「GSのようなもの(第五話)(GS)」与一 (2004.12.09 23:57)
「忠夫、来月引っ越すぞ」
「は、引っ越すの?」
唐突に夕食を食べているときに父親から告げられた。
「今度、本社への栄転が決まったんでな。ついに俺も会社に認められたってことだ。いやいやできる男は違うなぁ」
「ほぅ、会社のトップの争いがあってそれによって配置換えがおこなわれているだけの話よ。そうじゃなきゃうちの宿六に栄転の話なんて来ないわよ」
「百合子、もうちょっと話し方ってもんがあるだろ。親の威厳が」
「なんか言ったかい」
「いや、なんでもない」
包丁を持ち出して大樹を黙らせる百合子。
そんなちょっとした漫才のようなやり取りを見ながら、俺は明らかに前回と異なっている事態に俺はただ驚くばかりだ。
「まぁいいわ。たぶん残ろうと思えば卒業ぐらいまでは残れるみたいなんだけど、あんたはどうしたい」
「別にどっちでもええよ」
「なら引っ越すことに決まりだな。じゃあ忠夫しっかり、回りの人に挨拶しとくんだぞ」
「なんか怪しいわね。あんたどうしてこんなに引越しに積極的なのかしら」
「い、いや別に何もないぞ。栄転を喜んでもおかしくないだろ」
そう答える親父の姿はかなり説得力に欠けている。
もう怪しさ爆発といった様子だ。
その姿はすでに逃げ道を探すように体重を後ろにかけ、ずいぶんと腰が引けている。
「東京本社、秘書課とか美人の子が多いものね」
「そうなんだよな。秘書の藍ちゃんとか、美紀ちゃんとかかわいい子がそろって・・・はっ」
「ふ、ふ。あんたいい度胸してるわね。この宿六が」
ドカ、バキッと折檻されていく父親の様子を横目で見ながらそのまま食事を取っていく。
血は争えないというかなんと言うか、その様子を見ながら美神さんの折檻を思い出したせいでちょっとばかり顔が白くなった。
美神さんのところであんな条件でも働いていたのはこの様子をずっと見せられ続けたせいじゃないのかなどと思いをはせていった。
「忠夫、残りたいかどうかの結論はもうちょっと考えてからでいいから少し考えて見なさい。正式な辞令が来たわけじゃないから断ろうと思えば断れるのよ。でも2,3日で決めてね」
俺が黙って考えているとそう母さんが話してきた。
もしかしたら、俺が顔を白くさせているのは行くのがいやだからなどと思ったのか。
以外に子育てに気を使っているのだろうか。
それなら子供の前でのあの折檻をするのは考え門だと思うが。
まあ、日常茶飯事の親父絵の折檻を見て顔を白くさせたとは考えもしてないだろう。
「わかった。考えとく」
そう言って部屋に戻っていった。
「・・・197,198,199,200。ふぅ、疲れた」
日課である、筋トレを終えて、ぐてっと横になる。
いつもどおりそのままの体勢でしばらく休む。
横になった、状態でボーとしていると、先ほど夕食の話を思い出した。
(何で、引越しが少し早くなったんだろうな。
俺が違った行動したことによって、変るのなら分かるけど、全然関係ないことも変ってくるんだろうか。ほかにはなかったよな。
・・・うーん、違っていたとしても覚えてないだけで、ほかも違ってるのか。
こういうのを*バタアシ現象というんだっけか。いや、さっきどうしても引っ越したくなければいいといってたっけ。
もしかしたら前回はこっちに残ることにしたのかな)
そう考え事をしていたら、ピピッとタイマーの音が鳴った。
考える事をやめ、手に霊力を集中させサイキックソーサを作り出す。
いまだに霊力は以前の半分にも満たない量しかないが、以前より霊力の扱い方が格段に上がっており、きれいな六角形なサイキックソーサを作り出す。
霊力を挙げるためにはいろんな方法があるが、これを作り出すのは霊力を一転に集め、また霊力の消費も大きく、集中力がなくなると分散するというトレーニングに向いた術であるこれは寝る前にやることにしている。
ただ、これを限界までやるとねむくなってく・・・・Zzzz
三週間後・・・
「アー、残念なことではあるが、このたび横島君は親の仕事の都合で東京に転向することになった。来週には引っ越すそうだから、しあさってのホームルームの時間でお別れ会をすることになったから、各自準備をするように」
学校の始まり、朝のホームルームで担任の先生がその言葉を伝えた。
面白い子ではあるが、授業中話は聞かないでほかのことをやっていたりする問題児であ利、いろいろ困らせられた生徒の転校に担任はちょっと複雑な表情をしている。
その発言を聞いてクラスは騒然となるが、まったく騒ぐことなく横島をにらみつけている二人がいた。
