1発目 <GS仕事人>
のさばる悪を何とする。
「チチシリフトモモ〜!!」
天の裁きは待ってはおれぬ。
「俺は今確実に美しいっ…ママ〜!!」
この世の正義もあてにはならぬ。
「罪深い存在ですね、僕って…」
闇に裁いて仕置きする。
「ワッシは所詮張子の虎ジャ〜!!」
南無阿弥陀仏…
「こんな事もあろうかと、主は我々に手持ち大筒を一丁与えたもうた!」
霊能力を悪用する、悪徳GSを…
「ほ〜っほっほっほ!この世を動かしてるのはお金よ〜!!!」
………………………………倒せませんでした(笑)
とゆーわけで、GS仕事人。開始と同時に……
完。(オイ)
2発目 <悲しいときー>
「こ…こんな事で…こんな事でぇぇえええ!!」
必死にすべての足を床に貼り付けようとするが、いつもなら必要以上にピッタリとくっ付いてくれる彼の吸盤は、一つも期待に応えてはくれない。
奈落の底へ、いや地獄の底へと彼は落ちていく。
「この私が……プロフェッサーとまで呼ばれたこの…ヌル様がぁぁぁぁっ!!」
自ら造り出し、利用していた地獄炉を逆に利用され、彼は今まさに地獄の凄まじいエネルギーの中へと引きずり込まれつつあった。
彼は悔しかった。
力こそ全てである魔族の中で、彼は生まれつき備わっているものが乏しかった。
唯一他の者達よりも優れていた頭脳に必死で知識を蓄え、魔術や魔法を覚え、研究し…
そうしてようやっと魔界で認められるだけの力を身に付け、ここまで来たというのに…
彼は、悔しかった。
人間に…己と同じく非力さを知で補う人間にしてやられた事もそうだが…何より、地獄炉の吸引力に逆らうだけの力も無い、非力な自分が何よりも悔しかった。
「ぐ…がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!」
とうとう地獄炉に落ち、その身を荒れ狂い、渦巻くエネルギーの流れに引き裂かれ、焼かれつつ彼は願った。
まだです!
まだ、私は知を極めていません!
魔界最高指導者様でも、この際天界の方でも構いません!
どうか!
どうか、私に…もう一度…もう一度知への扉を開いて下さい!!
力も何もいりません!魔族でなくなってもかまわない!!
だから、どうか…どうか…
「………………………………ハッ!?」
木製の、アンティークと思しきベッドの上で目覚めたその女性は、まじまじと己の手の平を見つめた。
そして両手で確かめるように自分の顔を撫で、こう呟いた。
「ゆ…夢?………………そう、夢よね。これは単なる夢だわ。ハハハ、そうよね?小鳥さん?」
そして部屋の隅で自分の使い魔のネコと何やらヒソヒソ話し込んでいた、スカベリンジャーという奇妙な鳥に同意を求める。
「ギャーーッ!」
「……何があったのニャ?魔鈴ちゃん」
小鳥さんことスカベリンジャーは同意してくれたようだったが、それだけでは落ち着けなかった彼女はベッドから飛び起きると、素早く着換えて行動を開始した。
「さて!こうしちゃいられないわ。え〜っと、『悲しい時に飲むスープ』のレシピはどこだったかしら?」
「……だから、何があったのニャ?魔鈴ちゃん」
『悲しい時に飲むスープ』とは魔法薬の一種で、飲めば飲むほど今思い煩っている事に関する記憶を忘れさせてくれるスープである。ちなみに大変美味しいので、飲みすぎに注意。
さて、散々無視されていた使い魔のネコだが、ネコには彼女が自分の質問に答えてくれないだろうという事が最初から分っていた。
何故なら…
「………………魔鈴ちゃん…そのスープつくるの、今月に入って3回目なんニャけど…」
その指摘を、やっぱり魔鈴は聞こえないフリをした。
3発目 <犬神の祖>
「長老っ!」
尻尾とメッシュの入った長いシルバーの髪の少女…犬塚シロがハッ、ハッと息を切らして人狼の里の長老宅に飛び込んで来た。
「シロか?どうしたいきなり…」
何の前触れも無しの帰郷に驚きつつも、どこか嬉しさを隠せない長老。この歳になると、里の子供達全員が自分の孫のように思えるのだろう…
「実は聞きたい事があってきたのでござるっ!」
シロはそんな長老の様子すら目に入っていないかのように、真剣な表情でそう叫んだ。
それを落ち着いた声で諭す長老。
しかし、今のシロにはそれはできない相談だったのだ。
「落ち着け、シロよ…なにがあったのだ?」
「長老っ!答えてくだされ長老っ!!拙者の…拙者達のご先祖が…………………
獣○で生まれたって本当でござるかっ!!???」
………………………………
…………………………………………………
はっ!
