和樹の屋敷の寝室。ベットに座り和樹は封筒の中身を見ながら言った。表情は完全にしかめっ面、いかにもめんどくさいと言うのが出ている。傍にいるリーラが済まなそうに答えた。
「はい、式森重工との取引先です。重要度はさほど高い物ではありませんが、無下には出来ません。お手数をかけますが・・・・」
「う〜〜ん」
用は企業主催のパーティーだ。政治屋、企業家、総会屋、各界の著名人などを招待して会食、お話・・・などなど、面倒なことが多いい。だから、和樹はなるべくいきたくはない。なぜなら、日本のパーティーはダンスなど可無為だからだ。たとえコレが船上パーティーでも・・・
「あ・・・コレ、4人分だ。ふ〜〜ん、誰がいいかな?」
メイドであるリーラは数に含まれないし、両親も兄も姉も捕まりそうに無い・・・・・したがって却下、残るは・・・・
「凛ちゃんは当然として・・・・・他は・・・・」
栖桜学院の連中は無理だし、イロイロと。和樹の頭に二人の少女がよぎる。自分の遺伝子を目当てに『妻』だと主張する少女だ。玖里子の方は問題なだろう、新興財閥とはいえ・・いや、だからこそ先に述べたようなパーティーを精力的にする必要がある。問題は夕菜の方だ、確かに宮間家はそれなり大きい家柄だが現在は没落の一途をたどっている。ちなみに凛は和樹が引っ張りまわしたお陰で慣れてしまった。
「式森様・・・・・まさか・・・あの二人を招待なさるつもりですか?」
「うん・・まぁ・・いけないかな?」
和樹がリーラを見ながら言った。和樹がベットに座っている関係でリーラは和樹を見据えるような形だ。和樹から見ても機嫌が悪いのが分かる。
「はい、あの方達は式森様のお体だけが目当てです。パーティーに乗じて式森様を個室に連れ込み・・・・式森様を・・・コホン」
リーラは軽く咳払いをする。
「兎に角・・私は反対です」
「うん・・じゃ〜〜誘う」
同意しかけた和樹の発言だったが、意に反して玖里子と夕菜を誘う言い方をした。リーラは眼を見開いて叫んだ。
「和樹様!!」
だが、和樹は満面の笑みで返す。それを直視してしまったリーラは顔を薄く朱に染める。それを狙って和樹はリーラの手を握り自分のほうへと引張る。そのままリーラは自分の身体を和樹に預けてしまう。和樹は片方の手をリーラにまわした。
「リーラは優しいね」
和樹との距離は数センチほどの距離しかない。
「私は・・・・・メイドです。そして魔導書です。主人を想うのは・・・当然の事です」
距離が近すぎる・・リーラの顔に紅みが増す。
「そんな来ないよ・・・リーラは僕の大切な人だよ。リーラは僕の家族よりも凛ちゃんよりも・・僕ことを知ってるからね」
和樹は顔をユックリとリーラに近づける。唇が触れる寸前で止まる。
「だから・・大丈夫だよ・・・・リーラ・・・君は僕だけモノのだし・・・それが無くなるのは・・僕が死んだ時だけだよ」
和樹はそう言うと、眼を閉じ自分の唇を重ねる・・・・・和樹がチラと彼女の表情を見たとき涙を見たような気がした。
クイーン・メリア号・・・全長323メートル、幅39メートル、吃水11.4メートル、満排水量80,000トン・・乗員乗客2400名(内1500名が船員)世界屈指の豪華客船だ。中世の白亜の城を思わせる概観、夜の横須賀港に接岸された、その船の船上構造物がライトアップされている。それは感嘆とため息を人に与えるが、だが和樹はそれを見て呟いた。
「チンケナ船」
和樹はそのような表現をした。車から降りたタキシード姿、すぐ傍にいるのはリーラだ。そして、和樹の乗っていてた車の後方の車からは三人の少女が降りてくる。凛、夕菜、玖里子の順だ。服装も三者三様・・・凛が少しだけ派手やかな着物、玖里子はパーティードレスだが年齢にふさわしい物となっている(小説参照)夕菜は・・・・・
「って・・夕菜さん・・・それは少し派手じゃない?」
「そんなことありません!!」
とキッパリと否定する。夕菜の格好は漆黒のドレス・・・・背中も胸元も大きく開かれている。和樹は大きくため息をつく。そこに玖里子が割って入ってきた。
「チンケナ船って・・和樹・・・十分で大きな船だと思うけど?」
「うん・・・ああ・・」
