生じていた。
『(自分を誤魔化すのが下手だな、こやつの本心はすでに決まっている。
ならばワレのすべき事は唯一つ)
・・・何が言いたい?望みがあるなら相談にのるぞ。
小竜姫さまはそのためにワレをさずけたのだからな。』
その瞬間、横島の顔に変化が訪れた。なにか、覚悟を決めた顔であった。
「ちょ・・・ちょっとムチャな相談でもか?」
『(そう、ワレがすべき事それは・・・)
フ・・・そのだな、例えば・・・』
『”雪之丞をブチ倒す”とかかな?』
「わははは、そいつはたしかに無茶な相談だな!」
この時、横島は確かに怯えてはいたが口元は笑っていた。
そう、横島忠夫という存在はこの時着実に変わり始めていた。
そしてその事を見抜いた唯一の存在は、
(そうだ、それでこそ我が主にふさわしい。ならばワレがすべき事は、おぬしに勝利をもたらす事だ。)
彼も又、哂っていた。
ー心眼の為に鐘は鳴るー
「ーー次の試合は横島忠夫選手 対 伊達雪之丞選手!両者、結界へ!」
「・・・?(どういうことだ。)」
試合会場には雪之丞の姿しかなかった。
なら雪乃丞が唖然とするのは無理もない。
「横島選手、いないのかね?」
審判の呼びかけにも何も変化は訪れなかった。
そして業を煮やした雪乃丞は、
「おい、あいつはどうした。」
少しばかり動揺しながらもチャイナ姿の女性に尋ねた。しかし、
「さーね、どうしたのかしら。いないみたいよ。
(まぁ、横島クンにとってこれが一番の選択よね)」
彼女は首を傾げながら、傍から見てどうでもいいっという感じであった。(内心はわからないが、
そして、横島を少しでも知っている連中は皆、逃げたのだろっていう具合だった。
(それが賢明です、横島さん。相手が危険すぎます。)
心眼を授けた小竜姫すら横島の棄権を考えていた。
しかし美神や小竜姫の予想は大きく外れる。
だが彼女達がそう考えたは無理もない事だった。
なぜなら彼女達はまだ知らないのだから・・・
そして時間がやってくる。
「えー横島選手は試合放棄とみなし、この試合「遅れてすんまへーん!」っん」
そう彼女達は知らない、少年の内の何かが変わり始めているということを・・・
「あぶねー、あと少しで失格になっちまうとこだったじゃねぇか。」
『何をいう、おぬしがもう少し物覚えがよかったらこんな事にはならん、バカ者!(まぁ、ギリギリだがなんとかなるところだろ)』
『よ、横島さん!』
「あのバカ、どーかしてんじゃないの!」
横島が到着したとたんに会場がざわめき始めた。(主に横島関係だが、
そして、対する雪乃丞には不敵な笑みが浮かんでいた。
「フ、秘密の特訓でもしてきたか?」
そして横島にも不敵な笑みがこぼれる。だが、
「まぁ、そんなとこだ!(なんでいきなりばれんだよ〜これもアホ心眼がギリギリまで特訓させっから。
おい心眼、不意打ち突けんかったらどうすんねん!)」
いきなりあせっていた。
「横島さん!」
「カッコよすぎる、変なもの食べたのでは?」
ちなみに周囲の反応は結構冷たかった。(特にオキヌちゃん)
「あのね、横島クン。開始の後は泣こーがわめこーがギブアップはなしよ。
ギャグはもーいいから早く辞退しなさい。
(なに考えてんのよ、この丁稚は。)」
横島を扇で手招きしながらチャイナ、もとい美神が言うが、
「やです!(お〜俺が美神さんにここまではっきりいうとは感動や)」
横島はカッコつけたい年頃だったようだ。
・・・・・ピキ(何かが切れる音)
「私の・ゆーことが・きけないっての。相手はメドーサの手下なのよ。
あんたみたいなドシロートじゃ怪我じゃすまないのよ。「やめてー死んでしまう!!」この私が気遣ってやってんのわかんないわけ!」
美神にえりを掴まれメンチを切られながら脅されている横島に仲裁が入る。
『よせ、美神どの。こやつとてはただカッコつけようとしているのではない。
勝算はある。こやつの煩悩は並ではない。この煩悩エネルギーをコントロールできれば、間違いなく戦える。そして私は、エネルギーをコントロールするために存在する。 私がいる限り横島は無様な戦いはせん。(まぁ、キビシイのは確かだがな)』
このとき、心眼は美神に一つのウソを吐いた。そしてそのウソは横島も気づかないものであった。
「まぁ、勝てる見込みは少ないっすけど、命の保証はするっていってますし。
(っつーか死んだら呪ったる)」
『安心せよ、こやつが身の危険もかえりみず敵に挑むほど男らしいと思うか?
