「これで終わり!」
そう言いながら横島は栄光の手を振るい、そこにいた最後の悪霊を切り捨てた。
「横島君、伊達君、ケイ君助かったよ」
「いえ、神父こそお疲れっス」
「これくらい軽い軽い」
「ボクはほとんど見てただけですから」
唐巣神父の声に三人三様に答える横島、雪之丞、ケイ。
彼らは唐巣神父の依頼された除霊を手伝っていたのだ。
GS美神if外伝脇役救済? 唐巣神父編
唐巣神父はGS協会の理事になりその仕事に忙しく、またピートもオカルトGメンになった為、依頼された除霊を行うのが困難になっていた。
それらを理由に依頼を断らないのが彼らしいのだが、実際問題人手が足らなかった。
人手を雇えれば問題がないのだが、彼のところに来る依頼者のそのほとんどがお世辞にもお金持ちとは言いがたく、それは無理な相談である。
それを見かねた横島が(ピートに頼まれた、というのもあるが)協力を申し出たのだ。
金銭的理由(報酬が払えない)により唐巣神父は断ろうとしたのだが、横島達の
「こちらの修行・宣伝にもなりますから」
という言葉に甘えることになった。
それから数年後、唐巣神父の除霊の手伝いはケイ一人の分担となっていた。
ケイの実力があがったのもあるが、横島たちの事務所もそれなりに名が知れ渡り、忙しくなっていたのである。
除霊も無事終わり、ケイは唐巣神父に挨拶をして帰ろうとしたのだが、唐巣神父に
「お茶でもどうかな?」
と言われ、お茶に付き合うことになった。
最初は今日の除霊の内容などを話していたのだが、唐巣神父が何気なく
「ケイ君、何か悩んでいるね?」
と優しく問いかけた。
言われたケイは罰の悪そうな顔をし、
「分かります?」
と答え、
「ボクGSとして成長してるのかなって」
ケイはいくばくか逡巡した後、そうもらして自分の悩みを告白した。
ケイの悩みはこうだ。
横島や雪之丞に比べ自分が弱いこと。
それはしょうがないと思うが、それが出会ったときから差が詰まっていないように思える。
また、横島たちの周りにいる人たちに比べ、自分があまりに半人前じゃないだろうか。
そういった内容だった。
その言葉で唐巣神父はケイのおかれた環境について考える。
横島と雪之丞はいまだ霊的成長期にあるため、ケイが成長すると同じく成長している。
その為ケイにとっては余計差が埋まっていないように感じるだろう。
横島と雪之丞はドクターカオスの指導の下、GSとして必要な知識をつけ、立派なGSになった。
そして彼等と交流のある美神親娘、エミ、冥子、西条なども超一流のGSである。
これらのGSに囲まれればよほどのもの以外は自信をなくすだろう。
「ケイ君がそう思うのも仕方ないとは思うが考えすぎだと思うよ。私と初めて会ったときに比べずいぶん成長してるよ」
「でも…」
なおも悩んでいるケイに神父はぽつりと
「この世に自分ほど信じられないものなど他にあるか」
とつぶやいた。
「何ですそれ?」
「横島クンが霊能力に目覚めたばかりのころに言った言葉だよ。一字一句同じではないけどね」
ケイのもっともな疑問にそう答え、続ける。
「横島クンは霊能力に目覚める前からこの世界にいたからケイクン以上にコンプレックスみたいなものを抱えていたんじゃないかな?
だからなかなか自分に対して自信というものをもてなかった。でも最初は状況に流されるだけだった横島クンも己の意思で強くなること、敵と戦うことを選んでいった。
そして今ではあんなに立派なGSになったんだよ」
「それに横島クンはGSとして異常ともいえるスピードで成長していったが、それは彼が常に実戦の中にいた為だよ。はっきり言って無茶なことこの上ない。
それを考えればケイクンも十分以上に成長しているよ」
唐巣神父の発言を聞いたケイはとりあえずは納得したようだ。
少なくとも必要以上に悩むことはやめたように見える。
「神父さんに相談してよかったです。少しは頭のモヤモヤが取れたような気がします」
「まあ仕事柄人の相談に乗ることも多いからね。役立ててよかったよ」
二人の間に穏やかな空気が流れる。
「何か神父さんって『お父さん』って感じ出します」
父親のいないケイは唐巣神父に父性みたいなものを感じていたのだろう。
この場の暖かい雰囲気にケイが今まで感じていたことを素直に言うと神父は苦笑した。
それを見たケイが何かいけない事でも言ってしまったのかな? と思い謝ろうとする。
が、その気配を察した唐巣神父は
「私もケイクンぐらいの子がいてもいい歳なんだと考えるとね」
歳はとりたくないよ、と笑う。
「そんな。まだまだお若いですよ」
世辞以上のものをこめてケイが言う。
それが分かる唐巣神父は優しく微笑みながら
「ありがとう」
と答える。
これ以後、ケイは唐巣神父に横島・雪之丞に相談しにくい事を相談するようになる。
唐巣神父もそれに真摯に答え、彼らはまるで親子の様に仲良くなったという。
あとがき
唐巣神父は本編でもありましたが、誰かが悩んでいるときそっと背中を押してあげることができる人だと思います。
ちょっと良い話系を目指してみましたがまだまだですね。