基本的に現在の船はパナマ運河を通る為に船幅で32.3m、吃水12メートル以下に設計される・・・パナマ運河を通れる船の最大サイズをパナマサイズと呼ばれるのもその為だ、だが・・・・
「逆に言えばコレを考えずに造れば、幾らでも大きく出来るだ・・・まぁ・・うちの造船部門で造ってるよ。船幅が60メートルを超えるやつをね。出来たら呼ぶよ」
「そ・・そう・・」
玖里子は「空母でも造ってるのだろうか?」と思うが・・アレは飛行甲板が広いだけで、船幅自体は32メートルを超えることが出来ない。玖里子は途方も無い大きさの船を創造するのをやめ、和樹の腕を取り、腕組みをし、自分の胸に彼の腕を押し付けた。和樹は思ったとおり慌てたが・・・今度は逆に引っ張られる。
「式森!!なにをデレデレしている!!」
「うぁ・・凛ちゃん!!」
ッキと睨みつかられさらに慌てる和樹だが、和樹は玖里子の腕を解くと凛に抱きつく。今度は凛が慌てる番だ。
「お・・・おい!?」
「う〜〜ん、いつもは可愛いけど、今日は綺麗だね〜〜」
「あ〜〜ん、和樹〜〜私は?」
「ええ・・とても綺麗ですよ。玖里子さんらしくて」
和樹の素直な感想と笑顔に頬を朱に染める。タキシードを着ているわりには子供っぽい笑顔だが・・・・いや、だからこそ好意を持てるような気がする。玖里子が口を開き・・・何かを述べようとしたき・・・・・
「か〜〜ず〜〜き〜〜〜さ〜〜ん」
地獄の底から這い上がってくるような声が響く、黄金のオーラを発している。吹き上げるオーラが夕菜のパーティードレスのスカートの裾がユラユラとはためいているが、なぜか下着が見えないのは謎だ。
「なにを・いえ・・・妻の前で堂々と浮気をしないでください!!」
「妻って・・・宮間さんとは結婚してないでしょが・・・」
「なぁ!?」
和樹の発言にキレかけ、ザラマンダーとシルフを召喚するが・・・・」
「ちょ〜〜と、ストップ。夕菜ちゃん!!ストップ!!」
止めにはいったのは玖里子だ。
「何ですか!!邪魔をするなら容赦しませんよ!!」
「あのね・・・今、ここで暴れると夕菜ちゃんパーティーに出れなくなるわよ」
「それがなんですか!!!」
「あのね・・・もし、追い出されたら凛や私が和樹とパーティーに出るのよ・・そうなれば、分かるわよね?」
玖里子は怪しげに笑った。
「うぐ・・・」
「私は凛が一緒でもかまわないけどね〜」
『一緒』と言葉に凛が声をあげようとしたが、和樹がそれをふさぎ、コクコクと懐く。それの対しても凛は抗議をしようとしたが、口をふさがれているために声にならない。
「ホラね?和樹も了承済みよ?」
「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・」
夕菜は唸り声をあげて・・・
「分かりました・・・和樹の貞操を守る為に!!!!」
妙な事で燃え上がる夕菜であった。
「ハハハハハハハハ・・・久しぶりだね。和樹君」
「いえ、此方こそ」
和樹は小太り気味の男性が握手を求めてきたので、それに応じる。この船上パーティーの主催者だ。男性はニコニコ笑いながら言った。
「いや、いや、しかし・・・麗しい女性を三人も・・・羨ましい限りだ」
和樹は曖昧な笑みで応じる。凛、玖里子、夕菜とも笑顔だが、その裏では熾烈な攻防が繰り返されているからだ・・・今は紛争程度だが、いつアルマゲドン化しこの船を沈めるようなことがあれば・・・と思うと気が重い。
「いえ・・・両親も勿論ですが・・・兄も姉も中々捕まらなくて・・・・だから、親しい人間を連れてきたんですよ」
アハハハハハハ・・と空笑を立てる。
「しかし・・またなんで船上パーティーなんかを?失礼ながら・・・・」
そう・・・この船上パーティーを主催している企業は必ずしも良い状態・・・とは言えない。主催者の表情が一瞬だけ・・・無表情になったが、すぐに苦笑へと変わる。
「だからですよ・・・・・」
「はぁ・・・」
「あ・・・他の方々にも挨拶があるんで・・・・・」
と言って主催者の男性が去って行く。和樹はしばらく、その後姿を見て、凛達に振り返った。
「みんな、楽しんでる?」
和樹は微笑を加えていった。凛は少しだけ不満そうに言った。