そして休み時間、横島の周りにクラスメイトが集まるが、先ほどからほんとうに不機嫌そうになっていた二人が、横島を教室の外に連れ出していった。
「よこっち、いったいどういうことなの(だ)」
銀ちゃんと夏子の声が重なる。
「あー、話さないで悪かった。できるだけそのままでいたかったから担任にもできるだけ話すのを遅くしてくれるよう頼んでいたんだ」
「馬鹿、よこっちの馬鹿」
ばっしんと夏子は俺に平手をくらわせると走って去ってしまった。その目に涙のようなものが見えたのは俺の見間違いだろうか。
「よこっち、俺も今回ばかりは頭にきたぜ。俺たちは親友じゃなかったのかよ」
銀ちゃんもそうはき捨てるようにいうとそのまま教室に戻っていった。
俺はほほに手を当て、しばらくそこにっ立っていた。
「痛かったなぁ」
教室から離れているそこは、聞こえてくるその声もどこか遠くに聞こえてすべてがまるで夢のように、しかしほほの熱と廊下を通る風だけが現実感を持っていた。
そのまま次の時間授業を受けなかったために担任に最後ぐらいちゃんとできんのかと説教されたが、結局教室に戻った後銀ちゃんと夏子が俺と目をあわせることはなかった。
次回 引越しそして東京へ
*バタアシ現象 正確にはバタフライ現象といいます。
( )の中は考え事を意味しています。ほかもほぼ横島視点で書いていますが思った子とではなく自問自答しながらの考え事であると思ってください。
(あとがき)
今回(毎回?)ギャグの才能がほしいと願うばかりの与一です。
銀一君の引越しの前に横島を引っ越させました。
一応子供のころの唯一の公式設定という感じのこれを飛ばしたことには意味があるんです。
早くなったのは、以前は子供のために受けなかったのを今回は横島がしっかりしているので引越しを決めたという裏設定です。
漫画では結局辞令が出て本社へ移転ということになったというかんじです。
今回は短編書いていたために間が開きました。
次回は時間を空けないといいたいところですが、またも火魅子伝の短編になるかも。
ただ予定は未定でございます。違っていてもご容赦ください。
△記事頭 引越しの話程度なら一回や二回あっても普通ですよね。で、それが流れても通っても普通。こういうとこでも歴史の分岐点ってあるもんですね〜。意外なとこをつかれました!これで銀ちゃんと夏子がくっついたりして。
確かGS本編前で終わるんでしたっけ?でも東京にもういくとなると、いったいどう終わるのか皆目見当つきません。すごく楽しみです。
【九尾(2004.12.10 01:07)】
バタフライって・・・・蝶が飛び立つと、高気圧がどうのってアレですねぇ・・・・
でも・・・・夏子・銀・横島の友情がどうなるか気になりますねぇ・・・
最後に!横島が先に転校ですか・・・・てことは銀ちゃんが忠夫と夏子の解れのシーンを目撃するのかなぁ・・・
【D,(2004.12.10 01:24)】
正確には、蝶の羽ばたき(ちょっとした変化)が離れた所へ暴風(大きな変化)を起こすかもしれないという理論です。
逆行モノのSSで時々使われてます。
そー言えば、この作品ではまだ彼は小学生でしたねw
中一くらいの時には既に東京にいたらしいからこれはこれでいいのでは? なんか夏子が彼に対してやたら好意的な時点で既に歴史変わってる気が・・・・・・w
【片やマン(2004.12.10 04:21)】
九尾さん、毎回のレスありがとうございます。
”こういうとこでも歴史の分岐点ってあるもんですね”
案外分岐点は多いと思うのです。
Dさん、レスありがとうございます。
”バタフライって・・・・蝶が飛び立つと、高気圧がどうのってアレですねぇ・・・・”
そのとおりです。
また、風が吹けば桶屋が儲かるといいなおしてもいいかもしれないですね。逆の意味になっちゃうけど。
片やマンさん、レスありがとうございます。
”夏子が彼に対してやたら好意的な時点で既に歴史変わってる気が”
その辺を気づいてるかどうかはともかくとして、横島の行動によって変わったのではなく、関係ないところで歴史が変わっている場合に問題があるだろうということで元の世界との違いを横島に考えさせるためです。
夏子にはほとんど設定がないに等しい、というか銀ちゃんに告白されている以外ではなかったような気がします。
そのため好き勝手に性格を決めてしまいました。
横島を好きだという設定があったから、これぐらいはいいかなーと思ったんですがまずかったでしょうか。
これから出番が少なくなる彼女の魅せばですのでご了承ください。
【与一(2004.12.10 22:52)】
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