(聞こえてるぞおぬし、何度もいったはずだ、我等が負けるはずないと。)』
二人?の説得にやっと納得したのか、
「ふー勝手にしなさい!「美神さん・・・万一俺が勝っ」バシっあ〜無様な姿見せたら分かってんでしょうね? (まったく人が心配してあげたらこれよ)」
飛びつこうとした横島にヒールを投げる美神であった。
・・・開始前からプレッシャーと怪我でテンションが下がった横島であった。
「ー試合開始!」
合図と同時に会場の空気が変わり、観衆は緊迫感に包まれる。
対峙する二人は距離を取り、互いに構えた。
雪乃丞は様子見はせず魔装術の発動。
「おおおお!!!」
対峙する横島は、
『前の試合のハッタリがきいてるらしいな。全力でくるぞ
(むしろ好都合だな、持久戦になればこちらが不利だ。)』
「命だけ守ってくれよ、絶対だぞ、でないと泣くぞ!」
まだ腰が引けていた。
「貴様はどことなく俺と似ている、俺を楽しませてくれよ!」
「お前みたいなバトルマニアと一緒にすんなー!」
『いくぞ、集中せよ!』
「くらえー!」
雪之丞から大きな霊波が集まる
ー突如、横島の体がブレルー
雪乃丞が霊波砲を放つ刹那の瞬間、これ以上にないぐらいのタイミング、
そう、まるで予測したように横島がその場から横に跳び回避した。
「「「「なっ!」」」」
美神をはじめ、横島の知り合いは驚きを隠せない。
そしてなにより、雪乃丞自身が驚いていた。
「!!、だったらもう一発だ、くらいやがれ!」
横島が一撃目を回避したその直後にすかさず追撃が行う、だが
またも予測していたように絶妙なタイミングで回避を行う。
「っち、だったらこれはかわせるか!くらえ、連続霊波砲!!!」
単発では当てるのは難しいと判断したのか、威力を落とし連射を始める。
しかしそれすらも、横島は全て見えていると言わんばかりに回避行動をとる。
いや、回避を行っているだけではない。確実に自ら前へ、敵に向けて進行していた。
そして・・・
『いくぞ、攻守交替だ!』
「わかっとるわ!」
ー話は横島と心眼の会話まで遡る。ー
『”雪之丞をブチ倒す”とかかな?』
「わははは、そいつはたしかに無茶な相談だな!」
『そのような事はない、所詮相手も人間なのだ。ならばやり様によってはいくらでも勝てる。それにおぬしにあってヤツに無い物があるではないか。』
「なんだそりゃ、そりゃ煩悩の事いってんのか?確かに俺の煩悩はすごいかもしれんがそれが何になるってんだよ。」
『・・・おねし、本気でいっておるのか。』
微妙に不機嫌になる心眼
「ジョークだから怒るな、分かっとるわ。俺にはお前がいるっだろ。」
『そうだ、小竜姫さまから授かったワレがいるのだ。竜神に見守られている我等が負けるはずない。』
「えらい強気やな〜、なんか策はあるんだろうな。」
横島のそれは質問ではなく確認であった。
『ー超加速と” ”、このふたつがワレの策だ。』
『ー今はこれだが、ワレも昔は精霊の類ではなく竜神っだたのだ。
それゆえ本来、超加速は韋駄天の技ではあるのだが、竜神は韋駄天の技とは相性が良いのでワレも体得していた。』
『ー今のワレは目と思考力くらいしかもたん。ゆえに超加速といったが実際はおぬしの動体視力を極限までに引き上げる事と、 それに伴った思考力の高速化といった感覚の強化ぐらいだ。単純に足が速くなるといった肉体的強化にはならん。』
『ー試合開始まで超加速状態の空間に慣れてもらう。もう一度言うが肉体的強化はない。 周りがスローに見えるからといっておぬしの動きが速い訳ではない。 それゆえ敵に攻撃されてから動いては間に合わん。攻撃される瞬間に動け、 その刹那の瞬間を見極めろ!』