「悪くはないが・・・・やはり苦手だ・・」
「凛ちゃんは賑やかな所、苦手だもんね〜」
和樹はグラス(中身はオレンジジュース)を片手に凛の頭を撫でる。
「あら、私は中々いいわよ〜」
玖里子はほろ酔い気味で和樹に寄り添ってきた。彼女は言い寄ってくる男性をある程度あ、相手にしてからあしらっている。
「玖里子さんは慣れているみたいですね」
「まぁ〜〜ね〜〜うちは新興財閥だら、色々と大変なのよ〜ね〜〜だから、和樹♪遺伝子ちょうだい♪」
「僕はかまいませんけど・・・・」
「!!しきも・・・・」
凛が叫ぼうとした時、会場の一角で爆発が起こる。
「か〜〜ず〜〜き〜〜〜さ〜〜ん〜〜〜!!!」
発生源は夕菜だった。容姿と格好から言い寄ってくる男性が多く、和樹が絡まなければ普通の美少女、なおかつこの様な場は慣れていないので玖里子のようにあしらう事を覚えていない。その為、懇切丁寧に応じているのだ。だが、対和樹アンテナはどれほど離れていようが反応する。
「あ・・宮間さん・・なに?」
「なに?じゃありません!!ど〜〜して浮気をするんですか!!!」
「浮気って・・・別に・・・・」
和樹が煩労を述べようとしたが、夕菜は聞き入れず支離滅裂な事を並べる。和樹は耳をふさぐが、周りの注目が自分に集まり始めていことが嫌になってきたので・・・・
「あ・・あ・・・僕・・・チョット・・トイレに入ってくるから〜〜」
「あ!!待ってください!!まだ、終わってません!!」
和樹はそれを聞き入れずに会場を後にした。
人気なの無い廊下を和樹とリーラが歩いていた。リーラはパーティー会場の外で待機していた為、和樹が出てきたところでリーラが合流した。始めは「ついて来なくていい・・」と言っただが・・・・
「私は式森様のメイドです。いつ何時でもご一緒します」
と言ったが・・・・和樹が小用を足す事を言うと少し頬を紅く染まるのが分かった。和樹は「じゃ〜〜入り口で待機ね」と言って。今に至る。
「しかし・・・・まぁ・・・なんで、宮間さんはああなるのかな?」
和樹がグチを零した。
「式森様、ご自身がお誘いなられたのです。ご自分の責任かと?」
「う・・・」
リーラの冷たく、嫉妬混じりな声に呻く和樹。
「まぁ・・・凛ちゃんたちも心配するだろうから・・・も・・戻ろうかな〜」
「その必要はね〜〜ぜ」
乱暴な足を立てて一人の男が立ちふさがる。色黒・・・中東系を思わせる風貌・・・そして、何よりも特徴的なには片腕が無いことだ。
「餓鬼・・てめぇはここで死ぬんだからな」
リーラが和樹と片腕の男の間に入ってP38を素早く引く抜くと片腕の男に向ける。
「貴様!!何者だ!!式森様に危害を加えるのならば容赦はしないぞ!」
「っけ・・相変わらず女なんかに守られているのかよ?ええ?小僧」
「貴様!!式森様を愚弄するつもりか!!」
リーラが引き金を引こうとした瞬間、片腕の男から炎の塊が生まれる。
「リーラ!!」
和樹がリーラを抱きかかえ炎の一閃から逃れる。炎は壁に激突し爆発を起こす。
「し・・式森様?」
「装填してあるのは通常弾だろ?銀製に変えろ・・・アレはザラマンダーだ」
リーラがマガジンを変え、チャンパー内に装填されていた通常弾を弾き飛ばす。和樹はナイフを取り出し、男を睨む。
「オッサン・・・この前、僕を襲った人でしょう?何のよう」
「っけ!!てめぇが知る必要ねぇよ!!」
再びザラマンダーを召喚、数は三匹、和樹達に向わせるが、和樹は無造作にナイフを一閃軽く一匹をしとめる。リーラの放った弾丸が二匹のザラマンダーを貫く。だが、片腕の男はすぐに新たなザラマンダーを召喚しようとしたが
「遅い!」
和樹が一気に間合いをつめ、ナイフを一閃させる。片腕の男が後ろに飛んだため皮膚をわずかに斬り裂く程度、それを追撃するようにリーラが発砲するがザラマンダーを犠牲にしてコレをかわす・・・・・が、さらに間合いを詰めた和樹の回し蹴りが片腕の男の頬をえぐり、男は壁に打ちつけられる。
「てめぇ!!」
怒りを露わにする片腕の男はすぐに立ちあがり、ザラマンダーを召喚しようとするが、先程と同じように・・・・いや、召喚される寸前のザラマンダーを和樹のナイフ、リーラのP38が・・・消し去る。
