ある日のこと。
横島忠夫は文珠の新しい使い道を考えていて、ふと思いついた。
「ん?……これはひょっとして…イケるかも」
しかしその思いつきは文珠についてではなく、友人の能力についてだったので、彼はさっそくその友人を呼び出した。
そして開口一番。
「なぁ、雪之丞………………
デビルイヤーは地獄耳って本当なのか?」
「突然呼び出しといてバカ言ってんじゃねぇ」
DOGOOONNN!!!
返ってきたのは霊波砲。
かなり的確なツッコミです。それに一時は沈むも、やはり彼は横島忠夫。30秒もせずに何も無かったかのように復活します。
「いや、今のはちょっとばかりキツめだったな」
「ならやり直すか?…いや、んな事ぁどーでもいい。一体どーいう意味だ、さっきのは」
雪之丞も慣れたもの。傷はおろか、服までキッチリ復元されている理不尽さに触れもせずに話を始めました。
「いやな?魔装術ってのは、肉体の限界とかカンケー無くなるだろ?」
「まぁな。魔装術使ってる間は、力の方が本体。肉体の方が従属物になるからな」
「だったら、聴力アップとかできねーのか?と思ってな」
またヘンな事考えたな、コイツ。
雪之丞は呆れたが、正直意表を突かれた気もしていた。
バトルジャンキーな性格と思考回路を持っているせいか、戦闘以外の事に魔装術を使うなど、今まで考えた事もなかったのだ。
しかし横島の言うとおり聴力アップが出来るのなら、魔装術の使い勝手は上がる。
聴力だけではなく、視力や嗅覚をアップさせられたら探索系統にも使えるようになるだろう。特に視力は戦闘にも色々応用が利きそうだ。ひょっとしたら霊視は勿論、闇視や赤外線視も出来るようになるかもしれない。
「へ……やってみる価値はありそうだな」
「お?その気になったか。よし、さっそくやってみろ」
自分の眠っている力を引き出せそうな予感に笑みが浮かぶのを抑えられない雪之丞と、実験気分で楽しそうな横島。
質は違えど、2人はややテンション高めで実験に取り組み……
その結果。
「な、なんじゃ。こりゃぁぁぁ〜〜!!!」
「だひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!面白い!面白いぞ雪之丞ー!!」
爆笑する横島と、唖然とする雪之丞。
それもそのはず。魔装術を纏った雪之丞の、いつもなら角とも兜ともつかない、額から伸びる2本の鋭角な突起が……
2本というのは変わりないものの…
あ〜……
えっと…
なんつーか、まぁ…
ありていに言って、バニーさんになっているンですな、コレが…
………………………………
想像していただきたい。
魔装術ユッキー。
しかし、その頭に生えているのは2本のウサミミ。
しかも、本人は新しい能力を引き出そうと集中していたため、これ以上無いマジな顔だ。
…その後。雪之丞は何があろうと決して、この能力の開発をしようとはしなかったと言う…
めでたしめでたし。
なお、後日。コッソリ横島が保存した映像が関係各所に出回り、大騒動の末に文珠“忘”の大盤振る舞いという結果になったというが…
それは別のお話である。