あまりの事にしばらく思考が止まっていた長老が再起動して、シロに問い掛ける。
「シロよ…何故そんな事を思ったのだ?」
何故獣○という単語を知っているのか、とかも聞きたいのだがそっちは後回しにしたらしい。
「だって…犬飼ポチが先祖帰りしたとき…フェンリル狼は完全に獣の状態でござったろう?だというのに、拙者達は狼ではなく、人狼でござる…拙者達はアレの子孫だというのに…と、いう事はご先祖はあの狼と…」
「言うな。シロ。それ以上は言うでない…」
長老は頭が痛かった。
確かに一理ある。しかし、古き神々にそんな整合性を求めてもあまり意味は無い。フェンリル狼が人化する術を最初から知っていた可能性もないではないのだ。
だが一理あるだけにシロの懸念も否定し辛い…ひょっとしたらそっちの方が事実かもしれないし…
長老はしばらく頭痛と戦いながらどうしたものかと考え……5分後、どうでもよくなってしまった。
何か、真剣に考えているのがバカバカしくなってしまったらしい。
「長老…?」
そして長老は投げやりな態度と声で、不安げにこっちを見ているシロにこう言った。
「シロ………………パスいちじゃ」
「長老。わけがわからんでござるよ」
「いいから、ンな事は気にせんと……帰れ〜〜!!!」
「キャイン、キャイン!」
キレて村に伝わる銀の弓矢を乱射する長老から、尻尾を巻いて逃げ出すシロであった。
めでたしめでたし。
4発目 <天罰>
「い〜い?くれぐれも留守中、余計な事すんじゃないわよ!」
精霊石の買い付けに海外のオークションに出かける美神は、その一言を残して旅立った。
しかしそれをいわれた側のこの男、横島忠夫が守るわけがなく…
「おおおっ!また色っぽい下着が増えとるっ!これはええっ!こっちなんかもうたまらんっ!あのねーちゃんが俺をさそっとるとしかっ!?」
そんなふうに夢中になって下着を漁る彼に、電話のベルが聞こえた。
それは、天罰だったのだろうか?
100万円の仕事の依頼…美神除霊事務所にとっては安い仕事であり、いつもであれば断わっていただろう。しかしそこに美神はおらず…ビッグな小遣い稼ぎとばかりに横島は受けてしまった。
それは、天罰だったのだろうか?
横島の実力であれば、大抵の事は何とかなっただろう。しかしこの件では除霊を依頼された悪霊とは別に伏兵がおり…悪霊を倒して油断し切っていた横島は…
それは、天罰だったのだろうか?
そして現在、横島は白井総合病院集中治療室にいた。
「いかん…出血が止まらん…ノルアドレナリン、インシュリンを追加」
「バイタル、なおも低下中です」
「昇圧剤も追加だ!」
どんどんと横島の生命活動を示す波が弱まっていく。
機械が描くその波は、徐々に、徐々にその起伏を小さくして行き…
それが消える寸前、集中治療室のドアが開いた。
「横島君っ!!」
それは知らせを受けて海外から駆けつけた、美神だった。
一目で状況を見て取った美神は、即座に横島に歩み寄って頭をワシッと掴んでこう言った。
「起きろーー!起きんかこのクソボーズ〜!!」
あまりの事に医師や看護婦達が固まる目の前で、何故か意識を取り戻して謝る横島。
「ひっ…スンマセン!スンマセーーン!!」
横島が意識を取り戻した事にほっとしつつ、美神は耳元でささやいた。
「いい?横島君。…………って叫びなさい」
「へ?」
「い・い・か・ら・さ・け・び・な・さ・い!!」
「は、はいっ!」
そして横島は、叫んだ。
「のっぴょっぴょ〜〜〜ん」
………………………………
………………………
………………
「あ…く、クランケ(患者)のばいたる、回復に向かっています」
「出血も治まって…というか傷口が急速に塞がっていっています」
手術の執刀医をしていた白井院長が、この理不尽な事態にたまらずお得意のセリフを口にする。
「そ、そんな…現代医学が…現代医学がーー!?」
それに対してこの事態を引き起こした美神は、慌てず騒がずこう諭した。
「覚えておきなさい。いい?ギャグキャラはシリアスやってない限り死なないの。…これがお約束ってやつよ」
その後、白井院長がこのお約束を現在医学に取り入れたのかどうかは…定かではない。
そして美神が海外から引き返すのに使った、ジェットのチャーター料を請求された横島は当然ながらそれを払えず…美神に身柄を一生拘束されてしまったらしいが…
それは、天罰だったのだろうか?
5発目 <寝顔>
ああ、俺、コイツの笑顔が好きなんだな…
寝顔を見ながら、しみじみそう思った。
ニヤニヤしている。何か考えているように、顔をしかめている。微笑んでいる。枕にほお擦りしている。
ころころと変わるその顔は、本当にかわいらしい。
「ふふふ…」
思わず笑みが湧いてきた。多分、このまま朝まで眺めていても飽きないだろう。
「ああ、本当にかわいいな……
…デミアンは」(Byベルゼバブ)
さて、どれが一番印象に残りましたか?