「十八番だけじゃ・・・僕は殺せないよ」
「このぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
片腕の男は自分の残った腕にザラマンダーを召喚し和樹に拳を繰り出すが、和樹は軽く体をそらす。わずかに髪を焦がすが、和樹は気にせずにナイフを一閃させる。怒り任せの直線的な動きの所為で和樹の繰り出したナイフは男の右目を意図も簡単に切り裂く。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
右目を押さえさ叫ぶ男を和樹は殴り飛ばす。床を転がる男を足で止める者がいた。男は右目を抑えながら立ち上がり、怒気交じりの声で言った。
「ディステル!!てめぇ・・・何しにきた!!」
「ヴィペール・・・式森和樹への対処は『殺害』でなく『捕縛』だ・・・」
ディステルと呼ばれた者は女性だ・・・・・ロングの金髪、白い肌・・東欧風の顔立ち誰もが美人だと認めるだろうが、彼女が握っている物で緊張感が増す。それを和樹に向けた。リーラは当然のように和樹の盾になるように立ちふさがる。
「へぇ〜〜Cz75か・・・しかも初期モデル。お姉さん・・・良い物持ってるね?」
「・・・・・・式森和樹、我々と同行をしてもらう」
ディステルと呼ばれた女性は和樹を見て僅かに動揺を見せたが、すぐに消える。和樹の返答は間髪を入れず、明快に答えた。
「生憎だけど・・・お断りするよ」
「なら・・・・・力ずくでも連れて行く」
下を向いていた銃口が正面を向くのだが・・・・・・・
「ざけてんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
ヴィペールの魔力が一気に膨れ上がった。魔力と炎が一体化しとぐろを巻くようにヴィペールを包み込む。
「ヴィペール!貴様!!何をする気だ!!」
「この餓鬼は俺が殺してやる!!!」
彼の周りでとぐろを巻いていた炎は残った彼の腕に集まり、一冊の本になる。ディステウルの美しい眉が中央による。
「貴様・・・こんな所でデウス・マキナを呼ぶつもりか」
和樹が理解できない単語を出すディステルに軽く質問をする。
「あの・・お姉さん?デウス・マキナって・・・なに?」
「お前・・・魔導書を所有者なのに知らないのか?」
和樹はリーラを見る。リーラからは少しだけ寂しそうな表情が見たため、特に意見を出さなかった。
「デウス・マキナ・・・鬼械神だ。式森家に言わせれば・・・・・魔導兵器かな?式森和樹」
和樹は眉を寄せて言った。
「魔導兵器?・・・・それならリーラだって・・・・・」
「銃になるあの事か・・・・アレも強力だが、デウス・マキナは違う・・・機械仕掛けの神・・・・まさしく『神に等しい力』を得る・・・・君達・・神を否定する君達に言わせれば『究極の魔導兵器』だな。日本のSFロボットアニメに出て来るようなモノを召喚する」
「はぁ?」
「見てれば分かる」
和樹は間の抜けた声を出した。
ドン!!!!
衝撃が奔る・・・壁、床、天井にひびが入る。ヴィペールは魔術文字の情報を・・・具現化すため呪文を唱える。だが、その発音は人が聞けるような音質を持っていない。だが、炎の塊が産まれ天井を貫き・・・・そして、炎が晴れるとそこには真っ赤な装甲を持った脚が見えた。
『ヒィハハハハハハハハハハ!!!!死ね〜〜〜!!!』
その声が聞こえると同時に天井が吹き飛ぶ。それによって召喚された『鬼械神』の全容が見える。脚と見られるのは一本だけ、頭部は無く胴体の上部に大きな瞳らしき物がある。その脇から太い腕が生えていた。和樹はそれは見て思った・・色は違うが、日本の妖怪、一本踏鞴・・・・
「・・・・・・以外に日本ツウか・・あのオッサン?しかも赤いから三倍早いのかな?」
いきなり巨大なスーパーロボットモドキが出てきたおかげで流石に船内はパニックになり始める。和樹にもそれが聞こえ始める。
「っく・・リーラ・・君もデウス・マキナ・・だっけ?召喚できるんだろう?」
「はい・・・ですが・・・・」
