「さてと・・・・とりあえず落ち着いたみたいね。」
女魔族達が去った後、突然意識を失った筈の美神が霊体の姿で現れたのだ。
「美、美神さん!?」
その姿に驚く横島達。そんな彼等に彼女は話して聞かせた。
「さっきのリング見たいので力を吸われる前に幽体離脱して逃れたのよ。あのままだったら、動けなくなっちゃってたし、まずい事になってたわ。」
「まずい事?なんですか、それ?」
どうやら、単純にダメージを負う以上の何かがあると言葉から気付きおキヌが尋ねる。
「結晶よ。前世の私が飲み込んだ魂の結晶、奴等はそれを狙っているんだわ。」
美神はそう答えると身体に戻ると、起き上がり話を続ける。
「とりあえず、これからの事を考えましょう。そうね、まずは妙神山へ行きましょう。もっと詳しい状況がわかるかもしれないし、魔族が関わっているとなると協力も仰げるはずだから。それから・・・・・・・ねえ、横島君、何とか幻海さんの力を借りられないかしら?」
そこで横島の方を向いて尋ねた。幽体の状態で横島の強さは見ていた。正直、その事に関して嫉妬を覚えないでもあるが、強敵に対してこの戦力は貴重だ。それに、後で自分も幻海に修業を受けて強くなってやればいいと思っている。今はともかく戦力を集めなければならない。幻海が力を貸してくれればこれほど心強いことはないと美神は考えた。
「うーん、幻海さんあまりそういうのに関わろうとしてくれないと思うすけど・・・・。」
しかし、美神の問いに対し横島は歯切れの悪い答えを返す。これは今まで一切の弟子を取らなかった事などから考えてもある程度予想できた事だったので美神は落胆せず、続けた。
「そう、けど、一応説得に当たってみて頂戴。私はその間に妙神山へ行くから。戦力を分散するのは危険だけど今は時間が惜しいしね。」
「大丈夫なんですか、美神さん?」
美神は今狙われてるのだ。一人で行動するなどあまりに危険すぎるし、自分がついて行ったとしても先ほどの女魔族相手では戦力は愚か、足手まといにしかならない。そう考えおキヌは心配する。
「大丈夫よ。私を誰だと思ってるの?美神令子よ!!とっ、まあ、そうは言っても流石に単独行動は危険だから先生と西条さんにでも付き合ってもらうわ。」
「何!?西条やと!!いかん、そんな事したら別の意味で危険!!ここは俺が二人っきりで!!!」
「その方が危険よ!!」
西条という名を聞いて美神に飛び掛りそうになった横島を美神がど突き倒す。と、いつもの漫才が繰り広げられたところで雪之丞が発言した。
「なあ、横島、さっきから話にでてる幻海ってあの幻海か?」
「んっ、ああ、お前も美神さんと同じような事言うんだな。やっぱ有名何だなあの人・・・。」
雪之丞の質問にそういえば彼は今まで自分が何処にいたのか知らなかったのだと気付き、頷く横島。そして、雪之丞は横島の答えを聞いて少し考え込むような仕草を見せた後、真剣な表情になって言った。
「もしかして、お前がそんなに強くなったのは・・・・。」
「ああ、幻海さんに鍛えてもらったからだけど?」
それがどうかしたのかと言わんばかりの横島の答え。それを聞いて雪之丞は大声で叫んだ。
「だったら俺も一緒に連れて行ってくれ!!俺はついこないだまでお前のライバルだと思っていた。そしてお前に負けないよう、必死に修業した。だが、さっきの戦いを見てお前との間に大きな差が開いちまった事がわかった。俺はもっと強くなりたい。そして、お前を超えたいんだ!!」
「お、おまえ相変わらず恥ずかしい事いう奴だなあ。ま、まあ、いいよ。つれてってやる。けど、幻海さんが承知してくれるかはわかんねえし、例え承知してくれても地獄だぞ、あの修業は。マジで。」
「ああ、俺はどんな試練でも耐えてみせるぜ!!説得もなんとかしてやる!!」
雪之丞の気迫に押され、承諾する横島。その時、以外な人物が手を上げた。
「あの、横島さん、私も連れて行ってくれませんか?」
「えっ?お、おキヌちゃん、ちょ、ちょっと待って!!あの人の修業はマジで地獄なんだぞ!!美神さんのお仕置きの10倍くらいきついんだぞ(当社比)おキヌちゃんにはきつすぎるって!!」
おキヌの提案に対し、横島はそういってやめさせようとする。ちなみに美神のお仕置きの10倍と言う言葉に後ろで雪之丞が顔を少し青くしている。だが、おキヌは引かなかった。
「私、美神さんや横島さんのお荷物にはなりたくないんです。横島さんがいなくなって、私どれだけあなたに頼っていたのかわかりました。自分ひとりじゃどれだけ約立たずなのか・・・・。私はもっと強くなりたいんです。」
まっすぐに真摯な目つきでそう言葉を発するおキヌに横島は言葉を失った。そこで、その決意の強さを感じた美神が助け舟をだす。
「わかったわ。行ってらっしゃい。」
「み、美神さん!?何行ってるんですか!!あの修業は本当にきついんですよ。死んだっておかしくないぐらいに!!」
その言葉に横島は動揺し、叫ぶ。だが、美神は鋭い目つきで横島を見やり言った。
「GSの仕事はいつでもそうでしょ。」
「け、けど、仕事の時は俺達が助けたり・・・。」
美神の正論になおも食い下がろうとする横島。だが、美神はさらに目つきを鋭くして言った。
「おキヌちゃんも自分で言ってたでしょ。彼女はもう、私達に守られているだけの存在じゃないのよ。」
その言葉に横島は今度こそ完全に押し黙る。そんな横島に対し、美神は肩に手を置くと、優しい目つきになって語りかける。
「横島君、おキヌちゃんは私たちと一緒になってずっとがんばってきたでしょ?彼女の事信じてあげましょ。」
「・・・・・・はい。」
横島はその言葉に頷いた。
「ところで、さっきの私のお仕置きより10倍きついってのは何かなあ?」
「えっ・・・・それはその・・・・。」
先ほどまでの優しい笑みとは打って変わり、美神が悪魔の形相になり、横島の肩に置かれた手に恐ろしい力が加わる。
「そういえば私やおキヌちゃんを心配させた事や、抜け駆けして強くなった事や、私に対する失礼な発言、それらに対するお仕置き、まだしてなかったわよねえ?そりゃあ、まあ、記憶喪失とか色々訳はあるだろうけどそれで全部許しちゃうのってやっぱり甘いと思うのよ。」
「あ、あの、美神さん?」
「修業の10分の1しか辛くないんだから対した事ないわよね?」
・・・・・・・その後、壮絶なる美神の“お仕置き”が繰り広げられたが、掲載禁止になりかねないのでここは割愛する。
「やっぱ3倍・・・いや、2倍・・・・いや、とんとんくらいかも。」
最後にそんな事をかすれる声で言って横島は気を失った。
(後書き)
この作品では横島だけでなく美神やおキヌも精神的に成長させていこうと思います。そんで、精神的に成長した彼女等とルシオラで横島を取り合いしてもらいます(笑)
でおくれたシロとタマモにつけいる隙は無いか?