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「そんなわけでバッティングセンターに来ました。」
『誰に言っておるのだ?』
作戦を立てた後、二人は運良く(ご都合主義)近くにあったアスレチックジムに来ていた。修行内容は、ピッチングマシーンの前に立ちボールが来たら、
ギリギリのタイミングでかわすっという内容だ。
『ではまず時速100kでいくか』
「あっさりいうな!っ本当に大丈夫なんやろうな〜。」
横島も多少引き気味のようだ。
『問題なかろ。普段から美神どのの攻撃を受けているおぬしには物足りんぐらいだ』
「物足りんって・・・美神さんのシゴキは時速100kの白球よりすごいのか」
横島は、そんなもん受け続けてよく生きてるなと自分に感心していた。
『ボールが跳んできてもすぐには避けるな、敵は霊波砲を使う。
これは100kで放たれた霊波砲がどの程度の距離でかわせるかという感覚を養うのだ。』
心眼が真剣に説明しているが、
「こんなことで出費がでるとは、とほほ〜『聞こえておるのか!』わ〜ってるよ」
そういいながら100円玉を数枚、機会に投入する。そしてホームベースの上に立った。
『では眼を閉じて集中せよ、そしてワレの眼がある場所、額に意識を高めるのだ。 なに、簡単だ。ほとんどコントロールはワレがやる。』
「集中っていってもな〜、まぁいっちょやっ!!!!!」
ー突如、世界が変わるー
『感想はどうだ?』
もし心眼に顔があるならものすごく不敵な笑みを浮かべていたであろう。
「あ〜、なんつったらいいのか、なんか変だな」
少しムカつきながらも、なんともいえない感想である。とりあえず横島は手足を動かしてみて、
「うげ〜顔動かすのも大変だし、手足も遅いしこんなんで戦えるのかよ。」
横島の発言は当然である。横島の体感はいわばいきなり全身に大○ーグ○ール養成○ブスをつけた状態より酷いかもしれないのだから。
『だからこれから慣れるのだ、時間はないのだ急ぐぞ。それと分かってると思うが、 相手の攻撃がスローに見えるからといって攻撃をもらっても普通にくらうからな、注意しろ。』
「だ〜無茶苦茶いいやがって〜。」
『無茶なものか、超加速のほかにもしなければならぬ事がもうひとつあるのだからな。 もう一度いうぞ、時間がないのだ急げ。
・・・このまま終わりたくないのだろう?』
「・・・だぁーやったるわい!」
なんだかんだいって横島の短いようで長い修行が始まった。
ー話は現在へ戻るー
『いくぞ、攻守交替だ!』
「わかっとるわ!」
連続霊波砲をかわしつつ距離を詰める横島に対して、雪乃丞は
「舐めるな!接近戦なら望むところだ!」
ならばと、自ら接近していき
「待ちなさい雪乃丞!なにかあるわ!」
勘九朗がさけぶが、
『いまだ!』
突如、横島の両手から霊波が放出され輝きが増した。
横島はこれでもかといわんばかりのタイミングで雪乃丞の眼前で、両手を叩いた。
「っく、眩しい!」
ー俗に言うサイキック猫だましの劣化版である。
栄光の手を覚えているわけではないので威力は落ちるが、その分をタイミングを合わせることによってチャラにしたのである。
横島は超加速の感覚をある程度覚えた後に、霊波の放出と圧縮の特訓をしていた。
ーもう一回回想ー
「お〜なんじゃこりゃ」
横島の手には圧縮された霊波のタテが漂っていた。−俗に言うサイキックソーサー
『本来ならこの程度の物はおぬし自身で完全にコントロールしてもらいたいんだが、 時間がないので今回はワレもサポートしよう。』
心眼のおかげでサイキックソーサーの出力に成功するが、まだ慣れていないようだ。
『ところで現在のおぬしにとってそのタテの利点はなにかわかるか?』
「ん、防御力UPってところか。」
即答する横島だが、