リーラはうつむく・・・和樹は・・・ああ・・・そうか、魔導兵器の一種なら魔法が7回しか使えない僕には辛いか・・・魔銃を使っただけであそこまで体力を消費してしまうんだからリーラが言わなかったのも分かる気がする・・だが・・・
「リーラ・・・アイツを倒せるのは・・たぶん今は僕らだけだ・・・兄さんや姉さんだった・・・まぁ・・素手でも勝てるだろうけど・・・僕には出来ない・・だから・・・」
リーラは黙ったままだ・・和樹はリーラを抱き寄せて
「・・・・・ね?」
「式森様・・・・」
和樹とリーラは唇を重ねる・・・・リーラ・・・トート書の魔導書としての情報が一気に和樹の脳内に流れ込んでくる。随分前に取り込んだ魔銃よりも圧倒的な情報量だが・・・仮にも『式森』に人間である和樹に処理できない情報量ではない。
『けけけけけ・・・てめぇの女とのお別れは終わったか?一応待ってやってたんだぜ?感謝しろよな?』
和樹命名・・・・一本踏鞴モノドキからヴィペールの声が聞こえるが和樹は気にしない・・・・対して意味が無い・・・・そう、和樹も彼と同じ・・・いや、それ以上の・・・そもそもトートの書以上の魔導書などそうそう手に入るものではない・・・・それに鬼械神の情報が入った・・・・そして、和樹が呪文も何も唱えず・・・・・一言だけ言った。
「在れ」
クイーン・メリア号上空に巨大な魔方陣が出現する。複雑な図形が絡み合い『力ある文字』が乱舞し・・・・・・輝きを増し膨大な量の光を解き放つ。周辺がホワイトアウトし白い闇が覆った。
光が晴れ・・・・夜の闇が支配する夜空が現れると先ほど白い闇が偶像化したような巨人がクイーン・メリア号上空に浮かんでいる。汚れの無い真白な装甲で覆われ全体的に女性的で西洋の騎士を思わせるその風貌は威厳に満ち・・・力としての存在、そのものといえる。その胎内には・・・・・
「わぁ・・・凄い・・・ロボットのコクピットだ〜〜」
和樹は半分子供じみた歓声を揚げた。和樹の言ったコクピットは全周囲モニターに覆われている球状の操作桿がる・・・・シートも完備されており和樹にシックリとくる物だ。和樹がフと視線を下げるとリーラがいた。服装はメイド服のままだが妙なゴーグルが付けられていた。
「式森様・・・感嘆されるのは分かりますが・・・・・敵が来ます」
「っへ?わぁぁぁ!!??」
目の前の紅蓮のデウス・マキナが拳を振り上げる。その手にはザラマンダーなどとは比べ物にならないほどの炎の塊が覆われた拳が迫る。和樹はそれを避けようともせずに手で受け止める・・・・炎が和樹の駆る純白のデウス・マキナの手に触れた瞬間・・・・・凄まじい爆発す・・・爆風は8万トンを誇るクイーン・メリア号を多き揺るがした。
『っへ!!俺のデウスマキナ<フレイム・スロウワー>に勝てるかよ!!!』
ヴィペールは下品な笑みを浮かべながら爆炎を見る。3ギガトン級の核兵器の直撃に耐えられる耐爆施設の外壁の何十の防御結界を施した装甲でも粉砕でいる攻撃だ。
『あんな・・ヒョロヒョロのなのが耐えられる・・・・・』
爆炎が晴れると・・・・ヴィペールは絶句した。目の前に現れたデウス・マキナは・・・ススするら付けていない・・・・出現した時と同じ・・・汚れのない純白のままだった。その純白のデウス・マキナは頬をかくような真似をしている。
『・・・・・・・・・・・フレイム・スロウワー・・・火炎放射器・・安直だな・・オッサン』
和樹がしたい動きをトレースしてようだ・・・・仕草や声色から和樹が呆れているのが分かる。それがヴィペールの神経を逆なでするようだ。ヴィペールの怒気はそのままフレイム・スロウワーに送られる・・・・それはフレイム・スロウワーの外周に炎を発生させ、海面を沸騰させる。
『てめぇ!!』
再び炎の拳を叩きつけようとするが、和樹のデウス・マキナは海面を滑るように移動しフレイム・スロウワーの懐に潜り込み、わき腹に拳をたたきつけた。
『なぁ!?』
ヴィペールの驚きの声と共にフレイム・スロウワーのわき腹の装甲が砕け落ち、水きり石のように海面を跳ね海中に沈む。その様子をコクピットから見ていた和樹は和樹は軽く口笛を鳴らして感嘆する。
「すごい!!あっち攻撃は防いで・・此方の攻撃は効くのか!!!」
「式森様の強い魔力のおかげです」
リーラが和樹の方へと振り向きながら言った。微笑は浮かべているが、彼女にしてはあせりがる。彼女は和樹の事を心配しているようだ。
「リーラ・・なにか武装はないの?」
「私の武装は私の部下が担当する予定ですが・・・・・・」
そう・・・現在はネリー以下のメイドは洋上には出ておらず港で待機となっている。距離が離れすぎていて『召喚』は無理だ。リーラにことを聞いて和樹は苦々しく感じる・・・だが・・・リーラが言葉を続けた。
「式森様・・・銀ナイフはまだお持ちですか?」
「あ・・うん」
「では・・・銀ナイフを媒体として武装の召喚をおこないます」
和樹はリーラにナイフを渡す。リーラは渡されたナイフを目の前にあるコンソールの上に置くとナイフの周りを何重の魔方陣が包み込む。それと同時に和樹の駆る純白のデウス・マキナの右手にナイフが出現する。デザインは和樹の持っていたナイフと寸分たがわぬデザインとなっている。和樹が駆る純白のデウス・マキナがそれを握りる。
それと同時にフレイム・スロウワーが沈んだ海面が膨れ上がり水柱が立つが・・・それは一気に霧状になり、海面が煮え立つ。
『てめぇ!!』
フレイム・ソウウワーからヴィペールの声が聞こえる。殴られた・・砕けた装甲から水銀と火花が散っている。
『消し炭すら残さねぇ!!!』
フレイム・スロウワーは両手を握りこぶしを突き出す。詠唱を始めた。
「ふぁんぐるい むぐるうなふ
くとぅぐあ ふぁまるはうと
んがあ・ぐあ なるたぐん
いあ! くとぅぐあ!
ふぁんぐるい むぐるうなふ
くとぅぐあ ふぁまるはうと
んがあ・ぐあ なるたぐん
いあ! くとぅぐあ!
ふぁんぐるい むぐるうなふ
くとぅぐあ ふぁまるはうと
んがあ・ぐあ なるたぐん
いあ! くとぅぐあ!」
和樹はその詠唱を聞いて・・少しだけ動揺するがすぐにある事に気がつく。リーラも同様で、少しだけ和樹を見たがすぐに自分がすべき事に戻る。
フレイム・スロウワー・・・・ヴィペールは旧支配者クトゥグアの召喚をおこなおうとしている・・・まさしく神の炎、神の力と言っていいが問題は制御が出来るかどうかだ・・・魔力は無論・・・・精神力、魔導に対する知識・・・そして、『力ある魔導書』どれが欠けてもダメだ。欠けていれば報いとして術者に返される。
『報い』はフレイム・スロウワーに向けられる。『炎』を操るデウス・マキナであるフレイム・スロウワーは熱に非常に強いが、それを無視して装甲が融解を始めている。つまりは制御が仕切れずに対象が自分にも向けられているのだ。
『ひゃ〜〜〜〜ッハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!死ね〜〜〜!!』
炎が収縮して球状となり、猛烈な勢いで突き進む火球だが・・それも和樹は覚めた目で見ている。火球の進行方向ナイフを向ける。
和樹はナイフを一閃させる
火球が・・・・・霧散した。全てを焼きつくすこと出来るような炎の塊が一瞬にして消えた。わずかに残った火の粉が海面に触れ消える。
『な!?』
流石に絶句したヴィペール自分が放った最大級の攻撃をあっさりと無に帰したのだ。目の前に存在する純白のデウス・マキナを見る。自分か繰り出す攻撃は全て効かない・・・意味がないのだ。ジリ・・と無意識に後退する。
和樹は黙ってみている・・・いや・・妙に呼吸が荒い事に気がつくリーラは自分の主人に呼びかけた。
「式森様・・・」
「あ・・・うん、・・大丈夫」
「おじさん・・これで終わりにしてやるよ」
和樹は呼吸を整えると操作桿の上に置かれている手に力が入る。それと同時に純白のデウス・マキナの右手にも力が入る。グッと腰を落とし海面を蹴るようにしてフレイム・スロウワーに突き進んで行く。純白のデウス・マキナを追うようにして海水が壁のようにせり上りる。あっという間に和樹のキルゾーンに入る。
『このぉ!!!!』
フレイム・スロウワーの炎の拳が振り上げられるが・・・・・和樹は難なく、その腕を斬り落とすし、傷ついたフレイム・スロウワーのわき腹に蹴りを入れる。其処から小さな爆発を起こす。フレイム・スロウワーが小さく揺れる。