『まぁ違わんが、では超加速状態で一番むずかしいのはなんだ?』
「そりゃ、思うように動けないことだろ。目の前へ移動するにも時間がめっちゃかかるんだぞ。」
『ではそのタテを出した時はどうだった。』
「どうだったって・・・・あ!」
なにか悟る横島であった。
『そう、肉体を動かした時とは違い、そのタテ、しいては霊気は一瞬で出せる。もしこのタテを敵に攻撃するときにのみ出力させれば、ギリギリまでタテの存在を隠せるという事だ。』
間違いなく、こいつに顔があったらニヤリと笑ってるだろうっと思う横島だった。
『チャンスは一度だけと思え。敵に接近戦を仕掛け、最大限のカウンターを放つ。 陰念戦の時のようにしくじるな。』
念を押す心眼であったが、
「・・・いや、ちょっと待てよ。なぁおもしろいこと思いついたんだが、
・・・・これどう?」
『は?』
固まる心眼であった。
ー回想終了ー
「っく、眩しい!」
『まさか、あんな思い付きの技が本当に成功するとはな。まぁよかろう』
雪乃丞がわずかに怯む、そしてその一瞬を見逃す二人?ではない。
すかさず雪乃丞の死角に回り込み、
『叩き込め!!』
「だーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
陰念戦では顔面に叩き込んだが、今回は見かけ上防御が薄いような腹に拳をねじ込んだ。
ーちなみに素人は相手の顔面を殴る時、躊躇してしまい加減してしまうが、腹ならあまり気にせず叩けるー
横島にそのような考えがあったかは不明だが渾身の一撃が雪乃丞の横腹に決まった。
「ぐぉ」
小さな嗚咽を吐きながらも場外付近まで吹き飛ぶ雪乃丞。
『っぐ、限界のようだ、加速が切れるぞ』
同時に霊力と集中力のきれ、これ以上の戦闘は不可能な横島と心眼、
その場所で倒れこんでいる雪乃丞に反応は見られず、
「勝者、横「まだです、まだ雪乃丞選手立ち上がります。」っ」
「んなアホな、もう無理やちゅうねん。」
『あきらめるな、向こうも同じはずだ。』
横島の顔には諦めの顔、いや悔しいという顔が浮かんでおり、
心眼は横島に発破をかけるが・・・
雪乃丞はこちらを見つめ、
「っち、今回は俺の負けだ、次は必ず叩きのめ・・・」
言い終わる前に崩れ落ちた。
「今度こそ、勝者横島!」
”勝者横島”この単語を聞いた後、横島は崩れ落ちた。
「横島クン!」
外野から絶叫が、歓声、が拍手が聞こえるが今の横島にとっては全てが無意味なものであっただろう。
『さて、ワレも少しばかり疲れた、少しばかり休ませてもらうぞ。
まぁ、なんだ。よくやったな ”横島忠夫”』
心眼が呟きを聞いたものがいたのかはわからない。
ただ横島の顔には笑みが、達成感が漂っていた。
こうして、一つのIFが完成した。
あとがき
え〜普段はたまに掲示板に書くぐらいなんですが、
友人との罰ゲームでSSを書く事になってしまい初めてSSを書く事になりました。
やるからには真面目にしようと思いとりあえずネタがかぶらないようと思いました。(もしかぶってたらすみません。
なにぶん初めての投稿なので不備があったら謝罪します。
ちなみに文才の無さは文を多く書く事でごまかしました。(質より量
何が一番困ったっていうと行の空け方でしょうね。
正直書いてる途中、SS作家を何度尊敬したかわかりません。(自分には無理
一応、短編のつもりですが、万が一好評なら続くかも?
ちなみに心眼がついたウソってのはこの短編で書けませんでした。
もし続いたら書きます。
(っていっても聞いたら、なんだそんなことかよ〜ってな感じなウソです。
テーマ 心眼が雪乃丞戦で死なないこと
ついでに雪乃丞に勝つ
超加速・偽の使用です
横島を戦士にする。
最後にここまで読んでもらい本当に感謝です。