『がはぁ!!』
ヴィペールの苦悶声が上がるが・・・・和樹は気にしない。ナイフをフレイム・スロウワーに突き立て、素早く引き抜く。
ブシュゥゥゥゥゥゥゥ・・銀色の液体が飛び出す。さらながら血のように。
「くそぉぉぉおぉおぉぉおぉl!!モニターが!!」
闇に包まれたコクピット内で叫ぶヴィペール・・メチャクチャ操作をそのままトレースしている所為でフレイム・スロウワーの動きもメチャクチャだ。再び衝撃が奔る。
「何だ!!何だ!!あの餓鬼は!!!」
『何だ・・・って、僕は式森和樹だ・・・・・』
冷徹な声がコクピットに響く。
和樹はメチャクチャな動きを続けるフレイム・スロウワー見ながら、残った腕を絶妙なタイミングで斬り落とす。波を立て斬り落とされた腕が沈んでいく。攻撃の手段がなくなった・・・・・和樹は広がったフレイム・スロウワーのわき腹にナイフを突き刺す・・・ナイフは臓腑をえぐるように突き進んで行く・・・・なにか・・硬い物質に当たったが、それは一瞬の事・・・あっさりと突き破る。
それと同時に膨大な魔力が吹き出る。
「和樹様!!アレを沈めてください!!」
「っへ?」
「魔導炉を破壊した模様です。大規模な爆発を起こします!!」
リーラが言ったと同時に和樹はフレイム・スロウワーを殴り飛ばす。フレイム・スロウワーは凄まじいシピードでクイーン・メリア号から離れて行く。和樹のデウス・マキナもほぼ同等のスピードで飛ぶ。
「式森様!!今です!!」
「このぉぉぉ!!」
フレイム・スロウワーの勢いがなくなった瞬間、和樹は踵落としを決める・金属と金属が激しくぶつかり合う音・・・・そして水柱を立て海中に沈むフレイム・スロウワー・・・・・・・
そして・・・・
海面が膨れが、限界に達し先ほどの水柱とは比べ物にはならない水柱が立つ。
「式森様・・・・敵の反応が消えました。魔力、精霊波ともに反応なし・・・」
「そう・・・・ふ〜〜〜〜〜」
和樹はシートに身を沈める。
「戻ろうか・・・・リーラ・・・流石に疲れたよ・・・」
「はい・・・」
リーラはゴーグルを外し・・微笑んだ。
再びクイーン・メリア号・・・。騒ぐ者いるが、二つの巨人の戦いに魅入られていた・・・いや、正確には純白の巨人にだが・・・・・それも消え、落ちつた者達のほうが多い。彼らが次に注目しているのは、自分達が乗船している船の周りに集結している軍艦群である。また、上空にはヘリが何機も旋回している。
「え〜〜と・・・・式森家の家紋を掲げているように見えるのは・・・気のせいかしら?」
玖里子は呆れながら言った。周りの艦艇は海軍旗どころか国旗すら掲げずに『式森家』の家紋が入った旗を堂々と掲げている。
「気のせいじゃありませんよ・・・アレ等は僕の家の・・・まぁ・・私設軍隊かな?」
凛、玖里子、夕菜が振り返った。リーラに支えながらこちらに向ってくる和樹を確認できた・・・・とたん、彼女等が叫んだ。
「「「って!!和樹!!その髪の毛!!!」」」
三人とも和樹の頭部を指差しながら叫ぶ。
「うん・・・ああ・・これ?」
和樹は自分の髪を触りながら照れくさそうにしている。なぜなら・・・・和樹の髪は真っ白になっているからだ。
「う〜〜ん、流石にあのロボットはきついのかな〜ハハハハハ。流石、リーラだよな〜〜」
と苦笑いを混ぜながら言った。『リーラ』の名を聞いて露骨に顔を歪めたのは夕菜だった。
「ア・・アナタの所為ですか!!リーラ!!よくも和樹さんを!!!」
和樹を支えているリーラに詰め寄ろうとする夕菜の前に一本のロープが降りてきた。全員が上を見ると・・・・ホバリングしているSH−60が見ることが出来た。そして人影・・・ロープにつかまると特殊部隊が降下してくるように降りてきた。
トン
軽い足音を立て降り立つ。その人物は女性だった。美しいロングストレートの髪の毛、特殊部隊が着ているような真っ黒な服を着ている。身長は180センチ近い、タルティカルベスト越しでもはっきりと分かる裕福な双丘、それに応じるようにくびれた腰、美しいまでのヒップのライン。男性なら十人中十人が振り返り、女性は羨望と嫉妬の眼差しを捧げる事とになるだろう。
女性は和樹の方に顔を向けると・・・和樹の顔が引き攣る・・・・思いっきり引いている。口を金魚のようにパクパクさせている。
「久しぶりね・・和樹」
「な・な・な・な・な!!!!」
「随分、力を行使したようね・・・かわいそうに」
和樹が逃げ出そうとするが、上手く身体に力が入らない・・・・不可能だ。女性は優しくリーラから和樹を奪い取ると・・・・・唇を奪った。
間
火柱が立った。中止に居るのは無論・・夕菜である。
「な・な・な・な・な・!!!!!なにやってるんですか!!急に現れて!!私の和樹さんに!!」
女性は和樹から唇を離すと、夕菜の方に顔を向ける。不思議そうに訊ねた。見せつけるかのように自分の胸の谷間に和樹の頭部を埋めさせる。
「誰?」
自分に対する無関心さと和樹に対する行為でさらにヒートアップさせる夕菜。
「されは此方のセリフです!!」
「あの・・夕菜さん・・・・・」
凛が水を刺すように夕菜に言葉をぶつけた。夕菜に睨まれ方をすくめるが・・・意を決して言った。
「あの・・あの方はしき・・・和樹殿の姉上様です」
「へ?」
夕菜の怒気が収縮していく。夕菜は女性の方に再び視線を向ける。
「・・・・・・・・・・・え〜〜と・・あの〜〜〜〜『お義姉様』?」
夕菜は満面の笑みで言ったが、女性はあっさりと無視する。
「カズ・・・向こうで船を待たせてあるからそっち行きましょう」
「っへ?向こう?鈴歌姉ぇ?」
和樹がクイーン・メリア号のヘリ甲板のヘリを見ると式森家の家紋の下に戦艦を簡略化した物がプリントされており『BB−7 HARIMA』とふられてる。
「・・・・・・・・・・アレも持ってきたのかよ・・・」
和樹が呆れている表情を満足そうに笑う和樹の姉・鈴歌は凛の方振り返る。
「凛ちゃん・・あと、風椿さん一緒にどうかしら?」
「あ・・はい。よろしくお願いします」
「あ・・・・お言葉に甘えます」
凛、玖里子が頭を下げる。一人、名前が挙がらなかった夕菜が済まなそうに訊ねた。
「あの・・お義姉様?・・・ワタクシは?」
「うん?・・・・・アナタだれ?」
笑み・・だったが・・・怖い・・・眼が笑っているが口は無表情だった。
「え〜〜と・・・・その・・私は和樹さんの未来の奥さんで・・・・」
「あら、カズのお嫁さんは凛ちゃんよ♪・・・・・あまり納得してないけど♪」
シ〜〜〜〜ン
言葉が続かない二人。和樹がフォローを入れた。
「いや・・・此処いても仕方ないし・・・・・っね?」
「・・・・・・・・・・・・そうね・・和樹は相変わらず優しいわね?」
そう言って和樹の頭を優しく撫でる。そして耳元で囁いた。
「大分、魔力を使ったみたいだから・・・私が補給してあげる」
鈴歌は舌の先端で和樹の頬を舐め続けた。
「フフフフ・・和樹とスるのは久しぶりだから・・フフフフ」
不敵な笑と共に和樹等が乗ったSH−60は飛び立つ・・・・クイーン・メリア号の姿が小さくなっていく。
しばらくすると・・・・・・
クイーン・メリア号をはるかに凌ぐ・・黒々した巨体が見え始めた。それは先ほどの豪華客船を取り巻いていた現用軍とは違っていた・・・・異様に高い艦橋、空母並みに長い船体・・・・そして時代錯誤な巨大な主砲が四基ある・・・・そう・・第二次世界大戦や太平洋戦争でその主役的な役目を終えた軍艦・・・・戦艦と呼ばれる物だ。
繊細にして精密・・・彼女は同種の艦を沈める前に生まれ・・・・それ以外の事は副次的な物に過ぎない。
その様な艦が現在・・・・海上に存在している。ほんのりと月明かりに照らされている。その後方甲板・・・・ヘリが離発着するためのヘリポートがあり、その誘導灯の導きと無線で静かに降り立つ。
先に降りたのは鈴歌だ・・・巨大な砲塔をを背に・・・・夜風が彼女の髪をなびかせ、月明かりが髪を照らす。
「ようこそ・・我らが式森家私設海軍旗艦 播磨へ・・・」
鈴歌は笑っていた・・・・美しく・・・・・妖艶に・・・・和樹は半年振りに合う姉に・・・不覚にも魅入られてしまった。
あとがき
さて・・・予定では・・・・和樹×姉・・・・・を・・・・・ダメ?
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